「スカウト返信ゼロ」から3ヶ月で返信率13.3%へ。エンジニア採用でのAI活用方法とは |HR NOTE

「スカウト返信ゼロ」から3ヶ月で返信率13.3%へ。エンジニア採用でのAI活用方法とは |HR NOTE

「スカウト返信ゼロ」から3ヶ月で返信率13.3%へ。エンジニア採用でのAI活用方法とは

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※本記事は、株式会社キャスター様より寄稿いただいた内容を掲載しております。

「求人を出しても応募が来ない」「スカウトを送っても返事がない」。多くの企業が抱えるこの悩みは、採用環境そのものの変化に起因しているかもしれません。

特に、エンジニア採用難は“景気波”ではなく、「長期にわたる需給ギャップ」による構造的課題です。厚生労働省が公表した一般職業紹介状況によると、情報処理・通信技術者の有効求人数は、2022年から2025年にかけて全体的に増加傾向にあります。特に、2025年には有効求人数が最も高くなっています。

有効求人倍率は、2022年の約1.5倍から2025年には約1.7倍まで上昇しており、この分野の需要がさらに高まっていることがわかります。(厚生労働省「一般職業紹介状況」)。

エンジニア採用難は一時的な景気要因ではなく、長期的かつ構造的に続く課題だといえます。それでも現場の人事に求められる役割は広がり続けます。スカウト設計、技術トレンド調査、競合比較、過去データの振り返り…。

「考える」前に「調べる・探す」に追われ、改善や工夫まで手が回らない。この状況を打破するにはどうすればいいのでしょうか。本記事では、「Gemini」と「NotebookLM」という2つのAIツールだけを使って採用業務をどう変えられるかを紹介します。

執筆者椎野 亜也香株式会社キャスター 採用支援事業部/CASTER BIZ recruiting 事業部サブマネージャー

2021年に株式会社キャスターへ入社し、採用支援事業部にて、採用戦略の立案から、スカウト運用や候補者対応フローの実務設計・運用までを一気通貫で担当。数多くの企業の採用課題解決をリード。2023年からはAIの組織活用プロジェクトも推進。専門性の高いRPOサービスとAI活用を軸に、新しい採用スタンダードの形を試行している。

CASTER BIZ recruitingサービスページ:https://recruiting.cast-er.com/cbr-lp_0001/

執筆者塚田 千春株式会社キャスター 採用支援事業部/CASTER BIZ recruiting リクルーター

キャリアのスタートはホテル業界。そこから人と人を繋ぐ仕事に興味を持ち、ヘッドハンティング型の人材紹介会社へ転職。2023年に株式会社キャスターに入社。IT業界、製造業界、サービス業界と様々な業界の採用支援に従事。ネバダ州立大学ラスベガス校卒業。

エンジニア採用が難しいのは“人材不足”だけが原因ではない

 

採用は今や情報戦。候補者データ、競合分析、社内資料、過去の選考ログ……人事が扱う情報は膨大です。しかし、情報が多すぎるがゆえに、頭の中もツール内も整理しきれなくなり、「調べて終わり」になってしまった経験をお持ちの方も多いのではないでしょうか。

本質的な課題は情報の量ではなく、“考えるための時間”が不足していることです。この課題に対する有効な選択肢は2つあります。

  • AIツールを活用して、情報収集や整理の負担を軽減する
  • 外部パートナー(RPO)と協働し、“実務と知見の伴走”を求める

AIは「調べる・整理する」仕事を効率化し、人事に思考の余白を与えてくれます。一方でRPOは、採用の実務を代行するだけでなく、複数社の支援経験から得た知見を持ち込み、人事の意思決定を後押しします。

つまり、AIは右腕、RPOは伴走者。この二つを組み合わせることで、人事は「考えることに専念できる環境」を整えられるのです。

とはいえ、AIもRPOも「まずは自分の現場で試してみる」ことが第一歩です。そこで次章では、このAIツールを実際にどう使うのかを具体的に紹介します。GeminiとNotebookLM、そしてGemini内の「Gems」機能を使った採用改善の事例を見ていきましょう。

AIと一緒に考える採用 —— GeminiとNotebookLMの使い方

AI活用と聞くと「難しそう」「専門知識が要るのでは」と感じる方も多いかもしれません。しかし、GeminiNotebookLMはそれぞれシンプルな役割を担い、人事の日常業務をサポートしてくれます。

