エンパワーメントとは?成功事例やメリット、導入ステップなどを解説 |HR NOTE

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エンパワーメントとは?成功事例やメリット、導入ステップなどを解説

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変化の激しい、予測困難なVUCAの時代で、環境に適応しながらスピードを感もって組織運営を進めていくには、現場社員含め全社員が企業の課題に対して当事者意識を持ち、主体的に課題解決に向けて動く必要があります。

本記事では、人材育成を考えている方向けに、エンパワーメントと呼ばれる人材育成手法を紹介します。ぜひ、参考にしてください。

1. ビジネスにおけるエンパワーメントの意味

エンパワーメントは教育や福祉、社会運動など、様々な分野で使われている言葉ですが、ビジネスにおけるエンパワーメントとは、「能力開花」や「権限委譲」と訳され、人材育成やマネジメントの手法として扱われています。

管理者が持っている業務遂行や意思決定の権限を部下や現場の社員に委譲・付与することで、主体的・自主的な業務遂行や意思決定を促進させ、彼らの能力開花に繋げ、組織としてのパフォーマンスを最大化させます。

また、エンパワーメントは中途採用した人材を見極める方法としても使われています。

2. エンパワーメントの成功事例

具体的に、エンパワーメントを推進している企業では、どのような施策が進められているのでしょうか。

実際の事例について、今回は2社を取り上げてご紹介いたします。

2-1. 星野リゾート

星野リゾートでは、トップダウン方式の経営で失敗し、社員の定着率が悪い状況に陥っていた過去がありました。要因として、上層部の命令で動くことに社員たちがストレスを感じ、苦しさから離職する人が一定数いたようです。

そこで、解決策として従業員たちが主体的に働ける環境作りをするために「仕事の目的、目標などを明確にし、仕事を任せる」「役職やポジションにかかわらず、自由な発言を奨励する」「経営ビジョンと戦略を分かりやすく嚙み砕き、代表が直接従業員に伝える」といった内容に取り組みました。

その結果、自由で対等に意見交換ができるフラットな組織文化を作ることができ、離職者の減少にも繋がったそうです。

2-2. Google

Googleでは、「情報を積極的にオープンにし、社員にどんどん権限を委ね、仕事をしていってほしい」というスタンスでエンパワーメントを進めています。

実際に、週に一度全社員ミーティングを実施し、創業者や本社の経営トップ自らが直接、全社員に進捗状況について共有しているそうです。そこでは、社員に会社内の決定事項や今後の展望、変更点、製品の状況にも触れられます。

さらには質疑応答の時間も設けられ、考えの違いについて積極的に意見交換が行われています。

3. エンパワーメント導入のメリット

次に、エンパワーメントを導入するメリットを3つ紹介します。

3-1. 自走できる組織の構築

成果を出すために社員自身が何をすべきなのか主体的に考える姿勢が身に付きます。また、成果に対する責任感が芽生え、当事者意識をもって仕事を遂行できるようになります。

エンパワーメントが浸透することで、チームとしての主体性と遂行力が高まり、指示を待つ組織ではなく、自らやるべきことを考え、自走できる組織の構築に繋がります。

3-2. 個人の能力が発揮されやすい

与えられた裁量権が大きいため、成果を出すための手段の幅が広がります。その過程で、個人の能力が開花したり、今まで誰も認識していなかった社員の強みを見いだせる可能性があります。

また、試行錯誤を繰り返す中で、社員自身が自分の能力の活かし方を見つけ、仕事に対するモチベーションが上がりやすくなることが考えられます。

3-3. 意思決定によるタイムロスの削減

任された仕事の範囲では、意思決定含めて自身で遂行することが許されているため、今まで上層部を通さないと進められなかった作業も上司の確認が不要になり、業務スピードや生産性の向上に繋がります。

