先日、株式会社レアジョブが主催する人事担当者向けイベントが開催され、その様子をレポートとしてご紹介。
テーマは、『2020年代の「グローバル人材」を考える』。HENNGE社、弁護士ドットコム社を招き、各社のグローバル展開論をお話いただきました。
「グローバルに活躍できる人材を確保したいが、どうすればよいかわからない」「研修を導入する以上、必ず成果を出したい」といったご要望をお持ちの企業様は、ぜひ参考にしてみてください!
目次
1.英語はあくまでツール。グローバルで活躍する視点と行動でビジネスに成果を|レアジョブ 中村 岳氏
1980年東京都出身。2003年東京大学工学部卒業。2005年東京大学大学院情報理工学系研究科卒業後、株式会社NTTドコモ入社しエンジニアとして働くなか、個人と個人をつなぐ新しいビジネスをしたいと考え、2007年にレアジョブ創業。15年より代表取締役社長に就任。
- 英語をより気軽に話せるオンライン英会話事業を展開するために創業
- 英語はあくまでスキルのひとつに過ぎない。グローバルに物事を見る目線やマインドセットこそ大切だ
中村氏:レアジョブでは、グループビジョン“Chances for everyone, everywhere.”に基づき「グローバルに人々が活躍する基盤を作る」ことを目指しています。
その実現に向けてたくさんの課題があるなかで、大勢の方の英語力を上げたいと考え、2007年に当社を創業しました。
フィリピン人講師がオンラインで英会話レッスンを提供するという手法を通じて、より多くの日本人の方が気軽に英語を話し、学べる環境を実現できたと考えています。
一方で、受講者のお声やデータ分析の結果、まだ課題は存在しています。
特に、学習の継続に難しさを感じる方が多く、学習を継続できる・英語力を必ず伸ばせるという点にフォーカスし、サービスの拡張・改善をおこなっています。
ビジネスの観点で見ると、英語力は活躍の可能性を広げる大きなファクターになります。
私自身、自ら「レアジョブ英会話」でレッスンを重ねるなかで、英語力を伸ばしていきました。
他にも、海外のEdTech関連カンファレンスに参加するたびに、英語力が高まるのはもちろん、さまざまな国の文化や価値観を理解し、グローバルで活躍するためのマインドセットもできると感じます。
中村氏:英語は、ビジネスで成果を出すための重要なツールです。同時に、あくまでもビジネススキルのひとつであり、コミュニケーションツールでしかありません。
大切なのは、成果の創出にフォーカスして必要なスキルやマインドを見定め、身につけていくことです。
本日の講演を通して、英語力の獲得に加え、グローバルで活躍するためのマインドについてもぜひ考えてみていただければと思います。
2.生き残りを懸けて社内公用語を英語化。世界中からエンジニアが集う会社に|HENNGE 汾陽 祥太氏
1978年京都府出身。2000年、株式会社HDE(現・HENNGE)に入社。多様な職種を経験後、2014年執行役員に就任。翌年タイへ赴任し、2017年帰国。以後、日本を拠点に社内外のリレーション構築・強化に努める。
- 2013年、他業界の躍進から日本人エンジニアの採用難に直面
- ベトナム人留学生の登場で外国人採用に可能性を見出し、受け入れ体制整備のため、社内公用語の英語化に踏み切る
エンジニア確保のカギは、外国人人材の採用にあった
汾陽氏:2013年、当社はかつてない苦境に立たされていました。
ソーシャルゲーム業界の躍進に伴い、日本人エンジニアの採用が難しくなっただけでなく、他企業への引き抜きも起こり始めたのです。
SaaS認証基盤「HENNGE One」をはじめとするクラウドサービスのセキュリティ関連事業を展開する当社にとって、それは経営危機とも言える厳しい状況でした。
そんな中、一人のベトナム人大学生との出会いがきっかけとなりました。
シンガポールのトップ大学コンピュータサイエンスを専攻している彼は「単位取得のためインターンとして働かせてほしい」と打診してきました。
とりあえず二つ返事で快諾してから、我々は重要なことに気がついたのです。
彼は、日本語が話せるのか――?
