生理・PMSに配慮する会社が「選ばれる会社」になる理由とは? ー 「産休・育休がある会社」では、もう選ばれない ― |HR NOTE

生理・PMSに配慮する会社が「選ばれる会社」になる理由とは? ー 「産休・育休がある会社」では、もう選ばれない ― |HR NOTE

生理・PMSに配慮する会社が「選ばれる会社」になる理由とは? ー 「産休・育休がある会社」では、もう選ばれない ―

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※本記事は、mederi株式会社様より寄稿いただいた内容を掲載しております。

働く女性の健康課題への理解は、いまや企業の採用・定着を左右する重要なテーマになっています。

生理痛やPMSなどに悩む女性は多くても、「制度があっても使えない」「周囲に言いづらい」状況が依然として続いています。実際、厚生労働省によると生理休暇の取得率はわずか0.9%。形式的には権利があっても、実際には機能していません。

本稿では、オンラインピル診療サービスを展開する mederi 代表・坂梨亜里咲 が、制度だけでは解決できない“女性の健康課題を理解する職場づくり”のポイントを解説します。

寄稿者坂梨 亜里咲mederi株式会社 代表取締役

明治大学卒業後、大手ファッション通販サイト及びECコンサルティング会社にてマーケティング及びECオペレーションを担当。2014年より女性向けwebメディアのディレクター、COO、代表取締役を経験した後に、自らの不妊治療経験からmederi株式会社を起業。オンラインピル診療サービス「mederi Pill(メデリピル)」、企業向け健康支援・福利厚生サービス「mederi for biz(メデリフォービズ)」を展開。

「言い出せない空気」が、制度と現場の距離を広げている

生理休暇という制度が存在していても、実際に利用することにためらいを感じる女性は少なくありません。その背景にあるのは、制度そのものの不備というよりも、利用する際の心理的なハードルです。

「男性の上司にどう説明すればいいのか」
 「忙しい時期に休むことで、評価に影響しないだろうか」
 「周囲に迷惑をかけてしまわないだろうか」

こうした不安が重なり、結果として“使わない選択”をするケースは多く見られます。制度があるからといって、必ずしも安心につながるわけではないのが現実です。

実際、日本における生理休暇の取得率は0.9%程度にとどまっているとされています。法律上認められた制度であっても、ほとんど利用されていない――この数字は、「制度があること」と「機能していること」の間に、大きな隔たりがあることを端的に示しています。

その結果、生理痛やPMSによる不調を抱えたまま業務にあたることになり、本来であれば発揮できたはずの集中力や判断力が十分に発揮されない場面が生じます。

本人は「気づかれないように」振る舞い、周囲もまた「何となく調子が悪そうだが、踏み込めない」まま日常業務が進んでいきます。

このようにして生まれる、制度と実際の利用とのギャップは、働く個人にとっては慢性的な負担となり、組織にとっては気づきにくい生産性ロスとして蓄積されていきます。

だからこそ、制度を「用意する」ことと同時に、安心して使える空気や運用を整えることが重要なのです。

“見えない支援”が信頼をつくる

近年、企業の健康支援においては、制度の数そのものよりも「実際に利用されているか」「不調の早期対応につながっているか」が重視されるようになっています。背景にあるのは、体調不良を抱えながら働き続けることが、生産性や定着率に影響を及ぼすという複数の調査結果です。

たとえば、国内外の研究では、月経関連症状を含む体調不良が、集中力の低下や業務効率の悪化、欠勤・早退の増加につながることが報告されています。また、こうした不調は欠勤として表面化しにくく、本人も周囲も気づかないまま生産性が低下する「プレゼンティーズム」として現れるケースが多いとされています。

一方で、従業員が早い段階で相談できる環境や、健康に関するサポートへのアクセスが整っている職場では、離職率の低下やエンゲージメントの向上が見られるという報告もあります。特に、匿名性が担保された相談窓口や、医療・専門家につながりやすい仕組みは、「不調を抱え込まずに済む環境づくり」に寄与するとされています。

また、月経に伴う不調への対策として、医療的な選択肢へのアクセスを支援する制度を導入した企業では、社内調査において「欠勤が減った」「体調への不安が軽減された」といった声が寄せられた例も報告されています。

