新型コロナウイルスの影響により、外国籍人材の雇用状況も大きく変わりました。
2021年1月より、外国籍の新規入国が原則停止となり、各国で技能実習候補生が入国を待っている状態です。
一方で、受け入れ先の企業側は、
- 予定していた外国籍人材が入国できずに人手不足になっている
- 逆に仕事が減ってしまい人手余りで解雇せざるを得ない
など、コロナ禍で様々な課題を抱えています。
SaaS型越境HRプラットフォーム「Linkus(リンクス)」を運営するBEENOS HR Link株式会社は、「コロナ禍で外国籍人材の雇用状況はどう変わったのか?」をテーマに、日本の支援団体、ベトナムの送り出し機関をゲストに迎え、3月4日に記者説明会を開催。
受け入れ企業や外国人技能実習生の声を交えて、外国籍人材雇用の現状をディスカッションしています。
今回は、外国籍人材のイマや、今後の変化など、イベントレポートとしてお伝えします。
目次
⒈「入管法の改正から2年、コロナ禍で外国籍人材の雇用状況はどう変わったのか?」
外資系損害保険会社の営業職を経て2010年4月の「資金決済法」施行のタイミングで某送金会社へジョイン。外国人技能実習生の郷里送金市場を開拓。各県の技能実習生受入団体連絡協議会や協同組合連合会の総会等の郷里送金セミナーに多数登壇。日本にいる外国人が困っている様々な問題を目の当たりにし、現在は国際連携推進協会の理事兼事務局長として外国人の生活環境向上を目的とした活動に従事中。
「外国人技能実習制度」と「特定技能」の違い
栗田さん:まず、「外国人技能実習制度」の変遷と現状についてお話しします。
1960年代に開始した、海外現地法人の社員教育を目的とした研修制度が1993年に制度化され、技術移転を目的とした技能実習が実施されてきました。
2017年11月に施行した技能実習法で大幅な見直しがなされ、今まで入管法令で規定されていた多くの部分がこの技能実習法で新たに規定されました。
また、2019年4月からは入管法が改正され、新設された在留資格「特定技能」が始まっています。
外国人技能実習生の人数は、2010年には約10万人、2014年には約16.7万人、2020年には40万人超と、この10年で4倍に増加しました。
理由は、対象となる業種が追加になったこと、多国籍化が挙げられます。
特に増加したのは、ベトナム国籍で約21.9万人と国籍別で最多で、全体の半数以上を占めます。
新型コロナウイルスの影響で入国が伸び悩み、人手不足がさらに進む業界も
栗田さん:新型コロナウイルスの影響により、2020年4月の緊急事態宣言以降、新規入国がストップしてしまい、2020年7月末に一部緩和されレジデンストラックの運用が開始されました。
レジデンストラックというのは、入国の翌日から14日間完全隔離をしなければならないというルールです。
1人1部屋(お風呂・トイレ付)が必要で、その費用はほとんどの場合、受け入れ企業が負担していて、大体9万円+昼および夜の食費もかかってきます。
1企業につき1名入国というのは稀で、大体3~5名、中には10名という場合もあり、費用負担が非常に重くのしかかってきます。
企業の費用負担が困難で、入国が伸び悩んでいるのが現状です。
また、業界別だと、特定技能の職種である外食業界自体もコロナにより打撃を受け、人材の受入れができなくなってしまいました。
一方、ステイホーム特需で飲食料品製造、農業が元々人材不足ではありましたが、見込んでいた人材の入国ができずに、さらに人材不足が進んでしまいました。
外国籍人材の流出を防ぐために必要な3つのステップ
栗田さん:地域別に見ると外国籍人材は都市部に集中してしまっている状態です。外国籍人材の流出を防止するためには、
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- 意識改革
- 生活環境向上
- 福利厚生
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の3つのステップが必要です。
⒈意識改革は、安価な労働力という意識を変える、日本人に対する日本語とは違う「やさしい日本語」を使う、自ら歩み寄り相手の宗教や食文化などを理解することが重要です。
また、⒉生活環境向上は、宿舎、通信環境など生活環境の整備、各国時独自の調味料などを購入できる店舗の把握に努めてほしいです。
実習生は入国して初めて暮らす場所を知るため、事前に宿舎や一緒に働く人のことを伝えるなど、入国前からの情報発信が重要です。
実習生は結婚相手や子供など家族を自国において日本に来ている場合が多く、家族とのコミュニケーションを取るための通信環境の整備は受入企業の責務であると考えます。
