ジャパン・アルムナイ・アワード2021受賞企業に学ぶ退職者との関係を資産にするアルムナイ組織の作り方|HR-Study#16 |HR NOTE

ジャパン・アルムナイ・アワード2021受賞企業に学ぶ退職者との関係を資産にするアルムナイ組織の作り方|HR-Study#16 |HR NOTE

ジャパン・アルムナイ・アワード2021受賞企業に学ぶ退職者との関係を資産にするアルムナイ組織の作り方|HR-Study#16

  • 採用
  • 採用・その他

※本記事は、主催企業や登壇者/登壇企業に内容を確認のうえ、掲載しております。

転職市場が盛り上がりを見せる昨今、退職した社員と接点を持ち続けることのできる「アルムナイ組織」を構築し始める企業が増えています。

新たなビジネスの創出や企業ブランディング向上にもつながる退職者組織とはどのようなものなのか。

今回のHR-Studyでは、2021年に開催されたジャパン・アルムナイ・アワード2021の受賞企業をお招きし、退職者(アルムナイ)との良好な関係性の作り方や退職者体験を向上させるオフボーディングについて学ぶ機会を設けさせていただきました。

  • そもそもアルムナイとは何か、アルムナイ組織を構築するメリットや目的について知りたい
  • 退職者との良好な関係性構築をおこなう具体的な手法や事例について知りたい
  • アルムナイ組織を運営するためのファーストステップを知りたい

といった人事担当者や経営者、マネージャー層の皆様は、ぜひ参考にしていただければと思います。

※本記事は、2021年12月16日(木)17:00~18:30に実施されたイベント内容をもとに再編成したものです。

登壇者紹介

茂木 敏男|住友商事株式会社 人事部 キャリアデザインチーム

1983年4月に住友商事株式会社に入社後、海外拠点管理、海外市場戦略遂行の支援業務を経て、海外拠点におけるナショナルスタッフ向け研修や人事制度改訂支援に従事。シンガポール、ジャカルタ、ヤンゴンに通算14.5年の海外駐在を経験し、海外拠点経営にも参画。2019年4月より現職で、シニア社員のセカンドキャリア支援、キャリア自律・開発施策の企画・運用を担当。終わり良ければ総て良しをモットーに、当社のOBOG全員が自分らしく輝ける場所を見つけ、人生100年時代の人生を豊かにすることを夢見ている。

嶋崎 慎太郎|住友商事株式会社 人事部 キャリアデザインチーム

1995年4月に新卒でBenesseCorporation入社後、高校生向けの新規事業開発を担当。その後、人財部に異動し、新卒採用・中途採用の責任者、人事制度改訂に従事。2007年10月、住友商事に転職。営業部門人事として、役職員の異動・配置、育成、事業会社支援業務を担当。事業会社への出向を経験後、2020年4月より現職で、シニア社員の退職担当、セカンドキャリア支援等を担当。日々「個々人にとってのbetterなキャリアとは?」を模索中。

山田 圭祐|住友商事株式会社 人事部 キャリアデザインチーム

2016年4月に新卒で住友商事株式会社に入社後、人事厚生部に所属し、役職員の給与計算・社会保険・年末調整などの実務に従事。2019年1月より人事部を兼任し、役員担当として役員報酬制度の設計・改訂などを実施。2020年4月より現職で、現在はSC Alumni Network主担当として、同NetworkがAlumniにとってセーフティーネットとなりうる組織を目指すべく、企画立案・運用に邁進中。

宮地 弘行|大英産業株式会社

取締役副社長。1978年に入社し、会社の歴史の中心人物。不景気を何度も乗り越えられたのは「人」がいたから、と社員の大切さを知っているからこそ、「人財」への思いが誰よりも強い。九州が元気な街であり続けるために、現在は 街づくり事業も牽引。新しいものはどんどん取り入れ、気になった場所には現地に行ってみる性格だが、2005年から始めたブログは今もなお毎日更新中。

北野 真理奈|大英産業株式会社

2017 年に大英産業(株)に新卒入社、 1 年目から現在まで新卒採用に携わり、毎年15~20名を採用。その間、新人研修や行動指針の作成・浸透を推進し、現在は広報課でコーポレート・採用ブランディングやSDGs の取り組みである「北九州みらいキッズプロジェクト」を主幹。アルムナイを含め、各ステークホルダーを“大英ファン”にするための取り組みに奮闘中。