こうした取り組みに共通しているのは、企業として『従業員の体調に配慮する姿勢』を明確に示している点です。

  • 体調がつらいことを逐一説明しなくてもよい
  • 理解してもらえるかどうかを過度に気にしなくてよい

そのような「言わなくていい環境」そのものが、実効性の高い健康支援になります。結果として、従業員の安心感や企業への信頼感が高まり、エンゲージメントの向上や「この会社で働き続けたい」という意識の醸成につながっていくでしょう。

「産休・育休がある会社」では、もう選ばれない

近年の採用市場では、「どのような福利厚生が用意されているか」だけでなく、日常的な健康課題にどこまで目を向けているかが、企業選択の重要な判断軸になりつつあります。

ヘルスケアテクノロジーズ株式会社の調査(2023年)では、20〜50代会社員女性400名を対象に、「女性特化した健康支援は仕事のパフォーマンス維持・長く働くことにプラス」と回答した割合が76.3%に上りました。転職先選択における具体的な優先度ではないものの、健康支援が働く女性にとって極めて重要な要素であることを強く示すデータです。

ここで言う健康支援とは、出産や育児といった特定のライフイベントへの対応だけではありません。生理やPMS、更年期といった、働く期間の大半を占める“日常の体調変動”と向き合いながら、無理なく働き続けられるかどうかが問われています。

「産休・育休制度が整っている」ことは、すでに多くの企業で当たり前の前提条件になっています。その一方で、日々の体調不良への配慮や支援が十分でない場合、実際の働きやすさとの間にギャップが生まれてしまいます。

制度としては整っていても、「長く働き続けられるイメージが持てない」と感じられてしまえば、採用や定着の面で不利になる可能性もあります。

こうした背景から、女性の健康課題を一部の人の問題として切り分けるのではなく、人的資本を安定的に活かすための環境整備として捉える企業が増えています。日常の体調に配慮する姿勢は、社内だけでなく、採用広報や口コミ、企業イメージを通じて、外部にも確実に伝わっていきます。

働く人が「この会社でなら、無理を重ねずにキャリアを続けられる」と感じられるかどうか。その判断は、制度の数ではなく、日常の健康課題にどう向き合っているかによってなされる時代に入っています。

“優しさ”を超えて、“経営戦略”として考える

女性の健康支援は、「配慮」や「思いやり」といった情緒的なテーマとして語られがちです。しかし本質的には、人的資本をいかに維持し、最大限に活かすかという経営判断に他なりません。

体調不良を我慢することを前提とせず、必要なサポートに適切なタイミングでアクセスできる環境が整えば、女性社員は本来の力を発揮しやすくなります。その積み重ねは、生産性の向上だけでなく、離職リスクの低減や採用競争力の強化といった、経営上の成果につながっていきます。

また、“見えない不調”に目を向ける姿勢は、短期的な施策ではなく、組織の持続性を高める基盤づくりでもあります。変化の激しい環境においては、個人の努力や我慢に依存する組織よりも、人のコンディションを前提に設計された組織のほうが、安定したパフォーマンスを発揮しやすいからです。

女性の健康支援は、特別な取り組みではありません。企業が長期的に成長していくために、いま現実的に選び取るべき戦略の一つです。 “優しさ”の延長ではなく、組織の未来を支える経営戦略として、改めて位置づけられ始めています。

おわりに

本稿でお伝えしてきたのは、女性の健康課題を「個人の事情」や「配慮の対象」としてではなく、経営の文脈で捉え直すことの重要性です。ただし、ここで紹介した内容は、あくまで考え方の整理であり、すぐに答えが出るものではありません。

実際に取り組もうとすると、「何から始めればよいのか」「制度をどう設計すれば形骸化しないのか」「社員にどう伝えれば納得感を持って受け取ってもらえるのか」といった、現実的な課題に直面します。

こうした悩みは、どの企業にも共通するものです。そうした背景から、私は『 女性に選ばれる会社の新・健康経営 ― 職場改革は生理・PMSケアから始めよう』(合同フォレスト刊)を執筆しました。

書籍では、公開データや現場の知見をもとに、制度設計の考え方や社内浸透のポイントを整理しながら、女性の健康課題をどのように経営戦略として位置づけていくかを実務の視点でまとめています。

女性が健康に働ける環境を整えることは、個人への配慮にとどまらず、組織の基盤そのものを強くします。その一歩を「経営の意思」として踏み出せるかどうかが、これからの企業価値を分けていくのではないでしょうか。

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