DX時代に考えていくべき「リスキリングへの向き合い方」#リスキリングの潮流と事例イベントレポート |HR NOTE

DX時代に考えていくべき「リスキリングへの向き合い方」#リスキリングの潮流と事例イベントレポート |HR NOTE

DX時代に考えていくべき「リスキリングへの向き合い方」#リスキリングの潮流と事例イベントレポート

  • 組織
  • 人材育成・研修

※本記事は、主催企業や登壇者/登壇企業に内容を確認のうえ、掲載しております。

2023年1月27日にZホールディングス株式会社が主催者となり、「リスキリングの潮流と事例|Zアカデミアの取り組み」に関するイベントを開催。

株式会社エクサウィザーズ 石原氏をゲストに、Zホールディングス株式会社からは伊藤氏と田部井氏といった、リスキリングの実践において第一線で活躍されている方々が登壇し、

  • DX時代が企業にもたらす2つの影響とは?
  • リスキリングを用いたDX時代への備え方
  • 企業は今後、どのようにリスキリングと向き合っていくべきか?

など、それぞれの立場から知見や事例を共有していきました。

本記事では、同イベントの内容をイベントレポートとしてご紹介いたします。

■登壇者紹介

石原 直子|株式会社エクサウィザーズ  はたらくAI&DX研究所 所長

銀行、コンサルティング会社を経て2001年からリクルートワークス研究所に参画。機関誌『Works』編集長、人事研究センター長を務める。2022年4月、株式会社エクサウィザーズに転じ、はたらくAI&DX研究所 所長に就任。専門はタレントマネジメント、ダイバーシティマネジメント、日本型雇用システム、組織変革など。著書に『女性が活躍する会社』(大久保幸夫氏との共著、日経文庫)がある。近年は、デジタル変革に必要なリスキリングの研究などに注力

伊藤 羊一|Zホールディングス株式会社 「Zアカデミア」学長

日本興業銀行、プラスを経て、2015年よりヤフー。現在Zアカデミア学長としてZホールディングス全体の次世代リーダー開発をおこなう。またウェイウェイ代表、グロービス経営大学院客員教授としてもリーダー開発に注力する。2021年4月に武蔵野大学アントレプレナーシップ学部(武蔵野EMC)の学部長に就任代表作に60万部ベストセラー「1分で話せ」。ほか、「FREE, FLAT,FUN」「『僕たちのチーム』のつくりかた」など

田部井 伸弥|Zホールディングス株式会社 「Z AIアカデミア」ディレクション

ゲーム制作会社、Web制作会社を経て、2006年よりデザイナーとしてヤフー入社。デザイナーおよびデザイン部門のマネジメントとして複数のヤフーのサービス開発に携わる。その後、デザイナー新卒の集合研修を人事部門兼務という形で担当。2020年より人事部門を主務としてYahoo!アカデミアのディレイクションを務める。現在はZアカデミアのディレクターとして、Z AIアカデミアも含む数多くのZホールディングスグループ横断のプログラムに携わる

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1. リスキリングの潮流と事例

最初にゲスト講演として、エクサウィザーズ  はたらくAI&DX研究所 所長の石原氏より、「DXが社会にもたらすインパクトと、そのためのリスキリングの重要性および事例」についてお話しされました。

1-1.DXの時代がもたらす2つのインパクト

まず、「DX時代がもたらすインパクト」の1つ目は、「顧客の課題、世界の社会課題を、これまでにない形で解決できる」ようになったことです。例えば、「店舗で働く人が不足している」という課題があった際に、どのように解決していくべきでしょうか?

1つが「Amazon Goのような無人店舗を導入」です。無人店舗であれば、ただ入店して、欲しい商品を持って出るだけです。

もう1つの解決法は「完全自動セルフレジの導入」です。完全自動セルフレジとは、商品を入れたカゴをレジに置くだけで、商品のスキャンから袋詰めまで自動でおこなえるというものです。

ここで、皆様に質問したいのが、「どちらの解決法がお客様の体験を変えているか?」です。もしかしたら、無人レジよりも完全自動セルフレジの方が素晴らしい技術を使っているかもしれません。

ただし、「買い物をしたらレジで精算」というこれまでの当たり前は踏襲されています。Amazon Goは「そもそも、レジって要らないのでは?」という発想です。

DXが普及することによって、「これまでに無い形で課題を解決できる」ようになっていきます。また、「どういうテクノロジーをどう使うと、お客様の体験を大きく変えられるか?」という観点も重要だと考えています。

次に、「DX時代がもたらすインパクト」の2つ目は、どの会社にも「X day」が起こりうるようになったということです。

ひと昔前であれば、リアル書店に対してAmazonというネット書店が出来ました。

最近のもので言うと、Airbnbという旅館じゃなくても人が泊まれる仕組みや、Uberというタクシー会社以外の人が人を乗せて目的地まで届けてくれるというサービスが出来ました。

