DX推進の歩留まりやDX人材の不足に悩む企業は多く存在します。
人手不足が社会課題化する日本企業において、社員ひとりひとりのスキル、及び組織全体の強化は事業成長にも関わる重要なポイントとなるでしょう。
とはいえ、「どんな人材が不足しているのか」、「既存社員が強化すべきスキルは何か」といった不足要素の具体化ができていないというケースも多く見受けられます。
本記事では、2023年10月10日に開催したDX Action Summit 2023より、丸井グループと合弁会社を設立し、丸井グループの組織変革や人的資本戦略など支援している株式会社グッドパッチCEOの土屋氏と、クラウド活用やITなどDXコンサルタントとして幅広く活躍する株式会社INDUSTRIAL-X代表取締役CEOの八子氏の講演内容をご紹介します。
現代において必要な「人材開発」の着眼点や、今後求められる「組織改革」について深掘りしていきます。
※本イベントはアーカイブ動画を配信しています。実際の講演をご覧になりたい方は、こちらからアーカイブ動画をご視聴ください。
土屋 尚史|株式会社グッドパッチ 代表取締役社長 / CEO
1983年生まれ、長野県佐久市出身。複数企業で営業やWebディレクターを経験し、2011年3月に渡米。サンフランシスコのデザイン会社でスタートアップ支援に携わった後、2011年9月に株式会社グッドパッチを設立。2020年東証マザーズ(現:グロース)上場。2023年6月より株式会社丸井グループの執行役員CDXOに就任。
八子 知礼|株式会社INDUSTRIAL-X 代表取締役CEO
1997年松下電工(現パナソニック)入社、宅内組み込み型の情報配線機器の設計開発から製造移管および介護機器の商品企画開発に従事し、製造業の上流から下流までを一通り経験。その後、複数のコンサルティング企業に勤務した後、2016年4月より(株)ウフルに参画、様々なエコシステム形成に貢献。2019年4月に(株)INDUSTRIAL-Xを起業、代表取締役に就任(現職)。クラウドやIoT、DXコンサルタントとして多数の企業支援経験を有する。著書に「図解クラウド早わかり」「DX CX SX」など。
目次
1. 企業のDXを“デザイン”で支援する株式会社グッドパッチ
本講演では、株式会社グッドパッチの代表取締役CEOである土屋さんにご登壇いただきます。
グッドパッチさんの取り組み事例や土屋さんの体験談から、DXを推進する中で企業が抱えてしまう人材リソース不足や社内でのノウハウ不足に対する解決策を、従業員の育成プロセスや組織のあり方といった観点からディスカッションをできればと思います。
土屋さん、本日はよろしくお願いします。
皆さん、こんにちは。グッドパッチの土屋と申します。私は現在40歳になりますが、グッドパッチを起業したのは28歳(2011年)の時になります。
創業当初は弊社は、デザイン業界の中でも珍しく、いわゆるUIやUXといったデジタル領域のデザインに特化した会社として様々なクライアント企業をデザインの側面から支援してきました。2020年に東証マザーズ(現:東証グロース)に上場し、現在で約3年が経過したといった状況です。
私自身は、今年から丸井グループの執行役員CDXOにも就任しましたので、本日はそのことについてもお話ができればと思います。
ありがとうございます。それでは、早速ディスカッションを進めていくことができればと思います。
まず、ディスカッションの前段として、グッドパッチさんの事業やDXに関する取り組み内容についてお伺いできますでしょうか?
