企業の人事による評価制度には多くの種類があります。現在トレンドとなっている人事評価制度を導入すれば、社内の活性化や業務効率化、生産性の向上が実現しやすくなります。
評価制度を取り入れるときには、自社の風土に合っているか、十分な効果が見込めるかといった点を冷静に分析しましょう。本記事では、評価制度の最新トレンドについて解説します。
目次
人事評価制度は、従業員のモチベーションに直結するため、適切に設計・見直し・改善をおこなわなければ、最悪の場合、従業員の退職に繋がるリスクもあります。
しかし「人事評価制度に改善したいが、いまの組織に合わせてどう変えるべきか悩んでいる」「前任者が設計した評価制度が古く、見直したいけど何から始めたらいいのかわからない」という方もいらっしゃるでしょう。
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資料では、人事評価制度の基本となる種類の解説や、導入手順、注意点まで詳しくご紹介しています。自社の人事評価に課題感をお持ちの方は、ぜひこちらから資料をダウンロードしてご確認ください。
1. 評価制度のトレンド10選
まずは、評価制度の最新のトレンドをチェックしていきましょう。個々の評価制度がどのような企業に向いているのか、どのような場合におすすめなのかといった点についても詳しく解説します。
1-1. リアルタイムフィードバック
リアルタイムフィードバックは即時に相手のフィードバックをおこなう評価手法です。多くの場合、2週間や1カ月といった短いスパンでミーティングを設定します。
短い期間のなかでフィードバックをおこなえば、状況に応じた柔軟な対処をしやすくなるでしょう。また、タイムリーに評価できるため目標や方向性のズレが起きにくくなるというメリットもあります。
ただし、評価のスパンが短すぎると従業員の負担になってしまいます。適切な頻度でリアルタイムフィードバックを実施し、効果を高めていきましょう。
1-2. ノーレイティング
ノーレイティングとは、従業員をランク付けせず評価する手法です。
従業員をSやA、Bといった階層に分けるようなレイティング評価を導入している企業は少なくありません。しかし、レイティング評価には、従業員のモチベーション低下が起きやすいという問題点があります。
ノーレイティングではランクを付けることなく、上司が部下に対して直接フィードバックをおこないます。対話の機会を多く設けることでコミュニケーションが活性化しやすくなるのが、ノーレイティングの大きな特徴です。
1-3. 360度評価
360度評価は、従業員をさまざまな角度から評価する制度です。上司に限らず、同僚やクライアントなどを交えて多角的な評価を実施します。
上司から見えていない部分の評価ができるなど、客観性が高いのが360度評価のメリットです。お互いがお互いを評価することで当事者意識が高まりやすくなることや、パワハラやセクハラの抑止が期待できることも、360度評価ならではの特徴です。
ただし、お互いが評価者になるという特性上、甘い評価を付けるという馴れ合いが起きてしまう可能性もあります。また、評価をきっかけに社内の人間関係が悪化するリスクもあるため、運用には十分な注意が必要です。
1-4. バリュー評価
バリュー評価は、従業員が会社の価値観や方向性を理解したうえで、どれだけ行動できたのかを評価する人事評価制度です。
バリュー評価の特徴は、目標を達成したかというポイントだけでなく、そこに至る過程や積極性、行動力などを評価できる点にあります。企業の方針を浸透させたいときには、バリュー評価の導入が大きな効果を発揮してくれます。
1-5. コンピテンシー評価
コンピテンシー評価とは、企業が理想とする人材像を示し、その人材の行動特性と比較しながら評価をおこなう手法です。具体的には、行動力、分析力、リーダーシップ、情報収集能力などの項目に注目して評価します。
コンピテンシー評価を導入すると、従業員は具体的な人物をイメージしながら行動できるようになるため、効率的な人材育成につながります。ただし、理想とする人材像の特徴を抽出するために時間がかかってしまうでしょう。また、社会状況の変化に応じて理想となる人材像も変化するため、臨機応変に制度を変えることも必要です。
1-6. パルスサーベイ
パルスサーベイとは、短いスパンで従業員の変化を調査する手法です。脈拍(pulse)を測るイメージに近いことから、パルスサーベイと呼ばれています。パルスサーベイでは、複数の簡単な質問を準備することで、従業員の変化を分析します。
1週間〜1カ月に1回など、短いスパンで繰り返し実施することで従業員の変化を細かく把握し、成長した部分を評価したり、問題点の改善を促したりしましょう。ただし、質問数が多すぎると、回答や分析に時間がかかってしまうため注意が必要です。