實重 遊|株式会社ハッカズーク

神戸大学経営学部卒業後、シンガポールにおけるインターンを経てアクセンチュア株式会社に新卒入社。グローバル人事の制度設計やHR SaaSの導入・運用など、人事コンサルティングに従事。その中で日本企業の「退職が縁の切れ目」という状況に課題意識を持ち、2020年株式会社ハッカズークに入社。セールス&マーケティングの責任者を務め、様々な組織とアルムナイの関係構築と価値創出を支援。

モデレーター紹介

西村 創一朗|株式会社HARES 代表取締役

新卒でリクルートキャリアに入社後、法人営業・新規事業開発・中途採用などを歴任。在職中の2015年に「二兎を追って二兎を得られる世の中を創る」をミッションに株式会社HARES(ヘアーズ)を創業後、2017年に独立。今回のテーマである「オンボーディング」を含め採用・人事領域を中心に多数の企業のアドバイザーを務めるほか、人事系イベントのモデレーター/ファシリテーターとしても活躍。著書に『複業の教科書』(ディスカヴァー・トゥエンティワン刊)がある。

[勉強会の内容をまとめたスケッチノート]

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LT1. そもそもアルムナイに取り組むべき理由とは|ハッカズーク 實重さん

ハッカズークの實重と申します。私は新卒でアクセンチュアに入社し、グローバル人事のコンサルティングやクラウドの導入支援などに従事しました。その際に欧米圏をはじめとする海外の人事の方と話す中で、退職者を重要な社外資産と捉え繋がる「アルムナイ」という考え方を知りました。

アルムナイとは、人事用語では『定年退職以外の退職者』を指すことが多く、海外では当たり前のようにアルムナイのネットワークがあります。しかし、日本では退職者を「裏切者」とネガティブ視する風潮もまだ一部あるのではないでしょうか。

ハッカズークは、アルムナイのクラウドサービスとコンサルティング事業を展開する設立4年半ほどの会社ですが、私は日本と海外のギャップを感じながらもアルムナイへのポテンシャルを感じ、ハッカズークに入社しました。

それでは、まず私から、アルムナイについての概要や、アルムナイが注目されるようになった背景についてお話させていただきます。

1-1.アルムナイが注目されている理由

今、アルムナイが注目されている背景には、企業と個人の関係性の変化が進んでいることが挙げられます。

終身雇用制が崩壊し、さまざまなキャリアの選択肢が増えた昨今、副業・複業、フリーランスの業務委託など多様な働き方が広がっています。

パラレルワークで働く方も含めたオープンな組織を作り、優秀な人材と繋がることが企業の重要な人事戦略の1つになりつつあるのです。

しかし、これだけ雇用の流動化が起きているにも関わらず、企業と退職者の関係性は取り残されていると感じています。お金と時間をかけて一生懸命に育てた人材も、辞めた瞬間に関係性が途絶えてしまっているのが現状です。

このような背景がある中、アルムナイの重要性を理解した企業から弊社のサービスを利用していただいており、現在では製造、広告、SIerなどさまざまな業界の企業はもちろん、一般社団法人、浦和レッズさんのようなスポーツ団体にも広がっています。

また、アルムナイへの取り組みをIR情報に載せることで、社外にどれだけ人材リソースを確保できているかという対外的な発信をする企業も見られるようになってきています。

1-2.アルムナイに取り組む価値

それでは、具体的にアルムナイに取り組むメリットはどのようなものでしょうか。代表的なものとしては、再雇用・採用を狙える点です。

アルムナイは社内のことを理解しているため、オンボーディングの手間も省けます。また、エージェントなどを通さずに、ダイレクトに採用ができるため、採用コストも抑えることができます。

お互いをわかっている状態で採用でき、採用のミスマッチが起きづらいのは大きなメリットでしょう。

また、賛否両論ありますが、アルムナイによって採用ブランディングが促進される効果も期待できます。

転職が当たり前となる中で、これから就職を考える学生は、入社後の活躍シーンだけでなく退職した際のキャリアの広がりも知りたいと考えるようになってきているのです。

そのため、「ここで働けば、会社を辞めた後も活躍できそうだ」とポジティブなイメージを持ってもらうことが重要になると考えています。

ホームページに「会社を退職した方が、ベンチャー企業に転職し活躍をしている」といったインタビュー記事を載せるなど、アルムナイの情報をオープンにすることは、採用における有力なコンテンツになり得るのです。

