従業員の「介護」と「育児」の両立(ダブルケア)は‟問題の認知”と‟情報提供”でサポート |HR NOTE

従業員の「介護」と「育児」の両立(ダブルケア)は‟問題の認知”と‟情報提供”でサポート |HR NOTE

従業員の「介護」と「育児」の両立(ダブルケア)は‟問題の認知”と‟情報提供”でサポート

こんにちは。日本最大級の老人ホーム検索サイト「LIFULL介護(ライフルかいご)」の編集長、小菅秀樹(@kosugehideki)です。

小菅 秀樹|株式会社LIFULL senior LIFULL介護(ライフルかいご) 編集長

横浜市生まれ。老人ホーム・介護施設紹介業で主任相談員として1500件以上の施設入居相談に対応。入居相談コンタクトセンターの立ち上げ、マネジャーを経て、現在は日本最大級の老人ホーム・介護施設検索サイト「LIFULL介護(ライフルかいご)」の編集長。「メディアの力で高齢期の常識を変える」をモットーに、介護系コンテンツの企画・制作、寄稿、セミナー登壇などを行う。趣味はバイクツーリング、筋トレ、ウィスキー。

前回、「ウェルビーイングの実現」に対して、人事担当者ができる対策についてご紹介いたしました。

今回は、従業員のダブルケアが離職を引き起こす要因についてお伝えするとともに、それらに対して人事担当者ができる介護離職への対策をご紹介いたします。

そもそもダブルケアとは、子育てと家族の介護のタイミングが重なってしまうことです。女性の社会進出が進み、晩婚化・晩産化によってダブルケアを担う人が増えています。

ダブルケアは精神的にも肉体的にも負担が大きく、仕事との両立が難しいために離職の原因になることもあります。人事担当者が支援体制を構築することで、ダブルケアによる離職防止に努めることが大切です。

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1. 離職を引き起こすダブルケアが抱える2つの問題

ダブルケアには大きく2つの問題があります。一つは女性への負担が大きいこと、もう一つは企業の人材流出です。

1-1. 女性への負担が大きく、ライフプランや子育てにも影響

平成28年に行われた内閣府の調査では、ダブルケアをする人が全国で25万人以上いることがわかりました。そして、その中の17万人が女性という結果となっています。

ダブルケアをする人は、男女ともに30〜40歳代が全体の約8割を占めており、また、平均年齢が40歳前後と育児のみをする人と比べて5歳以上高くなっています。

最近は、男性の育児・介護参加も増えてきてはいますが、それでもまだ女性が主な担い手となることが多いのが現状です。

中には、障害のある子どもの子育てと家族介護の両方を担うなど、長期間のダブルケアをおこなわなければならない方もいることでしょう。

このような仕事との両立が難しいために発生してしまうダブルケアですが、そもそもダブルケアは相談できる人が少なく、一人で抱えてしまいがちなので、離職してしまうことでさらに孤独になってしまいます。

 また、介護があることによって育児に掛けることのできる時間が減少してしまい、二人目の子どもを諦めたり、子どもの生活環境を変えざるを得なかったりする(保育園や学童の時間が長くなる、イベントに参加できない等)こともあるかもしれません。

1-2. 企業の人材流出が進んでしまう

2025年には75歳以上の人口が800万人を超え、4人に一人が後期高齢者となります。

75歳以上になると要介護割合が上昇するため、介護をしながら働く従業員の増加も予測されます。

団塊ジュニア世代と呼ばれる50代をはじめ、30~40代の従業員も今後はダブルケアに直面することになるでしょう。

このような中核を担っている人材や、働き盛りの人材が離職してしまうことは、企業にとっても大きな痛手となりかねません。

2. 「介護」と「育児」は何が違うのか?

人事担当者の方の中には、どちらも誰かのお世話をするという点で「育児」と「介護」を同じようなものと思われている人もいらっしゃるかもしれませんが、実際の内容は大きく異なります

ダブルケアをおこなう多くの方が、「育児」よりも「介護」の負担が大きいと感じているのですが、この理由は、育児と介護に4つの大きな違いがあるために生じていることだと考えられます。

  • 介護は突然始まる
    認知症や脳梗塞の発症、転倒による入院などがきっかけとなり、昨日まで元気だった家族が突然、要介護状態となる
  • 介護が必要な人は実親だけではない
    介護が必要な人が実の両親、祖父母、義理家族、親戚など、さまざまなパターンがある
  • 介護が必要なのが同居人とは限らない
    介護が必要な家族が同居しているとは限らず、近距離・遠距離介護が少なくない
  • 同時に複数人の介護をする場合も
    老老介護が難しくなるなどで、両親の介護が同時に始まる場合もある

