新卒採用は年々前倒しが続き、早期のインターンシップ開催が一般化に。
採用の早期化はするものの、学生の承諾時期は変わらず、採用活動は長期化。さらにコロナ対策の一貫でオンライン化が進み、学生の就職への価値観も多様化してきているなど、採用担当者はさまざまな変化への対応に追われています。
新卒採用支援のキャリアマートによれば、23年卒の新卒採用傾向は「早期化、長期化、Web化」であったとのこと。24年卒はさらに変化をとげて「早期化、長期化、多様化」へと移り変わると予測しています。
採用にかけられるリソースに限りがある中で、各社どのように変化に順応していくべきなのでしょうか。
今後起こり得る「新卒採用の多様化」とはどのようなものか、採用担当者は何をすべきなのか。今回はキャリアマート社の小林様を取材し、採用傾向や今後の対策などをまとめてご紹介します。
小林 弘樹|株式会社キャリアマート 執行役員
大阪府出身。関西大学経済学部卒業後、21歳から飲食店を経営・運営。27歳から新卒採用支援企業へ転職。採用支援実質担当クライアント数は300社を超え、主に採用人数5名~300名規模の企業経験を幅広く持ち、クライアントリピート率は92%。根本的ソリューションに定評があり、企業が抱える課題解決へ貪欲に取り組む姿勢が好評。
目次
『キャリアマートの採用代行』
キャリアマート採用代行3つの特徴
- 月額1万円から提供可能
- ニーズにあわせて、フルカスタマイズ対応
- サービス支援期間は、最短3日から依頼ができる
1、4月までの23卒新卒採用を振り返って感じること
ー本日はよろしくお願いします。まずは小林様とキャリアマートについてご紹介をお願いします。
小林さん:私は情報通信業の営業職や、飲食業の立ち上げを経験したのち、人材業界に携わるようになりました。キャリアマートに入社したのは2009年で、今年で入社13年目となります。
キャリアマートは、新卒採用の採用アウトソーシング(RPO)事業に強みを持っており、これまでに累計で19,000社ほどの新卒・中途採用を支援してきた実績があります。
ダイレクトリクルーティングによる母集団形成に苦戦
ーありがとうございます。数多くの新卒採用支援をされている中で、23卒採用の特徴・傾向はどのようなものでしたか?
小林さん:23卒採用は、ちょうど採用のピークを超えた時期となっています(2022年5月取材現在)。
振り返ってみると、23卒採用はダイレクトリクルーティング系のサイトで募集を見込んでいた企業が思ったよりも応募を集められず苦戦しているようです。
ここ数年は、マイナビやリクナビの大手サイトを脱却し、または並行して、ダイレクトリクルーティングで母集団形成をおこなおうと手法を変えた企業が多かったのですが、全体的に思ったより成果が出ていない企業が多くいらっしゃいます。
なお、ダイレクトリクルーティングの活用媒体としては、OfferBoxやキミスカが2大サイトになっています。
直近の新卒有効求人倍率は1.5~1.58ほどの推移なので、そこまで売り手市場となっているわけではありませんが、想定以上に苦戦している企業が多かった印象です。
ーダイレクトリクルーティングの活用が増えている背景は何でしょうか?
小林さん:大手ナビサイト離れと同時に、コロナの影響で対面で実施する採用イベントの多くが中止となっています。
そこで、多くの企業は大手ナビサイトのオプション機能に課金するか、思い切ってダイレクトリクルーティング型に乗り換えるなど、手法を変えています。
学生も大手ナビサイト1つだけに登録するのではなく、ダイレクトリクルーティングサイトやインターンシップサイト、SNSなど複数経路で情報収集をおこなっています。
各社、さまざまなサービスを活用しながら母集団形成を試みていますが、手法を切り替えただけでは学生に魅力的な訴求ができず、結局最後は新卒紹介を頼る企業も多いです。
これに加えて、コロナ禍となった2020年頃から「採用のWeb化」への移行が本格化しました。母集団形成から最終選考まで一貫してオンライン実施しているのは全体の約4割になります。。
残りはオンラインとオフラインの組み合わせで、学生の意思決定を後押しする最終選考や内定出しなどの重要な場面では、やっぱり対面でやりたいという企業も多く見られます。
このような変化があった中で、4月末時点では思ったよりも内定承諾が得られなかったのが23卒新卒採用の傾向だと分析しています。
また、23卒の傾向をまとめるなら、採用の「早期化、長期化、Web化」と言えるかもしれません。
23卒採用で見られる「早期化、長期化、Web化」
ー採用の「早期化、長期化、Web化」について具体的にお聞かせください。
小林さん:まず早期化について。例年6月ごろからマイナビ・リクナビなどの大手媒体でインターン情報が解禁され、夏~秋・冬のインターン募集が始まります。