また、人材開発やビジネスネットワークとしての可能性などもアルムナイに取り組むメリットとして挙げられます。

アルムナイと現役社員の交流機会を作ることで、現役社員が社外の視点に触れ新たな気付きを得ることができたり、アルムナイの転職先企業と協業したりするなど、ビジネスにおけるネットワークが広がる期待もできることでしょう。

1-3. アルムナイネットワークを活性化する方法

それでは、アルムナイのネットワークを活性化するためには、どのようにすれば良いのでしょうか。

アルムナイにアンケートを取ると、「アルムナイ同士でつながりたい」という意見が多く聞かれます。

アルムナイ同士が気軽にメッセージを送り合えたり、助け合ったりできるようにすれば、アルムナイにとってのインセンティブになり得るからです。

つまり、企業はアルムナイを「管理する」だけではなく、アルムナイ本人にとって、アルムナイネットワークに所属することのメリットは何かを考え、機会を提供していく必要があります。

また、企業側の再雇用求人や業務委託募集の情報を見れるようにするといったことも、アルムナイにとっての価値に繋がることでしょう。

企業とアルムナイがwin-winの関係性を築くことが、アルムナイネットワーク活性化のポイントとなっています。

LT2. アルムナイへの3つの取り組みとこれから|住友商事 山田さん

人事部の山田と申します。本日は、弊社の取り組んできたアルムナイ活動について、および今後の計画についてご紹介させていただきます。

2-1. アルムナイ総会を年1回実施

当社ではアルムナイ総会を年に1回、これまでに2回開催しています。

総会の第1回目は対面で実施し、250名(その内の100名がアルムナイ)の方が参加しました。

総会の前半は、社長からの挨拶や、人事からネットワークの設立に関する紹介、部門役員からDXの取り組み紹介などを実施。後半は、大手町に移転したオフィスツアーを実施し、社員食堂にて既存社員とアルムナイとの交流会を実施しました。

第2回は2021年3月開催だったため、コロナの影響でオンライン開催となりましたが、参加者は95名で、そのうちアルムナイが70名の参加となりました。

1回目と同様、プログラム内容は2部構成となりましたが、人事挨拶や社内取り組みのご紹介に加え、新たな取り組みとしてアルムナイのピッチイベントも実施しました。

そして、ピッチイベント後は登壇者4名をそれぞれのグループに分けて、テーマ別交流会を実施しています。

2-2. 社内向けアルムナイネットワークの活動を紹介

アルムナイに関する取り組みの2つ目は、社内向けにアルムナイネットワークの活動を紹介していることが挙げられます。

当社のイントラサイトにアルムナイネットワークの広報ページを作成し、社内における認知度を上げたいと試みている最中です。

今後は、アルムナイから既存社員に対するメッセージ等も集めて、掲載していきたいと思います。

2-3. アルムナイへの情報提供

そして、最後の3つ目の取り組みは、アルムナイの方々に対する機会提供、情報提供です。2021年にアルムナイ専用のサイトを導入しました。

その中で実施している機会・情報提供は次の5点です。

  1. 鳥取県の副業求人の紹介
  2. MIRAI LAB PALETTEへの参加
  3. 社内向けセミナーへの参加
  4. 社内向け広報誌の共有
  5. キャリア採用の案内

MIRAI LAB PALETTEは、当社が運営する様々な人が出合い交流をおこなうイベントスペースです。アルムナイにMIRAI LAB PALETTEのメンバーになってもらうよう案内をしたり、登壇依頼をしたりしています。

