2020年に起こったコロナ禍により、働き方は大きく変化しました。テレワークの推進など、多くの企業が新しい働き方に取り組んでいます。
そしてこの背景を受け、大きく変化したのが「営業の手法」です。オフィスに人がいなくなった結果、従来のテレアポや訪問営業といった手法が通用しなくなっていきました。
そのような中、営業リード獲得支援サービス「SalesNow」は、サブスクリプションで発生した毎月の売上が2,000万円を超える実績をあげており、創業三年目のSaasスタートアップでは異例の早期黒字化を成し遂げています。
その要因となったのが、「信頼を軸にした権限委譲」と「カルチャーフィットの徹底」とのこと。具体的にどのような組織づくりに取り組まれているのでしょうか?
今回、「SalesNow」を運営するQuickWork代表 村岡さんに、組織づくりのこだわりについて伺いました。
学生時代にデータ分析の研究員の傍ら、Webサービスを起業。大手IT人材企業レバレジーズで新規事業立ち上げと営業マネージャーに従事し、QuickWorkを共同創業。
営業プロセスを細分化し、適切なアプローチをしていく
ー本日はよろしくお願いします。まずはQuickWorkが手がけている事業について教えてください。
村岡さん:はじめまして。株式会社QuickWork 代表取締役の村岡(@Ats_mrk)です。
私たちは日本全国500万社以上の企業データベースを基盤に、営業戦略・ターゲティングから商談獲得まで一気通貫で支援する新規顧客開拓プラットフォーム「SalesNow」を展開しています。
SalesNowのプラットフォーム内には、「SalesNow Targeting」「SalesNow Form」「SalesNow Letter」「SalesNow LP」「SalesNow Cloud」「SalesNow DB」の、5つのサービスが存在します。
ー創業して三年目で5つもサービスを立ち上げているのは、すごいスピードですね。
村岡さん:「一つ立ち上げるだけでも大変なのに、色んなサービスをよく立ち上げることができますね」「一つの事業に注力したほうがいいんじゃないですか?」と言われたりすることは実際にあります(笑)。
でも実はそれぞれ単体のサービスだと結果を出すのは難しく、シナジーするからこそ大きな効果を発揮しているのです。
「営業手法」は、見込み顧客の分析、リード獲得、商談化、契約獲得、顧客フォローといったプロセスに大きくわけることができ、そこに専門の役割をつけてPDCAをまわすことが大切です。
この辺りのプロセスに関しては、先日発行した100ページを超える内容の『BtoBセールス白書2022』に詳しくまとめていますので、ぜひ読んでください。
ーちょうど創業一年目はコロナ禍の時期だと思うのですが、自社の営業活動はどのようにおこなっていたのですか?
村岡さん:新型コロナウイルス感染拡大の影響により、「人と接触しない」ことを目的として、テレワークを導入する働き方が推進されていきました。
これまで全くそのような働き方を検討したことない、という企業においても例外ではありません。
すると、これまでだとテレアポや訪問営業で商談を進めていたのに「オフィスに人がいないためアポイントが取れない」という状況が生まれていきました。
この状況に対し、なんとかリカバリーしたいと思っても、なかなか打ち手が見つからない現状がありました。
そこで、弊社サービスのAI営業マン『SalesNow Form』のPRの切り口を「非対面、非接触でもアポイントがとることができるリモート営業の新しいツール」という打ち出し方に変えてみたのです。
「SalesNow Formで見込み客を獲得」し、「WEB商談にてクロージング」の2ステップのフローを構築することで、新型コロナウイルスの感染リスクを徹底的に排除した上で、新規契約獲得を目指せる仕組みをつくったのです。
そうしたことで、新型コロナウイルス感染拡大前の2020年1月と比較すると、緊急事態宣言中の4月の利用検討企業は398%増となりました。
どんなに行き詰まっても視点を変えることで、新しい未来が拓けてくるんだな、とそのとき感じました。
村岡さんの採用・組織作りにおけるこだわり
ー「人と会えない」を前提とした営業戦略をとられたんですね。そのような中で事業は急成長を遂げていますが、実際にどのような採用、マネジメントをされているのですか?