タクシー業界のライバルはタクシー会社や鉄道会社だと思っていたけど、全く異なる場所から全く見たこともないプレイヤーが現れて、市場環境をガラリと変えてしまうことが可能になったんです。

デジタルについて理解していないと、いつの間にか自分の会社が存続の危機に見舞われる可能性もあります。これがXデーです。

DXを通してチャンスを創出するためにも、新たな危機に備えるという意味でも、リスキリングが現在非常に重要になってきています。

1-2.「1+3のリスキリング」でDX時代に備える

リスキリングを進めるための考え方として、私はいつも「1+3のリスキリング」をご紹介しています。

この「1」は経営者のリスキリングを表していて、「3」は従業員のリスキリングを表しています。

私は特に「1」の経営者のリスキリングが重要であると考えています。なぜなら、経営者の意思なくして進むDXは存在しないからです。

DXを進めるために、経営者が「わが社はデジタルを用いて、どうなりたいのか」を示す必要があります。経営者でなくても、CXOの皆様がDXの方向性を語り、経営戦略の行方を社内の従業員にきちんと伝える必要があります。

誰にとっても変化は苦痛です。だからこそ、「どういう方向を目指すのか」「なぜリスキリングが必要なのか」が不明瞭だと、DXもリスキリングも上手く進まなくなってしまいます。

従業員のリスキリングを上手く進めるためにも、経営者を始めとする経営陣がデジタルについて熱心に学び、「会社のデジタル戦略」を従業員にきちんと示すことが重要です。

1-3.従業員のための3つのリスキリング

従業員のためのリスキリングには以下の3つが必要であると考えています。

特に注目していただきたいのは、「使いこなしのリスキリング」と「変化創出のリスキリング」です。

「使いこなしのリスキリング」は軽視されがちですが、リスキリングを実施していくための土台作りとしてバカには出来ません。新しいデジタルツールを導入したとしても、1人、2人とツールを活用できない従業員がいると、デジタルツールを導入した価値が無くなってしまうからです。

また、「変化創出のリスキリング」を実現していくためには「現場の社員がきちんとデジタルの言葉で課題を伝えるようになれる」ことが重要です。どこの企業においても、現場で働いている従業員が、企業が抱える問題を身近に感じています。

しかし、現場の社員とエンジニアには距離があることが多く、エンジニアが問題を適切に把握することが難しくなっています。そのため、なかなか問題に即したツールを導入できていないというのが実情です。

こういった事態を是正するためには、現場の従業員がエンジニアにも分かるように問題を説明できるほどに、デジタルリテラシーを高めていくことが重要です。ここが達成できれば、様々な変化が現場主導で進んでいきます。

2. 企業内大学「Zアカデミア」が取り組む、「Z文系AI塾」

続いて、伊藤氏、田部井氏から「Zアカデミアと、Z文系AI塾」について、その取組内容と事例などのご紹介がありました。

2-1.Zアカデミアとは「社員の3つの渇きに応える場」

Zアカデミアとは、Zホールディングス人事統括部が運営する企業内大学です。

「グループ社員の才能と情熱を解き放つ」をミッションとし、年間約200講座を開催し、延べ26,000名が参加するなどかなり大きな学習プラットフォームとなっています。

また、講座数だけでなく、満足度(アーカイブは除く)も10段階中平均8.4と社内でも高評価を受けております。

Zアカデミアを運営していく中で、意識していることは「社員の学びたい、交流したい、発信したいという3つの渇きに応える場となること」です。

ここで言う「渇き」とは、「従業員が本当はしたいと思っていること」を指します。

上記の3つの渇きを満たすということを意識することで、従業員がモチベーション高く学び続けられるプラットフォームを作ることができています。

そして、数あるZアカデミアの講座の中で、最近注目されている講座が「Z文系AI塾」です。

2-2.Z文系AI塾の取り組みと活用事例

「Z文系AI塾」は企画や営業職など、いわゆる「文系の方」が就くことが多いとされる職種も対象に、「AI知識・スキルの基礎を身に付ける」ということに焦点を当てた講座となっています。

実際に「Z文系AI塾」を受講後、AI人材として定義するスキル7項目全てにおいて、受講者のスコアが上昇するなど、高い成果を出しています。

2022年9月開始の「Z文系AI塾」第2期には、パーソルキャリア株式会社やディップ株式会社などの34名が、Zホールディングスグループ以外の会社からの受講者として初めて参加しています。

