新卒採用の競争が激化するなかで、学生を当初の計画通りに採用できなかったり、欲しい人材を逃してしまったりと悩んでいる方は多いのではないでしょうか。
これまでの新卒一括採用に限界を感じ始めている人事担当者の方も、最近は多くなっているかもしれません。
本記事では、このような新卒一括採用に対する悩みを抱える人が増える中で、着実に広まりつつある「通年採用」について詳しく解説します。
1.通年採用とは
そもそも通年採用とは、企業が1年を通して、必要に応じて自由に採用活動をおこなうことを指します。
近年、留学をしている学生や帰国子女など、多様化する人材をいつでも受け入れられるよう、導入する企業が増えつつあります。
1-1.通年採用が注目されている背景
なぜ今になって通年採用が注目されているのでしょうか?
それには大きく分けて3つの原因があると考えられます。
- 人材確保の激化
- 企業のグローバル化
- 経団連による「採用選考に関する指針」の廃止
これらに対して、新卒だけでなく既卒者にもターゲットが広げることができ、採用期間を無制限に設けることで、留学生や海外の大学出身者の獲得機会を増やすことができる通年採用に注目が集まっているのです。
1-2.通年採用と新卒一括採用との違い
通年採用とよく比較されるものとして新卒一括採用があります。
この2つはどのような違いがあるのでしょうか。以下の表にまとめました。
通年採用 | 新卒一回採用 | |
採用活動期間 | 1年間ずっと | 3月~10月 |
対象者 |
●新卒者 ●留学生・海外大学出身者 ●既卒者 ●大学生 (対象者は企業によって異なる) |
●新卒者 |
特徴 |
●いつ採用をおこなうか、どのくらいの期間おこなうかを企業が決めることができる。 |
●採用のスケジュールが決められている。 ●内定を辞退された場合、補完が難しい。 |
2.通年採用のメリット・デメリット
通年採用と新卒採用には上記のような違いがあることが分かりました。
ここからは通年採用のメリットとデメリットについて解説していきます。
2-1.通年採用のメリット
まずは通年採用をおこなうことによるメリットです。以下の2つが挙げられるでしょう。
①新卒一括採用で見つけることが難しい人材を獲得できる機会が増える
新卒一括採用は期間が限定されているため、留学生や既卒者など、多様な人材に会うことが難しいという欠点があります。
その一方で、通年採用には期間の制限がないため、いつでもそういった人材にアプローチすることができます。
人材の多様化やグローバル化を進めたい企業は通年採用を考えてみても良いでしょう。
②余裕をもって選考を進めることができる
通年採用は新卒採用と異なり、採用にかける時間に制限がないため、ゆとりをもって選考を進めることができます。
応募者を見極める期間が長くとれるようになるため、お互いのミスマッチの防止にもつながるでしょう。
2-2.通年採用のデメリット
次に、通年採用を取り入れることによるデメリットについてです。以下の3つが挙げられます。
①採用活動が長期化し、採用担当者の負担が大きくなる
通年採用は、当然ですが一年を通して採用活動をおこなうことになるため、短期で実施される新卒一括採用と比べると、採用担当者の負担が大きくなります。
採用担当者が採用以外の業務にも関わっている場合には、スケジュールをきちんと管理することが必要になります。
②教育・研修が難しくなる
新卒一括採用では入社時にまとめて研修を行うことができましたが、通年採用では入社時期にばらつきが出ます。
そのため、新入社員研修はその都度おこなわなければならず、人件費などのコストがかさむことになります。
③マッチングの可能性が低下する恐れがある
通年採用の「無期限で採用活動をおこなえる」という点はデメリットにもなり得ます。
1人に対していつまでも採用期間をとり、採用の工数が増加してしまうと学生の内定辞退率が高くなる傾向があります。
通年採用であっても、ある程度の期限を設ける必要はあるでしょう。
3.通年採用における大切なポイント
では、通年採用を実際におこなう上で、どのようなことに注意すると良いのでしょうか。
3-1.目標を明確にする
一括採用と同様、通年採用においても明確な数値目標をはじめに定めておくことが大切です。どのような人材をどれだけ獲得するのか、はっきりと決めておくことで、採用を無駄に長引かせ、コストが増大してしまうことを防ぎましょう。
3-2.採用サイトやソーシャルメディアでの露出を増やす
特に、知名度があまり高くない企業は、学生に自社が何をおこなっているのか、どういった人材を欲しているのかなどを伝えることが非常に難しいです。
そのため、ナビサイトやWantedlyなどのビジネスSNSサイト、場合によっては広告などを使用して、企業の認知度を上げる必要があるでしょう。
3-3.採用体制を整備する
