従業員のリファラル採用活動を促す3つの要因とは?――海外学術研究からみるリファラル採用【セミナーレポート】

コロナ禍で、優秀な人材の採用やエンゲージメント向上が課題となるなどHRトレンドが変化するなか、「リファラル採用」に注目が集まっています。

日本国内でも導入企業が増加していますが、人事部主導で採用活動をおこなってきた日本企業においては、従業員に積極的に友人・知人を紹介してもらい、優秀な人材を集めることは簡単ではありません。

こうした状況から、2021年9月、リファラル採用を中心に採用・エンゲージメント・組織力向上に関する研究をおこなう「リファラル採用研究所」が設立されました。

ここでは、海外の学術研究をもとに、リファラル採用研究所と採用学研究所・ビジネスリサーチラボ代表の伊達洋駆氏が発刊したレポート『Global Academic Review of ERP』をベースに、リファラル採用の要因と効果を紐解きます。

登壇者紹介

伊達 洋駆|採用学研究所 所長 / 株式会社ビジネスリサーチラボ 代表取締役

神戸大学大学院経営学研究科博士前期課程修了。修士(経営学)。同研究科在籍中、2009年にLLPビジネスリサーチラボを、2011年に株式会社ビジネスリサーチラボを創業。以降、人事領域において、学術研究の知見を活用した組織サーベイや人事データ分析のサービスを提供。2013年に神戸大学大学院服部泰宏研究室と共同で採用学研究所を設立し、同研究所の所長を務める。著書に『オンライン採用:新時代と自社にフィットした人材の求め方』(日本能率協会マネジメントセンター)、『人材マネジメント用語図鑑』(ソシム;共著)など。

鈴木 貴史|リファラル採用研究所 所長 / 株式会社MyRefer 代表取締役社長CEO

2012年、新卒にてインテリジェンス(現パーソルキャリア)に入社。IT領域の中途採用支援に従事した後、1億円の社内資金調達の元、リファラル採用の概念を日本に提唱しMyReferを創業。最年少にてコーポレートベンチャーを立ち上げ、転職サイトや人材紹介に変わる新たなHRTechサービス『MyRefer』をリリース。2018年、更なる事業拡大を目指しMBOを実施し、株式会社MyRefer代表取締役社長CEOに就任。2019年、経済産業省後援「第4回HRテクノロジー大賞」採用部門賞、2019年、日本の人事部「HR Award2019」を受賞、東洋経済すごいベンチャー100にも選出。

1. 「リファラル採用」の導入による企業への効果とは

まず、リファラル採用の効果について、学術研究で検証されていることをご紹介いたします。

そもそもリファラル採用とは「自社の従業員が自分の友人・知人を会社に紹介し、採用する方法」のことですが、海外においては主要な採用手法の一つであり、近年日本でも広まりつつあります。

リファラル採用が広まっている背景としては、労働市場に出てこない優秀な人材を獲得することができるからでしょう。

「転職活動を熱心におこなっていないけれども、友人・知人から声を掛けられたら話を聞いてみよう」といった、潜在的な転職層をターゲットにできることがリファラル採用の強みです。

そして、リファラル採用に関する海外の研究では、リファラル採用が他の採用手法と比較して採用成功に対する効果が高いということが明らかになっています。

「合格を得る可能性」「内定を承諾する可能性」の双方が高いというだけではありません。入社後においても、リファラル採用の場合は会社に定着する可能性が高く、リテンションをはかることもできるのです。

そして、リファラル採用で入社した人材の方が、会社や仕事に満足して働いていることも実証されています。

2. 従業員の紹介行動を促す要因

このように、リファラル採用は採用時・入社時ともに非常に良い効果をもたらします。しかし、その一方で、従業員が友人・知人を会社に紹介するという「紹介行動」を取らなければならないため、多くの企業がリファラル採用ならではの難しさに直面している状況です。

そもそも、紹介行動は、従業員にとっては業務そのものではない、役割外の行動です。

そのため、多くの企業が今悩んでいることは、従業員の紹介行動を強制的では無い形で促すための仕組み作りではないでしょうか。

今回、海外のリファラル採用プログラムに関する学術研究をまとめたMyReferさんのレポート『Global Academic Review of ERP』を、当社が監修しました。

そのレポートの内容をもとに、従業員の紹介行動をいかに促すか、主要な3つの要因(情緒的コミットメント、求職者への援助意志、紹介インセンティブ)について解説していきます。

