無駄を見つけ、解決する。「スマートワークスタイル」が実現する本当の “働き方改革”とは|NTTコミュニケーションズ川田 |HR NOTE

無駄を見つけ、解決する。「スマートワークスタイル」が実現する本当の “働き方改革”とは|NTTコミュニケーションズ川田 |HR NOTE

無駄を見つけ、解決する。「スマートワークスタイル」が実現する本当の “働き方改革”とは|NTTコミュニケーションズ川田

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※本記事は、NTTコミュニケーションズ株式会社の川田英司さんより寄稿いただいた記事を掲載しております。

「新型コロナウイルスの流行により、2年分のデジタル変革が2ヶ月でやってきた」とマイクロソフトのサティア・ナデラCEOが言うほど、新型コロナウイルスの流行は日本の企業に大きな変化をもたらしました。

2022年1月、ヤフーは同年4月から、日本国内であれば好きな場所で働ける「どこでもオフィス」制度を拡充すると発表。また、ANAホールディングスもパイロットを除く社員を対象に、グループ会社に転籍することで勤務地を選べる「ワークプレイス選択制度」を導入するなど、社員の働き方を抜本から見直し、制度ごと変えていく企業が増えているのです

今回、HR NOTEでは2022年度からリモートワーク中心の働き方を前提として、段階的に転勤や単身赴任を減らしていくことを発表したNTTグループのグループ会社であり、すでに20名の社員がトライアルとして北海道や大分県など首都圏以外で勤務しているNTTコミュニケーションズ株式会社にインタビューを実施。

多くの社員や管理者・経営者が抱えている「働き方」に関する課題について、また、それらを解決するために誕生・推奨されている「スマートワークスタイル」という考え方について、NTTコミュニケーションズのスマートワークスタイル推進室室長の川田さんにお話を伺いました。

 

川田 英司|NTTコミュニケーションズ株式会社 スマートワークスタイル推進室長

日本初となるアカウント・アグリゲーションサービス「Agurippa」や、ネット家計簿サービス「kakeibon(旧OCN家計簿)」のプロダクトマネージャーを務める。その経験を活かし、2018年から「働き方改革・DXサービスの開発」に従事。その後、2019年設立の「スマートワークスタイル推進室」初代室長に就任。「全ての働く人が最適な働き方を選び活躍の実現」を目標に掲げ、社会課題の解決を含めたDXソリューションのサービス化を日々模索している。

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2023年は一部企業を対象に人的資本開示が義務化されたほか、HR関連での法改正に動きが見られました。
2024年では新たな制度の適用や既存のルールの変更・拡大がおこなわれます。
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1. コロナ前から進めていたNTTコミュニケーションズのリモートワーク推進

-本日は、お時間をいただきありがとうございます。まずは、働き方改革やテレワーク・リモートワークの推進に当たって、現在の企業が抱えている課題について教えてください。

川田さん2021年の夏に緊急事態宣言が発令された際、東京都内では一時的に約65.0%の企業がテレワークを導入していました。

しかし、宣言が解除されると、テレワークを取りやめる企業も出てきて、当時SNS上では「強制出社」「満員電車」といった言葉がニュースにもなっていました。

最新のデータを見ると、2021年11月時点のテレワーク実施率は約57.2%とのことです。もしかすると、2022年1月に発令されたまん延防止等重点措置の影響で、また少し数字の変動もあるかもしれません。