また、当社グループの役職員を対象とする講演やセミナーに、アルムナイの登壇参加を呼びかけ、知見獲得や視座拡大につなげています。

その他にも、各現場の広報誌の共有や、キャリア採用情報の共有もアルムナイ専用サイトにて実施しています。

2-4. 今後アルムナイで取り組みたいこと

最後に、今後の活動として、検討しているのは次の4つです。

  • アルムナイ同士の交流会
  • アルムナイと役職員の交流会
  • MIRAI LAB PALETTEの活用促進
  • アルムナイ事務局メンバーの募集

今までは大人数の総会を実施してきましたが、次はアルムナイが1対1で話したり、アルムナイと役職員のミニ交流会といった企画も実施していきたいと考えています。

また、現在は既存社員のみが事務局メンバーとなっているため、今後はアルムナイの方々にもメンバーになってもらえるよう、取り組んでいきたいと思います。

LT3. 手探りでもアルムナイに取り組む意義|大英産業 宮地さん

大英産業株式会社、取締役副社長の宮地と申します。

弊社は、北九州市八幡西区に本社を構える現在54期目の会社です。事業内容は、「サンパーク」というブランドの新築マンションと「大英CODATE」という戸建ての企画販売、中古住宅の買い取りや再販を行っています。

正社員が268名、パート社員が100名ほど在籍しており、採用割合は新卒・中途で丁度1対1ぐらいです。平均年齢は35歳で、直近3年以内の離職率は7.9%となっています。

3-1.アルムナイに取り組み始めたきっかけ

アルムナイに取り組み始めた背景は、離職率7%という数字以上に、前向きな離職が目立つようになってきたと実感し始めたからです。

同業界での独立やキャリアアップのために辞める人が増え、特に20代後半~30代前半で、これからを期待している働き盛りの世代の退職が気がかりとなっていました。

退職時に「最高のメンバーと一緒に仕事が出来て幸せでした」といったメッセージをいただいている。「長いことありがとう」「楽しかったよ」という退職の挨拶がある。

それなのに、どんどん人が辞めていってしまう現状について、「どうにかできないものか」と頭を悩ませていたものです。

このような退職者が続く中、ある時、退職者からの紹介で採用難だった大工職の入社が2人決まったことがありました。

そして、その時に「退職したからといって、関係性がなくなるわけじゃないと気付いたのです。これが、アルムナイに取り組む1つのきっかけになりました。

3-2. アルムナイネットワークに取り組む際の懸念事項

しかし、アルムナイを導入する際には、懸念事項が2つありました。

  1. 幹部陣から賛同を得ることができるか?
  2. ポジティブ離職の追い風にならないか?

時間をかけて苦労して育てたのに辞めてしまった方が、幹部陣からはどうしても「裏切り者」と見えてしまうのではないか。また、アルムナイと繋がることで「アルムナイが離職を推奨するのでは?」という意見も聞かれました。

また、これに加えて、アルムナイネットワークの構築を誰がやるのか、どの退職者から声をかけるべきかといった議題も挙がりました。

弊社では、自分が苦労して採用した人が辞めてしまう辛さを良く知っているということで、新卒採用を担当していた北野さんが適任だとお願いし、また、まずは直近1年半以内に退職した10名程度から声掛けをスタートするところから、始めました。

本格的にスタートしたのは2021年9月からなので、まだ確たる実績もありませんが、我々のような中小企業でも、手探りでアルムナイの取り組みを進めることができていることに意味があるのではないかと考えています。

3-3. アルムナイの取り組みを進める上で大切なこと

前提として、アルムナイに関する取り組みを進める上で、大切なのは「想い」だと思います

縁があって一緒に働いた仲間ですので、その仲間の人生を尊重しながら、アルムナイとともに弊社の理念を実現していきたいと思っています。

しかし、想いばかりが先行してもアルムナイネットワークは続きません。

お互いがwin-winになるような工夫を最優先に、今後は人材・物件情報や近況を共有し合いながら進めていきます。

2021年7月には初めてのオンライン同窓会を実施しましたが、ビジネス目的で交流したい人、純粋にプライベートの楽しみとして交流したい人など、アルムナイによって参加する目的は様々です。

これらを把握しつつ、自走するネットワークを少しずつ築いていきたいと思います。

繰り返しにはなりますが、地方の中小企業である我々がアルムナイネットワークに取り組むことに意味があると考えています。

我々の住む街は田舎なので、退職者と街中で会うこともあります。だからこそ、アルムナイとどのように付き合っていくべきか、しっかり踏み込んでいくことに大きな価値があると思っています。

パネルトーク

ここからはパネルトークとして、視聴者の皆さんの希望が多かったトークテーマをもとにお話を進めていきます。

テーマ①アルムナイネットワークを構築していくためのファーストステップとは?

