エッセンシャルワーカーとは?抱える課題や支援事例をご紹介 |HR NOTE

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エッセンシャルワーカーとは?抱える課題や支援事例をご紹介

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「エッセンシャルワーカー(essential worker)」という言葉をご存じでしょうか。

新型コロナウイルスの感染が拡大した2020年に新語・流行語大賞にノミネートされたことで知った方も多いかもしれません。

本記事では、注目を集めているエッセンシャルワーカーとは何か、どのような職業や職種が含まれるのか、そして、エッセンシャルワーカーとして働く方々が抱えている不安についてご紹介します。

エッセンシャルワーカーに属する職業で働く人を雇用する経営者や人事担当者は、ぜひ自社の人事制度を考える際の参考にしていただければと思います。

1, エッセンシャルワーカーとは

まずは、「エッセンシャルワーカー(essential worker)」という言葉の意味について説明します。

エッセンシャル(Essential)とは、日本語で「必要不可欠な」「非常に重要な」などの意味を持つ言葉であり、エッセンシャルワーカーを直訳すると、「必要不可欠な労働者」となります。

つまり、普段の生活維持に欠かせない職業に就いている方々のことです。

エッセンシャルワーカーにあたる職業としては、具体的に以下のようなものが挙げられます。

  • 医療従事者(医師・看護師・薬剤師など)
  • 介護士・保育士
  • 公務員
  • 教員
  • 小売業者・販売業者
  • 第一次産業従事者
  • 運輸・物流業者
  • インフラ事業者

①医療従事者(医師・看護師・薬剤師など)

健康な生活を送るために、病院や薬局などで働く医療従事者は必要不可欠でしょう。

新型コロナウイルスの流行といった緊急事態に際して、リスクにさらされながらも現場で働くことが求められる代表的なエッセンシャルワーカーです。

②介護士・保育士

高齢者の生活サポートをおこなう介護士や、保育園や幼稚園で働く保育士も代表的なエッセンシャルワーカーです。

コロナ禍においても感染のリスクにさらされながら働かなければならないなど、都市部を中心に核家族化や共働きの家庭が増える中で、無くすことができない職業です。

③公務員

市役所や区役所の職員、警察官、消防士など、日常的に使用している公共機関で働く公務員もエッセンシャルワーカーです。

行政サービスはインターネットから手続きをおこなうことができるケースもありますが、地域住民が安全かつ快適な暮らしが出来るように、対面での対応を含めた様々なサービスを提供する必要があります。

コロナ禍においては一律10万円の支給といったイレギュラーな対応も必要となり、職員には大きな負担がかかっています。

④教員

学校機関で働く教員に関しても、エッセンシャルワーカーに含まれます。たとえ新型コロナウイルスのような異常事態が発生しても、子供の教育を止めるわけにはいきません。

これまで対面でのみ実施していた授業をリモートで実施することができるようになるなど、環境面は少しずつ整いつつあります。

しかし、実際に遠隔での教育には限界があり、また子供は勉強だけを学びに学校へ行くわけではありません。

今後、対面で教えることが全く無くなることは考えらず、エッセンシャルワーカーとして今後もリアルにコミュニケーションを取りながら働く必要がある職業と言えるでしょう。

④金融機関の職員

銀行や信用金庫など、金融機関で働く職員もエッセンシャルワーカーに該当します。

金融機関の稼働停止はビジネスへの影響に直結するため、特に地方において、窓口業務や振り込み、融資の受付などをおこなう方々は必要不可欠となります。

➄小売業者・販売業者

コンビニやスーパードラッグストアなど、生活必需品を入手できる販売店の存在はとても大きくなっています。

技術の進歩により無人販売といったこともできるようになり始めてはいますが、多くの店舗はまだ対応しきれておらず、このような販売店で働く従業員も身近なエッセンシャルワーカーと言うことができます。

⑥第一次産業従事者

農業・林業・水産業といった、第一次産業に従事する方々もエッセンシャルワーカーとされています。特に、私たちに食料を供給し続けてくれている農業関係者は、紛れもないエッセンシャルワーカーと言えるでしょう。

第一次産業の従事者は、収入が不安定といった理由から年々減少・高齢化している現状にありますが、国内の食料自給率を維持するためには必要不可欠な存在です。

コロナ禍においては、営業を自粛する飲食店が増えたり、学校給食がなくなったりと、販売先に困る従事者が目立ちました。しかし、近年はインターネットの普及やデリバリーの需要も高まる中で、生産者から直接消費者に商品を届けるような仕組みを作るケースも増えています。

➆運輸・物流業者

電車やバスの運転手など、公共交通機関の運営に携わる職員は、エッセンシャルワーカーです。

また、ネットショッピングの需要も高まる中で、物流関係で働く方々(工場で働く方、配達員、運転手など)も同様にエッセンシャルワーカーです。

⑧インフラ事業者

電気や水道、ガスといった日常生活に必要なインフラ面を整備する方々もエッセンシャルワーカーです。

どんな状況でも止めることはできず、メンテナンスやオペレーションは現場での作業が必須です。また、地震や津波といった緊急事態においては素早い復旧が必要となるため、常に不測の事態にも備えておく必要があります。

