
こんにちは。株式会社Resilire(レジリア)の伊弉末です。

執筆者伊弉末 大悟氏株式会社Resilire HRマネージャー
新卒でSIerに入社し、インフラ設計・開発業務に従事。その後、人材紹介会社でキャリアコンサルタントを経験し、2018年に株式会社プレイドへ。人事としてプロダクトサイド採用を中心にIPO後までの組織づくりを担う。2022年7月、サプライチェーンリスク管理SaaSを開発・提供する株式会社Resilireへ社員1人目として参画。現在はHRマネージャーとして採用・組織・カルチャーづくりをリードしている。
多くのスタートアップが直面する「30人の壁」や「50人の壁」。事業が軌道に乗り組織が急拡大する一方で、管理業務の増大やカルチャーの希薄化など、組織内部には様々な“軋み”が生まれやすいフェーズです。
サプライチェーンリスク管理サービスを提供する私たち株式会社Resilire(レジリア)もまた、2024年から2年間で正社員数が12名から40名以上と約3倍に急増しました。
本来であれば、バックオフィス部門の増員が急務となるこの局面ですが、私たちは労務担当者の増員を行わず、たった「1名」の体制のまま乗り越えています。その秘訣は、AIを単なる「業務効率化ツール」としてではなく、「人格を持った同僚」としてチームに迎え入れたことにありました。
「労務アシスタントAI」や「お局AI」といったユニークな“仲間”たちが、いかにしてリソース不足を補い、組織の潤滑油となっているのか。人間とAIが協働する、Resilire流の「AI-ready」な組織づくりの裏側をご紹介します。
目次
「単純作業の自動化」以上の価値とは。人間が「人に向き合う」時間を捻出するために、AIをオペレーションの相棒にする
組織が大きくなれば当然、バックオフィスの負荷も増加します。「就労証明書を発行してほしい」「健康診断の予約をしてほしい」「年末調整の書類を出してほしい」といった細かなタスクも、40人分が積み重なれば大きな負荷となります。
私たちは、この状況を担当者の増員で解消するのではなく、「本質的に人間がやるべきこと」と「オペレーションとしてAIがやるべきこと」を切り分け、増えていくタスクをAIと協業することで解決しました。
この取り組みがユニークなのは、AIを「単なる自動化」に利用していない点です。スタートアップとして規模が拡大していくにつれて、統制のために最低限のルールが必要になります。自由な文化に慣れている従業員にとって、ルール化や事務処理の徹底は、これまでとのギャップを感じやすいものです。
そこで、このギャップを緩和するために「誰が言うか」という点に着目しました。人が直接言うと角が立つ指摘も、愛すべきキャラクターが代弁することで、社内の空気を柔らかく保つことができるという発想の元、Resilire独自のAI活用術が生まれたのです。
規律の浸透が招く「心理的摩擦」をどう回避するか。言いにくい指摘を代弁し、人間関係の緩衝材となる「AIキャラクター」の効用
Resilireでは、キャラクター付けされた複数のAIがSlack上で活動しています。
【事例A】督促のプロ?お局AI「総務のレジゑ」

総務歴15年のベテランという設定の「総務のレジゑ」は、「ボサッとしてんじゃないわよ」「締め切り過ぎてるわよ、早くしなさい」といった、厳しい口調が特徴のお局キャラです。主な役割は、月末の勤怠締め切りリマインドなど、全社員に対して「徹底」を求める業務です。
本来、こうした督促業務は、送る側も受け取る側もストレスが溜まるものですが、レジゑというキャラクターを介することで、「レジゑさんに怒られるから出さなきゃ」「レジゑさんが怒ってるよ」といった具合に、督促が一種の「ネタ」として消化されます。レジゑは、組織の摩擦に対する緩衝材としての役割を果たしているのです。
【事例B】時間短縮!労務アシスタントAI「neruneru」

