過剰適応とは、無理をして周囲や環境に合わせることです。自分の希望があっても、他人の意見を優先したり行動したりすることです。
過度に周囲の期待に応えようとするあまり、精神と身体に大きな負担がかかります。過剰適応によって、心身が疲弊しないように対策が必要です。
「しかし過剰適応に対してどのような対策をおこなえばいいかわからない」と、お悩みの方もいるでしょう。
そこで本記事では、過剰適応の概要と陥る原因について解説します。なりやすい人の特徴と対処法も紹介するので、過剰適応について深く理解したい方は、ぜひ最後までお読みください。
1. 過剰適応とは
過剰適応とは、他人や自身の置かれた環境に合わせようとして、自分の行動や考えを押さえつけている状態を指します。
過剰適応の陥った状態が続くと、うつ病やパニック障害などの精神的な病にかかる可能性があるため、注意が必要です。例えば、以下が過剰適応の状態として挙げられます。
- 同僚や上司に迷惑をかけないように常に気を使っている
- 嫌われるのが怖くて無理な仕事でも引き受ける
- 自分の意見よりも他人の意見を優先する
人から良く思われたり認められたりしたい欲求が強い人は、過剰適応に当てはまる可能性が高いです。自分のことよりも、他人の行動や考え方を優先することを反射的に実行するでしょう。
自分の都合よりも周りを優先させるような、無理しながらも頑張っている状況が続くと、心身が疲弊する傾向にあります。
2. 過剰適応に陥る原因2選
過剰適応に陥る原因は以下の2つです。
- 自己肯定感の低下
- 生活環境の影響
過剰適応に陥る原因を把握して、従業員への接し方を考える必要があります。
2-1. 自己肯定感の低下
自己肯定感の低下は、過剰適応に陥る原因の一つです。自己肯定感が低い人は、他人からの承認や評価を強く求める傾向にあるためです。
例えば、自分の意見を表に出そうとしても「意見して否定されるのが怖い」と、ネガティブに考えます。自分の希望を通さず、人に合わせる選択をしがちです。
自分の承認欲求を満たすために、期待以上に応えようとする人は、過剰適応に当てはまるといえます。
2-2. 生活環境の影響
過剰適応に陥る原因として、生活環境の影響が挙げられます。例えば子どもの頃に愛情をもって育てられた人は、過剰適応に陥りやすいでしょう。
愛情をもらった分、親の期待に応えたい気持ちが強くなるためです。一方で厳しく育てられた場合も過剰適応になりやすい傾向にあります。自分がしたいことではなく、親に怒られることを回避するための行動になるためです。
過ごしてきた生活環境が過剰適応の原因になっているケースも珍しくありません。
3. 過剰適応になりやすい人の特徴
自分の意見を発言するのが苦手で目立たない人は、過剰適応になりやすいといえます。過剰適応に該当する人は、自分の希望や考えていることがあっても、発言せず我慢する傾向にあるためです。
例えば、会社内で希望休のアンケートを実施したとします。もしほかの従業員と希望休が被ると、過剰適応の人は自分から譲る行動を取るでしょう。
一度であれば問題ありませんが、毎月のように「自分が我慢すれば解決する」と耐えることで、強いストレスを受ける傾向にあります。
また周りから「本当にいいの?」と声をかけられても「大丈夫です」と答えて、周囲に無理していることを悟られないようにするでしょう。
周囲は「本人が大丈夫と言っているなら」と考えるため、我慢していることに気づいてもらえないケースが多いです。
4. 過剰適応がもたらす3つの悪影響
過剰適応がもたらす悪影響は以下のとおりです。
- 人間関係の悪化
- 精神的な病気の発症
- 身体的な疲労の発生
過剰適応は、心身に悪影響を引き起こす可能性があります。
4-1. 人間関係の悪化
過剰適応の状況が続くと、人間関係の悪化を引き起こす可能性があります。無理な仕事をお願いされることが増えて、仕事や人と関わることが嫌になるためです。