2, エッセンシャルワーカーが話題となった背景

それでは、なぜ今エッセンシャルワーカーが注目されるようになったのでしょうか。

前でも述べた通り、2020年から流行した新型コロナウイルスの影響が大きな理由の1つです。

感染拡大を防ぐために多くの方が外出自粛を要請される中でも、私たちの生活を支えるためにエッセンシャルワーカーは感染リスクと隣り合わせで働いており、彼らへの援助やサポートについて考える必要が生まれたことが大きな要因でしょう。

海外ではエッセンシャルワーカーへの待遇や対策などに不満が集まりストライキが発生するなど、日本以上に注目が集まっていることがわかります。

また、そもそも先進国を中心に少子高齢化が進む中で、エッセンシャルワーカーとして働く人の数も減少しており、業務負担も大きくなっていることも注目されている理由の1つです。

少子高齢化の問題を踏まえた上で、様々な生活課題や福祉課題と共存していくためにどのような環境を作っていくべきなのか、そのためのキーワードとしてエッセンシャルワーカーの存在が重要視されているのです。

「ブルーカラー/ホワイトカラー」から「エッセンシャルワーカー」へ
働く方を分類する際の言葉として、「ブルーカラー(blue collar)」や「ホワイトカラー(white collar)」といったものがあることを知っている方も多いのではないでしょうか。ブルーカラーは、製造業や建設業のように工場などで作業着を着用して業務をおこなう方々を指します。対して、オフィス内で事務系の業務を行う方々は、ホワイトカラーと呼ばれています。ブルーカラーは、コロナ禍でも私たちの日々の生活を支えるために現場で働き続ける必要があり、また、ホワイトカラーの中にもリモートで仕事をできない場合もあり、現場で働き続けなければならない職種もあります。エッセンシャルワーカーという言葉は、新型コロナウイルスの影響により現場で働き続けなければならない方々に経緯を示すために生まれたとも言えるかもしれません。

3, エッセンシャルワーカーが抱える問題について

ここまでエッセンシャルワーカーに対する注目度の高まりについてご紹介しましたが、実際にエッセンシャルワーカーとして働く方々には大きな負担がかかっており、様々な点で不満も多く出てきている現状があります。

本章では、エッセンシャルワーカーに関連する課題について詳しく説明していきます。

①賃金が低い・待遇が悪い

エッセンシャルワーカーは社会基盤を担う重要な職業です。しかし、その責任の重さや業務負荷の割に賃金や待遇に釣り合っていない点が第一の課題として挙げられています。

特に「労働時間が長い」「休日休暇が取りずらい」「給与が低い」といったことが多く上がっています。

②人材不足による従業員への負担

生活基盤を守るための重要な働き手であるエッセンシャルワーカーですが、慢性的な人材不足に陥っているケースがほとんどです。

人材不足により、普段の業務における一人当たりの負荷が大きくなることはもちろん、休みを取ることができないといったケースもよく見受けられます。

該当企業では採用枠を大幅に増やすなどの活動が目立っており、上記の待遇改善による離職防止とセットで人材不足を解消する動きを取る必要があります。

③従業員のメンタルヘルス不調

社会環境が変化し続ける中で、職場の人間関係や仕事にストレスを感じている人も少なくありません。精神保健福祉センターの発表では、新型コロナウイルスの影響により相談件数が通常の3倍にも及んでいるというデータも出ています。

このような中で、エッセンシャルワーカーは責任の重い仕事が多く長時間業務にあたる場合も多いため、結果として心身ともにダメージが大きくなってしまうケースが多くあります。

また、新型コロナウイルスという未知のウイルスへの恐怖から、患者と相対するエッセンシャルワーカーに対してインターネットやSNSなどで差別や偏見による誹謗中傷がおこなわれ、心身の健康に悪影響が生まれてしまった事例もあります。

このようなことが起こらないように、エッセンシャルワーカーとして働く方々への社会からの尊敬感情の醸成や、自治体の支援が大切になってきます。

④業務上のリスク 

エッセンシャルワーカーは、緊急事態でもリモートワークにシフトすることが困難な職種となります。コロナ禍においても、感染リスクを負いながら第一線で仕事をしなければなりませんでした。

このように業務上でやむを得ないリスクが存在する場合は、ガイドラインの周知を徹底することによって、労働者にかかるリスクをできる限り抑える対策をすることが必要です。

4, エッセンシャルワーカーへの支援事例

これまで紹介したように、エッセンシャルワーカーに関する課題はまだ多くあり、エッセンシャルワーカー一人ひとりの負担も大きい現状があります。

しかし、そのような中で、政府や自治体、また各企業が、エッセンシャルワーカーへの支援をおこなう動きが少しずつ見られるようになっています。エッセンシャルワーカーに直接関わっていない企業でも前向きに支援活動に乗り出し始めているケースもあります。

本章では、エッセンシャルワーカーへの支援に関する事例についてご紹介します。

①行政がおこなった支援

厚生労働省が医療従事者向けの補助金制度を新設

厚生労働省は人手不足の事態を受け、医療従事者の離職防止や復職の促進、人材配置の転換といった具体的な指針を示した「新型コロナウイルス感染症緊急包括支援交付金」や補助金制度を新たに設けました。

