最近「確証バイアス」という言葉を耳にすることが多いと思います。単語だけは聞いたことはあるけれど実際はどういう意味か分からない人が多いでしょう。確証バイアスをなくすことは適切な判断を下すことにつながります。
この記事では確証バイアスとはどういうものなのか、なぜ確証バイアスが起こるのか、そして確証バイアスの対策方法について解説します。
目次
1. 確証バイアスとは
ここでは、確証バイアスの定義について解説しつつ、確証バイアスが身の回りで起こる具体例について解説します。
1-1. 確証バイアスの定義
「確証バイアス」とは 物事を決定する際に、自分の意見や先入観をを証明する情報ばかりを集めてしまい、自分の意見とは反証する情報を排除してしまうことです。
現代ではインターネットやテレビ書籍など様々な情報にあふれていますが、確証バイアスを持っていると様々な意見があっても耳を傾けることができず、一部の意見しか見えなくなってしまいます。
確証バイアスは誰にでも起こる可能性があるため注意が必要です。
2. 確証バイアスが身の回りで起こる具体例
確証バイアスは日常のさまざまなシーンで生じています。確証バイアスに陥ったまま相手の性格や仕事ぶりを判断したり、都合のいい情報だけを信じたりすることには大きなリスクがあります。
ここでは、確証バイアスに陥りやすい例と問題点について考えていきましょう。
2-1. 日常生活における確証バイアス
確証バイアスが起こりやすい例として、血液型をもとにした占いや性格判断が挙げられます。血液型占いや性格判断では、A型は几帳面、AB型は変わり者といったレッテルを貼るケースが多々あります。しかし、個々の性格は血液型で分類できるものではありません。
血液型の確証バイアスをもとに目の前の相手を判断してしまうのは軽率です。また、自身が無意識のうちに血液型のイメージを意識し、そのとおりに振る舞ってしまうのも確証バイアスによる影響です。
また、投資などを行う場合に生じる確証バイアスにも気をつけたいものです。自身の投資に都合のいい情報のみを信じて集めてしまう人は、投資で大きな失敗をする可能性があります。
投資先に関する都合の悪い情報や投資リスクを十分に把握しないまま投資をすると、損切りなどの対処ができず大きな損失を抱えることになるでしょう。
2-2. ビジネスシーンにおける確証バイアス
確証バイアスがビジネスシーンに影響を与える例もあります。
とくに、採用面接の際には確証バイアスが生じやすいため、十分な注意が必要です。人間は第一印象で相手を直感的に判断する傾向があるため、初対面の相手を評価する採用面接においては客観的な判断ができなくなるおそれがあります。
確証バイアスによるミスマッチが生じたために、組織が本当に必要とする人材を集められなくなってしまうのは大きな問題です。
人材育成においても、確証バイアスに陥らないような意識を持つことは大切です。たとえば、若い世代だから保守的なのではといったステレオタイプ思考が生まれ、逆の情報を無視してしまうケースがあります。こうなってしまうと公正な視点が失われ、適切な判断や意思決定ができなくなるかもしれません。
人事担当者は、相手の経歴や過去の評価といった確証バイアスにつながりやすい要素を切り離したうえで従業員の育成にあたる姿勢が求められます。
3. 確証バイアスはなぜ起こるのか
ここでは確証バイアスが起こってしまう理由について解説します。
3-1. 無意識のうちに、レッテルを貼ってしまう
私たちは物事を判断するときに自分の中の尺度で判断をする「レッテル貼り」を行うことがあります。例えば「女性はこうあるべきだ」や「O型は大雑把」などです。
人の意見を聞き入れず、だけで判断できるので意思決定の際にスピーディーに行うことができます。しかし、その結果が正しいかどうかはわかりません。
特に大きな決定権を持つ人がこのような状況になってしまうと組織全体に影響を及ぼす可能性があります。
3-2. 「自分は正しい」と思い込むこと
人は誰しもが「自分は正しい」と思い込む傾向があります。その際に自分の正当性を証明しようとすると視野が狭くなり、自分にとって都合のいい意見しか見れなくなることがあります。
これは仕事の納期がせまっているなど、余裕がない時ほどおこりやすいので注意が必要です。
4. ビジネスシーンで確証バイアスがおこりやすい状況
ここではビジネスシーンで起こりうる確証バイアスの具体例について紹介します。
4-1. 採用時
採用時にこのようなことはないでしょうか?「高学歴の学生だったら仕事ができるに違いない。」「体育会系の学生は根性があり、打たれ強いだろう」と思い採用したが、実際は思った人材ではなかった。