グッドパッチは、『ハートを揺さぶるデザインで世界を前進させる』というVisionを掲げて事業をおこなっています。
この10年くらいで「デザイン」という言葉の認識は広がりつつあると感じていますが、「デザイン」という言葉を聞いた際に、まだ多くの皆様が「形」をカッコよくすることや画期的な「機能」を付けることをイメージするのではないでしょうか。
我々は「価値を生み出すプロセスの全て」がデザインであり、その力は本当に計り知れない価値があると考えています。そして、その『デザインの力を証明する』ことをMissionとしております。
600名以上のデザイン人材を抱えるデザインカンパニー
現在、グッドパッチには正社員が約240名、そのうち150名くらいがデザイナーになります。また、フルリモートデザイン組織「Goodpatch Anywhere」にはフリーランスデザイナーも含めて約500名のデザイナーが在籍しており、全体で600名以上のデザイン人材を抱えています。
弊社のサービスはクラウドソーシングと誤解されてしまうこともあるのですが、いわゆるクラウドソーシングとは異なり、能力の高い優秀な人材を多く抱えているので、クライアントが抱える難しい課題にも対応することができます。
2つの事業セグメント(デザインパートナー事業・デザインプラットフォーム事業)と3つのデザイン領域(Experience Design領域・Brand Experience領域・Business Design領域)があり、それぞれに組織が存在する形になっております。
現在、あらゆる産業と分野で「デザイン」のニーズが広がっていますので、我々の支援の幅もそれに従って広がっています。
2022年4月、丸井グループとグッドパッチによる合弁会社「Muture」を設立
また、先ほど私が丸井グループの執行役員CDXOであることをお伝えしましたが、実は昨年に「Muture」という合弁会社を丸井グループさんとお互いに出資する形で立ち上げました。
そして、僕自身も「Muture」を作るだけでなく、丸井グループのDX推進にコミットする形となり、CDXOという役職もいただいてご支援させてもらっています。
土屋さん、ありがとうございます。
グッドパッチさんの事業が、「デザイン」という1つのキーワードからUIやUXのみならず、企業組織や組織戦略のデザインといった多面的な領域に広がっていることがわかったのではないかと思います。
2. 企業が抱える共通課題は「人手不足」
では、まずはDXを進める上で企業が抱える共通の課題について、ディスカッションを進めていきたいと思います。
土屋さんが様々な企業のご支援をされる中で、どの企業にも共通して出てくる課題としては、どのようなことがありますか。
まず1つ目は、新しい事業が立ち上がらない。もしくは、立ち上げたとしても顧客ニーズやマーケットにフィットしないこと。
もう1つは、大企業だと特にそうなのですが、その事業を推進できる人材が社内におらず、また、育てられない。そして、採用できないことです。
これが、企業のDXを進める上での大きな課題として、必ず語られる部分かなと思います。
まさに今回のイベントのテーマでもある「人材不足」という部分だと思うのですが、やはり採用はなかなかうまくいかないのでしょうか。
採用マーケットは、年々難しくなっていると感じています。
昔は、大企業であれば一定額のお給料を出すことができたので、人材を採用できた側面がありました。反対に、スタートアップやベンチャー企業のような小さな会社は、お金を出すことができませんでした。
しかし、現在はスタートアップにいた方が給料高いこともあります。スタートアップの方が稼げる状態で、かつ雇用の流動性も上がっているため、人材はどんどん魅力的に見える会社にジョインしていきます。
その点で、大企業は様々な組織のしがらみや社内政治的な要因に巻き込まれてしまうイメージが強く、スタートアップで自分のミッションを持って、カルチャーの近い人たちと一緒に働く環境を選ぶ方も多くなっています。
やはり、昔よりもスタートアップの存在感が明らかに大きくなっているので、人材を集めるのは相当大変です。
人材の「採用」も「育成」も難しくなった今の企業
そうですよね。では、企業の中で育成しようという話が当然ながら出てくると思いますが、その辺りはどのようにご覧になられていますか。
この数年で「DX」や「リスキリング」というワードが広がりましたが、人事部が主導する研修では「プログラミングやデザインを学べばいい」といった手法論によったものになりがちですよね。
もちろん、プログラミングやデザインも最低限は知っていた方が良いとは思います。しかし、最終的にはそれらを組み合わせて、企業の中で新しい価値を作る推進力や変革力のある人材を育てなければなりません。
実際に事業を推進する環境の中で、プログラミングやデザインといった必要なスキルが身に付くわけで、本質的に何をやりたいのかが明確でないとおかしな方向に走ってしまいますよね。