このように、テレワーク・リモートワークというもの自体は浸透しましたが、実際に企業が制度として運用する際の課題が大きく散見されている状況かと思います。

-ありがとうございます。NTTコミュニケーションズでは、新型コロナウイルスが流行する以前からテレワーク・リモートワークを推奨していたとお聞きしました。

川田さんはい。実は、私たちのリモートワークの歴史は昨日今日で始まったものではなく、20年近い時間をかけて培ってきたものなのです。

リモートワークのさきがけとなる「eワーク」が導入されたのは2002年のことで、初めはトライアルとして20人以下の少人数から導入を進めていったと聞いています。

そして、そこから、育児や介護をしている人に対象を広めたり、セキュリティシステムをアップデートしたりと、試行錯誤しながら徐々に対象範囲を拡大。

新型コロナウイルスが流行しはじめた2020年2月に、ようやく全社を対象としたリモートワークに移行することとなり、現在も継続しています。

ー現在、どれくらいの従業員の方がテレワークを実施しているのでしょうか。

現在、実施率は約8割を保っているような状況となります。

実施率を保つために、帳票類の電子化、1on1の推進、リモートワーク手当の創設(通勤費実費化)、リモートワークネイティブな働き方をまとめたTIPS集「リモートワークハンドブック」や、新メンバーが素早く組織やチームに馴染み、成果を出せるように受け入れるためのガイド「オンボーディングハンドブックの整備」などがあります。

2. DXやリモートワークの継続は、“働き方改革”の成功の本質ではない

ーNTTコミュニケーションズさんのような大企業が20年かけて成し遂げてきた働き方改革を、一般的な企業はどのように進めていけば良いのでしょうか?

川田さん企業によってそれぞれ事情は異なりますから、私たちのやり方をそのままマネする必要はありません。

ただし、多くの企業がリモートワークを導入したり、残業時間を減らしたり、ICTツールを導入することでいわゆる“働き方改革”が出来ていると思ってしまっているのではないかということは危惧しています

リモートワークやICTツールを導入しただけでは、本質的なことは変わりません。話題になった「強制出社」という言葉が表すように、経営者の思うベストと、社員の幸せが同じ方向を向いていない状態では、働き方改革ができたとは言えません

そこで、私たちはこのような状態にならないようにするためのモデルとして、「スマートワークスタイル」という考え方を定義し推奨しています。

-「スマートワークスタイル」とはどのようなものでしょうか?

川田さん「スマートワークスタイル」を一言でいうと、「ICTを活用した時間・場所にとらわれない柔軟な働き方」を実践することです。

将来予測が困難な状況下、企業が生き残っていくためには、社員一人ひとりが自ら考え、自律的に動ける組織になることが必要です。

そのため、テレワークやICTツールを導入するだけではなく、社員の働き方の自由度と、生産性を向上させるために、日々の業務の中で無駄を見つけ、それらを解決するために制度作りや見直しも並行して行う必要があります。

分かりやすい例でいうと通勤時間の無駄ですね。通勤時間の無駄をなくすために、テレワークを導入する。導入するだけではなく、定着の障壁は何か課題を都度見つけ解決していきながら、PDCAサイクルを回していきます。

また、日々の経費や交通費の精算にも無駄が潜んでいます。社員が立て替えた数百円から数千円の経費を精算するためには、本人の申請→管理者の承認→経費精算担当のチェック→口座振込作業など、膨大な労力がかかっています。

矢野経済研究所が2022年2月28日に発表した、国内における経費精算システム製品の市場規模予想によると、2020年度の154億4,500万円に比べ、2022年度は311億2,500万円と2倍近くの市場規模となるそうです。

引用:IT leaders – 2021年度の経費精算市場は219億3000万円で前年度比42.0%増―矢野経済研究所

経費精算の例を取って見ても、それだけ多くの企業が課題と認識しており、これからICT活用が進んでいく、まさに今がスマートワークスタイル導入に向けた過渡期と言えるのではないでしょうか。

3. 企業が率先して“無駄”を見つけ、省くために制度を見直していく

川田さんこのように、少しずつ無駄や課題を見つけ解決するPDCAサイクルを回すことができれば、急激にではないかもしれませんが、どんな企業でも働き方改革は進んでいくと考えています。

また、私たちとしては、今まで培ってきた技術や考え方をより多くの皆さんに共有し、日本で働く方々の労働環境を改善し、業務効率化、生産性の向上を図るため、201910月に「スマートワークスタイル推進室」を設置しました。

