「インテグリティってなに?」
「インテグリティにはどのようなメリットがある?」
「具体的なインテグリティの高め方は?」
インテグリティについて、上記の疑問をもつ人事労務の担当者もいるのではないでしょうか。
インテグリティは誠実さを表す言葉で、とくに組織のリーダーに必要な資質として注目されています。全社的にインテグリティを獲得すれば、企業の体質を健全化し、社会的に評価される強い企業へと成長可能です。
本記事では、インテグリティのもつ意味や企業における重要性、インテグリティがある人がもつ資質などを解説します。従業員のインテグリティ獲得方法についてもあわせて解説するので、ぜひ最後までご覧ください。
目次
1. インテグリティの意味は「誠実さ」
インテグリティには元来、以下のような意味があります。
- 誠実
- 高潔
- 無傷
- 真摯
- 完全な状態
ビジネスにおいてインテグリティ、つまり誠実さのある言動は、とくに組織のリーダーにとって重要な資質とする考えが広まっています。経済学者であるドラッカーの提唱に基づく風潮です。
ビジネスに真摯に取り組むことで人からの信頼を獲得し、経営の健全化に役立つとして、インテグリティは欧米企業で重視されてきました。近年では、日本においてもインテグリティを取り入れる企業が増加しています。
2. 企業におけるインテグリティの重要性
現代の企業において、インテグリティの獲得と体現は重要です。
近年の風潮として、誠実さが求められる傾向が見られます。一昔前であれば隠匿・黙認されてきた社会の不条理や、ハラスメントをはじめとした理不尽が、現在では明るみに出て重い処罰を受けるようになりました。
インテグリティが高い企業は、健全性が社会的に評価され、企業イメージやブランドの価値が高まります。倫理に反する行動を抑制でき、社内外の不正リスクの軽減も可能です。
業務に前向きに取り組む姿勢が社内に根付けば、従業員の主体性の獲得にも役立ちます。
結果として、競争力のある強い企業へと成長できるでしょう。
反対に、インテグリティをもたない企業は不誠実であるとして、メディアやSNSなどで拡散され、バッシングを受ける可能性があります。
3. インテグリティとコンプライアンスの違い
インテグリティとコンプライアンスは、自律性や積極性に関して大きな違いがあります。
コンプライアンスとは、法令や規則を守り、倫理や公序良俗に反さないことです。規範の枠組みから逸脱しないよう努める意味合いが強いため、何かに前向きに取り組むのではなく、より消極的なニュアンスを含みます。
一方のインテグリティは、積極的に誠実かつ品位のある行動を取り、社会的な責任を成し遂げる意識や言動です。コンプライアンスと比較し、インテグリティはより自律的であるといえます。
双方とも健全な企業運営には欠かせないものですが、コンプライアンスの遵守にもインテグリティは重要な資質なのです。
4. インテグリティがある人の6つの資質
インテグリティがある人がもつ資質としては、以下の6つが挙げられます。
- 信頼の構築
- 現実の直視
- 成果獲得への意欲と能力
- 逆境への対抗と問題解決能力
- 成長と発展への努力
- 人生の意義の探究
上記の資質は、アメリカ人作家のヘンリー・クラウドが自著で提唱した内容を元にしたもので、ビジネス界に広まっています。
各資質の具体的な内容は次のとおりです。
4-1. 信頼の構築
高いインテグリティを体現している人は、他者との信頼関係を築くことを得意としています。
誠実な言動で対応するため、良好な人間関係の構築が可能です。顧客との取り決めや納期を守るなどの行動で信頼を得られるでしょう。
4-2. 現実の直視
現実を直視できるのも、インテグリティをもつ人の資質です。
物事を自分の都合のよいように解釈するのではなく、心をフラットにして現実を受け入れられるマインドは、ビジネスシーンで大きな強みとなります。
4-3. 成果獲得への意欲と能力
インテグリティがある人は、真摯な言動を取りつつ、成果獲得への意欲や能力もあわせもっています。