また、上層部を通さず意思決定できることで、業務内容によっては顧客に対して迅速な対応ができ、顧客満足度の向上に繋がる場合があります。

4. エンパワーメント導入のデメリットとリスク

次に、エンパワーメント導入におけるデメリットを3つ紹介します。

4-1. 部下の管理が難しくなる

権限を委譲されたことの意味を正しく理解せず、社員自身が好きなように意思決定をしても良いと捉えてしまった結果、組織として向かいたい方向に反してしまう場合もあります。

そこで、どこまで意思決定しても良いのか、権限の範囲を適切に設定し、社員と共通認識を持ってからエンパワーメントの実行に移る必要があります。

また、どういった場合に上司や管理者に報告するのか基準を設けておくことで、方向性がズレてしまっても修正することができます。

4-2. 抵抗のある社員もいる

組織の中には、指示された通りに動くことで高い成果をあげられる社員がいます。

そのような社員たちにとって、突然自らの裁量で仕事を進めなければならないとなると、進め方が分からず仕事の生産性やモチベーションが落ちてしまう場合があります。

他にも、責任を与えられることにストレスを感じやすい社員なども同じように生産性やモチベーションが落ちてしまう場合があります。

そのため、エンパワーメントする際は、社員の特性を見極め、成長してもらうために仕事の権限を適切に委譲する必要があります。

4-3. 事業に損失が生まれる可能性がある

社員の能力と与えた権限のレベルが合っていなかった場合、失敗やミスが生まれ、業務内容によっては顧客満足度が落ちるなど、事業の損失に繋がる場合があります。

しかし、社員自ら考え、意思決定をしていくことに意味があるため、ある程度の損失は発生するものと想定しておくことが大切です。

5. エンパワーメントを高める方法

付箋と電球

エンパワーメントを効率的に高める手法には、構造的アプローチや心理的アプローチがあります。
構造的アプローチとは目上の人の権限を周囲に移す、関係概念という考え方です。これに対し心理的アプローチとは、自己効力感を高めるアプローチ手法です。
エンパワーメント向上のためにはこの両方のアプローチをバランスよく用いる必要があります。それぞれのアプローチ方法について詳しく確認しておきましょう。

5-1. 構造的アプローチ

構造的アプローチは社会学的な考え方に基づくアプローチ方法です。経営者や上司といったパワーのある人が、パワーを持たない従業員や部署にパワーを与えることが、構造的アプローチの効果的な方法です。
構造的アプローチは、従業員に対して大きな権限を付与する、大きな意志決定の場に従業員を参加させるなどの方法で実践します。
構造的アプローチを導入した場合、従業員は目標達成のための方法を自身で考え、発信していかなければなりません。権限や決定権を委譲することで主体性や積極性の向上を促し、エンパワーメントを高めていきます。
ただし、どのような権限をどれだけ委譲するのか、最終的な責任を誰が負うのかといった点は十分に検討しておく必要があります。また、権限の付与の際には適切な報酬を規定することも肝心です。

5-2. 心理的アプローチ

心理的アプローチとは、心理的なエネルギーや意欲を高め、業務の効率化ややる気につなげていくことをいいます。心理的アプローチでは構造的アプローチのように他者からパワーを与えず、自己自身の心のエネルギーを強めていくことが重要です。
仕事に対する自己効力感や有意味感を育て、やりがいを高めていくのが心理的アプローチの手法です。自身の仕事は目標や目的に対して価値がある、自身の意見が目標達成に影響を及ぼすといった意識は、心理的アプローチの内発的動機づけにつながります。
心理的アプローチは、給与を上げたり役職を与えたりといった外的な報酬で促すことは不適切です。心理的アプローチはあくまで、仕事に対する意欲や興味、関心など内面的な要因を重視し、モチベーションを高めていくという手法です。

