「楽しい面接」を目指す理由|本音を引き出し会社の魅力につなげる60分 |HR NOTE

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「楽しい面接」を目指す理由|本音を引き出し会社の魅力につなげる60分

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※本記事は、人事/HR業界の専門家の方より寄稿いただいた記事を掲載しております。

面接を行ったあと、候補者やエージェントからのフィードバックを得ていますか?その内容はどんなものでしょうか?

私が目指していて、実際に候補者が返してくれる言葉の一つが「楽しい面接」です。

今回は、私がなぜ「楽しい面接」を目指すのか、また私が「楽しい面接」をすることで得ているメリットは何なのかを解説していきます。

候補者の採点方法や一般的なマニュアルしか社内になく、より良い面接を目指す方法に悩む人事・採用担当者の参考になればと思います。

執筆者関岡 央真株式会社シニアジョブ 戦略人事本部長 / シニア就業促進研究所 所長

大学卒業後、テレビ局系列の制作会社に入社。報道・情報番組の制作に携わる。2017年から株式会社モバイルファクトリーに採用担当として入社。新卒を中心に採用活動を行うほか採用広報も兼務。「モバファク 新卒ドラフト」などのユニークな採用を行うなど、営業職からエンジニア職まで幅広い職種の採用を経験。2023年9月より現職。

1.候補者が「楽しかった」と言ってくれる?

面接は、私たち人事を含めた企業側が候補者に直接会って、資質や適正を判断する場であると同時に、候補者もまた、自分に合う会社かを見極める場となります。そのため、特に人事・採用業務の駆け出しの頃などは、自分の対応や発した内容が良かったのか、気になるものです。

私の場合、ありがたいことに「楽しい面接だった」という候補者の方のフィードバックをいただくことが多くあります。私としても候補者の方が「楽しい」と感じることを、「良い面接」の1つの要素だと考えています。

面接という選考の場をわざわざ「楽しい」ものにする必要はないと感じる方もいるかもしれません。私が「楽しい面接」を「良い面接」と考えるのはなぜなのか、また、「楽しい面接」と言われるために私が意識していることは何なのか、この記事では共有していきます。

2.60分の面接でできることは限られる

「楽しい面接」の説明の前に、「なぜ面接が必要なのか」から考えていきましょう。面接の目的には、大きく下記の2点が挙げられます。

  1. ジャッジ
  2. 魅力付け

ジャッジとは、候補者の方の能力や会社とのマッチングを見極めることです。一方の魅力付けは、会社への志望度を高めることです。つまり、候補者を選抜・絞り込む要素と、辞退せずにずっと志望し続けてもらう要素と、方向性の異なる2つの要素を限られた時間に盛り込まなければなりません。

面接の目的だけでなく、面接の難しさについてもまとめてみます。面接が難しい理由には、大きく下記の2点が挙げられます。

  1. 事実や本音を引き出すのは難易度が高い
  2. 自分の経験や好みによるバイアスでジャッジが歪む

候補者の発言は、本音だけでなく、練習で得た回答や緊張などで十分に出せずにいる情況も考えられますが、その判断とさらに本音を引き出すことは、どれだけ鍛錬しても100%にはなりません。また、面接官も人間である以上、判断が自身のバックボーンに左右され、10人が10人とも同じ判断とはなりません。

近年、神戸大学大学院の服部泰宏教授がパイオニアである「採用学」などでも言及されることですが、たった60分程度の面接で、能力やマインドを適切に評価・判断することは非常に難しいことです。

私もこれまで実際に、人事として7年近く働き、1000人を超える人の面接を行ってきました。そこで得た結論は「人なんて60分では完璧にはわからない」ということです。

だとすると、「人事も面接もいらないのでは?」という声も上がりそうです。実際に人事不要論や面接不要の求人もありますが、私は人事も面接も必要だと思っています。

確かに、100%の完璧なジャッジはできないかもしれません。しかし、面接のテクニックを高めていくことで、適切な採用の確率を上げることは確実にできるのです。

3.「ついつい楽しくて話し過ぎちゃった」と言わせたい

ではいよいよ、本題のなぜ「楽しい面接」が必要なのかについて考えていきます。

先程紹介した、面接が難しい理由の「1.事実や本音を引き出すのは難易度が高い」が、私が「楽しい面接」を重要視している背景です。人事や面接官を務めることの多い方であれば、面接をする中で「なかなか本音に辿り着けないな」とか「候補者の考えていることが掴めない」といった情況を経験したことは多いのではないでしょうか。

緊張や面接への慣れによって中途半端な回答をしてしまう候補者や、自分をよく見せようと仮面を被ってしまう候補者は、どうしても一定数います。最近では、就活本や就活youtube等の情報が以前にも増して数多く出回っており、それらで学んだと思われるテンプレート的な回答もよく見られます。画一的な回答に飽き飽きしている人事の方も多いことと思います。

私もかつては、どうにかして本音を引き出せないかと悩める人事の一人でした。そんな私が活路を見出したのは、選考ではなく学生からの就活相談を受けたことがきっかけでした。

ジャッジする立場でなく、利害関係もなかったことで私は、友人のような語り口で幼少期から大学生までのエピソードを深掘りしました。すると学生は面接後に、「ここまで明け透けに自分の話が出せたのは初めてだ。話していて、とても楽しかった」と言ってくれたのです。

