これからのキャリア形成のためのヒントとなるリカレント教育とは|ドコモgaccoイベントレポート |HR NOTE

これからのキャリア形成のためのヒントとなるリカレント教育とは|ドコモgaccoイベントレポート |HR NOTE

これからのキャリア形成のためのヒントとなるリカレント教育とは|ドコモgaccoイベントレポート

  • 組織
  • 人材育成・研修

※本記事は、株式会社ドコモgacco様に寄稿いただいた記事を掲載しております。

2022年11月7日にドコモgacco主催で開催された「これからのキャリア形成のためのヒントとなるリカレント教育とは」。立教大学経営学部中原淳教授や北海道大学情報基盤センター重田勝介准教授など、「学び」の専門家を招き、ドコモgacco代表佐々木基弘を交えて「リカレント教育」についてお話いただきました。

本記事では、同イベントの内容をレポートとしてご紹介いたします。

「社会人の学び直し」「リスキリング」「リカレント教育」「DX人材育成」など様々なキーワードが世にあふれる今、企業人事が人材育成の観点で考えるべきことや、個人の学び直しを捉える上での参考にしていただければ幸いです。

こんな方におすすめ
  • リカレント教育や学び直しが叫ばれるようになった背景を知りたい
  • キャリア形成のためのリカレント教育について知りたい
  • 何を学べばいいか、どう学べば知りたい

中原淳|立教大学 経営学部 教授(人材開発・組織開発)

立教大学大学院 経営学研究科 リーダーシップ開発コース主査、立教大学経営学部リーダーシップ研究所 副所長などを兼任。博士(人間科学)。専門は人材開発論・組織開発論。北海道旭川市生まれ。東京大学教育学部卒業、大阪大学大学院 人間科学研究科、メディア教育開発センター(現・放送大学)、米国・マサチューセッツ工科大学客員研究員、東京大学講師・准教授等をへて、2017年-2019年まで立教大学経営学部ビジネスリーダーシッププログラム主査、2018年より立教大学教授(現職就任)。「大人の学びを科学する」をテーマに、企業・組織における人材開発・組織開発について研究している。

重田勝介|北海道大学情報基盤センター准教授

大学院教育推進機構オープンエデュケーションセンター副センター長・オープン教育開発部門長。大阪大学大学院卒(博士 人間科学)。東京大学助教、UC Berkeley Educational Technology Services 客員研究員をへて現職。研究分野は教育工学・オープンエデュケーション。

佐々木基弘|株式会社ドコモgacco代表取締役社長

一橋大学社会学部卒、2000年NTTドコモ入社。営業部門、経営企画部門を経て新規事業開発・戦略部門ではデジタルコンテンツビジネス戦略や新規事業開発に従事。その後人事部門にて人材配置やキャリア採用に従事。2020年よりドコモgacco代表取締役社長。

【豪華ゲスト多数登壇!】変化に負けない「強い組織」を育むためにHRが果たすべき役割を考える大型カンファレンス『HR NOTE CONFERENCE 2024』

「人的資本経営」「ウェルビーイング」「DEI」といったトレンドワードが、HR領域だけでなく社会全体に拡がり始めた昨今。自社組織に漠然と"停滞感"を感じ、うちは取り残されていないだろうか?」「何かやらないといけないのでは・・・といった不安や悩みを抱える人事・経営者の皆様も多いのではないでしょうか。

本カンファレンスでは、HR領域の有識者の皆様に、様々な組織課題を解決するためのアプローチ方法について解説いただきます。強い組織を育む企業が実践している事例には、組織強化に必要な考え方や人事が果たすべき役割について学べるポイントが多くあります。ぜひ有識者の皆様と一緒に、組織を強化する「共通原理」について考えてみていただければと思います。

1. 「リカレント教育」の現状と背景

イベント冒頭では、キャリア形成や日本のリカレント教育の現状について、いくつかの調査など前提情報を重田さんにお話いただきました。

ワシントン大学ライフセンターが10年ほど前に出した調査によると、生涯の学びに占める正規教育の割合は非常に少ないことがわかります。つまり、社会における教育の多くの役割を担うのが、非正規の教育です。大学での学びも当然大事ですが、卒業して働きながら学ぶ時間が重要ということです。

キャリア形成のために、具体的に何をしているかという経産省の調査では、「仕事以外での教養知識の習得」「業務に役立つ資格取得」「英語等の外国語学習」に投資をしているという結果があります。必ずしも今の仕事に直接役立つことばかりやってるわけではないということになります。

