令和3年3月に改正会社法が施行され、上場企業において社外取締役の設置が義務化されました。社会的にコーポレートガバナンスを強化する要請が強まったことを受け、社外取締役の候補者を探している企業が増えています。
しかし社外取締役の要件を満たし、かつ自社の成長や企業価値の向上を後押ししてくれる最適な人材を探すのは難しい面があります。その場合は社外取締役の提案・紹介を受けられるマッチングサイトの利用が有効です。
実際に、経済産業省も「社外取締役候補者に関する情報を広く得るために、社外取締役の紹介を行う人材紹介会社や業界団体等を利用することも一つの選択肢として考えられる」と、外部サービスの利用を推奨しています。(参照:経済産業省|【別紙 2:社外取締役活用の視点】)
本記事では、社外取締役マッチングサイトの概要や利用メリットを解説しながら、おすすめのマッチングサイトを8社紹介します。
目次
1.社外取締役の選任・採用できるマッチングサイト8社一覧
社外取締役のマッチングサイトとは、社外取締役の候補者を探している企業と、社外取締役になりたい人材をマッチングするサイト・サービスのことです。
社外取締役のニーズが高まる中、質の高い人材は企業間で取り合いになっており、多くの企業にとって社外取締役を招致するのは難しい作業です。まずは、国内でも有数の社外取締役マッチングサイトをご紹介します。
マッチングサイト名 |
特徴 |
弁護士・公認会計士などの資格を持つ社外取締役・非常勤監査役を探せるマッチングサービス。 |
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顧問だけでなく社外取締役・社外監査役(独立役員)の紹介も行っている。 |
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豊富な人脈や特定領域における高い専門性を持つ登録顧問が企業の経営課題をスピーディーに解決するサービス。 |
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経営状況や期待する役割をヒアリング等した上で、12万人以上の知見データベースから、その要望に適した候補者を選定・提案。 |
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経営課題に取り組む企業に対し、上級役職者や専門家をアドバイザーとして提案するコンサルティングサービス。 |
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業界に精通したコンサルタントがヒアリングから採用までを専属で支援する一気通貫型を採用。 |
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「出身業界」「期待する役割」「女性社外取締役候補者」からの選択も可能。自社が求める人材像に合った候補者を探せる。 |
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女性社外取締役・監査役に特化したマッチングプラットフォーム。 |
2.なぜ社外取締役を選ぶ必要があるのか
そもそも社外取締役とは社外から登用した取締役のことで、独立性と透明性を保つ観点から、その会社で業務経験がある者やその他関係者の就任は禁止されています。そのため社外取締役は社内取締役と異なり、社内の慣習や組織の人間関係などに縛られない公正な意見を述べることが可能です。
社外取締役が第三者の立場から監督・監視することで、経営の透明性が確保され、対外的な信頼の向上につながります。多様な人材を登用することで新しい発想や理念を取り入れることができるという意味でも社外取締役の活躍が期待されており、このことは株主の利益という点でも重要です。
また、令和3年3月施行の会社法改正により、上場企業における社外取締役の設置が義務づけられました。この改正はコーポレートガバナンスの重要度が高まる中、社外取締役などによるチェック機能を強化させようというものです。コーポレートガバナンスとは、企業が法令を遵守し、不正や違法行為をしないよう監視する体制を築く仕組みを指します。これにより、上場企業や上場を目指すベンチャー・スタートアップ企業を中心に、社外取締役の候補者となる人材の確保が急務となっています。
3.社外取締役のマッチングサイト8選
ここで、主な社外取締役のマッチングサイトを紹介します。マッチングサイトに関しては各社でかなり特色があります。それぞれの特徴を把握し、自社の要望と照らして適切なサイトを選ぶようにしましょう。
