「ホーソン実験とは何に関係する実験か知りたい」
「ホーソン実験でわかったことを知りたい」
上記のような疑問をもつ方も多いでしょう。
ホーソン実験とは、労働者の生産性に影響を与える要因について調べるために実施された複数の実験や調査の総称です。
ホーソン実験の概要や目的、内容と結果や実施の背景、わかったことやだれが実験の主要人物かなどを紹介します。
さらに企業におけるホーソン実験結果の活用例も紹介しているため、ぜひ参考にしてください。
目次
1. 生産性に関係するホーソン実験とは
生産性に関係するホーソン実験とは、仕事の生産性について調べるために実施された複数の調査や実験の総称です。
主に労働者の生産性の向上にどのような事柄が大きく影響をおよぼすのかが調査されました。
米国のイリノイ州シカゴにて1924年から1932年まで実施され、およそ100年前の実験であるにもかかわらず、現在のビジネスシーンにも影響を与えています。
2. ホーソン実験を実施したのは米国の大企業
ホーソン実験を実施したのは、かつて存在した米国の大企業「ウェスタン・エレクトリック」です。
電話機などの開発や製造に携わる企業で、社史において以下のような功績を残しています。
- 技術的な発明
- 管理手法の開発
また、同社のホーソン工場で実験がおこなわれたことが名称の由来です。
なおハーバード大学の教授として活躍した以下の2人は、実験の中心人物として知られています。
- ジョージ・エルトン・メイヨー
- フリッツ・ジュール・レスリスバーガー
両者はともに、人間関係論の創始者としても有名です。
3. ホーソン実験実施の背景
ホーソン実験実施の背景とは、1920年代の米国における第一次世界大戦後の好景気による以下の開始です。
- 大量消費
- 大量生産
好景気により消費が増加した結果、製造業をはじめとする各種の産業で大量生産が求められるようになります。
しかし当時の米国の工場において、労働者が頻繁にさぼったり非効率な仕事のやり方だったりする工場が多くありました。
上記の問題を解決する効率的な工場管理手法として当時支持されていたのは、フレデリック・テイラーが作り上げたテイラーシステムです。
工場の労働者の作業について次のような事柄を定めることで、だれでも1日あたりの作業量を達成できるようになりました。
- 標準となる作業方法
- 標準となる1日あたりの作業量
加えて、労働者のモチベーションアップのために作業量に応じて賃金を変動する仕組みも導入します。
作業時間や賃金などの条件を整えることで生産性を向上させるテイラーシステムが主流となっていたことも、ホーソン実験実施の背景の一つです。
4. ホーソン実験の目的
ホーソン実験の当初の目的は、テイラーシステムで重要とされた以下のような職場環境や待遇の条件と労働者の作業能率の関係性の分析です。
- 作業時間
- 賃金
- 照明度
なお工場での作業能率とは、一般的に労働者が自分の持ち場で生産に携わる時間のなかで、どれくらいの製品を作れたのかを表します。つまり、一定時間における労働者の成果量です。
また実験が進むなかで、労働者の次のような要因と作業能率の関係を分析する目的も加わります。
- 人間関係
- 目標意識
さらに実験が進むうちに以下のような仮説が立てられます。
- 自然発生的に友好関係に基づく労働者同士の小さなグループが作られる
- 所属するグループ内のルールや仲間意識が作業能率に影響をおよぼす
上記の仮説の検証も実験の目的の一つです。
5. ホーソン実験の内容・結果
ホーソン実験の主な内容は、以下のとおりです。
名称 |
内容 |
照明実験 |
照明環境が作業能率に与える影響について調べるために、作業場の照明を通常より明るくしたり暗くしたりして作業能率の変化を調べた |
リレー組立実験 |
物理条件により作業能率は変化するか調べるために、条件(賃金・休憩時間・部屋の温度や湿度など)を変えながら、継電器を組み立てる6人の労働者の作業能率の変化を調べた |
面接調査 |