一方で、キャリア形成に積極的でない人の理由は「気持ちの余裕がない」「時間的余裕がない」「具体的な方法がわからない」となっており、本人の余力をどうつくるかと、実際どう行動すればいいのかをサポートする必要があると見えてきます。

また、企業と働き手の間に「何を学ぶべきか」についての意識にはギャップもあります。企業は、生涯を通したスキルと技能の獲得を重視している一方で、働き手は幅広い人と関係を構築したり、今の仕事の中で実績を確立できる学びを求めています。

幅広く「リカレント教育」といっても、企業や働き手によって、様々な方向性があるといえます。

その中でも一つ言えることは、キャリアが複雑になり、学び直しが前提となる社会では、教育制度外での学びの場が必要になるということ。それは、私が研究するオープンエデュケーションでも言われてきたことです。

あらゆる分野の専門家になったり、新たな専門家になるための知識と技術を学ぶ機会を増やす。さらに、学歴に依存しないような能力の育成や証明が必要になると考えています。

また、日本におけるリカレント教育では、働きながら学ぶことが求められます。

元々、リカレント教育というのは、学校教育を生涯にわたって分散させようとする理念で、職業上必要な知識技術を習得するためにフルタイムの就学と就業を繰り返すことでした。しかし、終身雇用や新卒一括採用の前提がある日本の社会では、ニーズがすこし違い、就業しながら学ぶことや、今後のキャリア形成を踏まえた学習内容を選べることが大事です。

そういう意味でも、オンライン学習との組み合わせが有効だと私自身は考えています。

2. 社会の変化に適応し続けるために学び続けることが求められる

前提状況を確認した上で、本題の一つ目のテーマである「なぜ働きながら学ぶのか」という点について、中原さんは「仕事人生が長くなること」と「変化が激しいこと」の二つに尽きるといいます。中原さんは、河合隼雄さんの『大人になることのむずかしさ』という書籍に出てくる話を引用して説明しています。

古代社会は非常に安定的で、かつ変化に乏しかったため、人は一生のうちに、ひとつの「出来上がった世界」にしか相対しませんでした。そのため、一度子どもから大人になると、大人のままでいられたのです。

しかし、近代においては、社会は時代とともに変化しており、一度大人になっても、同じところに立ち続けていると、次世代の子どもと同じ状態になってしまう。だから学び続けなければならない、ということです。

2020年の死亡年齢の最頻値である女性93歳、男性88歳という年齢から健康寿命を考慮しても、70代前半ぐらいまでは働かざるを得ない、もしくは働ける状態にあると考えられます。なぜ学ぶことと付き合い続けなければならないかは、長い仕事人生の中で時代が移り変わるので、その時代ごとに自分を適応しなければならないということに尽きると思います。

ただ、他人に強制される学びはしんどいと思います。自分で選んだ学びの方が楽しいし、続けられます。“意識高い系”の学びに手を出して嫌になるよりも、ハードルを下げて、コツコツやった方がいいと思います。

また、学びというとゼロから新しい何かを始めなければと思う方もいるかもしれませんが、自分のこれまでを否定する必要はありません。今までやってきたことを否定せずに、追加で何かかけ合わせたらいいんです。

仕事人生を完走するために、学ぶこととうまく付き合っていけばいい。大人の学びはやるかやらないか本人の自己選択なので、どうするのかを私も含めて全員で考えていかければならないと考えています。

3. キャリア形成のためのリカレント教育3つのポイント

変化し続けることが求められる中、キャリア形成のためにリカレント教育をどう活用していけば良いでしょうか。大事なことは「仕事につながる学び」であることだと中原さんは説明します。

学び直し、リスキリング、リカレントなど様々な言葉が出ていますが、要するに、仕事に繋がる学びが大事で、自分のキャリアは自分でデザインしましょうと言っているだけです。

その上で、日本の場合は長時間労働で仕事外で学ぶ時間が作れなかったり、新卒一括採用で長期雇用の原則があるので、仕事を辞めるリスクが高いことは事実です。そういう意味で、重田先生が言うようにオンラインの活用はとても重要になります。私も、人材開発・組織開発のプロフェッションを養成するためのオンライン大学院を実施して、修了生もどんどん出しています。

そのときにポイントとなることが3つあります。「共に学べる」「仕事に生かすことができる」「最先端の知識が学べる」の3点です。

最先端の情報に触れたとしても、共に学ぶ仲間がいなかったら続きませんし、仲良しチームができても仕事に生かせなければ意味がありません。共に学ぶ仲間がいて、自分の業務に生かすことができ、そして最先端の内容であれば、成長実感が高まると考えています。

4. どう学ぶか、何を学ぶか?