最後の⒊福利厚生は、テキストだけでない動画を使った分かりやすい生活ルールやマナーの学習ツール、業務だけでない日本語の学習支援、企業が率先して地域の行事に外国籍人材と一緒に参加するなど地域社会との交流の場を設けることが挙げられます。
最近は自治体が主体となって交流の機会をつくる、コミュニケーションしやすいツールを整備するなど取り組んでいます。
日本で外国籍人材が増えない4つの理由
1.新型コロナウイルスによる影響
栗田さん:緊急事態宣言が解除されても、航空便が飛ばなければ入国ができない、さらに各国の方針の違いもあり、落ち着くことを願うしかない状態です。
また、既に日本にいる留学ビザを持っている方、技能実習の外国籍人材もコロナにより雇止めにあい職を失ってしまい、航空便がないため帰国もできません。
一方で、飲食料製造や農業は深刻な人手不足に陥っており、この人材のマッチングが上手くいっていない状況です。
2.受入側の意識
栗田さん:これは早急に変えていく必要があります。
例えば、自治体と企業が協力して、実際に住む場所や働く仲間を入国前の段階で情報発信していくことが重要です。
大変残念ですが、悪質な監理団体や企業がまだ多く存在しています。これはメディアも含めて問題を指摘していってほしいです。
かたや、外国籍人材を家族だと思って受入れている企業もたくさんいて、企業を厳しく指導するような誠実な監理団体も多いです。
こういったこともどんどん紹介していっていただきたいと思います。
3.登録支援機関の経験値不足
栗田さん:申請すれば、一般企業でも特定技能の登録支援機関に認定されるようになりました。
今まで海外人財を受入れた経験がない新規参入の企業が非常に多いのが現実です。
入国後の生活支援やトラブル時の対応のノウハウがなく、今後さらに課題になっていくと感じます。
4.煩雑なアナログ作業
栗田さん:外国籍人材が入国する際に、入管書類が非常に多く、特に技能実習生、特定技能も莫大な量の書類が必要になります。
さらに、電子生成がまだまだ進んでおらず、郵送や直接持ち込みが主流の状態です。
在留資格の多くは1年に1回の更新が必要になり、技能試験を受ける必要もあります。
それらをいつのタイミングまでに申請し受験しなければならないのか?というスケジュール管理が非常に煩雑です。
外国籍人材はDXが遅れている業界で、理事を務める国際連携推進協会でもこの4月にDX推進室を立ち上げる予定です。
まずは、監理団体のDX、その後、受け入れ企業のDXを地方を含めて取り組んでいきます。
DXにより収益性が上がる場合は、外国籍人材の時給も上げられるように進化させていきたいです。
⒉「渡航ができない現在、技能実習候補生たちは何を感じているのか?」
続いて、「渡航ができない現在、技能実習候補生たちは何を感じているのか?」をテーマに、ベトナム送り出し機関や求職者側の視点でレポートしていきます。
グラフィック業界・IT業界を経験し、2003年にCAD関連の会社を設立。翌年にはハノイ市に現地法人を設立。会社権利を譲渡後、警備系システム会社などを経験する中で外国人材関連業務に従事。その後、送り出し機関運営・日本語学校コンサル・貿易業などを展開し、現在はベトナムの送り出し機関TIN PHAT技術貿易株式会社の副社長 兼 日本事業部長として活動中。
コロナ前と比較した技能実習候補者たちの入国状況
・ベトナム全体では約20,000人(※ピーク時は約30,000人)
小松さん:新型コロナウイルスの影響が広がり、2020年3月4日にはベトナムの飛行機がストップしてしまい、4月1日~25日にはベトナム全土がロックダウンに入ってしまいました。
昨年7月には飛行機が飛ぶようになりましたが、航空運賃が高額なため実習生が利用することは困難でした。
この段階で3万人の技能実習候補生が滞ってしまっており、非常に少ない飛行機の便を取り合ってしまうような厳しい状況に陥ってしまいました。
約1.5万人は渡航できましたが、残りの1.5万人含めた技能実習候補生は渡航できていません。
送り出し機関は人材派遣会社のような存在で、ベトナムの国としても大きな産業で機関数は385社ありましたが、コロナの影響で廃業や休眠に追い込まれてしまい、今何社が残っているのか把握できていない状況です。
弊社でも日本語学校を5つ経営していましたが、持っているだけでも莫大なコストがかかるため全て閉鎖してしまいました。
今は、日本にいるベトナム人の特定活動や特定技能での採用を支援しています。
一方、日本側の視点ですと一次産業の人手不足が顕著で、長野県の農業だけでも約2,000人の人材が不足しています。
作付けを始めなければならない時期にも関わらず、人が足りません。当機関の日本への送り出しも、2020年3月以降はストップしてしまっている状態です。