例えば、無理して頑張ったことを周囲が認めてくれなかった場合「自分はこんなに頑張ったのに」と、イライラが募ります。イライラが表情や行動に出ると、ほかの従業員からの印象が悪くなるでしょう。
断れない自分にも嫌気が差して、自分を嫌いになる可能性があります。
過剰適応によって職場の上司や従業員とのコミュニケーションを避けるようになり、人間関係の悪化につながるでしょう。
4-2. 精神的な病気の発症
過剰適応によって、精神的な病気の発症を招く可能性が高いです。例えば、以下のような精神的な病気が挙げられます。
- うつ病
- 適応障害
- パニック障害
過剰適応は、無理をして周囲を合わせている状況です。必要以上に周りの期待に応えようとするため、ストレスが大きくかかります。
自分の意見や考えを我慢する状況が続くと、精神的な病気を発症する可能性が高いです。
4-3. 身体的な不調の発生
身体的な不調が発生することも、過剰適応が引き起こす悪影響の一つです。例えば、以下のような身体的な不調が発生する可能性があります。
- 睡眠不足
- 腹痛
- 下痢
- 頭痛
- めまい
- 吐き気
- 過食
精神的なストレスから、体にも影響が出る場合があります。身体的な不調が悪化すると、入院や休職しなければならないケースも珍しくありません。
過剰適応のストレスで、身体的な不調が発生するケースがあることを留意しておきましょう。
5. 過剰適応への3つの対処法
過剰適応への対処法は、以下の3つです。
- 定期的にカウンセリングを実施する
- 仕事の上限を設ける
- アサーションを取り入れる
過剰適応に陥らせないために、対策を実施する必要があります。
5-1. 定期的にカウンセリングを実施する
過剰適応に対処するためには、定期的にカウンセリングを実施することが大切です。過剰適応になる人は、会社だけでなくこれまで過ごしてきた生活環境が影響していることも珍しくありません。
定期的にカウンセリングを実施することで、従業員が過剰適応に該当するどうか早めに判断できます。
過剰適応の兆候が出ていれば、仕事を減らしたり休みを取らせたりなどの対策が可能です。カウンセリングをする際は1対1で話すなど、従業員が話しやすい環境を作ることが大切です。
5-2. 仕事の上限を設ける
過剰適応への対処法の一つは、仕事の上限を設けることです。上限を設ければ、過剰適応の人が無理して仕事を引き受けることが減ります。
過剰適応の人は頼まれたら断れないため、仕事がどんどん増えていく傾向が強いです。残業したり仕事を持ち帰ったりして、無理してでも仕事を終わらせるでしょう。
しかし、精神や身体に大きな負荷がかかっているのも実情です。会社内で「抱える仕事は3件まで」などの上限を設けることで、過剰適応の人が頼みを断りやすくなるでしょう。
5-3. アサーションを取り入れる
アサーションを取り入れることは、過剰適応への対処法の一つです。アサーションとは、自分も相手も大切にした自己表現やコミュニケーション手法のことを指します。
アサーションでは、自分の意見を率直に発言し、相手の発言に対して否定したり強い口調で反論したりしません。もし双方の意見が違っても、互いの意見を尊重しながら話し合いをおこないます。
アサーションをおこなうことで、自分の意見をはっきりと伝える訓練が可能です。また意見を否定されないため、率直な気持ちを伝えられます。
会社では、研修や面談での会話などで取り入れてみてください。
6. 過剰適応に陥らせない環境づくりをしよう
過剰適応に当てはまる人は、精神的な病気を発症したり身体的な不調が発生したりする可能性があります。
過剰適応の人は、周囲に無理していることを悟られないようにするため、過剰適応に気づきにくいのが実情です。最悪の場合、仕事を長期的に休まざる終えなくなるケースも珍しくありません。
定期的なカウンセリングや仕事の上限を設けるなど、過剰適応に陥らせないための環境づくりをおこないましょう。