私たちは、まず社内で始めに「会社としてどのようにアルムナイに取り組むべきか」という方針決めをおこないました。

アルムナイへの取り組みは、会社の姿勢が大きく影響すると思います。人事戦略としておこなうのか、単純に退職者とのつながりを大事にすることを目的にするのかによって、やるべきことが変わってきます。

目的とゴールを明確に決めることが、最も大事なことです。

そして、方針を決めた後、アルムナイの取り組みをどのように伝えていくかを考えました。

具体的には、私は直近1年半に退職した方に、個別LINEやインスタグラムのDMを利用して、相手に合わせて表現を変えながら誘っていきました。

その際、いきなりアルムナイと言っても伝わりづらいので、「退職者同士のSNSができました」とお伝えするようにしていましたね。

1人ひとりに個別に、泥臭く連絡をしていったんですね。

はい、アルムナイという言葉自体が浸透していないので、退職者から受け入れやすいように個別にご連絡をしたほうが良いと考えました。

また、当社は社員同士の距離が近い社風だったので、「また情報交換しませんか」と気さくな雰囲気で歩み寄っていったんです。

退職者からは、どんな反応をもらえましたか?

ほとんどの方から「それはいいね」と前向きな反応をいただけました。「新しい取り組みを始めたんだね」「すごくいいね」という反応が多く、声をかけやすかったです。

北野さんでなければ、なかなか退職者とうまくリレーションを取るのは難しかったかもしれないと思っています。北野さんのおかげで、弊社のアルムナイの核ができたと言っても過言ではありません。

北野さんありきと属人的にな点でネガティブな意見もあるかもしれませんが、1つの成功例として知っていただけたら嬉しいです。

たしかに、これからアルムナイネットワークの構築に取り組みはじめる会社にとって「誰に任せるか」は重要ポイントですよね。

改めて、どういった方が担当者として適任だと考えますか?

アルムナイへの思いがありつつも、事業・経営のこともフラットに考えられる人が良いと思います。

視座が高く、社員思いの人で、客観的に軌道修正できる力があると良いのではないでしょうか。

弊社では、思いも強くビジネス視点も持ち合わせている北野さんが適任だと考えておりました。

ありがとうございます。

続いて、住友商事さんにも伺っていきたいと思います。茂木さん、お話を伺えますでしょうか。

実は、ここにいる3人は、最初からアルムナイに関わっていたわけではありませんでした。弊社の場合、アルムナイネットワークをやろうと言い出したのは、我々のトップ(経営陣)なんですね。

経営陣からトップダウンで降りてきて、まず事務局が立ち上がり、そこで情報収集をおこないながらここまで進めてきました。

ただ、もちろん我々も受け身でアルムナイに取り組むのではなく、アルムナイネットワークをつくる目的は何なのか経営側としっかりすり合わせをおこない、2つの目的を掲げてスタートしました。

1つ目は、新たな価値を創造していくこと、オープンイノベーションを進めていく手段としてアルムナイを活用することです。

社外のさまざまなアイデアを取り入れて価値創造をしようと考えたとき、アルムナイネットワークは馴染みが深い関係性をもったグループで最適だと捉えました。彼らを巻き込んで一緒に議論する中で、新たな価値を創造していきたいと考えました。

2つ目は、ダイバーシティ&インクルージョンを推進することです。

我々の会社は同一性が高いと言われており、悪く言えば多様性がなく、金太郎あめのような組織と捉えられる場合があります。そこでダイバーシティ&インクルージョンを掲げ、進めていく手段としてアルムナイに知恵を借りようと考えました。

すなわち、アルムナイネットワークへの取り組みを「企業風土を変えるため」におこなうと設定し、その目的に紐づいて何をやるか考えたということです。

そして、私たちの場合は、はじめに退職者名簿を作成することから始めました。

既にメールアドレスや電話番号は保有していたので、アルムナイネットワークの名簿を作り、まずは一度集まれるような企画をおこなう方向で進めていきました。

そして、一度顔を合わせたときに、直接アルムナイの方々からニーズを聞き、アルムナイのためのアルムナイネットワークを作ろうと考えたのです。

自分たちの狙い、目的も大切ですが、大前提としてアルムナイのためのアルムナイネットワークを構築していこうと考えました。

トップダウンで降りて来たものを、そのまま受け身でやるのではなく「なぜやるのか」と大義名分を考えるところから取り組まれたのですね。

ちなみに、住友商事様はどのようにアルムナイとコミュニケーションをとりましたか?