もともとは、早めに職業観を身につけることが目的で実施されていたインターンですが、最近ではインターンきっかけに早期選考会に案内したり、インターンへの参加=選考への参加となるケースも増えています。
経団連が早期化について一定のルールを提示していますが、実態としてはインターン時期に選考を始める企業が出てきています。
つまり、「インターン自体が早い時期におこなわれている」という意味での早期化と、「本選考が早く行われるようになった」という意味の早期化が乱立しているのが現状です。
【23卒採用の変化と特徴①】
- 対面の採用イベントが激減した
- 大手ナビサイト依存脱却が顕著に
- 大手ナビサイトのオプション利用充実、またはダイレクトリクルーティングサイトの利用移行など手法が変化
- インターン開始時期の早期化
- インターン開始とともに、実質の選考会が行われるケースも増加(選考時期の早期化)
- 各選考課程においてオンライン化
小林さん:次に、採用の長期化について。
前述した早期化に伴い、インターンシップ媒体へ掲載しないと、翌年3月からのナビサイト・グランドオープン以降の母集団形成が間に合わない傾向となっています。
そのため、24卒はより早期にインターンをおこないながら本選考を開始する動きが顕著となっており、結果的に採用活動が長期化してしまうのです。
また、採用開始の時期が早まる意味での長期化だけでなく、内定者も9月、10月まで複数内定をもったまま承諾しきれない層が増えており、採用活動が後ろにも延びてしまう傾向も見られます。
学生と面談していると、23卒は2022年2月末時点で1~2割ほどが内定保持しているようでしたが、どんなに早く内定をもらっても「本当にこの会社でいいのか」と決めきれない方が大多数です。
場合によっては、10月の内定式で内定者や先輩社員の様子を見てから、承諾可否を決めようとする方も全体の約5%はいます。
内定式後に辞退されてしまうと、結局11月~12月に追加の会社説明会、選考活動をおこなわなければならない企業もいらっしゃり、どんどん採用が長期化していきます。
また、11月~12月は本来、翌年度の新卒採用の準備をする時期になるので、採用担当者の負担は計り知れません。
【23卒採用の変化と特徴②】
- インターン時期が早まることで、採用活動そのものが長期化
- 内定式後に内定辞退が起きることもあり、採用活動が後ろ倒しに長期化
小林さん:そして3つ目のWeb化です。
母集団形成にそれなりのコストをかけて人集めをしたにも関わらず、その後の選考がうまく進まないという課題も多く見られます。それが、採用のWeb化から起こる課題の1つです。
採用を物理的にオンライン化できたとしても、Web上で会社の雰囲気を伝えきれず、惹きつけができなかった場合、採用プロセスの歩留まりが進展しないようです。
学生は、面接官の面白さや雰囲気によって左右されるケースもありますので、Web上で戦略的に惹きつけをおこなう必要があります。
また、昨今の学生は、「欲はないけれど承認欲求は強い」という特徴があると考えています。「あなただから、(特別に)内定を出しているんだよ」という理由付けをおこなわなければ、興味を持ってくれないのでしょう。
ーWeb化への課題に対してどのような打ち手があるのでしょうか。
小林さん:23卒~24卒の学生は入学してからの2年間、完全にオンラインで学校生活を送っています。
「オンライン慣れしている」という背景もありますが、学生たちは「オンライン説明会はどこも同じ」と感じているのが課題です。
学生1人ひとりに個別メッセージを打ち出して、特別感を持たせることも大切ですが、それよりも「企業の素の状態」をいかにWeb上で見せていくかが重要だと考えています。
Web上で学生の惹きつけが上手い企業は、短い時間でも1on1の要素を取り入れたり、Zoomのブレイクアウトルームを用いて少人数で会話できる機会をしっかりつくっています。
また、オンラインでの社員座談会などで、社員同士のやり取りを見せて「社風」をリアルに伝えるよう工夫もしています。
ダイレクトリクルーティング系のサイトが多様化し、学生にとっても選択肢が増えています。
学生も企業も、「このサイトだけを使えば採用(就活)が上手くいく」と言えない時代になっていますから、複数のサービスを駆使して網目を張っていかねばなりません。
その上で、Webを活かしたコンテンツを企画し、オンラインでも学生が関心を持ってくれるよう特別感を出したり、工夫を凝らしたりして、先の選考に進めていくことが必要です。
新卒採用の負担が増す中で、何を優先するのか?業務をコア、ノンコアで切り分けて考えていく必要がある
ーちなみに、ダイレクトリクルーティングをはじめとした新しい採用手法を実施する際に意識すべきことはありますでしょうか?