1-7. チェックイン
チェックインとは、1on1ミーティングなどの対話を頻繁に実施して、行動に対する指摘や評価をおこなう手法です。対話を通して成果が出た部分をすぐに評価したり、うまく進んでいない部分をサポートしたりできるため、従業員はモチベーションを維持しながら働けるでしょう。
対話の内容をそのまま評価とできるため手間を削減できますが、長期的な評価が難しいことや適していない職種があることには注意が必要です。
1-8. ピアボーナス
ピアボーナスとは、同僚や仲間を意味するピア(peer)とボーナス(bonus)をかけ合わせた造語です。ピアボーナスは従業員同士が評価を実施し、状況に応じてボーナスとなる報酬を贈り合うという独特の評価制度です。
ピアボーナスでは、従業員からの評価によるポイントを溜めれば、商品やお金に交換できます。お互いに褒め合うため職場の雰囲気がよくなりやすく、モチベーションの飛躍的な向上も見込めます。
1-9. OKR
OKRは「Objectives and Key Results」の頭文字を取った評価制度です。OKRでは達成目標とともに具体的な数値をともなう達成度を設定し、個人やチームが課題解決に取り組んでいきます。
チームのOKRを設定したあとには、個人のOKRへと細分化させて目標設定をおこなうことが大切です。それぞれの目標をリンクさせることで、会社全体の目標を効率的に達成することが可能となります。
1-10. パフォーマンスデベロップメント
パフォーマンスデベロップメントとは、部下の成長に着目する評価の手法です。上司と部下が高い頻度でミーティングの機会を設け、仕事の進捗のほかキャリアの方向性について話し合い、フィードバックにつなげていきます。
従業員の成長にコミットしたマネジメントをおこなうことで、従業員の成長を促す効果が期待できます。
2. トレンドになっている評価制度に共通する特徴
トレンドになっている評価制度には、行動やプロセスが重視されている、評価サイクルが短くなっているなどの特徴があります。以下、共通する特徴について順番に見ていきましょう。
2-1. 行動やプロセスが重視されている
行動やプロセスに注目して評価することは、トレンドになっている手法に共通する特徴のひとつです。仕事において成果を出すことは重要ですが、成果にばかり着目していると評価しにくい部分もあります。とくに成果が出るまでに時間がかかる業務については、行動やプロセスに注目しなければ、従業員の能力やスキルを評価できないケースもあるでしょう。
そこで近年の評価制度においては、成果を出すためにどのような努力をしているか、会社のルールに従って行動できているか、といった点を評価する傾向が強くなっています。
2-2. 評価サイクルが短くなっている
評価サイクルが短くなっていることも共通する特徴です。従来は1年に1回、半年に1回というペースで評価を実施することが一般的でしたが、1カ月に1回などの短いサイクルで評価をおこなう企業も増えてきました。
理由としては、成果だけではなくプロセスを重視するようになったことが挙げられます。プロセスに対して細かくフィードバックをおこなうことで、状況の変化に柔軟に対応しつつ、従業員の成長を促したいと考える企業が増えてきたのです。
2-3. 役割ごとに評価する傾向にある
役割や職種ごとに評価する傾向も強くなってきました。それぞれの従業員に与えられた仕事や立場によって、求められる能力や出すべき成果が異なるからです。たとえば管理職と一般社員、技術職と事務職では、必要な能力や目指すべき方向が異なります。
すべて同じ基準や項目で評価をおこなうと、従業員のスキルや成果を正しく見極められないケースもおおいでしょう。そこで、役割や職種ごとに評価項目や評価基準を分け、正確な評価を実施しようとする企業が増えてきたのです。
2-4. ランク付が廃止されている
ランク付を廃止する企業も増えてきています。従来は「S・A・B・C・D」といったランクを設定して、一定の基準に従って従業員ごとにランクを割り当てる評価方法が一般的でした。
しかし、単純なランクだけでは従業員のさまざまな側面を把握しきれなくなってきたため、会社への貢献度や仕事に対する姿勢、コミュニケーション能力などを多面的に評価しようとする傾向が強くなってきています。
2-5. 評価をオープンにしている
従来は評価基準を公開していない企業が多かったのですが、近年、評価基準はもちろん、評価結果やその理由などをオープンにする企業が増えてきました。
評価をオープンにする大きな目的は、評価制度の透明性を高め、従業員が評価結果に納得しやすくすることです。また、どのような努力をすれば評価につながるのかが明確になるため、モチベーションアップにもつながります。
