制度を変えなくてもできる「女性支援の仕組み」 ― 小さな工夫が「働きやすさ」を変える ― |HR NOTE

制度を変えなくてもできる「女性支援の仕組み」 ― 小さな工夫が「働きやすさ」を変える ― |HR NOTE

制度を変えなくてもできる「女性支援の仕組み」 ― 小さな工夫が「働きやすさ」を変える ―

  • 組織
  • ダイバーシティ&インクルージョン

※本記事は、mederi株式会社様より寄稿いただいた内容を掲載しております。

働く女性の多くが抱える“見えない不調”は、いまや企業の生産性や人材定着に大きな影響を与える社会課題となっています。にもかかわらず、日本では女性の健康課題は長く「個人の問題」として扱われ、組織としての対策は十分とはいえません。

本連載ではこれまで、女性の健康課題の現状や、企業経営に与えるインパクトについて解説してきました。 しかし、経営者や人事担当者の方から多く聞かれるのが、 「重要性は理解したが、何から始めればいいのかわからない」 「制度改定や予算確保のハードルが高い」という声です。

第3回となる本稿では、大掛かりな制度変更を伴わず、現場ですぐに実践できる女性支援の仕組みに焦点を当てます。ポイントは、「低コスト」「高い再現性」「今日から始められること」。小さな工夫の積み重ねが、社員の心理的安全性を高め、結果として組織全体の生産性と信頼を底上げします。

寄稿者坂梨 亜里咲mederi株式会社 代表取締役

明治大学卒業後、大手ファッション通販サイト及びECコンサルティング会社にてマーケティング及びECオペレーションを担当。2014年より女性向けwebメディアのディレクター、COO、代表取締役を経験した後に、自らの不妊治療経験からmederi株式会社を起業。オンラインピル診療サービス「mederi Pill(メデリピル)」、企業向け健康支援・福利厚生サービス「mederi for biz(メデリフォービズ)」を展開。

会議に「休憩5分」を入れるだけで変わる

多くの職場では、休憩は今なお「余裕があれば取るもの」「時間に余白があれば挟むもの」と捉えられがちです。しかし本来、休憩は業務効率を下げるものではなく、業務を成立させるために不可欠な時間です。

特に、生理痛やPMS、更年期症状など、体調に波がある人にとっては、「一度立ち上がる」「体を伸ばす」「トイレに行く」といった短い休憩があるかどうかで、その後の集中力や判断力は大きく変わるでしょう。

にもかかわらず、コロナ禍を経てWeb会議が当たり前になったことで、休憩時間はさらに“見えにくく、削られやすいもの”になりました。

移動時間が不要になり、画面を切り替えるだけで次の会議に参加できる。その結果、会議と会議の間に本来必要な 「体を動かす時間」「頭を切り替える時間」「体調を立て直す時間」 が考慮されないまま、スケジュールが詰め込まれるケースが増えています。

実際、Web会議が続くと、 「次の会議まであと1分」 「トイレに立つと遅れてしまう」といった状況が頻発します。

これは個人の段取りの問題ではなく、時間設計そのものの問題です。そこで有効なのが、5分・10分の休憩時間を、自分のカレンダーにあらかじめブロックしておくことです。
 たとえば、

  • 会議と会議の間に5分
  • 連続して会議が入る場合は10分

といった休憩枠を、“予定として”あらかじめ入れておく。これは、自分を甘やかす行為ではありません。長時間、安定してパフォーマンスを発揮し続けるためのセルフマネジメントです。

さらに重要なのは、管理職やリーダー層がこの設計を実践することです。上司のカレンダーが休憩なしで埋め尽くされていれば、部下は「自分も詰め込まなければならない」と無意識に感じます。

一方で、リーダー自身が休憩時間をブロックし、余白を持った予定を組んでいれば、「休憩を取っていい」 「詰め込みすぎなくていい」というメッセージが、言葉ではなく行動として伝わります。

加えて、会議の主催者側が“余白をつくる責任”を持つことも欠かせません。

  • 開始時間を5分遅らせる
  • 終了時間を10分早める

それだけで、参加者の身体的・心理的な負担は大きく変わります。

これらはすべて、特定の誰かに配慮するための特別対応ではありません。Web会議が前提となった時代における、合理的な働き方の再設計です。

結果として、

  • 集中力の回復
  • 発言の質の向上
  • 会議後の疲労感の軽減

につながり、組織全体の生産性を底上げするでしょう。

生理用品の常備化で「言わなくても安心」を実現

「急に生理が来てしまった」
「ストックを切らしていた」

こうした場面で、誰かに生理用品をもらいに行くことに、強い抵抗を感じた経験がある女性は少なくありません。特に、男性上司や同僚が多い職場では、その心理的ハードルはさらに高まります。

