適正な人事評価を下すうえで活用できるのが、職業能力評価基準です。職業能力評価基準は厚生労働省が発表している業務における基準です。職業能力評価基準を導入することで人事評価に基準ができるため、評価者が評価にかける時間の短縮も期待できます。
この記事では職業能力評価基準について、導入のメリットや導入手順を交えて紹介します。
目次
【豪華ゲスト多数登壇!】変化に負けない「強い組織」を育むためにHRが果たすべき役割を考える大型カンファレンス『HR NOTE CONFERENCE 2024』
「人的資本経営」「ウェルビーイング」「DEI」といったトレンドワードが、HR領域だけでなく社会全体に拡がり始めた昨今。自社組織に漠然と"停滞感"を感じ、「うちは取り残されていないだろうか?」「何かやらないといけないのでは・・・」といった不安や悩みを抱える人事・経営者の皆様も多いのではないでしょうか。
本カンファレンスでは、HR領域の有識者の皆様に、様々な組織課題を解決するためのアプローチ方法について解説いただきます。強い組織を育む企業が実践している事例には、組織強化に必要な考え方や人事が果たすべき役割について学べるポイントが多くあります。ぜひ有識者の皆様と一緒に、組織を強化する「共通原理」について考えてみていただければと思います。
1. 職業能力評価基準とは?
職業能力評価基準とは厚生労働省が、業種別・職種別・職務別に、必要とされる知識や技術、成果につながる行動例をまとめた基準です。2023年4月時点では経営戦略、情報システムといった9つの職種、建設業、製造業といった56の業種の評価基準が設けられています。[注1]
1-1. 職業能力評価基準を構成する4つの項目
職業能力評価基準は職種、職務、能力ユニット、能力細目といった4つの項目で構成されています。4つの項目の詳細は次のとおりです。[注2]
項目 |
詳細 |
職種 |
業務の内容や種類が似た業種をまとめた項目 |
職務 |
従業員が責任をもって取り組むべき範囲の業務 |
能力ユニット |
業務を効率的に進める能力をまとめた項目 |
能力細目 |
能力ユニットの項目を細分化した項目 |
職業能力評価基準では、企業で従業員が期待される責任や役割の範囲、難易度によって4段階のレベルに分かれています。数字が大きいほうが業務の範囲や責任が増していきます。[注2]
レベル |
詳細 |
レベル1 |
上司の指示や助言によって、定例的な業務を確実に遂行できる能力を有している |
レベル2 |
チームの中心メンバーとして、自主的に判断、提案して業務の改善や遂行ができる能力を有している。 係長や主任などが該当 |
レベル3 |
中小規模の責任者もしくは専門職の立場から、管理運営や計画の作成、問題解決などによって、企業に利益をもたらす能力を有している。 課長やマネージャーなどが該当 |
レベル4 |
大規模組織の責任者やレベル3よりも上位の専門職の立場から、総合的な判断によって、企業の利益を率先して生み出す能力を有している。 部長や本部長などが該当 |
2. 職業能力評価基準を導入するメリット
職業能力評価基準を導入するメリットとして以下が挙げられます。
- 人事評価の基準となる
- 採用の基準となる
- 従業員の教育に効果的
2-1. 人事評価の基準となる
職業能力評価基準はレベル区分が設定されているため、人事評価の基準として活用できます。人事評価が曖昧では従業員のモチベーション低下につながりかねません。従業員のモチベーション低下や評価に対する不満は離職率の増加と関係してきます。そのため、職業能力評価基準に基づいて、透明性のある人事評価を下すことで従業員の離職防止が期待できます。
2-2. 採用の基準となる
職業能力評価基準は人事評価以外にも人材採用の基準にもなります。職業能力評価基準を採用することで、自社にどのような人材が必要なのかを把握可能です。そのため、採用のミスマッチを防ぎ、自社が求める人材の獲得がしやすくなります。
2-3. 従業員の教育に効果的