目標を意識し、チームやメンバーのパフォーマンス向上に配慮して行動できるため、成果につながりやすいでしょう。成果を得ることで、周囲からのさらなる信頼獲得にもつながります。
4-4. 逆境への対抗と問題解決能力
逆境への対抗と問題解決に長けるのも、インテグリティをもつ人の資質です。
問題や苦難があっても逃げずに向き合い、根気強く解決策を模索します。逆風のなか冷静に行動し、ピンチをチャンスに変える前向きな姿勢が強みです。
4-5. 成長と発展への努力
インテグリティがある人は、日々成長と発展への努力を惜しみません。
現状に満足せず、新たなスキルの獲得や他者からのフィードバックを受け止めながら、常に自分自身をブラッシュアップしていきます。
4-6. 人生の意義の探究
人生の意義を探究する視点をもって行動できるのも、インテグリティがある人のもつ資質です。
自分だけの利益にとらわれず、公共の利益に着目した利他的な行動が取れます。
5. 従業員のインテグリティを高める方法
従業員のインテグリティを向上するのに効果的な方法は、以下の3つです。
- インテグリティについて社内の理解を深める
- 企業のビジョンを共有する
- 人事評価制度に採用する
詳しく解説していきます。
5-1. インテグリティについて社内の理解を深める
従業員のインテグリティ獲得には、インテグリティに関する社内理解を深めることが重要です。
目指すべきものを正しく把握していないと思ったような成果が得られません。誤った方向に事態が進み、インテグリティの獲得からはかけ離れた状況に到達するおそれもあります。
まずは社内研修やミーティングなどを通じ、インテグリティの知識や意識を社内に浸透させるのが効果的です。
一般の従業員だけでなく、リーダーや経営層を含めて啓蒙活動に取り組みましょう。
チームメンバーの行動は、リーダーの言動に大きく影響されます。リーダーが率先してインテグリティを体現することで、メンバーも付随して行動しやすくなるでしょう。
5-2. 企業のビジョンを共有する
企業のビジョンを従業員に共有するのも、従業員のインテグリティ向上に有効です。
インテグリティとは単に誠実に行動するだけではなく、目的意識をもって成果を獲得することでもあります。目指すべき指標を提示すれば、従業員が具体的なイメージをもって行動しやすくなるでしょう。
5-3. 人事評価制度に採用する
インテグリティを向上するためには、人事評価制度に取り入れるのも効果的です。
評価制度に組み込めば、インテグリティについて意識する機会が増えます。評価や給与に直結するとなれば、従業員も精力的にインテグリティに向き合うようになるでしょう。
マインドに関わる部分のため定性評価にとどまりやすいですが、納期の遵守のように定量化できる部分は数値で評価すると効率的です。
6. インテグリティを重視した施策を講じた企業事例
三井物産株式会社では、インテグリティのある組織づくりのために以下のような施策を講じています。
- グループ内で共有が必要なインテグリティやコンプライアンスについて行動指針にまとめ、研修やワークショップを通して浸透を図る
- 事業本部ごとにコンプライアンス管理責任者を選任し、CCOとの連携で全社方針を踏まえながら、各部署に即した施策を推進する
- 職層や拠点ごとに研修を実施し、インテグリティに関する経営陣の対談や、過去に国内外で起こった企業不祥事を振り返る動画を配信する
- 上記に付随し、各部署が自発的に組織内での関連企画を実施する
研修やセミナーなどの啓蒙活動を実践のうえ、経営陣が率先してグループ全体で精力的に取り組むことで、インテグリティは社内に定着しやすくなります。
7. インテグリティを健全な組織運営に役立てよう
近年の風潮から、インテグリティの高い企業は社会的に評価され、結果として企業の競争力を高めます。
インテグリティの向上には社内理解を深めるのが重要です。研修や人事評価制度を利用し、企業内に浸透させるのが効率的といえます。
インテグリティを体現し、健全な組織運営に役立てましょう。