たとえば「データエンジニアを採用したい」と考えたとき、人事が最初にやるのは求人市場のリサーチです。

Geminiに「最近のデータエンジニアの求人傾向を教えて」と問いかければ、必要とされるスキルや平均年収、求人件数の増減などを、会話の形でまとめて返してくれます。さらに「競合A社とB社の求人条件を比較して」と依頼すると、条件の違いを一覧にして整理してくれる。これまで数時間かけて求人票をひとつずつ調べていた作業が、数分で済むようになります。

次に役立つのがNotebookLMです。過去に送ったスカウト文や選考データをアップロードし、「返信率が高かった文面の特徴を教えて」と頼めば、成功パターンや辞退理由を要約してくれます。たとえば「挑戦できる環境を強調したスカウトは反応が良い」「スカウトした理由が曖昧なものは辞退につながりやすい」といった傾向が数分で見えてきます。

つまり、Geminiは外の情報から仮説をつくるAI、NotebookLMは自社の情報を整理して改善点を示すAI。それぞれの役割を知って組み合わせれば、人事は「調べる時間」を大幅に減らし、本来注力すべき「考える時間」を取り戻せるのです。

実践事例:スカウト返信ゼロから返信率13.3%へ改善

ここからは、Geminiの「Gems」機能を活用し、採用活動に取り組んだ企業のユースケースを紹介します。この企業では「組み込みソフトウェアエンジニア」を募集。採用成功に向けビズリーチでのスカウト送付を3か月続けたものの、返信はゼロ。そこでAIを取り入れ、次のような流れで改善を進めました。

1. Geminiでリサーチ

市場動向や競合求人を調べ、ターゲット人材の期待値を把握。ターゲットにどんな転職軸が多く、どんな訴求が有効なのかもリサーチ。

2. NotebookLMでこれまでの自社の採用活動の傾向を分析

過去の募集時のスカウト文や候補者データを基に、返信率が高かった・低かったパターンを抽出。

3. Gemを作成し、知識を与える

Geminiには「Gems」という、あなた専用のAIアシスタントを作れる便利な機能があります。

1と2の内容をGoogleドキュメントにまとめればGemに「知識」としてインプットが可能。さらに、”あなたはプロの採用担当者です”といった役割や、”常にカジュアルな文体で”のような行動のルール(カスタム指示)も設定できます。これにより、「市場調査+自社の事例」の知識をもとに、スカウト文面を作成する専用AIが完成します。

4. Gemでスカウト文を作成

Gemに「〇〇(採用媒体)でのスカウト文面を作成して」と伝えると自社の採用ポジションにピッタリのスカウト文が自動で提案されるように。

入力内容(プロンプト)
あなたは候補者の心をつかむのが得意なリクルーターです。以下の[求人票]と[候補者のプロフィール]を元に、〇〇(採用媒体)で候補者へスカウトを送ります。候補者が思わず返信したくなるような、パーソナライズされたスカウトメールの文面を作成してください。
【アウトプット形式】
・最低◯文字以上◯字未満とする
# 求人票
(ここに求人票のテキストを貼り付け)
# 候補者のプロフィール
(ここにスキルや経歴など候補者に関する情報を貼り付け)

この仕組みで自社の勝ち筋を探りながら3か月スカウト運用した結果、返信率は0%から13.3%へ改善。AIを“調べ物の道具”にとどめず、“自社専用のアシスタント”に進化させたことが成功の鍵でした。

まとめ —— 人事は「考える力」を手放さない

GeminiとNotebookLM、そしてGemを活用することで、「調べる・まとめる」に追われていた時間を減らし、本来注力すべき「考える」仕事に向き合えるようになります。AIは、人事の代わりに判断してくれる存在ではありませんが、判断の質を高めるための“右腕”にはなり得るのです。

一方で、採用活動は情報整理だけでなく、候補者対応や調整業務など実務も多岐にわたります。こうした部分まで含めて支援してくれる伴走者と組めば、AIと人がそれぞれの強みを発揮し、人事はより戦略的に動けるようになるでしょう。

採用難が続く今こそ、「自分がどこに時間を使うべきか」を改めて考えるタイミングかもしれません。AIと外部の知見をうまく取り入れながら、あなただけの「考える余白」を取り戻してみてはいかがでしょうか。

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