経済産業省のリスキリング施策「リスキリングを通じたキャリアアップ支援事業」とは? |HR NOTE

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経済産業省のリスキリング施策「リスキリングを通じたキャリアアップ支援事業」とは?

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経済産業省は社会人の学び直しから転職までを支援する政府の新制度として、リスキリングを通じたキャリアアップ支援事業の概要を発表しました。 当記事では、経済産業省がリスキリングに注目する理由や経済産業省の今後のリスキリングに対する動向、実施されている補助金・助成金制度を紹介します。企業がリスキリングにより育成できるデジタル・IT人材についても併せて解説します。

1.リスキリングとは

リスキリングとは、英語では「Reskilling」と呼び、経済産業省は下記のように定義しています。

新しい職業に就くために、あるいは、今の職業で必要とされるスキルの大幅な変化に適応するために、必要なスキルを獲得する/させること

出典:リスキリングとは|経済産業省

つまり、リスキリングは業務に活用することを目的に新しい知識やスキルを身に着けるためにおこなう社会人の学び直しのことを指します。

リスキリングと似た用語であるリカレント教育も社会人の学び直しのことを指しますが、リスキリングでは、一般的に現職から離れずに新たなスキルを習得する一方で、リカレント教育では、休職や退職で一度職場を離れて教育機関に戻って学ぶことを前提としています。

さらに、リスキリングは会社が主体となって意欲を持っている従業員に対しての教育環境を整備するのに対し、リカレント教育は個人が主体的におこなう学習であるという点が異なります。

また、リスキリングでは学んだ知識やスキルを、新たな職種や業務で活用することが求められる点が単なる「学び直し」とは異なることを理解しておきましょう。 現在リスキリングは、DX推進における課題の一つであるDX人材不足の対処方法として注目され、経済産業省をはじめとした各省庁がリスキリングの支援や推進に動き出しています。

2.経済産業省がリスキリングに注目する理由

技術の発展やビジネスモデルの変化などに対応し、ビジネスにおける競争力を向上させるために、日本でもDXの推進の必要性が高まっています。

DXを推進するには、既存システムの複雑化やブラックボックス化、業務の見直しによる従業員の負担増加などの課題があります。これらの課題を解決できないと、DXは実現できず、「2025年の崖」と称されるように、2025年以降に1年あたり最大12兆円の経済損失が生じる可能性があります。

DXをスムーズに進めるためにも、優秀なIT人材の確保が必要になります。しかし、少子高齢化による労働人口の減少などの影響を受け、IT人材は不足していく傾向にあります。そのため、自社でIT人材を育成できる仕組みを構築できるように、リスキリングが注目されています。

2-1.社会人の学び直しを支援する制度

「経済産業省関係令和4年度補正予算のポイント」によると、経済を好循環させるために、「人への投資」を強化しようとしていることが理解できます。

リスキリングを通じたキャリアアップ支援事業に753億円の補正予算が組まれており、個人が民間のスペシャリストに相談し、リスキリングから転職までを一貫してサポートする仕組みを構築しようとしています。

経済産業省は、2023年度中に社会人の学び直しから転職までを一体支援する新制度として、リスキリングを通じたキャリアアップ支援事業を開始することを新たに発表しました。

1人あたり平均24万円の助成を想定し、キャリアコンサルタントの資格を持った専門家への相談を元に、民間が運営する講座を最大1年間受講できるよう支援します。これにより3年間で33万人の転職を後押しすることを目指すとしています。

具体的な補助内容を詳しく確認していきましょう。

3.経済産業省|リスキリングを通じたキャリアアップ支援事業費補助金

先述の通りリスキリングを通じたキャリアアップ支援事業は経済産業省が主導する社会人の学び直しから転職までを官民が一体となって支援する取り組みで、この事業の一環として、リスキリングを支援する事業に対して補助金が交付されます。

キャリア相談やリスキリング講座の提供などをおこなっている事業者を事前に補助事業として採択し、採択された事業者に対し対象となる経費を補助する制度となっています。

3-1.補助対象経費の項目と補助率

補助対象項目として認められている項目とそれぞれの補助率は下記の通りです。

採択を受けた支援事業者の対象経費が補助されることはもちろん、学び直しをおこなう個人のリスキリング講座の受講費用等が1人あたり、最大56万円補助されることになります。