スマートワークスタイル推進室では、「全ての働く人が、最適な働き方を選び、活躍できる世界(スマートワールド)」の実現を目標に、スマートワークスタイルの推進や、社内業務プロセス変革、生産性・働きやすさの向上を支援するサービスを提供しており、開発されたのが、経費精算システムSmartGo® Stapleです。

「SmartGo® Staple」を一言で説明すると、モバイル Suicaと連携した交通費申請・清算を自動化する機能と、法人用プリペイドカード (クレジット機能を付帯)を合体させたサービスです。

モバイル Suicaの利用履歴と連動させることで、どのエリアから利用したのか、自動的に連携されるため社員は1か月に一度の経費精算のタイミングで、利用履歴とカレンダーとを照らし合わせにらめっこする必要はありません

また、社員の交通費申請を承認する上司も、システム上で登録してあった使用用途から外れているところだけを確認すればよいので、管理職のチェック業務の負担も少なくすることができます。

さらに、経費精算も、あらかじめ決まった金額がクレジット機能付きのプリペイドカードへ入金されるという仕組みになっているため、社員は費用を建て替える必要がなくなります。同時に、経理担当者も経費を振り込む必要がなくなるのです。

さらに、社員が経費を何に使用したかはAIが自動で判別するため、最終的な上司の判断はAIがはじき出した一部のみ確認すればいい。社員・経理担当・管理者三方の作業時間を短縮し、無駄を省くことが出来るサービスです。

他にも、スマートワークスタイル推進室が「無駄を省く」という視点で開発したサービスはあるのでしょうか?

川田さん意外に思われるかもしれませんが、社員証ストラップによる本人確認も、無駄の一つであると私たちは考えています。紛失のリスクを伴うだけでなく、身に着けたまま社員が休憩に入ることで個人情報が侵されるリスクがあります。

また、カバンの中で迷子になってしまっている社員証を数分かけて探す間に、自分の後ろに長蛇の列ができてしまっている、なんていうこともあると思います。

そこで我々が開発したのが「Smart Me®」です。Smart Me®は、社員証をデジタル化し物理的な社員証カードを無くすことで、スマホと連動した非接触の入退館が出来るサービスです。

万が一紛失してしまった場合でも、素早くデータを削除したり、入退館機能を停止させたりすることができるため、セキュリティ上のリスクを低減させることができます。

社員数の多い会社ですと、社員一人一人にIC機能付き社員証を発行するためにはコストもかかるので、破損や紛失に備えた管理コストも含めるとコストの削減が期待できます。

万が一なくしてしまったときでも、すばやくデータを消すことができますから、セキュリティ面でも優秀です。

4. “性善説”で考えることが、社員の働き方の自由度と、生産性を向上させる

-日常に潜む無駄を見つける際に気を付けているポイントはありますか?

川田さんそれは「性善説で考える」ということです。

無駄が発生する問題の元は「性悪説」でルールがつくられていることにあると考えています。ビジネスの場では、ルールを重視するあまり、利便性は二の次になってしまうことがありますね。

さらに、一度不正が発覚すると、その再発防止策として手間のかかるプロセスを追加したり、社内のバックエンド側で、複数人の担当者・管理者が不正を見落とさないようチェックを重ねたりすることになります。

0.01%の不正への対策のために、99.99%の社員の膨大な時間を無駄にするよりも、性善説で考え運用し、有事の際にはシステムでフォローできるところがないか見直しブラッシュアップしていくことが大切です。

ー最後に、読者の皆様にメッセージをお願いします。

川田さんいつどこでどのように働くのか自分で決めることが生産性向上のカギになり、それが結果的に企業のイノベーション創出の土台になります。

この考え方のもと、私たちスマートワークスタイル推進室では、柔軟な働き方を支援するための様々な施策を実施してきました。

社員が自ら働き方を選べて、自分で考え行動ができるということは、働き方の自由度が高まり本業の業務に打ち込める環境ができます。そうすることで社員のパフォーマンスも向上するのです。

今後も一歩ずつではありますが、スマートワークスタイルの推進に向けて活動していきたいと思います。

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