仕事につなげるという視点を持ち学ぶことが重要だという話を聞いた上で、具体的に何を学べばいいのか、参加者からも数多くの質問をいただきました。中原さんが提唱する一つの方法は、今の仕事を軸足として、周辺領域を学ぶことです。

どこの学術誌にも載ってない僕のオリジナル理論ですが、学びとキャリアは「ピボットターン」と考えています。

バスケットボールのピボットターンのように、自分の片足をこれまでの業務から動かさずに、片足でプチチャレンジをする。たとえば、いつも使ってる営業データをエクセルじゃなくて相関分析してみるとか、担当経験のないクライアントにいつもの台詞とは違う形で提案してみるとかでもいいと思います。

ほんのちょっとでもいいから背伸びをする。今現在の能力でできることよりもほんのちょっとだけ背伸びすると、今日の背伸びは明日の日常になるんじゃないかなと考えています。自己効力感がないところから学びは始まらないので、ハードルを下げて、少しでもいいからコツコツできることをやった方が長続きすると思います。

言われた仕事に取り組むときに、自分なりの一工夫を加えた瞬間、受動的な仕事から能動的な仕事に変わって、それがピボットにつながっていくように感じました。

自身の仕事の延長になるような学びを選択することが重要。言い換えると、誰にでも当てはまる「これを学んでおけば間違いない」という領域は存在しないとも言えます。

よく何を学べばいいか聞かれますが、一生食いっぱぐれない潰しの効く学びなんてありません。結局、今ある環境の変化に対して学び続ける他ないということを、僕もみなさんも覚悟を決めなければなりません。

だから、何を学ぶかは、自己決定する必要があります。これまでの人生で、何を学ぶか自己決定したことは少ないかもしれませんが、僕からのヒントは3つあります。

1つ目は「好きを活かす」自分の好きなことや興味があることから考えてみる。2つ目は「心残りを活かす」やりたかったけどできなかったことや、後悔していることに取り組む。3つ目は「これまでを活かす」これまでの仕事につながることをやってみる。この3つから考えて、何を学ぶかを選択してみたらいいと思います。

大人の学びは自由なので、やってみて違うと思ったら他のことを学べばいいんです。

大原則として、キャリアというのは「アクション」です。僕は「キャリアアクション理論」と呼んでいますが、アクションするからわかるのであって、わかるからアクションするんじゃないんです。

たとえば、何を始めたらいいか悩んだときに、まずはAというチャレンジをしてみる。それで、なにか違うなと思ったらBという違うことをやればいい。アクションして「なんか違うな」という違和感を感じない限り、正しく補正できません。

とにかくアクションして、自分に合うかどうか、納得解を探すしかないんです。

何を学ぶかは、それぞれの状況によって違うので、自己決定することが重要。そのための3つのヒントに加えて、NTTドコモで人材育成を担当していた視点で佐々木も補足します。

企業の寿命が25年とも言われ、不確実性が高まる社会の中で、社員に何を学んでもらうかは、非常に難しい問いだと感じます。私自身が人事担当として年間500名ほどと面談をしてきた経験では、活躍している社員には「社会や周囲に興味がある」傾向があると感じています。

逆に、自分への興味や関心が強い社員は、最後自分に帰結してしまうのでなかなか活躍しづらい。そういう意味で、家庭やプライベートにおいてもいろんなことに興味を持ち、それを目の前の仕事に関連づけていくようなことが大事だと考えています。

何を学ぶべきか、個人が主体的に選ぶ観点も大事ですが、会社目線で言えば、自組織の職員に何を学んでほしいかを伝えることも重要になります。学んでほしいことを伝えるためには、会社の戦略や目指す方向を明確にすることがポイントだと言えます。

企業は必ず戦略を立てますよね。こういう方向に企業を伸ばしたい、こういう方向に事業を持っていきたいと。人材開発・キャリア開発にとって一番有効な方法は、企業が伸びていく方向に自分のスキルを開発することです。企業の進む方向がわかれば、それに合うように自分の能力を開発しようという思考になるわけです。そのためには、企業がはっきりと戦略を立てて、次に向かうべきところを示すことが大事です。