各労働者が職場で行動を起こす要因や労働意欲の要因などをさぐるため、2万1千人程度の労働者と面談して、主に職場での不平や不満についての聞き取り調査をおこなった |
バンク配線作業実験 |
グループ作業において労働者の作業能率に何が影響を与えるのか調べるため、職種の異なる複数の労働者でグループを作り、電話交換機の配線作業をグループでおこない成果の変化を調べた |
続いてそれぞれの実験の結果を紹介します。
名称 |
実験結果 |
照明実験 |
・作業場の照明を通常より明るくした場合・暗くした場合の両方で、作業能率が向上した ・照明環境の変化が作業能率に与える影響はほとんどないことがわかった |
リレー組立実験 |
・さまざまな条件に変更したが、それぞれの条件において実験が進むと作業能率は皆同様に向上した ・元の条件から条件を変更して作業をおこない、途中で元の条件に戻して作業した場合も作業能率は向上した ・物理条件の変化が作業能率に与える影響はほとんどないことがわかった |
面接調査 |
・各労働者が職場で行動を起こす要因や労働意欲の要因は、各労働者の感情や職場での人間関係であり、職場環境や待遇などの条件から受ける影響は少ないことがわかった |
バンク配線作業実験 |
・各労働者はいつでも最大限の力を発揮するのではなく、自分で労働量を制限する場合があることがわかった ・品質検査において検査官が評価する際に、検察官と労働者の人間関係も評価に影響をおよぼすことがわかった ・労働者間の作業能率の差異は、各労働者の能力的な差違が原因ではないことがわかった |
さまざまな評価のあるホーソン実験は、手法や結果の解釈にまつわる批判や異論も多いです。
ただし現在に至るまで、ビジネスシーンにおいてさまざまな好影響を与えています。
6. ホーソン実験でわかったこと
ホーソン実験では、職場環境や待遇の条件よりも人間関係や個人の感情の方が、生産性の向上に影響することがわかりました。
実験結果の判明前は、テイラーシステムによる管理が主流であったため、物理条件などが生産性に影響をおよぼす要因と考えられていたためです。
以下の効果も、実験でわかったことの一つに挙げられます。
ホーソン効果 |
労働者が上司や仲間などから注目を浴びている・関心を集めていると感じると、注目や関心に応えたい気持ちが生じて、成果を上げるために力を発揮するため生産性が向上する効果のこと |
職場で自然発生的に友好関係に基づく小さなグループが作られることもわかりました。各グループのルールや仲間意識が作業能率に影響をおよぼすことも判明しています。
7. 企業におけるホーソン実験結果の活用例
企業におけるホーソン実験結果の活用例の一つは、上司と部下の良好な人間関係を築くためにおこなう定期的な面談です。
面談により部下の目標が定まり効率的に作業ができたりモチベーションがアップしたりすることで、生産性の向上が期待できます。
例えば、月や週に1回の頻度で面談をおこない、以下のような事柄について話し合いましょう。
- 部下のキャリア形成
- 現状の課題や目標
- 仕事のフィードバック
また以下のような社内コミュニティの運用も、企業での実験結果の活用例です。
- 社内サークル
- 勉強会
- 交流ランチ会
実験結果から、社内での友好関係に基づくグループ形成は生産性向上に役立ちます。
8. ホーソン実験を踏まえて社内の人間関係改善に取り組もう
ホーソン実験とは、米国の大企業が実施した主に生産性向上の要因を調べるための実験です。
実験結果から、労働環境や待遇の条件よりも職場の人間関係や個人の感情が生産性向上に影響をおよぼすことがわかりました。
現在の国内企業においても実験結果を活用できます。例えば、上司と部下の良好な人間関係を築き、部下の労働意欲を高めるためにおこなう定期的な面談です。
また社内サークルや勉強会などの社内コミュニティを運用し、社内で友好関係に基づくグループ作りの場を提供する方法もあります。
グループ内でのホーソン効果や良好な人間関係の形成により、生産性アップだけでなく定着率の向上も見込めるでしょう。
ぜひ実験結果を踏まえて、社内の人間関係改善に取り組んでください。