 このように、介護は育児以上に「緊急性」や「個別性」があり、それがダブルケアの負担をさらに大きくしています。

3. 介護はプロにまかせる時代へ

また、核家族・長寿化・女性の社会進出など、現在は過去と比較して介護の状況が大きく変化しているので、これらを認識した上で従業員のサポートをすることも必要でしょう。

昔は、平均寿命が短い三世代同居が多い専業主婦が多いという特徴があったため、家族介護が可能な状況にある従業員も多かったと思います。

しかし、平均寿命はこの50年ほどで男性は約12年、女性は約13年延伸し、核家族化が進んで親と同居しなくなったことで、「通い介護」が増加しました。

また、家族介護の全盛期と比較して兄弟のいる家族が少ないことや、近所付き合いが少なくなり周囲に支援を求めづらくなっていることも、介護の負担を大きくする一因となっています。

今でも「介護はお嫁さんがするもの」「親の介護は子どもがするべき」といった意識や考え方を持つ人も少なくないので、女性が介護離職しやすい状況は続いているのです。

このような現状を変えるためには、まずは「自分が家族の面倒をすべて見なければいけない」という思い込みをなくすことが大切です。

現在は、家族介護が難しくなったことに伴って「介護保険制度」が創設されており、介護をプロに任せることができるようになっています。

ダブルケアによって肉体的・精神的・経済的負担に追い詰められてしまわないように介護はプロに任せることがベストです。

4. 従業員の介護離職対策!人事部がすべきこと4つ

従業員がダブルケアの担い手になった場合、「介護はプロに」を実践できるような環境をつくるため、人事部として準備することのできる対策が4つあります。

4-1. 人事部が相談窓口になる

1つめは、人事部が窓口となることで、気軽に相談できる体制を整えることです。

会社に介護の相談をするには勇気が必要です。ダブルケアの担い手になる可能性がある全ての従業員に対して情報提供をおこなうことで、相談しやすい雰囲気づくりを普段から心掛けましょう。

また、周囲に介護をしていることを知られたくないと思う方も多いので、相談があったときに守秘義務を守ることも大切ですが、その一方で、介護によって不利益を被らないためにも、上司も交えながら個別に対策を練る必要もあります。

可能であれば、周囲の同僚からも応援してもらえるような雰囲気づくりができるとベストでしょう。

4-2. 「介護はプロに任せよう」と伝える

2つめは、「介護をしすぎるな」というメッセージを伝えることです。

仕事をしながら介護の全てを担うことは、時間的にも体力的にも不可能です。介護を主軸に考えてしまうと、パートや時短勤務への変更を余儀なくされ、離職せざるを得なくなることもあります。

人事部から「仕事を主軸に考え、介護はプロに任せよう」とアドバイスし、訪問介護やデイサービスなどの公的サービスの積極的な活用を勧めてみましょう。

4-3. 人事部も最低限の介護知識を知ること

3つめは、人事担当者も介護の知識を深めることです。

たとえば、介護休業の使い方について尋ねられたとき、正しく答えられるでしょうか。育児休業と混同している人も少なくないのではないでしょうか。

介護休業は、合計93日間あり、3回に分けて取得することが可能です。最初の30日を要介護認定や入退院手続きなどに使用し、次の30日を再入院や施設入所に、最後の30日を看取りに利用するなどの使い方もできます。

人事担当者から介護休業の活用方法などを提案できるようになると良いでしょう。

もちろん、介護の知識全てを身につけるのは大変ですので、困っている従業員には、各自治体に介護の総合相談窓口として設置されている「地域包括支援センター」へ相談に行くよう促しましょう。

4-4. 長期的なフォロー体制を構築する

4つめは、継続フォローと働きやすい環境の構築です。

介護をしている従業員に対しては、3か月~半年に一回程度は面談をおこなって生活状況を確認し、必要であれば働き方の見直しを提案するようにしましょう。

介護期間は、平均4年7カ月と長期間続きます。4〜5年間はフォローするつもりで臨む気持ちでいるようにしましょう。

また、仕事とダブルケアの両立を可能にする支援制度の充実も重要です。テレワークの推進や会社独自の介護休業に取り組むことも良いと思います。

5. おわりに

このように、ダブルケアを担う人は今後増えることが予想され、従業員にとっても企業にとってもマイナスになりかねません。

これからは、子育ても介護も応援する働きやすい企業に人が集まります。

介護について人事部から積極的にアナウンスをしたり、社内で介護経験者が気軽に集まれる場を設けるなどし、子育てや介護の負担軽減方法を共有しても良いでしょう。

雇用環境を整えて、介護離職を防止していきましょう。

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