これは自分の中の確証バイアスが働き、人材と企業の方向性の相違や人材自体の問題点があったとしても見えづらくなっているケースです。
採用時には第一印象や事前の情報によって採用するのではなく、しっかり就活生の話している内容や、企業への理解度を聞いて判断する必要があります。また確証バイアスが働くと自分と共通点を持った人や自分が好印象を抱いた人、既存社員と似ている人ばかりを採用してしまう可能性があります。様々なバックグラウンドや意見を持った人々から生まれる新しい意見を活用することができなくなります。
4-2. 人事評価時
人事評価時でも確証バイアスは起こります。一度優秀な部下であると思い込んでしまうと、たとえ問題があったとしても良い部分をばかりを探し、逆に自分が悪いイメージを持つ部下には悪い部分ばかりを探してしまうのです。
例を挙げると高学歴の部下に対し、「学歴が高いから仕事ができるはずだ」というバイアスが働き、仕事で悪い点や、働きぶりに問題があったとしても評価が甘くなってしまう可能性があります。ほかにも「女性は管理職には向かない」というバイアスから女性というだけで男性と同等に評価しなくなる可能性があります。
このようなことが起きると同じような人しか昇進しない可能性があるため会社が新しく発展しないだけではなく、人事評価の際に部下との軋轢につながる可能性があり、従業員のモチベーション低下につながりかねません。
5. ほかにもあるビジネスシーンで注意すべきバイアス
確証バイアス以外もある様々なバイアス(偏見)の一部を紹介します。
5-1. ハロー効果
ハロー効果とは学歴や肩書などの目立つ特徴により、その人のほかの評価にも影響を与えることです。例えば一定以上の学歴を持つ学生は優れた学歴を持っていることから仕事内容や性格、言動などにも影響を与えてしまい人事側は正しい評価ができなくなっている可能性があります。
5-2. 類似性バイアス
類似性バイアスとは自分と似ているバックグラウンドや意見を持っている人に対して高く評価してしまうことです。このバイアスがあると同じような意見を持つ人材ばかりが採用される可能性があります。このように多様性がない環境だと、社内に新しい意見が生まれないため会社にイノベーションが起きません。
6. 認知バイアスの対策方法
ここでは認知バイアスの具体的な対処法について紹介します。
6-1. 自分の意見と異なる意見や情報を集める
ものごとを決定する際に自分の意見と異なる意見から考え始めます。その異なる意見を調べ、自分の意見を再考します。異なる意見を調べることで自分の確証バイアスと向き合う機会にもなり、異なる意見を論理的に棄却できることができれば自分の意見を補強することにもつながります。
例を挙げると、自分があるブランドの営業だとします。「若者向けにブランド物のカバンを売りたい」という企画を思いつきました。
そこでまず「実際は現代の若者はブランド物を欲しがっていないのではないだろうか」といった自分が最初思いついた意見とは異なる意見から考え始めます。
この異なる意見を検証するために現代の若者の消費動向や、消費内容などを調査します。
異なる意見が棄却されれば、自分が最初に思いついた「若者向けにブランド物のカバンを売りたい」という提案は正しかったといえます。
異なる意見と向き合う過程で自分の確証バイアスに気づくことができます。
6-2. 第三者に意見を聞く
忖度をしない第三者を介入することで、自分とは全く違う意見を知ることができます。確証バイアスは自分にとって都合の良い意見しか見れなくなることから起きるため有効です。
しかし、自分と全く同じ意見であったりすると確証バイアスが加速してしまうことにつながりますそのため、複数人から意見を求めたほうが効果的であるといえます。
6-3. 自分の意見を疑う
クリティカルシンキングという思考法があります。クリティカルシンキングは日本語で批判的思考と訳され、経験や主観に頼らず客観的に物事を判断する方法です。常に自分の思考に疑いを持ち続けることが求められます。客観的に判断するためにはデータや数字が有効になります。
そのため様々なデータを集める癖をつけておくことが大切です。
7. まとめ
誰にでも確証バイアスはあるため、対策が必要です。
確証バイアスをなくすためには、「自分が今確証バイアスにかかっているのかもしれない」と自己認識することが第一に重要です。また人事は評価する側の学歴や性別、肩書、容姿、性別などに引きずられないように注意を払う必要があります。
自分の中にある確証バイアスを克服することで物事を正しく判断できるようになり、ビジネスシーンにおける確証バイアスでの弊害を未然に防ぐことができるため人事トラブルの回避につながります。