はい。また、大企業の場合は、せっかく人材を育てたのに、社員が自分自身で事業をやりたいと思って辞めてしまうケースもあると思います。
企業側がある一定の裁量権を渡したり、出資をしたり、柔軟にその方々へ機会提供ができれば、出て行かないかもしれません。しかし、今までのしがらみやルールの中で、それが柔軟にできず、結局別の会社に行ってしまったり、会社を起業するケースも当然あります。
3. 企業の「人手不足」に対するアプローチ方法とは
人材を社内にとどまらせるためには、企業の中で活躍する場を提供しながら育成を仕掛けていくことが大事になりますね。
では、人手不足やノウハウ不足でなかなか事業が前に進まないといった課題に対してのアプローチ方法については、具体的にどのように考えれば良いでしょうか。
伴走型の支援で企業にノウハウをインストール
我々は、そうした課題を抱える企業に対する伴走支援にソリューションの本質があると思っています。一般的なコンサルティングなどの支援では、企業の課題に対する解をプレゼンなどで提示して進めていく形が普通でした。しかし、これだと企業側にノウハウが残りません。
そのため、我々はどのような課題に対しても、一緒に企業様と考え、一緒にディスカッションし、OJTのような形で進めるアプローチを取っています。
このような関わり方を進める中で、より中長期で深いパートナーシップが必要なケースも生まれています。そのため、伊藤忠テクノソリューションズさんとは資本業務提携の中でお互いの社員の出向によって人材交流を進めたり、サイバーエージェントさんとは共創型のチームを作ってDX支援を進めていたりもします。
また、先程ご説明した丸井グループさんとのジョイントベンチャーの立ち上げも、このようなアプローチの形の1つです。その場でお客様と一緒に動きながら、私たちが持つ社内のノウハウもお客様に渡していくことを進めています。
新しく会社を作り、デジタル人材の受け皿に
また、丸井グループの話をもう少し背景の部分から深掘りしていきたいと思います。
丸井グループは、一般的に商業施設などの小売業のイメージが強いと思いますが、現在はFinTech分野の売上や利益がとても上がっていたり、かなり前からサステナビリティに関する活動を実施していたりと、経営的にかなり先進的な取り組みを行っています。
2年半ほど前、青井代表とはじめてお会いしたのですが、当時はそんな丸井グループに課題があるのか、我々がデザインを通してお手伝いできる余地があるのか、正直わかりませんでした。
そのため、役員の方や現場のリーダー層の方々へのインタビューを実施し、約3ヵ月程度、丸井グループの組織課題のリサーチをさせていただいたんです。そして、これから会社としてデジタルな社会に適応していくためには、社内のデジタル経営人材の育成と採用が、やはり最も解決すべき課題であると考えました。
しかし、これは丸井グループの中だけで解決することは難しいと思いました。なぜなら、丸井グループは、老舗ブランドとしての信用力がある一方で、デジタルに強い人材や若い世代からすると、そのブランドが重しになってしまうからです。要するに、新しい挑戦をできるイメージが湧きづらい状況だったんですね。
そこで、第3のブランドとして丸井グループとグッドパッチが出資する形で合弁会社を作り、そこをデジタル人材の受け皿にできないか、と提案をさせていただきました。大胆な提案でしたが、即決いただき、丸井グループから3人、グッドパッチからデザイナー2人が出て、2022年4月に「Muture」がスタートしました。
この会社運営に関して、丸井グループとグッドパッチは社外取締役のような形で、ガバナンスを利かせる程度の役割しか持っていません。事業推進はその5人で進めていて、我々としても自ら課題設定をしながら運営することをミッションに課しています。
両社とも感じる「人手不足」解消に対する確かな手応え
現在、「Muture」はスタートして1年半程が経ちますが、社員数は5名から12名に増えています。そして、丸井グループ単体での採用であれば絶対に応募してこないであろうデジタルマーケットで活躍する優秀な方々が入社しており、手応えを感じています。
また、たとえば丸井グループの経営陣や計画室の方々からすれば、ジョイントベンチャーを作った後はできるだけ短期間で成果を出してほしいという要望が少なからずあると思いますが、Mutureではメンバー自身がグッドパッチと同じく伴走支援型のアプローチをおこなうことを目指しており、中長期的な成果にコミットする組織体制が出来上がっています。
もちろんMutureのメンバーが直接UIをいじれば、良いUIができるかもしれません。しかし、彼らが重視しているのは、短期的な成果よりも、本質的に事業に関わる人々が変わることです。そのため、ただ顧客の要望を受け入れるような業務の進め方ではなく、顧客目線で課題を抽出し、それに対するソリューションを考え出すことに重点を置いています。