ベトナムの実習候補生が日本での就労を希望する理由
小松さん:「お金がほしい」というと良くないイメージがあるかもしれませんが、ベトナムではまとまったお金を稼ぐことが大変困難です。
日本での就労は賃金相場で5倍ほどあります。また、ものづくり、アニメ、桜など、日本に良いイメージを持ってくれる実習生候補生もいます。
ただ、コロナの影響で、「内定は出てるが、本当に行けるのか不安」「渡航が開始されても、渡航費が高い」「現地の日本語学校へ教育費の返済。もしも渡航がナシになった場合、返済の手段がない」など、日本への渡航ができなくなってしまった課題や不安を多く抱えています。
今は、待機中にできることとして、オンラインでの日本語学習、寮制度のある学校は授業を継続実施するなど、なんとか取り組んでいる状況です。
送り出し機関が抱える2つの課題
⒈ 会社内での情報共有不足・各従業員の業務管理が煩雑
小松さん:ベトナムの国民性は個人主義です。
大きな送り出し機関には700名ほどの社員がいますが、全てが実績主義であり、組織も経営部・総務部・営業部・募集部と分かれていて報酬はインセンティブ制が主なため、会社としてではなく個人で儲けたいという意識が強くあります。
そのため、情報共有は一切しない、ベトナムは転職率も高いため情報がストックされない、進行中案件が今どんな状態にあるのか?同じ機関内でも把握が難しい状況にあります。
⒉ 日本側の求人募集ありきでの候補者を集める流れが問題
小松さん:現状だと日本側の求人募集ありきで外国籍人材を集めてしまっています。
半年という非常に短い期間で日本語の教育から採用まで行ってしまうため、就労後のミスマッチなど問題が起きやすいスケジュールになってしまっています。
今後は、先に候補者を集め一定期間の教育をし、準備が整った候補者を面接へ進めるという流れを作っていきたいです。
就労者が快適に働くために心がけていること
⒈就労者へ日本語力アップの必要性を説明
小松さん:日本語のスキルアップですが、難しいことを指しているわけではありません。
挨拶ができて、ちょっとした冗談含めたコミュニケーションも取れて、きちんと謝ることができれば十分です。
実は、ベトナムには「ごめんなさい」という言葉がありません。実際には存在しますが、めったに使いません。
また、日本語が上手く使えないと、もしもトラブルになった場合、日本の公共機関に訴えることができません。
また、電話を持っていない場合も多いので、SNSでコミュニケーションを取れるようにするなど生活面の環境を整えることが重要です。
⒉挨拶の大切さを伝える
小松さん:外国籍人材は外見の違いだけで周囲から注目されてしまう場合もあるため、外国籍人材には職場で働く仲間はもちろん、地域の方に対しても自ら進んで挨拶をするように伝えています。
⒊「外国籍人材雇用のインターネットサポーターとして」
最後に、今までに出た課題を解決する外国籍人材雇用のインターネットサポーターの視点でレポートしていきます。
Linkusの事業責任者として、事業構築からサービス企画・営業などを統括。前職までは芸能事務所でプロモーション企画やメディア開発を行う。2015年BEENOSのグループ会社であるモノセンスに入社、コラボ商品企画やモノセンス内新規事業を担当。BeeCruiseに転籍し、Linkusを立ち上げ、2020年7月にサービス提供を開始。利用外国籍人材が1,200名を超えるまでにグロースさせた。2020年12月にBEENOS HR Link株式会社を設立し、代表取締役社長に就任。
SaaS型越境HRプラットフォーム「Linkus」サービス提供の背景
岡﨑さん:ご存じのように、日本全体の労働人口が減少しています。
例えば、介護・医療分野では、2025年頃には34〜38万人の介護師が、IT分野では、2030年頃には約60万人のエンジニアが、不足すると言われています。
これらの分野だけでなく、すでに人手不足はあらゆる業種で起きています。こういった課題を日本の労働力だけで解決するのは不可能で、外国籍人材の力が不可欠です。
BEENOSグループは海外と日本の事業者をつなぐ「越境」をテーマにビジネスをしてきたノウハウがあり、それを活かして外国人雇用の課題解決につながる新しいサービスを開発したいと考え、スタートしました。
外国人雇用の領域は、書類申請など煩雑な労務管理が多く、さらにアナログな環境が多いです。
そういった業界に向けて、BEENOSグループがもっているデジタルの知見を活用してほしいと考えています。
外国人雇用業界全体のIT化を目指し、まずは「特定技能」から始めているところです。
外国人雇用の煩雑さを解消する「Linkus」とは