①情緒的コミットメント

まず第1の要因は、情緒的コミットメントです。情緒的コミットメントとは「会社への愛着」のことを意味し、会社への愛着が高いほど、従業員は紹介行動を取ろうとすることが学術研究で明らかになっています。

従業員が会社に対して愛着を持つことができれば、「この会社のために頑張ろう」という気持ちが自然と湧き、会社をよくしたいという一心で友人・知人を紹介しようとするのです。

つまり、従業員の紹介行動を促すためには、従業員が愛着を感じることができるような会社を創る必要があるということです。

とりあえず友人・知人を紹介してもらえれば良いというわけではなく、良い会社を創ることと合わせて、リファラル採用を促進することが重要だという示唆が、この研究から得られます。

そのため、会社に対して愛着を持っている人からリファラル採用の声掛けを行っていくなどの対策をすることが大事になります。

単に「紹介してください」というのではなく、「紹介行動が、会社をよくすることにつながる」「会社をよくするために紹介してください」ということをしっかり説明することで、会社に対して愛着を持つ従業員は「一肌脱ぎたい」と思うはずです。

②求職者への援助意思

第2の要因は、求職者への援助意思です。

求職者、つまり友人や知人を助けたいという気持ちを持っている従業員ほど、紹介行動を取ろうとすることが研究の結果わかっています。

なぜなら、職探しに悩む求職者に対して、実は自分が働く会社を紹介することが有効な解決策になる場合があるからです。

自分の働いている会社が良い会社で、更に友人にも合っているのであれば、紹介された友人も喜ぶでしょう。

このように従業員の「助けたい」という友人への想いが、紹介行動を促すことがわかっています。

従業員が紹介行動を取るかどうかは、求職者自身の状況だけでなく、従業員が求職者を支援したいという気持ちを持てるかどうかにも左右されるのです。

そのため、求職者への支援意思を高めるために、友人・知人との関係もきちんと維持してもらうようにすることが大事です。

「会社だけ」「仕事だけ」になってしまうと、友人・知人とつながり続けることは難しいでしょう。

また、会社は従業員のプライベートに介入することはできないため、SNSを禁止しないといった方法で間接的に友人・知人との関係性維持を支援することをお勧めします。

③紹介インセンティブ

第3の要因は、紹介インセンティブです。これは、紹介行動に対して金銭などの報酬を提供することで、紹介インセンティブを提供すると、紹介行動が高まることがわかっています。

この紹介インセンティブは、従業員に見えやすい金銭的なメリットがあるため、従業員側としては嬉しいと思います。しかし、運用に当たっては、少し注意が必要です。

具体的には、紹介インセンティブが大きければ大きいほど、紹介の量は増えますが、厄介なことに、紹介の質は下がってしまいます。

自社に合っていなくても、あるいはそれほど相手を知らなくても、「紹介しよう」という気持ちがは働いてしまうからです。

量は増えるけれど、質は少し下がる、それが紹介インセンティブの持つ効果です。

3. 従業員の紹介行動が企業に与える影響を考える

最後に、従業員の紹介行動が企業に与える影響についてお話しします。

非常に興味深いことに、紹介行動を取る従業員が増えると、会社のパフォーマンスが高まる可能性が示唆されています。

なぜなら、従業員の紹介行動は、「組織市民行動(会社にとって有益で自発的な役割外行動)の一部である」と指摘されているからです。

組織市民行動は、会社にとって意味のあることであり、かつ従業員が自発的に取る行動、そして役割には規定されていない行動を指します。

たとえば、仕事をたくさん抱えた同僚を助けることは、組織市民行動です。これは強制されたわけではないため自発的な行動ですし、その人を手伝うことで会社全体が円滑に回るため、会社にとっては有益な行動でしょう。

組織市民行動について、これまでおこなわれた研究をみると、「従業員が組織市民行動を取るほど、企業のパフォーマンスが高い」ことが明らかになっています。

紹介行動を取る従業員が増えた影響は会社全体に広がり、企業全体のパフォーマンス向上につながり得ます。

個人がとる行動や心理が、ここまで会社全体に影響を与えることは他にほとんどありませんので、組織市民行動は学術的にも珍しく、非常に重要な行動だと言えるでしょう。

リファラル採用が会社のなかで当たり前になれば、紹介行動は組織市民行動の一部だと認識され、会社のパフォーマンス向上につながります。

以上、リファラル採用に関する海外の研究知見について、効果と要因、そして企業に与える影響をお話しいたしました。

4. 対談:日本企業はどのようにリファラル採用を取り入れるべきか

Q:日本におけるリファラル採用の位置づけとは?