答えは、NOでした。
「どうしよう!」と逡巡している間に“英語は話せるが、日本語は話せない”彼は来日し、一緒に働く日々が始まります。
幸い、英語でコミュニケーションできるスタッフがいたので、細かな対応は任せられました。そして、ベトナム人の彼は非常に優秀なエンジニアとして、瞬く間にその実力とプレゼンスを開花させていったのです。
私も、拙い英語ながら彼といろいろ話してみました。そして、エンジニア採用における日本と世界の大きな差を知り、愕然とします。
シンガポールでは、新卒入社のエンジニアの年収は約900万円。GAFAなら、その金額は約1,800万円に跳ね上がります。
一方で、もし彼がベトナムに帰国して就職すると、同じエンジニアでも当時、年収は60万円程度にとどまります。シンガポールを除くと、東南アジア諸国では同様の給与水準だと判明しました。
さらに他のアジア各国の状況を調べていくと、多くの学生が日本のアニメや文化に親しんでおり、来日意向も低くないという事実が見えてきました
我々は「宝の山を見つけた!」と思いました。アジア人の学生を日本に呼び、就職してもらえばよいのですから。
…ところが、彼らは口をそろえて「I can’t speak Japanese」と、言うのです。
だったら、こちらが英語を話せるようになれば…?
そんな発想から、2014年のある日、経営会議にて当社の社長が突然「I won’t speak Japanese anymore!」と言い、3年後の2016年に社内公用語の英語化が決まりました。
TOEICスコアの全社平均は495点…!学習体制の確立と社員の意識変革へ
- 英語公用化の実現へ向け、学習機会の提供や留学サポートなど英語研修制度を手厚く整備
- 外国人スタッフが働きやすい環境づくりと、異なる文化や価値観を受け入れる意識醸成
汾陽氏:実際に社内公用語を英語にするべく、まずは現状把握のためTOEIC L&Rの団体受検をおこないました。
その結果、全社の平均点は495点。この現実を真摯に見つめ、各レベルに合わせた学習方法の制度を整えていきました。
たとえば、後に当社名物となる“セブ島送り”もそのひとつです。第一号は、英語公用化に反対だった開発部長。彼を1カ月間実務から切り離し、フィリピン・セブ島で英語漬けにしたのです。
研修なので、移動費・滞在費・研修中の給与はすべて会社が負担しました。
たった1カ月でマスターできるほど英語習得はたやすくありません。しかし、英語学習やコミュニケーションの楽しさを理解する機会として、コスト負担の価値はある取り組みだと感じています。
他にも、英語学習にかかわる社内制度や研修も整備。結果、2019年上期には全社平均点で760点を超えるまでになりました。社員の約25%が900点オーバーを記録しています。
汾陽氏:また、外国人スタッフが働きやすい環境づくりにも注力しました。
- オールフリーアドレス
- リモートワーク可能
- コミュニケーションランチの実施(2回/月)
- ムスリム向けプレイヤールームの設置
- 年中行事イベントの実施 例)花見、七夕、節分 など
- 社内遠足(希望者)
文化や宗教の違いなどの多様性を受け入れるために、お互いにコミュニケーションを取りながら、新しいカルチャーの構築が重要だと実感しています。
2013年当時、当社のスタッフは全員日本人でした。それが今や、約18カ国50名近くのスタッフが働いています。
海外からのインターンに至っては、2014年には0件だったのが、現在はすでに5000件以上の応募があります。
彼らを受け入れるだけが、Englishnization ではありません。多様性のあるメンバーがともに働いていくプロセスにこそ、真のグローバル人材育成が実現されるのだと思います。
3.ドメスティックな業界・企業こそ、率先して経営陣が英語を学ぶべき|弁護士ドットコム 田上 嘉一氏
1978年神奈川県出身。アンダーソン・毛利・友常法律事務所入所。企業のM&Aや不動産証券化などの案件に従事。2010年、Queen Mary University of Londonに留学。2013年グリー株式会社に入社し、法務や新規事業の立ち上げに携わる。2015年7月、弁護士ドットコム社に入社し2019年6月より現任。
ドメスティックなリーガル業界の一歩先を行くために
- 現在の事業ドメインは日本国内に限られている状態で、社内体制もドメスティック
- 先々を見据えた事業展開では、英語が不可欠になるという予感は否めない
田上氏:我々の運営する「弁護士ドットコム」は、日本最大級の法律相談サイトです。
また、当社は「クラウドサイン」という電子契約事業も展開しています。従来は紙での契約締結が主流でしたが、「クラウドサイン」ではその手間を軽減できるのが特徴です。