短期的な結果が出なくても、メンバーの意識が変わり、自らの頭で考えることでトライする回数が確実に増えているので、人材育成の観点でも良い取り組みだったと感じています。
異なる組織が交わることで、企業変革にプラス効果
また、企業を変革する際、外部の人間は「よそ者」として警戒されがちですが、Mutureは半分が丸井グループ出身者であるため、「丸井グループ内部の人間」という顔で動くことができます。また、もう一方では、グッドパッチの顔も持っているので、外から空気を読まずに「こうしたらいいじゃないか」と言うこともできます。
内部の人間は、様々な部署に気を使わないといけなかったり、背景がわからないといけなかったりして、回りくどいやり方をしている場合も多いと思います。そのため、「言える人がいる」ことはすごく大事です。
このように、現段階でも非常に良い感触があるので、丸井グループとグッドパッチで実施したこの取り組みは、本当にイノベーションを生み出すようなアプローチになりそうだと思っています。
両社がリスクを取りながら人材を出し合って進めていくことで、しっかりと現場に根ざした形で進めることができているのがすごいです。また、外からでないと言えない箇所は、外の人としての顔をうまく使うことで、うまくワークしてますよね。
大きな会社になればなるほど、今までの背景や流れを理解して変革を進める必要がありますが、同時になかなか簡単には変えられない部分があることに気付くと思います。
たとえば、「Mutureでアジャイル開発を取り入れたい」という要望がありました。この数十年、様々な企業がアジャイル開発に取り組んでおり、その手法に対して異論を唱える人はいません。しかし、実際のシステム開発はウォーターフォールに陥ってしまっていました。
この問題について本質的なところに切り込むと、それは意思決定とそのたびに行われる発注システムにありました。従来は、何かを実行する際に見積もりを取り、その金額が100万を超える場合、子会社の社長はその詳細まで把握せずに、稟議書を書いて承認を得るというプロセスがあり、これがアジャイル開発を阻んでいた原因でした。
したがって、アジャイル開発を実現するためには、この決裁構造を見直さなければなりません。これが、Mutureでの取り組みから明らかになりました。
このように本質的な企業変革においては、組織構造上の課題に焦点が当たることになります。このようなケースは、恐らく丸井グループだけではなく、他にも様々な会社で起こすことができるのではないかと思います。
4. 組織変革をおこなう企業が目指すべき姿
土屋さんが、かなり踏み込んだアプローチをしていて、企業変革の本質に迫るようなところまで掘り下げた上での解決策を当て込んでおられることがわかりますね。
それでは、最後に組織改革によって目指すべき企業のキーワードについて、土屋さんが今のように組織変革を進めていった場合に、目指している「強い組織」や「ありたい組織」はどんな組織でしょうか。
有り体に言うと「変化に強い組織になる」ということになります。現在も生き残っている企業は、変化に適応するために組織や従業員のマインドセットを変えてきた企業だと思います。
私は、この10年の組織変革事例の中で、最も大規模で複雑な変化を遂げた企業は、マイクロソフト社だと考えています。サティア・ナデラCEOの書籍『Hit Refresh(ヒット リフレッシュ)』は、日本ではあまり耳にしないかもしれませんが、IT企業の変革において非常に重要な内容が語られていると思います。
マイクロソフト社は、私がWeb業界に足を踏み入れた2000年代、イノベーションを阻害する会社というイメージがありましたが、サティア・ナデラ氏がCEOに就任後は、グローバルで何十万人もの社員がいる組織の企業文化を、変化に強いグロースマインドセットを持った企業文化に大きく変えました。
マイクロソフト社としてどうありたいかを言語化し、それまでの独占的なやり方から、協調関係や共創のパートナーシップへと転換をおこないました。たとえば、AZUREにおいては様々なオープンソースの言語を取り入れたり、LinkedInやGitHubを買収した際に強いガバナンスを行うのではなく、連携を取る方針に切り替えたりしました。
これは、今の日本企業にも参考になる内容ですので、『Hit Refresh(ヒット リフレッシュ)』を読んでいない経営者や人事担当者の方がいれば、ぜひ読んでみてください。大企業でも変革は可能ですし、変革の本質を読み解くことは非常に有益だと思います。
5. 最も大切なことは「経営陣のコミットメント」
ありがとうございます。企業変革の事例としてマイクロソフト社の話をいただきましたが、それでは土屋さんがこれから組織を強化していくために必要だと考えていることやご自身が自分の組織で取り組みたいと考えていることについてお聞きできますでしょうか?
