「逆風だからこそ例年2.5倍の2,000名採用」タクシーのMKグループがコロナ禍で大量採用に踏み切った理由 |HR NOTE

「逆風だからこそ例年2.5倍の2,000名採用」タクシーのMKグループがコロナ禍で大量採用に踏み切った理由 |HR NOTE

「逆風だからこそ例年2.5倍の2,000名採用」タクシーのMKグループがコロナ禍で大量採用に踏み切った理由

  • 採用
  • 母集団形成

※本記事は、インタビューを実施したうえで記事化しております。

1960年(昭和35年)、京都の地でわずか10台のタクシーからスタートしたMKグループ。

現在では、2000台以上のタクシー・ハイヤー・バスを保有する企業へと成長し、全国8地域の都市交通として重要な役割を担っています。

そんな同グループは、コロナ禍にも関わらず、例年の2.5倍にあたる“2,000名採用”という驚きの採用目標を掲げています。

今回は、代表取締役社長である青木さんにインタビューをおこない、このような目標設定に至った経緯や採用に掛ける想いについて伺いました。

【人物紹介】青木 信明|エムケイ株式会社 代表取締役社長

 1961年生まれ。1982年に父、青木定雄氏が経営するガソリンスタンドに勤務した後、83年にエムケイに入社。タクシードライバーなどを経て、95年同社取締役に就任。全国展開に向けた子会社の立ち上げや、企業の役員車や学校のスクールバスの運行を受け持つ運行管理事業本部の運営に当たる。 2003年4月、エムケイ株式会社代表取締役に就任。

1. 前年の売上8割減「2020年は正直振り返りたくない」

–コロナという未曽有の災害によって観光需要が激減した中、御社が受けた影響をお聞きできますでしょうか?

青木さん2020年5月には、前年比で8割の売上減となり、正直なところ振り返りたくないというのが本音です(笑)。

2008年のリーマンショック時にもタクシー業界は大きな打撃を受けましたが、ここまで打つ手が無いと感じたのは初めてでした。

当然、社内でも多くの社員が不安を感じており、いつ人員削減の話が飛び交っても不思議ではない状況だったわけです。

これまで修学旅行のピーク時期である4月~6月は毎年500校程のご依頼がありましたが、新型コロナウイルスで全て延期となり、国内外からの観光客も激減しました。

それでも、延期されていた修学旅行のご依頼が8月~10月という観光シーズンの閑散期に100件ほど来たことで、V字回復も狙えるのではないかと当時は喜んでいました。

しかし、いざ蓋を開けてみれば、新型コロナウイルスの影響が沈静化することはなく続き、結局修学旅行は一桁の実施と散々な結果に終わりました。

雇用調整助成金の増額のおかげで最悪の事態は免れましたが、当然、全てをカバーできるものではありません。

ただ、このようなタイミングでご自宅へのお食事のデリバリーやオンライン観光ツアーなど、まだ規模は小さいものの新しいことにもチャレンジしており、「まずはできることをやってみよう」といった、前向きな取り組みが功を奏してきてはいます。

2. なぜMKグループは2,000名採用に踏み切ったのか?

-なぜこのような大変な状況の中で2,000名採⽤を実施することになったのでしょうか?

青木さん:このような時だからこそ、まずは足元をしっかりと固めることが今できる最善だと考えたからです。

先行きが見えないからといって、MKグループの成長を鈍化させるわけにはいきません。

実は、リーマンショックの時には世間では多くの方が職を失うことになりましたが、反対に我々のタクシー業界には多くの方が入社していただけたので、大きく成長できた背景があります。

当時の経験から、コロナを機会だと捉え、リスクもありますが早い段階で大量採用に踏み切ることにしたのです。

今ではすっかり忘れてられているかもしれませんが、インバウンド需要が旺盛であったコロナ前には都市部ではタクシー供給不足が指摘されており、オリンピックのときには本当にタクシーがつかまらなくなる、と言われていました。

コロナ禍が収束すれば人材不足が再燃します。そして今見据えているのは2025年、大阪万博です。

世界各国から日本を訪れるゲストをアテンドできる人材にまで観光知識や語学、おもてなしの技術を育成するには4~5年はかかります。だから今このタイミングなのです。

 

-ここまで大量に採用することのメリットはなんでしょうか?