3-1.ExE(エクゼ)
ExE(エクゼ)は、弁護士や公認会計士などの資格を持つ社外取締役・非常勤監査役を探せる企業向けのマッチングサービスです。運営会社の株式会社 アシロはもともと弁護士や会計士などの高度専門職および法務人材を紹介する転職エージェントサービスを展開する会社なので、その人脈を活かし、社外取締役経験のある弁護士や公認会計士の紹介を可能としています。
3-1-1.ExE(エクゼ)の特徴
ExE(エクゼ)の特徴は、弁護士や公認会計士等の有資格者や「独立性の担保、兼務社数5社未満、経験10年以上等」の厳しい基準を満たしたエグゼクティブ人材を探せることです。
登録者のうち98%が弁護士または公認会計士資格の保有者なので、社外取締役に弁護士等の高度な法的知識・経験を備えた人材を招き入れたい場合はExE(エクゼ)がもっとも適しています。IT・メーカー・医療など各分野に精通した弁護士や公認会計士を推薦してもらうことも可能です。
またExE(エクゼ)では登録者のうち20%が女性役員経験者なので、選任が難しいと言われているプロフェッショナル女性人材の確保にも期待できます。
3-1-2.ExE(エクゼ)の評判
ExE(エクゼ)2021年12月に開始した新しいサービスなので評判やクチコミ等はまだありません。登録例としては、例として以下の人材が紹介可能です。
- 上場企業の取締役/CXO経験者
- 東証一部上場企業の取締役
- グローバル企業の経営幹部
- M&A、IPOの監査経験者 など
3-2.KENJINS
KENJINSは日本最大級の顧問契約マッチングサイトです。顧問だけでなく社外取締役・社外監査役(独立役員)の紹介も行っています。独自のデータベースにより経営実務経験者の中から最適な人材を紹介してもらえます。
3-2-1.KENJINSの特徴
KENJINSでは大手上場企業の経営幹部やマネジメント層を中心に3,000名以上の人材が登録しています。出身業界・年齢・属性などの幅広い条件を設定して提供が可能なので多様な人材の確保に期待できるでしょう。
また正式就任前のフィジビリティ活動(就任前試用)を通じ、独立役員のスキルや企業との相性の確認を行うことで、ミスマッチを回避できます。企業の要望を丁寧に深くヒアリングしたうえで望ましい候補者のプロファイルを作成し、プロファイルに適合する候補者を紹介してもらえます。
3-2-2.KENJINSの評判
KENJINSを利用した企業からは以下のような評判が聞かれました。
- 競合との差別化に悩んでいましたが、プロの的確な指導により、独自のポジショニングを描くことができました。(老舗製造メーカー)
- 経営顧問の実行支援により、業界1位の企業とのアライアンスが実現し、新規事業が6ヵ月で爆発的に加速しました。(IT技術系メーカー)
3-3.パソナ顧問ネットワーク
パソナ顧問ネットワークは、豊富な人脈や特定領域における高い専門性を持つ登録顧問が企業の経営課題をスピーディーに解決するサービスです。「新規の販路を拡大したいが人脈がなく商談ができない」「IPOを行いたいがノウハウがない」といった経営課題を持つ企業に対し、パソナ顧問ネットワークが課題を解決できる顧問人材を紹介してくれます。また「社外取締役・社外監査役」紹介サービスも行っています。
3-3-1.パソナ顧問ネットワークの特徴
総合人材サービス会社として40年以上の歴史があるパソナのネットワークを活かし、経営経験が豊富な人材や各分野のスペシャリストが6,500名以上登録しています。業界や企業風土、事業戦略などに合わせて、候補者の経歴を見極めたうえで最適な人材を紹介してもらえます。
また社外取締役紹介サービスでは着手金がなく、就任までは費用がいっさいかからない完全成功報酬型なので、高い費用対効果にも期待できます。
3-3-2.パソナ顧問ネットワークの評判
パソナ顧問ネットワークを利用した企業からの評判は以下の通りです。
「顧問」が営業力の強化に欠かせない組織の“多様性”を実現してくれています(S社公共事業部)
スタートアップに不足する経験と採用力を「顧問」の知見が解消してくれる(N社)
3-4.ビザスクboard
ビザスクboardは、社外取締役・社外監査役の紹介に特化したマッチングサイトです。運営会社の株式会社 ビザスクは国内外に12万人を超す登録者がいる日本最大級のナレッジプラットフォームを運営しています。社外役員のニーズの高まりを受けて、社外役員の候補者を紹介してマッチングする新サービスとして、2020年12月にビザスクboardを開始しました。