また、視聴者から質問で、「土屋さんは、ジョイントベンチャーという形が最適だと考えているのか」といった質問来ていますので、その点についても併せてお答えいただければと思います。
ジョイントベンチャーについては1つの選択肢ですが、企業のアライアンスの形にはいくつものパターンがあるので、必ずしもジョイントベンチャーにこだわる必要はないと思います。
今回、ジョイントベンチャーを選んだ理由としては、1つはマーケットにわかりやすく示す方法としての側面です。そして、もう1つは、会社を作るというメッセージが、共同事業よりも強く映るため、内外へのコミットメントがより強調される点です。
一般的に業務提携をしても、リリース後に何も変わらないケースもあります。これを否定するつもりはありませんが、変革をもたらす際には、お互いの経営層からのコミットメントが重要です。そのため、お互いのコミットメントを示せる方法が重要だと考え、丸井グループとの関係では、お互いが出資してジョイントベンチャーを形成することが最適だと判断しました。
しかし、うまくいかない場合にはリスクやコストの問題も考えられます。運が良かったのは、お互いのカルチャーや経営陣の根底に共通する部分があったからです。だからこそ、今回のジョイントベンチャーはうまく機能していると思います。
また、Mutureの役員会には、青井代表が毎月参加し、彼自身もコミットしています。会社代表の参加と意見表明は非常に重要ですし、また、それが身内だけでなく、外部の人間を巻き込むことも含まれるんですね。
こうした巻き込みとコミットメントの強化は重要で、丸井グループの企業変革が失敗した場合は、私にもマイナスが及ぶわけですから、必ず成功させなければならないと思っています。
このように、どのような企業であっても何かを変革する場合は、トップのコミットメントが100%ないと成功しません。繰り返しになりますが、変革において、トップのコミットメントは極めて重要です。
トップが変革を望み、それに時間を投じていかない限り、経営企画や人事部、事業部の努力もあまり意味を持ちません。経営トップがそこに時間的投資とマインドシェアを提供しない限り、変革は難しいと感じます。なので、このようなトップのコミットメントを引き出すサポートが必要だと考えています。
成功要因は「トップがコミットすること」ということですね。では、そういった企業や組織が、今後も継続的に成長するためには、どのようなことが必要になりますか。
継続的な成長を続けるためには、成長する可能性のある事業をさらに成長させていくことに奔走しながら、常に変化するマーケットの中で2本目、3本目の矢を打ち続けることが必要です。そのため、この事業を生み出せる組織の土壌や文化を作ることがやっぱり重要になります。
もちろん社内の人材で実現できれば良いですが、限界は当然あります。社内で生み出せないものは社外の方もうまく使いながら変革をしていく、その土壌を作っていくことが必要です。本質的にはこれも組織戦略だと思います。
事業の成長に再現性を持たせるものは、組織文化やその組織文化をドライブさせる組織制度です。社員が居続けてもらえるようなミッション設定が必要ですので、そういう土壌をしっかり作ることが重要だと思います。
ありがとうございます。本日のトピックの中で、土屋さんから企業が直面する人材不足という課題に加えて、教育と変革を同時に進めることが重要だというお話をいただきました。
グッドパッチさんは、元々プロダクトのデザインから始められ、今では組織開発やジョイントベンチャーのデザイン、事業戦略の構築まで手がけ、最後にはカルチャーやマインドセット、新たな事業や組織のDNAなど、有形から無形へとデザインの範囲が拡大しているという点は、私自身も大いに示唆に富むものでした。
ここで、本当に名残惜しい思いですが、時間が迫ってまいりましたので、最後に土屋さんから一言いただき、この講演を締めくくらせていただければと思います。
本日の話題は1つのケース例に過ぎませんが、その中で本質的なのは、企業が目指す方向性やビジョンをはっきりさせることです。なぜその方向を選ぶのか、その理由を明確にし、それに共感する人材を集めることが重要だと思います。これは採用に限らず、パートナー企業も含めて会社に関わり、コミットしたいと思える理由があるかどうか、ということです。
お金があるから関わるのではなく、会社のミッションやコミットメントに共感し、社内で働きたいと思える人々が集まるような方法を考えることが重要です。このミッションの設定と発信方法が、適切な候補者を引き寄せる鍵となるでしょう。
重要なのは、この取り組みにトップがコメントやコミットメントを示すことです。DXの成功には、トップ層のコミットメントが不可欠だと言えます。
今日お話ししている中で、トップのリーダー層の方がどれほどいらっしゃるかは分かりませんが、もし不在であっても、経営企画や人事部の方々がこの点を引き出す努力をすることが重要だと思います。
土屋さん、本日はありがとうございました。
※本イベントはアーカイブ動画を配信しています。実際の講演をご覧になりたい方は、こちらからアーカイブ動画をご視聴ください。