村岡さん:COOの粂と二人でスタートしたQuickWorkのメンバーは創業一期目の終わりには30名、今では80名ほどまでに拡大することができました。
初年度から採用に注力して本当に良かったと感じています。
私が大事にしていたことは、それぞれの領域の仕事において、まず最初は自分でおこない、自分たちが最低限の基礎知識を持って、ある程度の判断軸を確立できたら、各領域のプロフェッショナルに委ねるということ。
そうすることで、想像以上の結果が付いてきました。しかしなぜ私たちはそのやり方でうまくいったのか。
その理由として、メンバーへの大胆な権限委譲をした「自律分散型」の組織構築にこだわり抜いたことが挙げられると思っています。
QuickWorkのメンバーのほとんどがパラレルワークで働いています。それぞれの業界でプロフェッショナルとして活躍している人ばかりです。
そういった経験豊富な方に対しては、自己決定して動いてもらう方がパフォーマンスもあがりやすく、責任感の強い組織が構築できると信じてやってきました。
ーなるほど。プロフェッショナルに絞った採用と、その方たちがいちばんパフォーマンスしやすい環境を構築されたのですね。とはいえ権限を大胆に委譲することに不安はなかったのですか?
村岡さん:私たちの展開するSaaSビジネスは特に移り変わりの激しい世界です。テクノロジーやネットワークの発達によって、どんどん新しいサービスが生まれ、その裏では淘汰されていっています。
つまりそれはこれまで企業が築き上げてきたサービスの競合優位性が一瞬で立ち行かなくなることもあるのです。
このような時代においては、事業だけではなく、組織もその変化の兆しを読み取り、対応できるようにならなければいけません。
しかし従来の常識であった縦割り組織では、即座には変化に対応することができません。トップが変化を察知してから、メンバーに落とし込んでいるようではもう遅いのです。
そのリスクの方が私たちは恐ろしかったのです。だからこそQuickWorkでは一人ひとりのプロフェッショナルに権限を委譲し、敏感に感じた変化の兆しを改善または進化するための判断と行動がとれるような自律分散型の組織体制をつくりました。
これはパラレルワークのプロフェッショナルが集う組織だからこそフィットする組織づくりだと思っていますし、実際にパフォーマンスも高いため、このように急成長を遂げてこれたのだと思います。
プロフェッショナルをマネジメントするのはルールよりも、共通の価値観を持つこと
ー採用戦略と組織運営がブレずに実現できているのは素晴らしいですね。他にも組織マネジメントでこだわっている点はありますか?
村岡さん:プロフェッショナルの方たちは、極端な言い方をすると放っておいても仕事ができるため、ついつい任せがちになります。
すると一見うまくいっているように見えても、細かなところまで把握できないため、いずれは全体に歪みが出てくる可能性は否定できません。
また経営としては個々の課題を把握できないということは、組織のマネジメントができないということにもなり、弱い組織にもつながります。
それぞれが自立していてもいいが、目指す方向は同じでなければ私たちの組織は空中分解してしまう。なのでQuickWorkでは創業時からバリューの浸透を大事にしてきました。
村岡さん:プロフェッショナルをマネジメントするのはルールよりも、共通の価値観です。なぜなら彼らは人に言われなくても自身で考え、行動する人たちだから。
だからこそ「こうあろう」という姿やゴールを提示し、そこに至るまではそれぞれが思い描く姿で走れるようにすればいいと思ってこれまでやってきました。
また、バリューと一緒に経営戦略などの情報資産を蓄積し、社内に発信する体制を構築しようと、メモアプリケーションの「notion」も導入しています。
これにより情報蓄積だけでなく、「必要な情報に誰でもアクセスできる」状態を作ることができたため、各部門での情報連携や、入社オンボーディング、経営戦略の共有がスムーズにおこなえて、工数を大幅に削減することができています。
他にも各自の自己紹介、議事録やマニュアル、戦略の共有もおこなっています。
ー様々なところに見える徹底したこだわりが強い組織づくりにつながっているのですね。本日はありがとうございました。