3-4-1.ビザスクboardの特徴
ビザスクboardには以下のような人材が登録しています。
- 上場企業役員経験者
- DX推進人材(AI/CTO経験者など)
- 上場経験を有するスタートアップ人材
- 大手企業の幹部経験者 など
担当者が企業の要望や経営状況などをヒアリングしたうえで、市場トレンドや今後のビジネス展開を踏まえて登録者の中から適切な人材紹介してくれます。
3-4-2.ビザスクboardの評判
ビザスクboardについてはまだ評判・クチコミなどはありません。ただしすでに実績のあるビザスクの評判としては以下のようなものがあります。
基幹システムの刷新プロジェクトと業務課題の整理に社外のプロフェッショナルを活用。第三者視点が入ることで、経営戦略と連動したDXが加速した(小売・消費財)
参照:ビザスク|活用事例
スタートアップの急成長期ならではの人事課題をビザスクで解決し、エンジニアの採用エントリー数が8倍になった(IT・情報通信)
参照:ビザスク|活用事例
3-5.HiPRO Biz
HiPRO Bizは経営課題に取り組む企業に対し、上級役職者や専門家をアドバイザーとして提案するコンサルティングサービスです。
社外取締役・社外監査役などの独立役員紹介サービスも提供しています。「限られた人脈内では多様な人材に巡りあえない」「求人募集の場合は書類選考や面談だけで自社に適した社外役員か判断できない」といった独立役員登用の悩みに対し、最適な人材を提案してくれます。
3-5-1. HiPRO Bizの特徴
HiPRO Bizには 2022年3月時点で約19,120名という圧倒的な数の独立役員候補者がいます。独立役員経験や出身業界、属性など幅広い条件で自社に合う人材を提案・紹介してくれます。また正式就任前のフィジビリティ活動(就任前試用)を通じ、候補者のスキルや企業との相性をチェックし、ミスマッチのリスクを軽減させることが可能です。
3-5-2. HiPRO Bizの評判
HiPRO Bizの活用事例としては以下のようなケースがあります。
- 経営経験だけでなく海外業務経験も豊富な専門家が常勤監査役に就任。社内体制の整備が軌道に乗ると同時に、スピード感と慎重さを両立した経営判断が行えるように(広告・情報通信サービス)
- 経験豊富な専門家が監査役、社外取締役に就任。40代を中心とした若い経営幹部へのノウハウ継承も進んでいる(M&A仲介事業)
3-6.プロフェッショナル人材バンク
プロフェッショナル人材バンクは、企業の課題を解決できるプロフェッショナルを顧問として紹介してもらえるサービスです。社外取締役や監査役などの経営層、管理層を中心としたエグゼクティブ人材の紹介も行っています。
3-6-1.プロフェッショナル人材バンクの特徴
エグゼクティブ人材の紹介では、それぞれの業界に精通したコンサルタントがヒアリングから採用までを専属で支援する一気通貫型を採用しているため、ミスマッチのリスクを軽減できます。年間約6,500名にものぼる登録者の中から理想のプロフェッショナル人材を紹介してもらえます。
また選定の難航が予想される女性の社外取締役・監査役の紹介も行っています。独自のサーチハンティング手法を用いてアプローチするため、登録型によるデータベースの中からマッチングする場合と比べて候補者の対象を飛躍的に広げられるのが特徴です。
3-6-2.プロフェッショナル人材バンクの評判
プロフェッショナル人材バンクの利用者からは以下のような評価を受けています。
現場で汗かいてコミュニケーション頂けた事で信頼が厚くなりました。先生なしでは改善出来ず事業は中止していたと思います。感謝しかありません。(食品)
後顧の憂いを感じず事業推進に専念できる心理的メリットは計り知れない価値でした。(IT・メディア)
3-7.社外取締役名鑑
社外取締役名鑑は、社外取締役の紹介に特化したサービスです。2015年3月に国内最大手の上場企業役員などによる事業拡大支援サービスを行う「顧問名鑑」が、社外取締役紹介サービスをオープンさせました。
3-7-1.社外取締役名鑑の特徴
社外取締役名鑑では21,000名以上の人脈と、ネームバリューが高い候補者が多いのが特徴です。登録者は上場企業の社長や役員経験者を中心に構成されており、名だたる大企業出身者や政治家、弁護士などが多数います。「出身業界」「期待する役割」「女性社外取締役候補者」からの選択も可能なので、自社が求める人材像に合った候補者を探すことができます。
3-7-2.社外取締役名鑑の評判