岡﨑さん:「Linkus」とは、採用・支援の関係者が、個々に連携できる業界唯一のプラットフォームです。
現地の求職者や送り出し機関、日本にいる登録支援機関や受け入れ企業がつながり、リアルタイムに情報共有ができます。
採用・支援の関係者全員に参加いただき、求職者ご本人も含めてご自身で情報にアクセスいただくことで、今まで見えていなかった情報や状況を可視化することができます。
登録支援機関や受け入れ企業が抱える業務上の課題
岡﨑さん:課題は以下のように複数あり、共通するのが情報管理・共有が大変煩雑だということです。
関係者が多く国内外とのやり取りが発生し、都度都度の情報共有が面倒になってしまう状況があります。
特定技能の在留資格の申請に関して、SNSのメッセージ機能を使っている場合が多く、一人の候補者の情報を集めるだけで、600~700回に及ぶ膨大な数のやり取りをしたというケースも多々あります。
その他、候補者や関係先によって電話、メールなどコミュニケーションツールを使い分けながら、複数の関係者とやり取りをする必要があり非常に煩雑な環境になってしまっています。
「Linkus」の8つの機能
岡﨑さん:以下8つの機能で、外国籍人材の採用・管理に関わる煩雑な業務を軽減し、受け入れ企業や求職者にとっても使い始めやすいサービスとなっています。
また、ワンコインの500円から運用いただけます。(求職者アカウントの連携管理:1人500円/月)
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- 1、在留資格申請書類生成
関係者の情報を自動反映させて各種書類を生成
- 2、ステータス管理
面接から就業準備、就業中まで進捗を可視化
- 3、アカウント連携
アカウント同士の連携でクラウドの情報交換・共有が可能
- 4、添付書類をデータで受け渡し
アップロード・ダウンロードで書類の共有・保管が可能
- 5、支援業務のTODOチェック
ガイダンスやオリエンテーションの進捗状況が連携合入れとリアルタイム共有
- 6、定期巡回対応機能
スマホやタブレットでチェックするだけ 定期巡回の報告書が完成
- 7、チャット機能
個別・グループでのやりとりがLinkus内ですべて完結
- 8、ユーザー相互検索
Linkus内の他社アカウントを探して連携申請(BtoB/BtoC)
- 1、在留資格申請書類生成
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2020年10月のリリースから、今では求職者の登録が1,200名を突破
岡﨑さん:コロナ禍である2020年6月にプロトタイプをリリースし、機能拡充や改修を実施してきました。
右肩上がりで求職者、企業・団体ユーザーともに増加し、現在Linkusを利用する外国籍人材は1,200名を超えています。
この推移からも、特定技能への注目の高さや外国人雇用のIT化の需要を感じています。
今後は「働く」だけでなく「暮らす」を支えるプラットフォームにしていきたい
岡﨑さん:海外から日本に働きに来る方々は、仕事関連のサポートはもちろんですが、それ以上に生活面でのサポートが必要です。
住居・通信機器・銀行口座・海外送金・医療・学習…彼ら単独では手配が難しい状況が、様々なシーンで発生しています。
それをサポートするのが、受け入れ企業であり、監理団体・登録支援機関です。しかし、サポート役の方々も全てがスムーズに手配できるわけではありません。
そのため、Linkusでは、自社・他社含め、各種メニューのサービス提供者と提携し、必要なサポートメニューが揃ったプラットフォームを構築します。
今、関係者がつながっているLinkusのプラットフォームに、生活支援に必要なメニューも拡充していくことで、外国籍人材が日本で暮らしていくために必要なサポートが集まっているサービスにしていきたいと思っています。
日本に来た外国籍人材が「日本に来てよかった」と思ってもらえる環境をITの目線で作っていきたいです。
そうした方が自国の方に日本の魅力を伝えることによって、日本で働きたい方がさらに増え、最終的に日本国内の地方活性化につながる貢献をしていきます。
テーマ:コロナ禍で外国籍人材の雇用状況はどう変わったのか?
主催:BEENOS HR Link株式会社
サービス:外国人材雇用のインターネットサポーター「Linkus」
開催日時:2021年3月4日(木)11:00~
【利用のお問い合わせについて】
外国籍人材の活用を検討中の事業者様の、利用に関するお問い合わせ先はこちらコンタクトフォーム:https://linku-s.com/
メールアドレス:info@linku-s.com