3. 評価制度のトレンドを取り入れるメリット
人事評価制度のトレンドを導入すれば、組織全体の生産性向上が見込めます。さらに、人材の厳選がしやすくなり、組織体制を強化できるというメリットも考えられます。
ここからは、評価制度のトレンドを取り入れるメリットをみていきましょう。
3-1. 生産性が向上しやすくなる
人事評価制度のトレンドを上手に取り入れれば、業務の効率化や生産性の向上が見込めます。
トレンドの人事評価制度には、個々の主体性を引き出してくれるようなものが数多くあるからです。また、正当に評価をおこなえば、従業員のモチベーションを向上させることも可能となります。
従業員の成長につながるような人事評価制度を取り入れ、企業の生産性や業務効率をどんどんアップさせましょう。
3-2. 企業が求める人材を厳選できる
トレンドの人事評価制度には、個々の従業員を正当に評価できる仕組みが備わっています。新たな人事評価制度を取り入れることで年功序列などの旧態依然の評価がなくなるのも、大きなメリットのひとつです。
生産性の低い従業員は、新たな人事評価制度に共感できず反発することがあります。なかには、評価の内容を理由として退職する従業員もいるかもしれません。しかし、生産性の低い人材が流出した場合でも、企業の方針に共感し成長についてこられる意欲のある従業員は残ってくれるケースがほとんどです。
転職活動中の人材に対し、人事評価制度をアピールすれば、企業の方向性に合う新たな人材の確保も実現しやすくなります。
3-3. 組織体制を強化できる
組織体制を強化できることも、トレンドの人事評価制度を取り入れるメリットのひとつです。古い評価制度は、時代の流れや従業員のニーズに合っていないケースもあります。仮に、頑張っても評価されないような評価制度の場合、優秀な従業員がより評価される職場へと転職してしまうこともあるでしょう。
トレンドの人事評価制度が絶対に正解というわけではありませんが、評価結果についての不満が多い場合や、人材の育成に悩んでいる場合は、新しい制度の構築を考えてみることが重要です。
4. 評価制度のトレンドを取り入れるデメリット
評価制度のトレンドを取り入れることには多くのメリットがある一方、いくつかのデメリットも考えられます。とくに、モチベーション低下が起きやすくなるのは大きな問題です。
ここからは、評価制度のトレンドを取り入れるデメリットについてみていきます。
4-1. モチベーション低下が起きる可能性がある
人事評価制度のなかには、従業員のモチベーションを削いでしまうようなものもあります。とくに、マイナスの評価が必要な人事評価制度は、従業員のやる気や企業への信頼感を薄れさせてしまうことがあります。
モチベーション低下を防止するためには、ポジティブな評価ができる人事評価制度を導入するなどの対処が必要です。
4-2. 従業員が反発する可能性がある
在籍する従業員からの反発が起きやすいのも、人事評価制度のトレンドを取り入れるデメリットです。
多くの企業には、これまで馴染んできた既存の評価体制があります。人事評価制度の急な変更は、長年在籍している従業員にとって大きな負担になるかもしれません。大きな反発が起きた場合、長期的に働いてくれた優秀な人材が流出するリスクも考えられます。
人材流出によって組織が弱体化するのを防ぐためにも、人事評価制度のトレンドを取り入れるときには導入理由や背景についてしっかりと説明したいものです。
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5. 自社に最適なトレンドの評価制度を導入しよう
ビジネスのスピード感が重視される現代だからこそ、社内制度の見直しとして新たな評価制度を導入するのが効果的です。トレンドの評価制度を導入すれば、時代に即した適切な判断をおこなえるようになります。
ただし、いくらトレンドであっても自社に合わない評価制度を導入してしまっては思ったような効果が見込めません。
人事評価制度導入の目的や期待する効果を十分に検討し、自社に合った内容を厳選しましょう。
人事評価制度は、従業員のモチベーションに直結するため、適切に設計・見直し・改善をおこなわなければ、最悪の場合、従業員の退職に繋がるリスクもあります。
しかし「人事評価制度に改善したいが、いまの組織に合わせてどう変えるべきか悩んでいる」「前任者が設計した評価制度が古く、見直したいけど何から始めたらいいのかわからない」という方もいらっしゃるでしょう。
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