それにより医師や看護職員の処遇改善につながる支援をおこないました。

また医療従事者に最大20万円の慰労金を給付しました。コロナ禍では、病院の経営悪化から医療従事者への賞与の引き下げなどが発生しました。

こうした状況下では、労働者のモチベーション維持は困難で離職者の増加も予測されます。そのため、国の支援策として、医療従事者に最大20万円の慰労金を給付する「新型コロナウイルス感染症対応従事者慰労金交付事業」が設けられました。

ブルーインパルスの飛行

2020年5月、防衛省(航空自衛隊)の航空自衛隊のアクロバット飛行チーム「ブルーインパルス」が東京上空を飛行しました。新型コロナウイルス感染症の対応にあたる医療従事者に対して、敬意と感謝を示す目的で行われた取り組みです。

医療従事者が病院から手を振ったり、人々が空を見上げたりと、エッセンシャルワーカーのみならず自粛を強いられていた人々の心を踊らせました。

②自治体が行った支援

埼玉県川島町がエッセンシャルワーカーへの感謝メッセージを募集

埼玉県川島町は、エッセンシャルワーカーへの感謝・応援メッセージを募集しました。この取り組みは、昼夜を問わず現場の最前線で働くエッセンシャルワーカーへの敬意を示す目的で行われているものです。

「メール」や「はがき」「手紙」で寄せられたメッセージは町のホームページに掲載されます。離職者や過度の業務で厳しかった人々の心に響いたそうです。

青森県おいらせ町の事業継続支援給付金を支給

青森県おいらせ町では、新型コロナ対策として製造業や建設業、運送業などを対象に事業継続支援給付金を支給しました。そして対象事業に小売業とサービス業を追加しました。

これにより行政サービスを担うエッセンシャルワーカーも、事業継続支援給付金を申請できるようになりました。

③法人が行った支援

離職中の看護師に復職を促すメールを送信

コロナ禍では、医師や看護師など医療従事者の人手不足が問題になりました。

そのため、なので緊急事態宣言が発令された翌日の2020年4月8日に日本看護協会は離職中の看護師など約5万人を対象に復職を促すメールを送信し、翌月の5月18日時点で696人の復職を実現しました。

スーパー・ドラッグストアなどで従業員に特別手当を支給

スーパーやドラッグストアでは、パートやアルバイトを含む従業員に特別手当を支給する動きが広がりました。

イオン株式会社では2020年4月、役員が自主返納する月額報酬(10〜30%)を資金の一部として、全国のパート・アルバイトに特別手当を支給しました。役員自ら報酬を返納することで、厳しい経営環境に対する危機感を現場の従業員と共有するという取り組みです。

また、同じくスーパーマーケットを展開する株式会社ライフコーポレーションや株式会社ベルク、オーケー株式会社などでも、2020年4月以降、従業員に感謝金を支給しています。

ライフコーポレーションは、パート・アルバイトを含む約4万人の全従業員に、約3億円の緊急特別感謝金を支給しました。ベルクではグループの全従業員約1万人に対し、慰労感謝金を支給しました。オーケーストアを展開するオーケーでは、2020年4月から2021年1月まで5回の特別手当(総額7.2億円)を支給しています。

ドラッグストア業界でも、スギ薬局を子会社に持つスギホールディングス株式会社(以下スギHD)が、2020年4月、パート・アルバイトを含む全従業員約2万6,000人に特別手当を支給しました。

いずれも、コロナ禍でつらい状況にありながら、増大する業務に対応していることへの感謝と慰労の気持ちを表すことが目的とされています。

③タクシー運転手への支援

九州のタクシー会社である国際興業グループ事業協同組合は、2020年4月、約1,200人の運転手全員に対して2万円を支給しました。

同社ではコロナ禍で売り上げが減少し、厳しい経営状況となりましたが、運転手の中には収入が激減している人もいたことから、まずは従業員への金銭的支援がより重要という判断をしています。

九州のタクシー会社、運転手に2万円支給 生活支援|日本経済新聞

④スニーカーを1300足提供

婦人靴やハンドバッグを販売するダイアナ株式会社がエッセンシャルワーカーへの感謝の気持ちを込めて、スニーカーをプレゼントするダイアナエッセンシャルワーカー応援スニーカーキャンペーンを開催しました。

日本在住のエッセンシャルワーカーを対象とした取り組みで、当初は1000足の提供を予定していましたが、予想を上回る応募があったため、1300足を提供しました。

5, まとめ

以上のように、エッセンシャルワーカーとして働く方々への支援は広がりつつあります。

私たちの生活にとって必要不可欠な存在である彼らに対して、働くためのしっかりとした環境を作っていくことは、日本全体として取り組まなければならないこととなります。

そして、その中でも、特にエッセンシャルワーカーに属する方々の業界や職種の経営者や人事担当者の方は、従業員の声に耳を傾けながら、各組織ごとより良い人事制度を構築していくことが大事になります。

本記事が、その1つのきっかけになれば幸いです。

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