本来であれば、体調管理の一環として自然に対処できるはずのことが、

 「声をかけなければならない」
 「理由を説明しなければならない」

という状況になることで、ストレスになります。

第1回でも触れましたが、弊社では女子トイレに無料の生理用品を常備しています。この取り組みを通じて実感しているのは、重要なのは「置いているかどうか」以上に、どのような形で置くかだということです。

生理用品は、トイレットペーパーやハンドソープと同じように、「必要なときに、誰の許可もなく使える状態」にしておくことが何より大切です。

具体的なポイントは、次の三つです。

  • 個包装のまま設置すること
  • 目立ちすぎないが、迷わず手に取れる場所に置くこと
  • “特別な支援”として強調しすぎないこと

このような環境が整っていると、社員は「使っていいのかな」 「誰かに見られないかな」といった不安を感じることなく、自然にセルフケアができます。

生理用品の常備化は、単に物を置く行為ではありません。それは、「生理は隠すものではない」「我慢しなくていい」というメッセージを、言葉ではなく環境を通じて伝える行為です。

コスト面でも、月数千円から始められるため、導入のハードルは決して高くありません。それにもかかわらず、社員の心理的安全性を高め、「この会社は自分の体を気遣ってくれている」という信頼感を確実に育みます。

こうした小さな環境整備の積み重ねが、体調不良を一人で抱え込まない職場文化をつくり、結果として、働きやすさと生産性の向上につながっていくのです。

災害時の生理ケア備蓄という視点

もう一つ、あまり表に出て語られることの少ないテーマとして、災害時の生理ケアがあります。

多くの企業では、水や食料、簡易トイレなどを中心に防災備蓄が整えられています。 一方で、生理用品については、「必要な人が各自で用意するもの」として扱われているケースも、まだ少なくありません。

しかし、災害は生理のタイミングを選びません。不安定な環境下で生理用品が不足すると、身体的な不快感だけでなく、精神的な負担が大きくなる可能性があります。

特に、長時間の待機や業務継続が求められる状況では、 「どう対処すればいいのか」「周囲にどう伝えればいいのか」 といった戸惑いが重なり、ストレスが増すことも考えられます。

こうした点を踏まえると、平時に生理用品が「当たり前にある」職場では、非常時にも「生理ケアは備えておくもの」という認識が、比較的自然に共有されやすいと言えるかもしれません。

日常の環境整備と非常時の備えは、必ずしも切り離されたものではなく、平時の延長線上に非常時があると捉えることもできます。

数量について明確な統一基準があるわけではありませんが、企業の防災備蓄としては、「女性従業員数 × 1日5~7枚 × 少なくとも3日分」を一つの最低ラインとして設計するケースが多いようです。ライフライン寸断や帰宅困難を想定し、7日分程度まで備蓄するという考えの企業もあります。

これは、女性だけの問題というよりも、多様な体調や状況を想定した職場づくりの一部と考えることができます。災害時にどこまで備えるかは、企業の規模や業態、立地条件によってさまざまです。そのため、「これが唯一の正解」と決めることは難しいのが実情でしょう。

ただ、いざというときにも業務対応や社内対応が求められる企業にとって、 従業員が少しでも安心して過ごせる環境を整えておくことは、結果として会社全体を守ることにもつながります。

生理ケアを防災備蓄の検討項目の一つとして考えてみることは、「非常時に、社員はどんな状態で過ごすことになるのか」 「困りごとを一人で抱え込ませていないか」といった視点で、備えを見直すきっかけにもなります。

 “もしものときに、社員が困らないか” この問いを一つ持つだけでも、企業としての備えは少しずつ変わっていきます。

おわりに

  • 会議に5分の休憩を入れる。
  • 生理用品を常備する。
  • 防災備蓄の中身を見直す。

どれも、大きな費用や時間をかけずに始められる取り組みです。そして、どれも「明日からやろう」と思えば、すぐに実行できるものでもあります。

大切なのは、完璧な制度を一気に整えることではありません。まず一歩踏み出し、現場で試し、必要に応じて調整していくこと。そのプロセス自体が、職場に対話を生み、信頼を育てていきます。

本稿で紹介したような取り組みを、より詳しく知りたい方には『女性に選ばれる会社の新・健康経営 ― 職場改革は生理・PMSケアから始めよう』(合同フォレスト刊)で、制度設計や現場への浸透のポイントをまとめています。

小さな配慮の積み重ねが、会社の未来を、そして社会の未来を、静かに支えていく。その第一歩を、ぜひあなたの職場から始めてみてください。

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