海外はジョブ型雇用で、ポストに待遇などさまざまな条件が付いています。

そのポストに対して人を募集するため、かなり具体的です。

一方、日本はメンバーシップ型雇用がまだ強く、たとえ中途採用であっても業務が明確になっているわけではありません。

そうすると、日本では求職者にとって入社後の世界がわかりにくいといえます。

入社後にどのような世界が待ち受けるのか、自分の周りにはどういう人が働き、どのような仕事をするのかということが、はっきり見えないのです。

その点を考えると、あまり情報を持っていない日本の求職者にとって、生の声を聞けるリファラル採用は重要性が高いといえるでしょう。

確かに、求人情報だけではなかなか分かりにくく、実際に応募した時や入社した後に、ギャップを感じることも往々にしてありますね。

その点、事前に会社の中で働く友人・知人に話を聞くことができるリファラル採用では、マッチング率が高まるのかもしれません。

また、日本は生涯平均転職回数が諸外国と比較してかなり少なく、1回の転職に対する重みが違うため、声を掛ける側の責任を強く感じる人が多いような気がします。

おっしゃる通り、転職回数が少ないがゆえに、1回当たりの転職が重要になりますよね。

だからこそ、全体の量は少ないかもしれませんが、一つひとつの紹介の質は非常に高いのではないかと推測しています。

もうひとつ、日本はジョブがはっきりしていないため、面接をしてもその仕事に合っているのか、見極めるのが難しいです。

そのため、一般的には選考の精度があまり高くないという課題があります。

しかしリファラル採用の場合、仕事のことも相手のこともある程度わかっている人が紹介してくれるため、選考の精度が高まります。

これも、日本でリファラル採用が機能しやすくなる理由だと思います。

MyReferのお客様からも、「この人は通常の選考要件から外れていたが、リファラル採用だからこそ採用した。

そして実際、とても活躍している」というお話しをよく伺います。

そういうところからも、経歴に限らないリファラル採用のマッチング率の高さを感じますね。

Q:どのようなときに、リファラル採用は失敗してしまうのか。

リファラル採用のいいところを消してしまうやり方は、もったいないなと思います。

リファラル採用のいいところとは、求職者側に寄り添うことができることです。

なぜなら、従業員の友人・知人ですから、自然と相手の目線で考えて自社に合っているかどうかを考えられますよね。

だからこそ、マッチングの精度も高まるのです。

他の採用手法では企業と候補者がお互いにアピール合戦になり、攻略しあうような関係になってしまうケースがありますよね。

それとは違って、双方にとってよい採用になるところがリファラル採用の魅力です。

ところが、リファラル採用を自社の採用人数を充足させるためだけの論理で進めてしまうと、リファラル採用の持つ良さが消えてしまいます。

そのため、あまり企業目線を押し出しすぎないことが大切です。

確かに、企業が自社の良いところばかりを前面に押し出したり、求職者も就活・転職マニュアル通りの着飾った自分を見せていたりしてしまうと、お互い等身大の姿を出せないということになりがちですね。

そうなると、入社後に「こんな会社のはずじゃなかった」「こんな人だと思わなかった」と、ミスマッチが生じてしまいます。

手段を目的化しすぎて、リファラル採用を採用数確保のためだけに推進してしまうと、そうなってしまう可能性がありますね。

リファラル採用の良いところって、自然発生的なつながりを起点としていることです。

等身大の会社と候補者が出会える採用手法ですよね。

その良さをブラさずに実行できれば、成功につながるでしょう。

反対にそこが揺らぐと、リファラル採用の一番の良さが消えてしまいます。

Q:リファラル採用を促進する方法とは

そういった意味では、日本でリファラル採用を促進するためには「今月中に5名採用しないといけない。

インセンティブを高く設定するから、とにかく紹介して」という外発的な動機付けというよりは、「みんなで仲間集めをして良い会社をつくろう」というような、内発的動機付けで文化を形成していくことが重要ですね。

そうですね。

内側から湧きおこるモチベーションにもとづいて紹介することが、非常に大切だと思います。

そのためにも、紹介したくなる会社を創ることこそが、リファラル採用の本質となるでしょう。

私たちもリファラル採用3.0としてリファラル採用を通じておすすめしたい組織作りを実現することを掲げており、改めて社員が愛着を持つことができるようなコミュニケーションを意識して支援していこうと思います。

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