しかし、現状これらの事業ドメインは日本国内に限定的です。外国人スタッフが数名在籍していますが、彼らは日本語が堪能なので英語がマストではない。
とはいえ、何もしないでいて良いわけでは決してありません。
たとえば昨今はリーガルテックの取り組みが活発化しており、私自身、海外イベントに誘致されて講演を行うこともあります。そうなれば必ず英語が必要となり、個人的にはビジネスと英語を切り離せなくなってきました。
加えて、株主のなかには海外の投資家がいます。株式購入比率も増加傾向にあり、事業モデルやプラン、リターンの説明を英語で行う機会は確実に増えていくでしょう。
16週間の短期集中で英語学習をやりきって未来のさらなるグローバル展開を見据える
- 苦手意識の強かったディスカッションや対話に欠かせない語彙力や表現力の幅を広げたかった
- 16週間のカリキュラムを着実に実施 厳しいながらも大きな達成感を得る
田上氏:振り返れば30歳の頃、ロースクールへ通うために1年間ロンドンへ留学しました。
その前から英語の契約書を扱ったりしていたものの、読み書きに比べて聴く・話すには苦手意識が強かったです。
心のどこかで「1年間も海外で生活すれば、英語もできるようになるだろう」との想いもありましたが、実際にはそこまで習熟度は高まりませんでした。
また、英語のプレゼンテーションは、実は難易度が高くないんです。しかし、パネルディスカッションは別物。
日本語ならば深い議論や討論ができることも、英語では言語が足かせとなる現実に何度も直面しました。イベント登壇にネガティブになり、英語を話すこと自体が心の重荷になるのを感じていました。
そんな状況を脱するべく受講したのが、レアジョブの「スマートメソッド®コース」でした。
自分の課題に照らし合わせると、16週間で確実に成果が出ること・ビジネスに特化していることの2点は大きなメリットでした。
私の場合は、ビジネスシーンで法律や社会課題に関する議論ができるようになりたかったので、「スマートメソッド®コース」は自分に最適なプログラムだと感じたのです。
このプログラムは1週間を1単位とし、ホームワークとレッスンを繰り返すプログラムです。1日1時間確保するのは、正直に言って大変でした。
ただ、今回は週末のホームワーク提出が必須。やらざるを得ない状況のおかげで、毎回時間に追われながらもやりきれたと思っています。
時には、妻の実家で宴会のさなかに抜け出してレッスンを受講したことも。継続の難しさを痛感すると同時に、やりきることの大切さも実感する機会となりました。
田上氏:「スマートメソッド®コース」を終えてから改めて感じたのが、英語で話す“型”の重要性。
そして、16週間の反復練習は、私に新たな表現の型を授けてくれていました。型が豊かにあれば、掛け合わせ次第で表現力は無限に広がります。今回の受講でその引き出しが増え、語彙や表現に厚みを増せたと思います。
リーガルテック業界は世界的に活況です。グローバル展開が必要になる時が遠からず訪れるでしょう。
また、事業を海外に出すだけでなく、日本で働く外国人労働者向けにサービスを推進するなら、そこにもやはりグローバル展開という視点や発想が欠かせません。
現場で必要な人材が英語を使えればいい。グローバル人材が必要なら、採用すればいい。
そんな考え方で生き残っていける時代は過ぎ去りました。むしろ、ドメスティックな業界・企業ほど、経営陣が意識をグローバルに向け、率先垂範で英語を学ぶべきです。
グローバル目線の意識と英語力を磨きあげるうえで、「スマートメソッド®コース」は最適なサービスではないかと思います。
4.「グローバル人材」の獲得に向けて、量・質の課題をいかにクリアするか|レアジョブ 坪内 俊一氏
1981年東京都出身。2007年、Boston Consulting Group入社。国内外のトップ企業への経営戦略立案・実行を支援。2014年にはLondon Business SchoolにてMBAを取得。その後、エムスリーを経て2019年レアジョブに入社。経営企画・広報を管掌し、グローバルリーダー育成事業の事業開発も担当。
企業のグローバル展開に対して、人材は量も質も不足している
- 人口減少社会の日本で、2030年には約640万人の労働者が不足すると見込まれる
- 独自の慣習や内向き思考の強い日本企業は、世界の企業と人材獲得で競ううえでの競争力が低い
坪内氏:現在は多くの企業が経営課題に“人材の強化”を挙げています。採用・育成・リテインなどのすべて最重要アジェンダ。当社で実施した動向調査の結果からも、その事実は明らかです。
ある人材関連企業の調査では、2030年には日本の労働需要が7,073万人なのに対し、労働供給は6,429万人にとどまるという試算が出ています。