補助率は支援を受けた個人が支援によって得られた効果や支援後の実績によって変化します。

経費項目 概要 補助率
人件費 キャリア相談、転職支援、求人開拓等に関連する人件費

1/2以内

ただし、支援を受けた個人が実際に転職をして1年間勤続し賃金の増加を確認できた場合追加で1/5を補助

事業費 謝金 キャリア相談をおこなう社外の専門家に支払う謝金
広告費 本事業実施のために必要な広告費(ただし、外注経費に限る) 7/10以内
システム構築・運営費 本事業実施のために必要なシステム構築費や運営費
リスキリング経費 学び直しの対象者がリスキリングのための講座等の受講料負担を軽減するための費用

講座等提供価格の1/2相当額 ※1

ただし、支援を受けた個人が実際に転職をして1年間勤続している場合は追加で1/5を補助※2

※1 1人あたりの上限40万円

※2 1人あたりの上限16万円

参考:令和4年度補正予算リスキリングを通じたキャリアアップ支援事業費補助金(一次公募)|リスキリングをを通じたキャリアアップ支援事業事務局

一次採択では51社が既に支援事業者として認定されているため、補助対象事業者になることを検討している企業はホームページから公募要領を確認してみましょう。

また、今後転職を検討している支援者に向けた専用ページも公開される予定のため、制度の利用を検討している方は詳細の公開まではどんなスキルを取得し、どのようなキャリアを積みたいのかを明確化しておくことをお勧めします。

4.経済産業省ほか各省庁のリスキリング推進の施策

ここでは、現在すでに経済産業省ほか各省庁がリスキリングを推進するために実施している施策について詳しく紹介します。

経済産業

4-1.経済産業省のリスキリング施策

経済産業省では様々なリスキリング支援をおこなっています。

デジタル人材育成プラットフォーム(マナビDX)

デジタル人材育成プラットフォーム、通称「マナビDX(デラックス)」は、2022年3月に開設されたデジタルの知識や能力を身に着けるための実践的な学習講座のポータルサイトです。

無料で受講でき、知識がない初心者でもわかりやすいコンテンツが会員登録不要で視聴・閲覧できます。

第四次産業革命スキル習得講座認定制度

第四次産業革命スキル習得講座認定制度では、AIやIT技術、データサイエンスなど、今後大きな成長が見込まれる分野の雇用創出を目的として、それらの分野の学びを支援する制度です。

高度な技術やキャリアアップのための教育講座を認定することで学びやスキルを資格化し、社会人の学び直しを促進することを目的としています。

また、DXログが開催した「DX Action Summit 2023~人手不足解消の未来予測会議~」では、経済産業省 商務情報政策局 情報技術利用促進課の金杉氏より、前述のマナビDXをはじめとした経済産業省の施策を活用事例や諸施策についても解説いただきました。

4-2.厚生労働省のリスキリング関連施策

厚生労働省では、リスキリングをはじめ、リカレント教育など「学び直し」の関連施策として、下記のような取り組みをおこなう方針を示しています。

人材育成の強化のため、非正規雇用労働者のキャリアアップ、リカレント教育など生涯にわたる能力発揮の促進、成長分野等への円滑な労働移動の支援などを含め、3年間で4,000億円規模のパッケージを創設し、民間ニーズを反映しつつ、取り組んで行く

出典:リカレント教育の推進に関する厚生労働省の取組について|厚生労働省

令和4年度では、人材開発支援助成金に「事業展開等リスキリング支援コース」を設立し、新規事業の立ち上げに必要な人材などを育成するための取り組みを支援しています。また、教育訓練給付制度について、デジタル関係の講座を拡充し、時代にあわせて労働者の主体的なスキルアップをサポートしています。

令和5年度では、労働者一人ひとりが成長を実感できるように、リスキリングの推進や教育訓練給付の拡充など、企業や個人の支援を強化しようとしています。

4-3.内閣府「総合経済対策」における「人への投資」

政府の物価高克服・経済再生実現のための総合経済対策には、下記のように、「人への投資」を強化する方針が示されています。

デジタル分野等の新たなスキルの獲得と成長分野への円滑な労働移動を同時に進める観点から、3年間に4000億円規模で実施している「人への投資」の施策パッケージを5年間で1兆円へ拡充する