最初はメーリスで情報周知をしました。メールでの一斉配信を通じて、アルムナイネットワークに誘致をしています。

しかし、どうしても連絡がつかない人もいるので、そういった方々には口コミを通じて声掛けして欲しいと促したりもしています。私自身も自分の同期や知り合いに声をかけ、現在では430名ほどの組織になりました。

最初はFacebookのグループを利用したこともありましたが、アクセス数が少なかったので今は活用していませんね。

1つここで、視聴者からの質問を取り上げたいと思います。退職者の中で声掛けをする相手について、初めの段階で選んでいたりしたのでしょうか?

退職者の中には、円満退職ではなかった人もたしかにいらっしゃいましたので、誰から声をかけるべきかは1番の悩みどころでした。

今回、直近1年半に離職した方にお声掛けをしたのですが、たまたま前向きな理由で辞めた人が多かったことも、直近1年半の退職者を選んだという背景にはあります。

弊社では、ある特定の層、中心メンバーを優先して声掛けしてから広げていきましたね。

アルムナイの声掛けをはじめたのは2019年頃ですが、この時点で200~300名規模に声をかけていました。

現在は、退職者に退職面談を必ず実施し、面談中にアルムナイの取り組みに関して紹介していますので、基本的には選別せず、全員に案内をしている状況です。

テーマ②アルムナイネットワークを構築していく中で困難だったこと・苦労話

次のトークテーマに移りたいと思います。

まだまだアルムナイネットワークの歴史が浅いので、そこまで他社事例が多くない現状があります。

ぜひ皆さんからアルムナイに取り組んで大変だったお話を聞かせていただけますか?

今まさに悩んでいるのは、430名ほどいるアルムナイがアクティブ・非アクティブユーザーに分かれてしまっている点です。

これだけの人数がいればニーズもさまざまなので、全員に共通するテーマがないのが現状です。

加えて、どうしたらアルムナイが活性化していると言えるのか、判断軸(KPI)の設定が難しい点も挙げられます。

また、アルムナイを促進しすぎると、「外の世界はいいよ」といった形で退職を促進してしまう場合があるのではないかという心配や懸念の声も少し挙がってきていますね。

この点について、實重さんからアドバイスいただけますでしょうか。

アルムナイの二極化はよく起きる話です。どのコミュニティにおいても、「発信者:見る専門」は「1:9」くらいになりやすいのが現状です。

絶対的な解決策はありませんが、1割のアクティブユーザーがアクティブで居続けられるようフォローをしていくこと、それと同時に9割のユーザーにとっても見る価値があるコンテンツを提供すること、この2つの切り口で検討することが重要だと思っています。

また、2点目のKPIに関しては、MAU(マンスリーアクティブユーザー)を軸にして、月に1度はサイトに訪れる人数をカウントしていく場合が多いです。

月に1度はアルムナイのことを思い出してもらえるよう、コンテンツ配信や小さなイベントを継続していくと良いでしょう。

最後に、3つ目の懸念事項として挙がっていた「退職者を誘発しないか?」という話もよく議題に挙がるものです。

これは社内出向や、副業と同じもので、何をしようと「退職する方はいつか退職するものだ」と受け止めて、アルムナイとつながるメリットの方が大きいと判断する企業が多いです。

アルムナイとの交流などを通して社外を知ることで、改めて自社の良さを理解し、社員のエンゲージメントが上がり離職率が改善されたというケースも実は少なくありません。

懸念は0にはなりませんが、社外を見た上で「やっぱり自社がいい」と思ってくれる社員とアルムナイを大切にしながら、リスクとのバランスを見て運用していくのが良いと思います。

