シニアと若手の溝を埋めて相乗効果に|エンタメ業界出身人事が手掛けたシニアの“しくじり”語る勉強会 |HR NOTE

シニアと若手の溝を埋めて相乗効果に|エンタメ業界出身人事が手掛けたシニアの“しくじり”語る勉強会 |HR NOTE

シニアと若手の溝を埋めて相乗効果に|エンタメ業界出身人事が手掛けたシニアの“しくじり”語る勉強会

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※本記事は、株式会社シニアジョブの関岡央真さんより寄稿いただいた記事を掲載しております。

人生100年時代。2025年には、65歳まで従業員を雇用し続けることがすべての企業の義務となります。また、国民年金の納付期間を65歳まで延長する議論も進んでいます。

株式会社シニアジョブでは、50歳以上のシニアに特化した転職・再就職の支援を提供する一方で、自社内でもシニア社員を採用・活用し、若手社員との相乗効果などノウハウの蓄積を進めています。

その中で、2023年9月に戦略人事本部長に就任した私・関岡央真が、新鮮な目線で新たに手掛けたシニア活用施策と若手への影響について紹介します。

関岡央真 | 株式会社シニアジョブ 戦略人事本部長 シニア就業促進研究所 所長

大学卒業後、テレビ局系列の制作会社に入社。報道・情報番組の制作に携わる。2017年から株式会社モバイルファクトリーに採用担当として入社。新卒を中心に採用活動を行うほか採用広報も兼務。「モバファク 新卒ドラフト」などのユニークな採用を行うなど、営業職からエンジニア職まで幅広い職種の採用を経験。2023年9月より現職。

1. なぜシニア転職支援会社に興味を持ったのか?

人生100年時代となり、経営トップや人事が自分よりも年上のシニアや中高年を採用し、管理や活用する機会が増えています。若手社員の多い会社では、若手とシニアの間にできてしまう溝を防ぐことや、相乗効果を生み出すための工夫も必要です。

今回は、「シニアが持つ豊富なキャリアを若手の育成にどう活かすか?」をテーマに、20代の社員が中心ではあるものの50〜60代の社員も活躍する株式会社シニアジョブで私が実際に取り組んだ事例を交えてお伝えします。

私がシニアジョブに戦略人事本部長としてジョインしたのは、今年9月のこと。私はテレビ制作会社からキャリアをスタートさせ、ゲーム制作会社での人事と、長らくエンタメ業界にいました。人事経験はあっても、人材業界は未経験ですし、まして50歳以上のシニアを専門に就職の支援をするシニアジョブのサービスは完全に未知の領域でした。

しかし、私は入社前から人事としても「シニアの転職・再就職」について、会社組織にプラスの影響を与える可能性や面白さを感じていました。それは、まさに60代の私の父が、かなりドラマティックな定年後の転職を成し遂げたのを目の当たりにしたためです。

私の父は、求人を出していない会社のトップに直談判してアピールし、未経験の営業職に転職。入社後、なんと数千万円の受注を獲得しました。父のこの転職成功は、人事である私の想定を超えたものであり、もっとシニアの採用・活用のノウハウ研究が必要だと人事としても感じるとともに、シニアが持つ可能性の奥深さを知りました。

2.シニアと若手が混在する「いびつさ」が魅力

冒頭でも述べたように、シニアジョブは、かなり「いびつ」な年齢構成です。シニアの就職を支援し、社名にも「シニア」と入るので年配の社員が多く在籍しているのではないかとよく誤解されますが、実際には多くの社員が20代となり、若手が中心に活躍している会社です。

会社の中堅・中核となる30・40代は少なく、主力の営業部隊では40代がいません。一方、50・60代がインサイドセールスの最前線のテレアポで活躍しており、営業に限れば、20〜30代前半と50・60代で構成されています。

この年齢構成に弱点や課題がないわけではありません。しかし、実際にシニア社員と1on1をしたり、新たなシニアの採用・面接を行ったりすると、若手とシニアの違いの大きさや、シニアが持つ能力を活かしきった時の可能性を感じることができます。

こうしたシニアが持つ可能性については、まだ多くの会社が気づいておらず、それが埋蔵金発掘のようなワクワクを与えてくれるため、人事としてはとても面白いです。

もちろん、シニアジョブでも、まだシニア社員が持つ可能性を引き出しきれているとは言えません。そのため、それを活かすことで、社内の課題解決や組織の強化につながるのではと思いました。特に、比較的人数の多い新卒社員や、入社間もない中途入社社員などにとって、シニア社員の40年前後のキャリア経験に触れることは大きな学びになる予感がありました。