青木さん:タクシー業界は少子高齢化をそのまま体現しているような状態です。

現在、弊社含めて京都で活躍されている約7,000名のドライバーの平均年齢は62.5歳。大阪の場合はもっと高く、平均年齢は64歳程度。

京都や大阪で手を挙げてタクシーを止めたら、3人に2人は65歳以上になります。

数年後には定年退職される方も多くいらっしゃる状況で、このような課題を解決していくためにも、採用活動は本当に重要です。

しかし、私たちが数名の方を採用したところで、業界はもちろん、会社の変化もまず起こらないでしょう。

そのため、昨年度も700~800名の採用をおこなっていましたが、今回はあえてその2.5倍となる目標を設定することにしました。

多くの方に入社いただくことで「初めて業界にも変化を与えられるのではないか」と期待も込めた目標設定をしています。

今回の採用計画では、新しい働き手として全く異なる業界からも多くの人材を採用したいと考えています。

そして、ぜひ新しい価値観や知恵を、当社そしてタクシー業界全体にもたらして欲しいと考えています。

3. 業界に変化を与えるために取り入れたい「女性」と「若年層」

-具体的にどのような方からの応募を期待しているのでしょうか?

青木さん:まず、今回注力していきたいのは、女性の採用です。

まだドライバーのほとんどが男性であると思われている方も多いですが、近年では大きく変化してきています。

新卒採用の場合では、ご応募いただく割合も、実際に内定を出す割合も男性より女性の方が多いくらいです。

 

-タクシー業界において、女性が活躍できるシーンは多いのでしょうか?

青木さん:運転というカテゴリだけで絞れば、まだ男性の方が多いのは確かですが、女性が真に活躍しているのは「観光のアテンド」です。

タクシー業界は、地域の魅力や文化を発信するといった、観光業を担っている一面もあります。

もちろん運転もこなしていただきますが、「お客様の旅を豊かにする」「細やかな気配りができる」といった点では、女性の方がお客様満足度が高くなりやすい。

そういった意味では、新しい知恵という箇所にとてもマッチしています。

実際に、入社3~4年目でファーストハイヤークラス(各種国際会議や国内外の有名ブランドの展示会などでも利用いただく、精鋭ドライバーの完全同行サービス)を担当している女性の新卒社員もいるくらいです。

青木さん:また、新卒採用を軸に若年層の方を多く採用したいと考えています。

これはコロナ前から大きく変わっていない部分ではありますが、業界の若返りという課題の解決にも繋がるので、これからも継続した目標となるでしょう。

その中で最近では、大卒の方より高卒の方を育成する方向にシフトチェンジしています。

これは免許制度の変更によるもので、今までは法律的には二種免許は年齢が21歳以上じゃないと取得できませんでした。

しかし、20226月からは道路交通法が改正され19歳から二種免許を取ることができるようになります。

18歳で高校を卒業して4月や5月に誕生日を迎える方であれば、来年の6月から二種免許の取得要件に合致します。

それから免許を取るのに1カ月、そこから研修を13カ月を経て、下半期の10月ぐらいには現場デビューができるのです。

たとえば高校を卒業し30歳までに結婚をされる方の場合、これからはほとんどが共働きになると思います。

その時、当社のTC(トラベルコーディネーター)、ファーストハイヤーといったキャリアアップを実現できれば、所得も他業界と比較してかなりのレベルで求めていくことが可能です。

4. 採用から育成へ。社員が定着するためにこだわっていること

-近年、採用をおこなう中で、最近変わってきたと感じることや、自ら変えていることなどはありますか?

青木さん

応募いただく方が多様化している点でしょうか。

異業種の方からの応募が非常に増えており、様々なバックグラウンドを持つ方に興味を持っていただけるようになりました。

我々としましては、可能な限り様々な方との接点を持つ為に、最近はZoomなどのオンラインツールを活用した採用にも力を入れています。

 

  -社員の育成に関しては、どのようにしていますか?自社に定着して、社内を活性化してもらうための仕組みなどはありますか?

青木さん:現在は、なかなか全員で集まって研修をおこなうことは難しいため、面接と同じようにZoomを利用して育成をおこなっています。

ただ、まずは安定した生活を送るための所得水準を維持することが、何よりも従業員のモチベーションを活性化することに繋がっていると思います。

また、以前は私が参加して講話していた社員全員が月に一回参加する全員業務集会を、今は営業本部長が行ってくれています。

社員数が多くなると、どうしても理念や仕事への向き合い方といった部分がブレてしまい、社内の統一感が損なわれてしまいがちです。

当社は京都だけでも2,000名近い社員がいますが、こうやって必ず月に一度は社員と顔を合わせています。

社員の動きを一斉に止めるわけにはいかないので、100~150名ずつ、夕方の5時から7時半の間に交代でおこなっていましたね。

当社の創業者の教えでもある“教育の神髄は継続”という言葉を信じているので、これが合っているのかははっきりわかりませんが、これからも続けていきたいと思います。

-教育には継続が必要であるというお話がありましたが、その他に青木さんが重要だと思っていることはありますか?