このことで私は、学生が面接を「楽しい」と感じたのは、気負わずに本音を語れたからだ、との仮説を立てました。もちろん、この時点では「楽しい」と「本音」は偶然で因果関係がない可能性もありましたが、私はその後、できる限りプレッシャーを与えない面接を意識するようにして、フィードバックや入社後の追加調査で確認しました。結果は、冒頭のとおり「楽しい面接だった」という声が増え、そう回答した人は総じて「本音を語れた」と回答し、仮説が正しいと確信できました。

「ついつい楽しくて話し過ぎちゃった」まで言わせたら、面接としては大正解ですし、そう言わせることが私の面接の目標の一つとなりました。

面接の目的の「2.魅力付け」の視点からも「楽しい面接」は重要で、効果が期待できる施策です。

「楽しい面接だった」というだけで、第一志望としてくれた候補者は数え切れません。人には第一印象に左右されることの多い性質がありますし、「楽しい面接」の向こうに、楽しく風通しの良い社風をイメージしてくれるのかもしれませんが、それ以上に私は、人事と企業が候補者に向ける熱量や興味量を、「楽しい面接」から感じてもらえるだと考えています。

4.「目的」から「楽しい面接」は始まる

こうした「楽しい面接」のために、私が何を重視・意識した面接をしているのかを紹介します。私が意識しているのは、次の5点です。

1.面接の目的を丁寧に伝える

2.アイスブレイクに時間を惜しまない

3.リアクションをオーバーにとる

4.人事側も自分をさらけ出す

5.他社とは違う質問の表現を心掛ける

それぞれ詳しく解説します。

4-1.面接の目的を丁寧に伝える

面接の冒頭で必ず目的を伝えるようにしています。その中では、ジャッジするだけでなく、私たちもジャッジされる側であることを述べ、「どっちが上とかではなく、フラットな関係でジャッジし合いましょう」としっかり伝えるようにしています。

4-2.アイスブレイクに時間を惜しまない

私は必ずアイスブレイクを用意します。新卒や転職が初めての方は緊張されている場合が多いので、カジュアルな話題からスタートし、話しやすい空気を作るようにしています。事前に履歴書を確認し、スポーツや趣味の話などをすることで候補者に企業が興味を持っている気持ちが伝わり、緊張がほぐれます。

面接途中で緊張が伝わってくる場合は、あえて脱線し、再度カジュアルな話をすることもあります。緊張のせいでその人本来の能力に出会えないよりは、カジュアルな話に時間を割くことを選びます。

4-3.リアクションをオーバーにとる

誰しも、自分の発言に相槌や爆笑などのリアクションが得られたことで気持ちが乗り、饒舌になった経験があるのではないでしょうか。人は興味を持ってもらうことで、テンションが上がります。

一方で、リアクションがないのは辛いもの。私自身もノーリアクションの中で会社説明を続けたならばダメージを受けます。滑ってる感じもしますし、相手に対して怖い印象を持ってしまうでしょう。

だからこそ、面白い話の時は爆笑しますし、すごいと思ったら「すごい!私じゃできない!」と全力で賞賛しています。しかし、意外にできていない人事が多いことを、面接官トレーニングなどの場で感じます。議事録を書いたり、次の質問を考えたりしているとリアクションが薄くなりがちですが、やりすぎなくらいのリアクションで丁度良いかもしれません。

4-4.人事側も自分をさらけ出す

信頼できない人、素性がわからない人には、本音をベラベラと話すことは難しいですよね。だからこそ、退職理由など話しづらい内容を聞く際には、恥ずかしい話を含めて、自分の情報をまずさらけ出すようにしています。私自身、1年半ほどで1社目を退職していますが、それを伝えるだけでも候補者の表情はぐっとやわらぎます。

4-5.他社とは違う質問の表現を心掛ける

一般的な質問をすると「待ってました!」とばかりに、練りに練られ、加工に加工を加えた「対策済み」の回答が戻って来ませんか?そうした回答には「その人らしさ」が希薄に感じます。

さらに話を掘り下げていけば、一定のファクトをつかむことができますが、事実はわかってもその時の感情まで引き出すことはできないことが多いもの。だからこそ私の面接では、質問の角度を変えることで本音やエネルギーの源泉を引き出しています。

例えば「将来像は?」という聞き方ではなく「将来叶えたい欲望は?」と聞くと質問を面白がってくれたり、通常では出てこなかったその人らしさが出てきたりします。昔、この質問に「モテたい」と満面の笑みで回答した方がいたことを思い出します。

5.マイナス少なくプラスの多い「楽しい面接」

私が「楽しい面接」を実践したことで得られたものをまとめると、次の3つとなります。

・緊張による微妙な回答、作り込まれた回答が避けられる

・通常の面接では得られない情報(エネルギーの源など)が手に入る

・候補者側の興味が手に入る

もちろん、これらは私の体験に基づく意見であるため、誰にとっても正解であるとは限りません。しかし、面接のジャッジは、本音やファクトに基づいた情報で行わなければ、誤ったものになる可能性が高くなります。だからこそ、私の「楽しい面接」が参考になり、本音を引き出し、1%でも面接の質を上げてもらえたなら嬉しいです。

また、上記のように「楽しい面接」の中で得られることは非常に多いですし、逆にやらない理由、目指さない理由やマイナスは少ないと思いますので、指標として取り入れてみてはいかがでしょうか?

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