出典:「物価高克服・経済再生実現のための総合経済対策」について|内閣府

政府はデジタル人材について、2026年度末までに230万人を目指して育成しようとしています。また、労働者が主体的にリスキリングに取り組み、キャリア形成を推進する企業への助成率を引き上げるなど、リスキリングへの支援する取り組みを進めています。

5.企業がリスキリングで育成できるIT・デジタル人材

ここでは、企業がリスキリングで育成できるIT・デジタル人材について詳しく紹介します。

5-1.統計知識やデータ分析のスキルを持つ人材

近年では、ビッグデータが注目されており、データを上手く活用することで、経営課題の解決や新しいビジネスチャンスの発見などに役立てることができます。

また、統計知識を学ぶことで、さまざまなデータの解析や解釈方法を習得することが可能です。 統計知識やデータ分析のスキルを持つ「データサイエンティスト」は現状ではまだまだ少なく、外部から確保するのは困難です。そのため、企業内で従業員のリスキリングをおこなうことが有効とされています。

リスキリングで統計知識やデータ分析のスキルを持つ人材を育成することで、データを活用して自社の経営課題を解決に導くなど、企業を成長させることができます。

5-2.プログラミングスキルを持つ人材

ITスキルのなかでも、プログラミングを学ぶことで、コーディングスキルを身に付けることができます。システム開発や運用をおこなうにあたって、ソースコードを記載したり、読み取ったりするスキルが要求される場面もあります。 また、現代ではDXの推進が急務となっており、DXを進めるには、プログラミングなどのITスキルをもった人材が必要です。

しかし、少子高齢化による労働者の減少などにより、今後IT人材は不足することが懸念されています。そのため、プログラマーに関しても、新しく採用するのではなく、自社の従業員を育成するリスキリングが注目されています。

5-3.デザインスキルを持つ人材

デザインスキルと聞いて、ホームページ制作や画像編集など、Webデザインのスキルを思い浮かべる方もいるかもしれません。ここでいうデザインスキルとは、ビジネスやサービス、仕組みをデザインするスキルのことを指します。 デジタル技術の発展やビジネスモデルの変化、働き方の多様化などにより、企業が今後の社会を生き抜くには、変革が求められています。

企業がイノベーションを起こすには、課題を発見したり、新しいアイデアを提案したりするスキルをもった人材が必要になります。 リスキリングでは、自社のニーズにあわせてデザインスキルをもった人材を育成することも可能です。

6.経済産業省などが実施するリスキリング支援の補助金・助成金

経済産業省では、「第四次産業革命スキル習得講座認定制度」を実施しています。経済産業大臣が認定した教育訓練講座のうち、厚生労働省が定義する要件を満たし、専門実践教育訓練として厚生労働大臣が指定した講座については、その受講費用の一部が「専門実践教育訓練給付金」として支給されます。

また、厚生労働省では、「人材開発支援助成金」「働き方改革推進支援助成金」「教育訓練給付制度」など、さまざまな補助金や助成金の制度を設け、企業や個人のリスキリングの支援をおこなっています。 さらに、東京都では中小企業や個人事業主のリスキリングをサポートするために「DXリスキリング助成金」の制度があります。

政府だけではなく、都道府県や各自治体でもリスキリング支援に関する補助金や助成金を実施しているため、リスキリングをおこなうにあたって今一度確認してみることを推奨します。

7.経済産業省などの支援施策を活用して上手にリスキリングを推進しよう!

経済産業省はDXの推進が急務であると考えており、IT人材を育成するためにもリスキリングに注目しています。

また、政府は「人への投資」を5年間で1兆円拡充する方針を示しており、リスキリングへの支援はますます強化されていくことが予想されます。

現状でも、経済産業省や厚生労働省などは、リスキリングに関する支援施策をおこなっており、さまざまな補助金や助成金が用意されています。

自社のリスキリングを推進しようと考えている方は、今後の政府の動向に着目し、リスキリング支援施策を上手く活用しましょう。

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