応募者を受け入れる体制を整えることも大切です。通年採用は一括採用に比べて、応募する人数や時期にばらつきがあるため、面接を担当できる社員の数を増やしたり、誰が採用を担当しても内定者の人数や能力に差がないようにすることが必要です。
4.通年採用を実施している企業
上記を踏まえて、実際に企業がどのように通年採用に取り組んでいるのかを紹介します。
4-1.面白法人カヤック
広告やPRの受託開発、ソーシャルゲームの開発・運用などをおこなっている面白法人カヤックでは、企画部・意匠部・技術部の3部署で応募を受け付けています。
- 新卒に限らず、既卒者や大学院を中退して入社したいと考えている人、海外の大学へ通っている人など、どんな人でも応募できる。
- 「つくったもの採用(エンジニアとデザイナー限定)」や「面白採用キャンペーン」と題した様々な採用方法を用意。
4-2.ネスレ日本株式会社
飲料、食料品、菓子などの販売を中心におこなっているネスレ日本では「ネスレパスコース」という通年採用制度を導入しています。
- ネスレパスコースでは、採用対象は年齢や国籍などで限定されず、なおかつ大学1年生からエントリーすることが可能。
- エントリーは何度でも可能。通過すると任意のタイミングで社員参加型研修に参加できる「ネスレパス」を受け取ることができる。
4-3.ヤフー株式会社
Eコマース事業や会員サービス事業、インターネット上の広告事業などをおこなっているヤフー株式会社は、2016年10月から新卒一括採用を廃止し、「ポテンシャル採用」として通年採用を行っています。
- 経歴にかかわらず30歳以下の人であれば誰でも応募可能。
- 入社時期は4月と10月の2回あり、給与は就業経験の有無にかかわらず、同一の基準として決定される。
4-4.ソフトバンク株式会社
携帯電話事業ブロードバンドなどの固定通信サービスの提供、インターネット広告、投資事業などを主力事業とするソフトバンク株式会社は、2015年から「ユニバーサル採用」という通年採用制度を開始しました。
- 新卒採用を「ポテンシャル採用」、キャリア採用を「即戦力採用」とする通年採用。
- ほかにも、No.1採用や就労体験型のインターンシップなどの多様な先行プログラムを設けている。
4-5.株式会社ファーストリテイリング
株式会社ファーストリテイリングは、ユニクロやGUなどを運営する企業です。学年や新卒・既卒、国籍を問わず、採用方法をオーブンにすることで、1人ひとりが自由に応募できるよう通年採用をおこなっています。
- どの学年でも参加が可能で、大学1、2年生でも就職活動ができる。
- 一年に一度、不合格になってもチャレンジできる
- 選考を通過すると、発効から3年以内のいつでも最終面接を受けることができる「ユニクロパスポート」を発行。
5.通年採用をサポートするダイレクトリクルーティングサービス
いざ通年採用を実施すると決めても、どう進めていけば良いのか分からない方も多いかと思います。
そこでここでは、通年採用をサポートしてくれるダイレクトリクルーティングサービスを3つほどご紹介します。
5-1.dodaキャンパス
dodaキャンパスは、株式会社ベネッセi-キャリアが運営する、登録学生数が35万人を超える国内最大規模の採用サービスです。
新卒学生だけでなく、大学1、2年に対しても早期に接触できるという点だけでなく、登録者が多いことから様々な学生に出会える点なども特徴です。
URL:https://campus.doda.jp/
5-2.Offerbox
Offerboxは新卒オファー型就活サイトであり、現在の登録学生数は22万人以上となっています。
本サービスでは、企業にとって重要と考えられる学生のアクティブ情報を常時公開することで企業に合った人材の確保を手助けしたり、オファーを送る形のため、企業の知名度に関係なく採用ができたりと、他にもさまざまな特徴があります。
<利用プランによって料金は異なり、「早期型」プランは早期利用料金が30万円~、「成功報酬」プランでは利用料が無料となっており、それぞれ1名を採用するにあたり38万円を支払う必要があります。
URL:https://offerbox.jp/company/
5-3.キミスカ
キミスカでは、10万人以上の学生登録者数を有する採用支援サービスです。
30の検索項目によって、10万人以上の学生の中から企業が採用したい人材を見つけられたり、学生に対して「プラチナスカウト(30通まで)」「本気スカウト(100通まで)」「気になるスカウト(制限なし)」の3種類のスカウトを送ることができるといった特徴があります。
URL:https://kimisuka.com/contents/company/
6.まとめ
いかがでしたでしょうか。
通年採用をおこなう際にはコストがかかりますが、それ以上に貴重な人材に出会える可能性があります。
企業として優秀な人材を獲得したいと考える場合に、通年採用の実施を検討してみても良いかもしれません。