社外取締役名鑑のクチコミや評判などはまだありませんが、実例としては以下のようなケースがあるようです。
- 類似分野の役員経験者が他社の社外取締役に選任された事例
- 大臣歴任者が東証一部上場企業の社外取締役に選任された事例
- パートナー弁護士が東証一部上場企業の社外取締役に選任した事例 など
3-8.ジョトリー
ジョトリーは、女性社外取締役・監査役に特化したマッチングプラットフォームです。
女性の社外取締役が就任することでビジネスの意思決定場面において女性の視点が反映されます。また経営判断の過程において女性が直接関わっていくことはグローバルスタンダードとなっており、取締役の中に女性がいない・少ないことで海外の機関投資家からの評価が下がる傾向が見られます。こうした背景からジョトリーでは女性人材に特化した紹介を行っています。
3-8-1.ジョトリーの特徴
ジョトリーでは厳しい審査基準を通過した候補者のみを本登録としているため、人材の質にばらつきがなく、ハイレベルな人材のみを紹介してもらえます。登録者の経歴は経営者・弁護士・会計士・スポーツ選手・芸能人と非常に幅広いため、企業の多様性を高めることができます。
ジョトリーの大きな特徴は、2つのグループの候補者がいることです。
①経営経験者や弁護士、公認会計士などの即戦力グループ
②ほかの業界で実績があるが社外役員は未経験の潜在層グループ
ジョトリーでは②の候補者に対して、未経験者でも即戦力レベルにまで養成するトレーニングを実施しています。
3-8-2.ジョトリーの評判
企業からの評判・クチコミはありませんが、2021年に実施された社外役員養成講座第1回の参加者のうち98%が「講義に満足した」と回答しています。また社外役員未経験の受講者が、第1回養成講座を受講後に上場企業の社外取締役に就任することが決定したようです。
4.マッチングサイトを利用して社外取締役を見つけるメリット
社外取締役を探す方法は複数ありますが、ここでは社外取締役マッチングサイトを利用して社外取締役を探すことのメリットを解説します。
4-1.適切な人材をスピーディーに探せる
社外取締役を探す既存の方法は大きく分けて以下の4つです。
方法1:社外役員候補者名簿の利用
社外取締役の属性としては経営経験者が多数を占めますが、次に多いのが弁護士です。コーポレートガバナンス強化・コンプライアンス経営の観点から、企業法務に精通した弁護士は社外取締役への適性が高いと考えられています。そこで第二東京弁護士会では企業向けに、社外役員を希望する会員の名簿を一般公開しています。候補者を探している場合はフリーワードや各種検索条件を入力あるいは選択して検索すると該当弁護士を検索できます。
方法2:ベンチャーキャピタルからの紹介
ベンチャー企業では、ベンチャーキャピタルから適切な人材を紹介または派遣される場合があります。ただし、上場準備企業における社外取締役は中堅法律事務所のパートナー以上の弁護士が望ましいとの見方もあり、とりわけ技術トレンドの変化が激しいIT分野への理解が深い弁護士の確保はベンチャーキャピタルでも難しくなっています。
方法3:転職エージェントからの紹介
求人を募集している企業が社外取締役のポジションを探している際に、取引のある転職エージェントから紹介を受けられる場合があります。
方法4:社外取締役のマッチングサイト
社外取締役を探している企業と社外取締役を希望する人材とを結ぶサービスです。
この中でもっともスピーディーに適切な人材を探せるのは、社外取締役のマッチングサイトです。一般的には、担当者に対して自社が求める人物像や事業戦略などを伝えたうえでマッチする人材を提案・紹介してもらえるため、人材を探す時間を大幅に短縮できます。またベンチャーキャピタルや転職エージェントを利用するよりも、能動的に社外取締役を探すことが可能です。
4-2.複数の候補者から選定できる
社外取締役のマッチングサイト以外の方法だと、紹介を受けた人材に対して経歴や自社とのマッチングを確認するという作業を一人ずつ繰り返す必要があります。一方、社外取締役のマッチングサイトでは複数の候補者を比較し、より自社の要望にマッチした人材を選定することができます。
5.まとめ
では人気の高い人材の争奪戦が始まっており、社外取締役を自社の人脈だけを頼りに探すのは難しい面があります。しかし社外取締役マッチングサイトを利用すればスピーディーに最適な人材を探すことができます。
紹介を受けられる人脈のない企業や、人材探しに多くの時間をかけて疲弊している企業にとっては非常に心強いサービスなので、利用を検討してみてはいかがでしょうか。