一方で、さらにライトに、楽しく動いてもらいたい場面で活躍するのが、労務アシスタントAI「業務も可愛く効率化」がモットーのYoung&Brightなギャル「neruneru(ねるねる)」です。
「〜だよね、マジで」「提出よろ!」といったギャル語を使いこなし、源泉徴収票の回収といった、心理的ハードルは低いものの「面倒な」事務作業を担当します。スプレッドシート上で依頼対象者にチェックを入れると、GASを経由してneruneruからSlackのダイレクトメッセージが飛ぶようになっています。
事務的な連絡を明るいエンタメに変えることで反応率も向上し、「ギャルからDMが来た!」と社内での会話のきっかけにもなっています。
【事例C】愛され社内キャラクター「れじりん」

社内インナーコミュニケーション強化のために生み出されたのが、火星からやってきたオリジナルキャラクター「れじりん」です。Resilireが手掛けるサプライチェーンリスク管理は、専門用語も多く、一般には分かりづらいビジネス領域です。
セールスやプロダクト開発、コーポレートといった各部門にはプロフェッショナルな精鋭が集まる一方で、組織全体を横断するソフトなコミュニケーションや、共通言語となるような要素が不足していました。チームの垣根を越えて「Resilireの一員である」というアイデンティティを認識する手段のひとつとして「れじりん」は生み出されていました。
れじりんは、代表の津田が語る「人類が火星でも生活できるようにならないといけない」という想いを背景に、会社のロゴを起点に生成AIで発想を広げながら、デザイナーが最終的に形にしたキャラクターです。
れじりんは、イベントの告知や称賛スタンプ、さらには社内限定のTシャツ販売にまで発展しています。また、開発チームではリリース完了のお知らせなどもキャラクターを介することで柔らかいニュアンスとなり、社内の雰囲気を和ませています。
目指すは「AI-ready」な組織づくり。トップダウンの強制ではなく、現場の“遊び心”から自律的なDXが生まれる理由
こうしたAI活用が自然発生的に進むのは、現場から自発的にAI活用が生まれるResilireの「AI-ready」の組織文化があるためです。
社内のNotionにはAI活用に関することが全てまとまっているページが存在し、AIコーディングのガイドやGASを使ったSlack自動化の手順書などが誰でも閲覧・更新できるようになっています。また、Slackの「AIナレッジシェア」チャンネルでは、「このAIツールが便利」といった情報が営業職やエンジニア、バックオフィスなど職種を問わず活発に交換されています。
全社的なAIの取り組みは代表の津田と「AI推進チーム」が主導しています。Slackのチャンネルで新しいAIを使いたいという要望が挙げられれば、利用規約や金額を確認し、問題なければすぐに利用できる環境です。
チームのスタンスは「使ってみないとわからないのでまずは使っていこう。そしていらないものはやめよう」というものです。結果として、Resilireでは以下のようなAIツールが利用できる状態となっています。

もちろん、私たちはAIを無制限に利用するのではなく、社内のAI推進チームを中心に、AIサービス利用時の注意点や社内ガイドラインを定めたうえで運用しています。
具体的には、入力内容が学習に利用されないオプションが提供されており、その設定を会社として契約・管理するワークスペース単位で制御できるツールのみを利用する方針としています。
こうした判断には、AI活用の利便性だけでなく、個人情報や機密情報の取り扱いに対するリスクを適切に見極めてきたシニアメンバーの知見が活かされています。こうした前提を整えることで、安全性を確保しながら、現場での積極的なAI活用を後押ししています。
このような「AI-ready」の組織文化のもと、Resilireではバックオフィスに限らず、全社でAI活用を進めています。例えばデザイン領域では、「全員デザイナー時代」という考え方のもと、非デザイナーがAIを活用し、顧客からのインプットをもとにFigmaで初期のモックアップを作成しています。
Resilireでは、「AIに職を奪われる」という発想ではなく、「AIを積極的に活用していく」という姿勢を、労務・人事にとどまらず全チームが共有しています。こうした前向きな意識を土台にAI活用を進めている点こそが最大の強みと言えるでしょう。