青木さん:文化を徹底的に浸透させることです。

当社は、

  • 「私たちマネジメント行動」
  • 「私たちの基本行動」
  • 「私たちの信念」
  • 「MK6つの基本」

などといった、行動指針を掲げており、それを社員全員に伝えていき、そして浸透させること、継続していくことが重要だと思います。

[参考:MKグループの行動指針・理念]

青木さんあとは、「思ったことをその場ですぐに伝える」ということを心掛けています。

たとえば、あいさつの声が小さい社員がいた場合、「次から大きな声であいさつをするように」といっても身に付きませんので、その場ですぐに注意するようにしています。

鉄は熱いうちに打つ、教育はその場が勝負です。

そして、最後に「不言実行」です。気持ちや思いがあったとしても、やはり実行できる人には勝てないんじゃないかと。

もちろん無策で行動するのも意味はないので、日頃から自分の頭で考えて、自分で行動できる人材の育成が重要だと思います。

 

-日頃から自分の頭で考えて、自分で行動できる人材の育成はなかなか難しいと思いますが、具体的におこなわれていることはありますか?

青木さん:社員への権限移譲と責任所在の明確化をおこなっています。

「まずはやってみる、失敗してもいいからそこから学ぼう」という考えのもと、行動しないで起きてしまったことへの責任は問いますが、行動をした上で起きてしまった失敗について責任を問うことはありません。

「責任は私が取るので、どんどん行動してみてほしい」と社員全体に伝えています。

そして、行動することが当たり前だという意識をもってもらえれば、自分で考え、行動できる人材も育っていくと考えています。

-具体的にどんなことがあったでしょうか?

青木さん:2020年は振り返りたくない、と言いましたが…。

コロナ禍だからこそ新しく挑戦したことはありました。

医療関係者の無償送迎や飲食デリバリーなどは、やってみようという方向性は示しましたが、あとの行政との連携や飲食店の開拓、サービス骨格つくりはすべて任せました。

2000人採用計画と同時に電気自動車の導入についても発表しましたが、これも以前から将来構想として語っていましたが、このタイミングで発表しようというのは社員から出て来ましたね。

オンラインツアーやインスタグラムで京都の観光地を発信するライブ配信も様々な工夫を凝らしてやっているようです。コロナ禍が収束したときにご利用いただくきっかけつくりになっています。

先に話したMKグループの行動指針・理念もボトムアップで議論を重ねて昨年新理念としてつくりました。

医療従事者の無償送迎はその後に、第1回デジタルコミュニケーションアワード「サポート&ケア賞」を受賞しました。現場のドライバーはじめ全社一丸となって取り組んだことが評価されたのは嬉しいことですね。

 

-従業員だけでなくお客様や求職者にも伝わったのではないでしょうか。

青木さん:はい、そうですね。

同業者では休業する会社もありましたが、MKは市民の足を守るため一定の供給をし続けました。

現在の足場を何とか確保することも大切ですが、アフターコロナへの準備というか、未来志向を打ち出すことができました。

2000名採用計画を掲げただけでは本当に必要な人材は採用できません。我が社のことを知ってもらうことと、我が社の事業に共感していただくことが必要です。

この一年間、一生懸命やってきたことが、結果として我が社のスタンスというか、MKブランドの具現化として伝わったのではないかと思います。

5.「安住の地を求めるな」こんな時代だからこそ、挑戦を

-最後に、読者となる人事の皆さんにメッセージをお願いします。

青木さん:「安住の地を求めるな」ということですかね。

今回の2,000名採用については、社員の方々からとても驚きの声を聞きましたし、中には不安に思った方もいたかもしれません。

しかし、10年、15年前とは環境やステージが変わっていますし、大量採用は企業の見直しをかけることにも繋がります。

長い目でみれば、大きなメリットがあると伝えています。

今は採用においても劇的な変化が起きているタイミングであり、過去のやり方にこだわるのではなく、新しいことに果敢に挑戦していくことが必要です。

自分の畑があったとしても、そこから一歩踏み出す勇気を持つこと。

そして、これまでとは別の視点から見てみることで、そこから見えたものを自分の畑に活かしていくことが必要な時代では無いかと思います。

今は答えが明確ではないことも多いですが、まず動き出すことが大切ではないでしょうか。

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