外国人労働者の労働力に頼らざるを得ないにもかかわらず、その頃にはASEAN諸国でも人口構成の変化が経済にマイナス作用する「人口オーナス期」に入ると見込まれます。
つまり、日本がグローバル人材確保の“量的な課題”をクリアするには、外国人労働者にとって働きやすい環境や体制を整えていかなければならないのです。
スイスのビジネススクール・IMDでは、毎年「世界競争力ランキング」を発表しています。実は、2019年の同ランキングにおいて、日本は「ビジネス効率性」の項目で過去最低ランクを更新してしまいました。
背景には生産性低下や変化への適応性の低さ、管理職の国際経験が少なく層も薄いなどの理由が挙げられます。
グローバル人材の“質的な課題”を改善するには、経営陣と人事担当者の本気度が不可欠です。そして、ローカル人材をグローバルタレントに引き上げることも、質的課題を解決する方策のひとつです。
人材を引き上げる英語研修 課題は指標の定義と成果の可視化
- 多くの企業が英語研修を導入しているものの、必要な人材数や適切な成果指標を可視化できていない
- レアジョブはグローバルに活躍するためのスキル向上にもコミットするサービスを提供している
坪内氏:英語力は「グローバル人材」に不可欠なスキルのひとつですが、動向調査の結果から、英語研修にひそむ問題点がうきぼりになりました。
まず、多くの企業が“英語研修の成果=英会話力の向上”と設定している一方で、英語能力の指標はTOEIC L&Rスコアなどが採用しています。
スピーキング力を正確に測れないので、英語研修のPDCAを回せず、「グローバル人材」の開発・育成ができない…という問題に直面するのです。
また、多くの研修担当者は「英会話力の向上には本人の学習意欲が重要だ」と考えている一方で「対象者の積極的な研修参加が見込めない」といった悩みも多い。
研修対象者への動機付けおよび継続的な学習を促す伴走体制が求められています。
こうした現状から、レアジョブでは学習効率と学習量という両方の観点から英会話力を効果的かつ効率的に向上させるサービスが必要だと考えました。それで開発したのが「スマートメソッド®コース」です。
5.質疑応答
Q:事業におけるレアジョブの他社優位性・独自性を教えてください。
A:坪内氏
まず、「オンライン英会話サービスを提供し、ユーザーの英会話力を高める」という点で、他社との差異はありません。しかし、提供する価値・フォーカスするポイントは、明確に違いがあります。
当社では“英語が話せる”ことを重視し、英語習得という結果・成果を求めるserious learnerを対象としているのが特徴です。
また、2019年にキャプラン社と研修プログラムの共同提案・開発事業を発表。こうした新たな価値提供も、当社の独自性として挙げられます。
Q:文化的・事業的にドメスティックな企業では、英語の必要性を理解していても、なかなか全社の機運が上がりません。
A:汾陽氏
日本で働く外国人人材の姿を知るのは、良い刺激になるのではないでしょうか。たとえば、とあるマレーシア人のエンジニア。
彼はマレー語・中国語・英語と3カ国に堪能で、当然エンジニアとしても優秀でした。人材としての価値を同じ22歳の自分と比較したら、市場は確実に彼を選ぶでしょう。
優れた外国人人材を具体的に知ると、危機感を高められると思います。
A:田上氏
当社もドメスティックな業界です。ただ、電子契約事業の「クラウドサイン」などは海外展開も視野に入れています。
どんなサービスも、商品も、さらに言えばユーザーも、変化しないものはありません。
たとえば“変化に対応できることを評価する”といった制度を導入するのも、意識改革につながる一手となるかもしれません。
Q:外国人スタッフを受け入れるための環境整備としての施策を知りたいです。
A:汾陽氏
最初に「グローバルプロジェクトチーム」を立ち上げ、リアルな意見に基づく施策を展開してもらいました。たとえば、社内の自販機やアメニティなどのすべてにラベルプリンターで英語表記を貼りました。
一方、外国人スタッフ向けには日本語講師による講義を実施。当社では英語力が一定レベルに達したスタッフにバイリンガル手当を設けていますが、外国人スタッフも日本語レベルに応じて同様の手当が受けられるようにしています。
【セミナー概要】
- テーマ:2020年代の「グローバル人材」を考える~なぜ、あの企業は変わることができたのか?生き残るために変革を主導したマネジメントが語る、真のグローバル化とは?
- 主催:株式会社レアジョブ
- サービス:オンライン英会話サービス「レアジョブ英会話」「スマートメソッド®コース」、グローバルリーダー育成事業 など
- 開催日時:2020年2月26日(水)13:00~
- 開催場所:六本木アカデミーヒルズ