6. エンパワーメントの導入ステップ

次に、エンパワーメント導入から風土の定着に向けて踏むべき4つのステップを紹介します。

6-1. エンパワーメント推進の目的や目標を共有する

エンパワーメントが効果を発揮するためには、現場社員たちの合意や共感が必要不可欠です。

そのために、対象者には必ずエンパワーメントを推進する理由や目的を共有し、正しい方向性で努力し達成してもらいたい目標を伝えましょう。

加えて、「社員たちにとってどんなメリットがあるのか」「目標が達成できればどんな状態になれるのか」など社員たちが得られるメリットを伝えたり、どういったサポート体制で進めていくのかなど不安要素を解消することで納得してもらいやすくなります。

その際に、目標の達成に向けた行動の自由を認め、失敗を許容することを伝え、それらを理解してもらうことで先述したエンパワーメントのメリットを生かしやすくなります。

6-2. 情報を公開する

認識を共有したあとは、必要な情報を公開します。ここでの情報とは、企業の方針や経営戦略、人事や経理などの経営に関する情報を指します。

これらの情報を開示する目的は2つあり、1つは社員を信頼しているという意思表示をすることで、社員の期待に応えたいという意思を強めるため、そしてもう1つは社員が企業の方針と異なる行動を取ることを防止するためにあります。

情報開示の際には情報が漏洩するリスクがあるため、入社して日の浅い社員や正式な雇用関係にない従業員には公開する範囲を制限するなどの対応をする必要があります。

6-3. 従業員に権限を与える

権限を与える際に、権限の範囲」「報連相の基準」「上司が意思決定する際の基準」は伝えておきましょう。

具体的には、「権限を与える際に従業員が意思決定できる範囲はどこまでなのか」、「どこからは事前に相談してほしいのか」、「上司は普段どのように意思決定しているのか」を明確にすることで、従業員が誤った方向性で仕事を進めるリスクが減ります。

仮に社員が正しく責任の所在を理解できていなかった場合、業務によってはプロジェクトが進まなかったり、上司や管理者の知らないところで物事が進んでいたというような事象が起きてしまいます。

ただ最終的には上司や管理者が責任を持つため、改めて失敗を恐れずに意思決定をすることを推奨しましょう。

6-4. フォロー体制を整える

権限を委譲してからそのまま社員に丸投げするのではなくて、定期的に進捗の確認をして、上司や管理者は業務状況の把握をし、いつでもフォローできるようにしておきましょう。

仮にトラブルが起きた際には、上司や管理者がフォローに入り、なぜトラブルが起きてしまったのか、次からはどうすれば良いのかを一緒に振り返ることでエンパワーメントの効果が生まれやすくなります

また、社員からも相談ができるような関係値であれば、より状況の把握ができ適切なフォローができるので、普段からコミュニケーションをとっておくことが大切です。

7. エンパワーメントの失敗要因

最後に、エンパワーメント導入を失敗する要因について2つ紹介します。

7-1. 上司や管理者に育成するという観点が抜けている

あくまで最後は上司や管理者に責任があるにも関わらず、それらを理解していなかったことが要因で社員に仕事を丸投げし、社員へのフォローが全くできておらず社員の自信喪失や積極性の低下を招いてしまう場合があります。

エンパワーメントの目的は、社員の主体性や自立性を育てることにあるため、権利委譲はその手段に過ぎないことを理解して取り組む必要があります。

7-2. 従業員に合っていない権利委譲をしている

デメリットとして記載したように、社員の特性に合っていない責任の振り方をしてしまうと事業の損失が生まれたり、従業員がうまく育たなかったりといった問題が生まれます。

緊急度、重要度の高い失敗のできない仕事従業員の能力に合っていない仕事は振らないようにすることが、エンパワーメント施策の成功に必要なことです。

8. まとめ

ポイントを指さす男性

VUCAの時代において、主体的に動き、正しい方向性で意思決定できる人材は戦力になります。

経営者や人事担当者の方は、組織強化に向けて今回ご紹介したポイントを意識しながらエンパワーメントの導入を進めてみてはいかがでしょうか?

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