従業員の教育にも職業能力評価基準は活用できます。従業員の能力やスキルに応じて教育をすることで、効率的なスキルアップが図れます。また、従業員自身もなにが自分に足りないのかを把握しやすいため、自主的な行動も促せます。
3. 職業能力評価基準の導入手順
職業能力評価基準を導入する際は、なぜ導入するかの目的を明確にしておきます。目的が明確になったら次のステップで導入を進めていきましょう。
- 自社に適した職業能力評価基準を設定する
- レベルを設定する
- 現場の声も反映する
3-1. 自社に適した職業能力評価基準を設定する
職業能力評価基準は自社に応じた内容にカスタマイズ可能です。そのため、職業能力評価基準を導入する際は、自社に応じた基準を設定しましょう。項目をチェックしていき、自社に不要なもの、付け加えるべきものを確認してカスタマイズしていきます。
3-2. レベルを設定する
項目に対してレベルを設定していきます。レベルを設定する際は、経験年数のように従業員が納得かつわかりやすい指標を設定するのがおすすめです。レベル設定が曖昧になってしまうと、公平な人事評価につながらなくなってしまうので注意が必要です。
3-3. 現場の声も反映する
職業能力評価基準を導入、運営していくうえでは現場の声にも耳を傾けましょう。導入前のヒアリングや、導入後の試験的な運用時にフィードバックを受けるといった方法で基準を確立していきます。
4. 職業能力評価基準をカスタマイズするコツ
職業能力評価基準は自社に応じた基準にカスタマイズ可能です。職業能力評価基準をカスタマイズする際は次のコツを押さえておきましょう。
- 項目の粒度が自社に適しているかを確認
- 能力に設定した名称はイメージしやすいか
- 現場が使いやすいか
4-1. 項目の粒度が自社に適しているかを確認
職業能力評価基準の項目はすべての企業が対象となっているわけではありません。通常の基準では、企業によってはレベルや分類が細かすぎる可能性があります。一方で細かく設定しなければならない企業もあります。そのため、自社の業務や職業能力評価基準導入の目的と照らし合わせて粒度を揃えましょう。
4-2. 能力に設定した名称はイメージしやすいか
職業能力評価基準に設けられた能力の名称がイメージしやすいかも確認します。イメージしづらい名称だと従業員によって齟齬が生まれてしまう可能性があります。そのため、名称がイメージしづらいのであれば、補足情報を付記しておきましょう。
4-3. 現場が使いやすいか
職業能力評価基準のカスタマイズ後は、現場で問題なく使用できるかの確認が必要です。管理職や部署のリーダーといった評価者が戸惑うことなく使えるかを確認しましょう。その際は粒度、名称のイメージに齟齬がないかも確認しておきます。
5. 自社に応じた職業能力評価基準を設定して人事評価に活用しよう
職業能力評価基準は、業種別・職種別・職務別に、必要な知識や技術などを厚生労働省によってまとめられたものです。
職業能力評価基準は導入することで、公平な人事評価につながるだけでなく、採用活動や従業員の教育の効率化が期待できます。職業能力評価基準のメリットを得るには、自社に応じた職業能力評価基準を設定することが大切です。項目の粒度や能力の名称に注意して、自社に適した職業能力評価基準にカスタマイズしましょう。
【豪華ゲスト多数登壇!】変化に負けない「強い組織」を育むためにHRが果たすべき役割を考える大型カンファレンス『HR NOTE CONFERENCE 2024』
「人的資本経営」「ウェルビーイング」「DEI」といったトレンドワードが、HR領域だけでなく社会全体に拡がり始めた昨今。自社組織に漠然と"停滞感"を感じ、「うちは取り残されていないだろうか?」「何かやらないといけないのでは・・・」といった不安や悩みを抱える人事・経営者の皆様も多いのではないでしょうか。
本カンファレンスでは、HR領域の有識者の皆様に、様々な組織課題を解決するためのアプローチ方法について解説いただきます。強い組織を育む企業が実践している事例には、組織強化に必要な考え方や人事が果たすべき役割について学べるポイントが多くあります。ぜひ有識者の皆様と一緒に、組織を強化する「共通原理」について考えてみていただければと思います。