副業禁止しても、やる人は勝手にやるよねということですよね。続いて、大英産業さんにも聞いてみましょう。

正直、まだ苦労したことはありませんが、アルムナイネットワークに参加してくれるアルムナイにとって、何が価値になるのかと常に考えるようにしています。

「ただつながりましょう」と言うだけでは続かないので、退職者によっ異なるニーズを把握しながら模索している状況です。

テーマ③アルムナイをどう盛り上げていくべきか

最後のテーマに移りたいと思います。どのようにアルムナイネットワークを活性化させるべきか、皆さんのご意見を聞かせていただけますか。

ハッカズークさんの専用サイトでは、どういったアルムナイが所属しているか他のアルムナイもわかるので、アルムナイ同士が簡単にコミュニケーションを取ることができます

このように、アルムナイネットワークがいつでも利用できる、頼れる存在になれば、活性化することはできるのではないでしょうか。

また、アルムナイが頼っていいネットワークが身近にあること、住友商事も頼っていいリソースだということを、伝え続けることですね。

転職された方の中には、隣の芝が青いと思って転職したら実はそうではなかったと感じる人もいます。転職後も「また住友商事を頼っていいんだよ」と伝わるよう、しっかりと情報提供していきたいですね。

そして、丁寧に情報発信する中で「住友商事は変わったんだ」「頼っていいんだ」とわかってもらえれば嬉しいですし、「将来戻ってきてもいいんだよ」というメッセージを送ることで、再入社に繋げることも狙いの1つです。

これらを実現するために、総会のような全体で集まる大きなイベントだけでなく、双方のコミュニケーションがしやすい小規模イベントも実施していきたいと考えています。

やはり、アルムナイの中で1番盛り上がるのは、「最近何してるの?」という話題なんですよね。よほど個人のSNSでつながってない限り、退職後は近況報告する場がないのが現状です。

そこで、アルムナイネットワークでは、会社に在籍していたころの思い出話をしつつ近況報告のコミュニケーションができるよう場を提供していけたらいいなと思っています。

集まるアルムナイのニーズは、企業によってかなり異なります。

僕が所属しているアクセンチュアのアルムナイネットワークではビジネス案件の話が盛り上がりますし、製造業の企業だともっとウェットな関係性でゆるく集まっていたり、とある会社さんでは人狼ゲームをやろうという話が出たりなど、いろんな繋がり方があります。

「アルムナイだからこうすべき」という答えはないので、その都度相手にあったイベントやコンテンツを提供していくと良いのではないでしょうか。

視聴者からのQ&A

ここからは視聴者からいただいた質問にお答えいただきたいと思います。

Q.アルムナイに反響の良かったコンテンツは何ですか?

オンライン総会のときにアルムナイにアンケートをとったところ、ピッチイベントをしたいという案が上がりました。

ピッチイベントでは、アルムナイがご自身のビジネスを紹介して興味のある仲間を募り、その後交流を行いましたが、このピッチイベントは参加者のリアクションが良かったものの1つです。

今後も、ピッチイベントのような施策を小まめに仕掛けていきたいと考えています。

イベント自体は1回しか実施していませんが、「会社が今、新しくこんなことに取り組んでいるよ」と発信すると、多くのアルムナイからリアクションをいただけました。

社内報・社外報で共有するような内容をシンプルにお伝えすることが、実は効果的だと感じています。

あとは、「〇〇さんが結婚しました」といった近況報告もけっこう反応が良かったですね。これは人数が少ないコミュニティならではの話題だと思います。

Q.アルムナイの運営にはどのくらい時間をかけていますか

平均で、月2~3時間ほどですね。

事務局に4名いますが、1人あたり月3時間ほどでしょうか。

毎週1回1時間ほどのミーティングを実施していまして、イベント前は少し準備時間が多くなります。

片手間でできるとは言いませんが、身構えるほど工数がかかるものでもないということでしょうか。

どんなコンテンツを準備するかにもよりますよね。

アルムナイ同士で、誰がどこで働いているのか知りたいというニーズが多いので、プラットフォームとして名簿を提供できていれば、一定のコンテンツとなります。

「多くの時間をかければ良い」というわけではなく、まずはアルムナイ同士で名簿が見れてコミュニケーションが取れるプラットフォームを提供して、少しずつ自走するコミュニティができるよう後押ししていけば良いと思いますよ。

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