最後の会では、実用化を視野に入れた「AI企画」を出してもらうのですが、400を超える企画が出てきています。

そしてそこで出てきた中で、たとえば「ECサイトにおける商品のレコメンド精度向上機能」は、実際に、本格的な機能実装に向けた検討フェーズに入っていたりします。

さらに、バックオフィスを含めた複数の部署でも、Z文系AI塾で学んだ内容を活かして、以下のような業務に取り組んでいます。AIを活用する人材としてスキル向上を目指す時代がさまざまなところで見られるようになってきています。

3. パネルディスカッション「企業におけるこれからのリスキリング」

パネルディスカッションでは、現在のリスキリングについてのアンケートの結果をもとに、石原氏と伊藤氏にお話をいただきました。ここではその一部をご紹介します。

3-1. リスキリングに関するアンケート結果

3-2. 二人が感じている、現在のリスキリングについて

1年前は「リスキリング」という言葉の知名度は30%ほどだったので、ここ1年でかなり認知されてきているなと感じています。

ただ実際には、リスキリングを提供する事業者が盛り上がっているだけで、実際にリスキリングに取り組んでいる企業自体はそこまで多くないんじゃないかと。

だからこそ、「リスキリングを知らない人」が54%もいるんじゃないかと思っています。僕がリスキリングについて思っていることは2つあります。

1つ目は「リスキリング」を考える以前に、前提として「日本企業の学びに対する姿勢」を問題視しています。日本の企業の「社員の学びへの投資」も少なければ、社員もあまり学ぼうとしないという姿勢がそもそもおかしいと考えています。

素振りをしないで試合に出るプロ野球選手がいない様に、ビジネスの世界においても「学び続ける姿勢」は欠かせません。

2つ目は、DXはあくまでトランスフォーメーションであるということです。リスキリングは「学び」という面に注目されがちですが、デジタルを学ぶだけでなく、どうやって経営変革に活かしていくのかというところまで考えるべきだと考えています。

ただプログラミングを学べばいいという話ではない。だからこそ、石原さんが先ほどおっしゃっていた「まずは経営者からリスキリングを始めるべきだ」という話は非常に納得できました。

3-3. アンケート結果をどう捉えるか

先ほどの話の続きになりますが、企業も従業員に対しても「本当にこれで良いのか」と思います。

日本全国の企業に「どんどん状況が変化していく中で、そのままで勝てますか?」と強く問いたいです。「勝てるわけないんですよ、だからやりましょう!」と憤怒に似た感情を持っています。私も伊藤さんに近い思いがあって、「やるかやらないかというレベルの話ではなく、やる以外の選択肢は無い」と考えています。

もし「やらずに済むかもしれない」と考えている方がいたら、考え方を改める必要があると思います。また、私がよく受ける質問・ご意見としては、

  • 「シニア世代の社員にリスキリングって意味ありますか?」
  • 「リスキリングで学んでもらったけど、結局ビジネスの現場で使ってないです」

といったものがあります。

こういったことを聞くと、「価値を生まない人が増えても良いと思っている」「戦略的なリスキリングが出来ていない」と感じてしまいます。

前提としてリスキリングとは「ビジネスで勝つための人材育成」なので、そういった目的を伝えずに「ただ従業員に学んでもらいたい」という気持ちが先行していると、リスキリングが上手くいかないです。

しっかりと経営者が「デジタルを用いて、会社をどうしていきたいのか」を打ち出した上で、それに基づいてリスキリングを進めていくことが重要です。

3-4. 企業はリスキリングとどう向き合うべきか

僕も「リスキリングは企業が勝つためにおこなう人材育成」という捉え方をしています。

それに加えて、弊社のZアカデミアは「一人ひとりの才能と情熱を解き放つ」をモットーに、リスキリングに向き合っています。

Zアカデミアで各講義をアラカルト形式で提供しつつ、従業員一人ひとりに「あなたは何を考えているの?どうなりたいの?」という姿勢でリスキリングに取り組んでいます。

これからも「企業が勝つための人材育成」と「従業員一人ひとりに焦点を当てる」という両軸のバランスを取りつつ、リスキリングに取り組んでいければと考えています。従業員側の自発的な学びを期待しすぎるのではなく、企業が率先して「どういったコンテンツで学んでいくのか」を用意することが重要だと考えています。

Zホールディングスはもうずっと 「才能と情熱を解き放つ」をモットーに従業員の人材育成に力を入れてきているからこそ、「Zアカデミア」「Z文系AI塾」のような学習プラットフォームで、社員の自発的な学びを引き出せるのだと思います。

社内に多様な経験を積んで講師ができるほどの人がいるのも、Zホールディングスだからこそ、とも言えます。

ただ、従業員の学びへの投資が進んでこなかった企業では、社員が自発的に「これからの事業で必要になるスキルを学ぶ」のは難しい側面があるかもしれません。

そのため、改めてリスキリングは企業側が主導でおこなっていくことが重要だと考えています。

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