シニアジョブでは、2020年卒から新卒採用を開始し、毎年まとまった人数を採用できています。しかし、離職率の抑制目標は達成できておらず、教育や社内コミュニケーションをもっと充実させる必要がありました。その改善の一手として、シニアが登壇し、自らのキャリアの失敗体験を若手に語る社内セミナーを企画するに至りました。

3.シニアがキャリアの“しくじり”を語る勉強会

このシニア社員のキャリアの失敗事例を参考に、若手社員が自らの長期的なキャリアを描き、そのための姿勢を考えるための社内セミナーは、私がテレビのディレクターだった頃からリスペクトしていた番組『しくじり先生 俺みたいになるな!!』になぞらえ、「しくじりアカデミー」と名付けました。また、シニア社員を含めた交流の場としても設計しました。

[イベント開催時の様子]

こうした催しは初回だったこともあり、内容に多様性を持たせたかったため、シニア社員だけでなく、私も含めた“ちょっと人生の先輩の社員”も登壇することにしました。ちなみに私は冒頭で触れた私の60代の父の転職事例についても含めて発表しました。また、入社から日が浅い新卒社員や中途入社社員の参考になるよう、キャリアの失敗体験だけでなく、転職での失敗体験も発表することにしました。

そうして2023年10月13日、「第1回しくじりアカデミー」を開催。登壇したシニア社員は62歳の元公務員という経歴で、これまで培ったスキルを活かしつつ新たなスキルを早く身につけるため、定年後、再任用を1年で終えて就職活動、シニアジョブのテレホンアポインターとなった人物です。

62歳の社員からは、窓口業務でクレームを発生させてしまった体験から、ヒアリングを十分に行うことの重要性や、私の父が自力で定年後の就職に取り組んだ理由と同様に、60歳を過ぎると応募できる求人が限られ、これまでのスキルやキャリアを活かす仕事を探すことが難しくなるといった、これまでのキャリアや転職活動での“しくじり”と苦労体験が発表されました。

実は「しくじりアカデミー」の場で発表があった内容は、62歳社員が持つ経験のごく一部で、1on1の場では、まだまだ社内外に伝えきれていない経験や考え方などを聞いているため、さらに発信できる機会を創っていきたいと考えています。

4.シニアと若手、シェイクするのは人事の仕事

私が「しくじりアカデミー」を企画した意図は、単にシニアのキャリアでのしくじりを若手が反面教師にするだけではありません。これを機に自らのキャリアを設計したり、支援対象であるシニア求職者のキャリアの背景を考えたり、自分たちの世代とシニアとの考え方の違いを知ることでコミュニケーションに活かしたりすることも含んでいました。

シニアジョブの若手社員は私のこうした意図に、予想以上の反応を示してくれました。質疑応答では、若手社員からシニア社員に対して「定年まで同じ仕事を続けられた原動力は何ですか?」といった、自らのキャリアに接続するための質問が数多く出されました。また、交流の時間にはこれまで以上にシニア社員と積極的にコミュニケーションを取る若手社員の姿が見られました。

今回の参加をきっかけに、自らのキャリアの捉え方や、シニアジョブでの働く環境・働きやすさ、シニアに対する捉え方などが大きく変わったと答える若手社員が多くいました。その後も社内での新たな企画や改善を検討していますが、そこへの若手からの参加や意見出しも、積極性が増しています。

また、今回「しくじりアカデミー」に登壇した62歳の社員が生き生きと発言し、若手社員との交流が進んだ姿を見たためか、様々なプロジェクトへの他のシニア社員からの協力も得やすくなりました。

もとより私は「シニアだから使いづらい」「若手だけでは不十分」といった認識は持っていません。しかし、今回「しくじりアカデミー」を開いたことで確信したことがあります。

それは、いくら経験豊富なシニアと若手が同じ場にいても、放っておいて相乗効果が生まれるわけではないということ。シニアも若手も、仕組みやきっかけが無ければ世代差が“遠慮”を生み、それがやがて“溝”へと拡大してしまうのです。

人生100年時代の今、シニアと若手の間の距離を縮めた上で、シニアの価値を掘り起こして若手に伝える手助けをするのは、組織の成長に不可欠となる、人事やマネジメント層の役割になるのではないでしょうか。

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