会社の戦略と学ぶことが一致するというのはその通りですね。会社としての方針が決まると役割が生まれますが、どうしても埋まらないピースもできます。そこに対して自分が興味があればそのピースとしてはまっていくわけです。

たとえば、私の複業先の話ですが、WEBサイトの構築をしようという話になったのですが、作れる人はいなくて。だったら私が学んでやってみようということで今度チャレンジするのですが、そういった「ピースとしてハマりたい」と思えるような戦略を描き、示すことが大事なんだと、中原さんの話を聞いて感じました。

イベントでは、様々な観点で「何を学ぶか」について話を聞いてきましたが、参加者からは興味を持った学びが仕事に役立つか、事前にはわからないこともあるのではという質問を頂きました。この点について、中原さんは「学んだことを仕事にいかすために振り返ることの重要さ」に言及します。

キャリアはやってみなければわからない、といいましたが、そのときに振り返ることはとても大事だと思います。振り返りの習慣があるかどうかで成長の実感や客観的な人事成果に差があるという調査があります。成長実感をつかみ取るために、あるいは成果をつかみ取るために振り返りは重要です。もし上司に恵まれているならば、上司に壁打ち相手になってもらってもいいんじゃないかと思います。

 

振り返りをおこなう際の具体的なポイントについて、シンプルに言えば「何が起こったのか(what)」「なんの意味があったのか(so what)」「これからどうするか(now what)」を考えることに尽きると思います。これを自分のストーリーで語れたら、次にやることが決まる。振り返って、シンプルに言えばこれだけのことだと思います。これもハードルを下げるべきだと思うので、1行の振り返りでいいんですよ。今日何があって、どんなことを思ったのかでいいと思います。そこから始めてみて、習慣を持つってこと大事なんじゃないかなと思います。

5. 最後に

その他にも、学びとウェルビーイングの関係や、リベラルアーツ・教養とは何かなど、様々な話題をお話いただきました。そして、最後に各登壇者からメッセージをいただきました。

人生100年時代において学ぶことは大事で、共に学ぶことは特に大事です。何を学ぶのかと同時に誰と学ぶかが重要で、孤独にならないことや、ウェルビーイングにも影響を与えると思います。だから、学びとうまく付き合っていきましょうということですね。

もうひとつ言いたいのが、この1年間で人事の世界がドラスティックに変わってきたと思うんです。人事の世界に新しいテクノロジーとか新しい考え方がガンガン入ってきてる。だから、人事のみなさんが学ぶってことがめちゃくちゃ大事になってきてると思うんですよ。

社員に対して学びの場を提供するだけでなく、人事としてどういうふうに学んだり変わっていくのかを一緒に考えていきましょう。ありがとうございました。

私は大学の立場から最後に一言。

北海道大学では、リカレント教育を大学として本格的に取り組んでいこうとしています。大学としては、どういうことを、どういう風に教えるかのいろいろなノウハウがあるので、それが何らかの社会貢献になることで、大学にとっては自分たちの教育を持続的に続けるところに関係してくるのかなと思っていました。

ただ、今回お話させていただく中で、改めて「リカレント教育を受ける一人ひとりに寄り添うこと」が大事だと感じました。あなたは今何を学びたいのか。そのために周りが何ができるのか。そこにちゃんと付き合うってことがすごく大事。

こういう面白いコンテンツがあるよとか、この学び方面白いよというところだけでは語りつくせないところが多くあることを、学ばせていただきました。ありがとうございました。

中原先生も重田先生も私も同じ世代で、事前の打ち合わせでも、やっぱり一緒に悩みながら学んでいくんだよねといった言葉をいただいたので、自分の中で非常に勇気づけられました。

私も含めて、いろんなビジネスパーソンが悩んでいますが、やはり先生方も悩みながら進むところが同じなんだなと勇気づけられました。ありがとうございました。

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「人的資本経営」「ウェルビーイング」「DEI」といったトレンドワードが、HR領域だけでなく社会全体に拡がり始めた昨今。自社組織に漠然と"停滞感"を感じ、うちは取り残されていないだろうか?」「何かやらないといけないのでは・・・といった不安や悩みを抱える人事・経営者の皆様も多いのではないでしょうか。

本カンファレンスでは、HR領域の有識者の皆様に、様々な組織課題を解決するためのアプローチ方法について解説いただきます。強い組織を育む企業が実践している事例には、組織強化に必要な考え方や人事が果たすべき役割について学べるポイントが多くあります。ぜひ有識者の皆様と一緒に、組織を強化する「共通原理」について考えてみていただければと思います。

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