小林さん:1通ずつ愛情込めてスカウトを送りたい気持ちは分かりますが、どうしても「配信数が担保できない問題」に陥ってしまう企業様は注意が必要です。
3月の本選考直前までは頑張って丁寧にスカウトするものの、その後忙しくなった瞬間にスカウトが後回しになる場合も多いです。
今まで19,000社以上の支援実績があるからこそ言えることですが、ダイレクトリクルーティングは質よりもまずは量です。
一定の通数を担保した上で、質(愛情を込める)の部分に注力するのが良いでしょう。
ダイレクトリクルーティングの他にも、採用管理システム(ATS)を業務負担を減らす目的で導入する企業も見られますが、定着するまでは管理ツールが増えるため、業務が増えて工数が増加する傾向にあります。。
しっかり運用に乗れば非常に便利なサービスですが、複数の媒体データを取り込んだり、運用ルールを決めたりするのに時間がかかり、中途半端になるなら注意が必要でしょう。
今後も、採用の早期化・長期化により、複数年度の採用活動を同時におこなわなければなりません。
ダイレクトリクルーティングのような工数がかかる手法も取り入れ、インターン企画もおこない、内定辞退のフォローもしていくと考えると、人事の手はいくらあっても足りません。
今後ますます採用における負担は増える一方のため、早いタイミングでどの業務を優先するべきなのかなど、業務の切り分けをおこない、マンパワー不足であるなら「どこまでを自分たちでおこない」「それ以外は外部のパートナーに任せるか」など、検討することをおすすめしたいです。
【23卒採用の変化と特徴③】
- ダイレクトリクルーティングは質よりも量に担保
- 中途半端に新手法やサービスを取り入れると、使いきれない可能性も
- 複数年度の採用活動が今後も同時進行となるため、人事の人手不足が続く
3、24卒採用のキーワードは「多様化」
ー23卒採用の分析を踏まえて、24卒の見通しを教えてください。
小林さん:繰り返しお伝えしている、採用の「早期化、長期化、Web化」から、24卒は「早期化、長期化、多様化」に移行すると私は考えています。
22卒~23卒新卒採用にかけてさまざまな変化がある中で、「単純に媒体を変える、新たな手法を追加するだけでは、課題は解決できない」と各社担当者は痛感しています。
その結果、Webと対面をミックスさせた新たな手法を考えたり、時期によってダイレクトリクルーティングサイトを複数使い分けたりと、採用を多様化させる動きが活発となっていく見込みです。
例えば、インターンなど早い時期に強いサイトはONE CAREER、その次の時期はキミスカ、選考が本格化する時期はOfferBoxというように、ダイレクトリクルーティングサイトにも「旬の」時期があります。
インターンも1dayだけでなく複数日程、長期間のものに切り替えて学生の満足度を高めるよう注力したり、思い切って対面選考に戻そうと検討したりする企業も出てきています。
しかし、Web化が当たり前になったタイミングで対面選考を実施するのであれば、「わざわざ足を運ぶ理由」を意図的に作らねばなりません。
ー会社まで足を運んでもらう理由づけが必要になるのですか?
小林さん:はい。コロナ前までは会社に来てもらって選考をするのが当たり前でしたが、Web化によってわざわざ会社に行く必要性が低くなりました。
それにより、「なんでわざわざ会社に行かないといけないのか」という、来社へのハードルがあがっているのです。
中には、毎回の選考時の交通費支給まで考える企業もあるようです。
【23卒採用の変化と特徴④】
- 22卒~23卒の反省をふまえて24卒採用は多様化の見込み
- サイトの使い方やインターンの実施方法が多様化
- Webと対面の使い分けも多様化していく
ー最後になりますが、ここまでの話を踏まえ、採用担当者にアドバイスをお願いできますでしょうか。
小林さん:今後の採用活動は、地道にやるべきことを1個ずつ丁寧に確実に運用していくことが重要でしょう。
説明会予約をしてもらったら説明会のURLを送る際に感謝の言葉を添える、選考のアンケートに回答してもらったら、「回答ありがとうございます」と丁寧に返信をするなどです。
当たり前のように聞こえますが、リソースが足りていないと、これが意外と疎かになりがりです。
特にオンラインコミュニケーションにおいては、細かいメッセージのやり取りが非常に重要だと思います。
工数がかかったとしても、お互いのコミュニケーションのキャッチボールを丁寧に進めていくこと。当たり前の丁寧さの徹底。この点に注力している企業は採用が上手くいっている印象です。
この基本に加えて、ターゲットとなる学生がどの媒体(サービス)を利用しているのか、どの時期に動いているのか情報収集を適宜おこなって、戦略的に採用を進めることも重要です。
もしリサーチする余力がなければ、私たちのように19,000社以上の採用データを持つ採用支援会社を、ぜひ頼っていただきたいです。
小林さん:今後、コロナが明けたとしても少子高齢化の流れが続くため、長期的に採用難となるのは事実です。
人材獲得競争が続く中、採用担当者の人手はいくらあっても足りないはずなので、早い段階でパートナー企業に並走してもらう、委託するなどの活用していただけると良いと思います。
外部委託にはコストがかかりますが、相談するだけなら無料ですし、複数のパートナーを活用している企業の方が上手くいっている傾向も見られます。
私たちは採用担当者の駆け込み寺になりたいと思っていますので、1人で悩まずに頼っていただけたら嬉しいです。
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『キャリアマートの採用代行』