年末調整はいつからいつまでの収入でおこなう?対象期間や期限を解説! |HR NOTE

年末調整はいつからいつまでの収入でおこなう?対象期間や期限を解説! |HR NOTE

年末調整はいつからいつまでの収入でおこなう?対象期間や期限を解説!

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【社労士監修】HR関連法改正トレンドBOOK 2024年版

2023年は一部企業を対象に人的資本開示が義務化されたほか、HR関連での法改正に動きが見られました。
2024年では新たな制度の適用や既存のルールの変更・拡大がおこなわれます。
人事担当者として知っておきたいHR関連の法改正に関する情報ですが、その範囲は幅広く、忙しい業務の中でなかなか網羅的に把握することは難しいのではないでしょうか。

  • 忙しい中でも要点をまとめて情報収集をしたい
  • 社労士が監修した正確な情報を知りたい
  • HR関連の法改正を把握しておきたい

という方はぜひご確認ください!

1. 年末調整とは

年末調整は、従業員の毎月(毎日)の給与や賞与などから源泉徴収をした所得税(復興特別所得税を含む)と、1年間に納めるべき年税額を比べて、過不足金がある場合に精算する手続きのことです。過不足金があった場合には、新たに従業員から徴収したり、従業員に還付をおこなったりします。

年末調整の対象となるのは、原則として「給与所得者の扶養控除等申告書」を提出している従業員です。ただし、要件を満たす退職者なども、年末調整の対象となります。

一方、年収が2,000万円以上の場合や、2カ所以上から給与を受け取っている場合などは、会社員であっても、年末調整の対象外となるため、注意が必要です。

2. 年末調整はいつからいつまでの収入が対象?

年末調整の対象となるのは、その年の1月1日から12月31日までに支払われた給与所得です。そのため、12月に支給する予定であれば書類の作成時点で未払いの給与なども、その年の年末調整の対象になります。一方、翌年に支給する予定の給与は、その年の年末調整の対象とはなりません。

また、年末調整の対象になる給与は、年末調整を実施する会社が支払った給与に限定されません。年の途中で転職してきた従業員については、前職でその年に給与を受け取っている場合、前職の給与を含めて、年末調整を実施する必要があります。

さらに、配偶者(特別)控除や扶養控除、保険料控除などは、その年の12月31日時点で判断されます。そのため、年末調整の書類を提出した後の年中に、扶養家族の人数が変わったり、新しく保険に加入したりすると、年末調整の訂正をおこなう必要があります。

3. 年末調整の大まかなスケジュール

年末調整の業務をおこなう人事労務担当者は、10月下旬~11月中旬頃に、従業員が提出する申告書などを用意し、配布をおこないます。また、従業員から書類を回収したら、不備がないかどうかをきちんとチェックする必要があります。

11月下旬~12月頃には、従業員の提出した書類をもとに、年末調整を実施し、年内に支払う給与や納めるべき所得税を確定させます。また、翌年に慌てることがないように、年内に支払調書や源泉徴収票など、年末調整に関係する書類の作成・提出する準備をしておくことが大切です。

翌年の1月には、年末調整を完了させ、源泉所得税を納付し、税務署や自治体に必要な書類を提出します。なお、年末調整の期限(翌年の1月31日)までに、従業員に源泉徴収票を交付していない場合でも、年末調整の訂正を自社でおこなうことが可能です。

4. 従業員の提出書類の提出はいつまでにすべき?

先述のとおり、年末調整は翌年の1月31日までに完了させる必要があります。また、控除対象者の年末調整は提出書類や記載項目が複雑な場合もあり、不備があることも多いです。従業員から提出された書類に不備がある際には差し戻しをして再提出を求める必要も出てきます。

そのため、従業員の年末調整の書類の勤務先への提出期限は、11月中旬から12月上旬頃を目安に設定することがおすすめです。

加えて、書類の不備をチェックするために、できる限りスケジュールより早めに書類を提出してもらうように呼びかけることも大切です。たとえば、従業員に年末調整書類の作成の仕方や期限を定期的にメールなどで周知する方法も一つの手です。

5. 通常と異なる時期に年末調整が必要になるケース

通常、年末調整は11月下旬~12月頃におこない、翌年の1月には完了させておくことが一般的です。しかし、これらとは別の時期に年末調整をおこなうこともあります。

ここでは、通常とは違った時期に年末調整が必要になるケースについて詳しく解説します。

5-1. 年の途中で退職し、再就職する見込みがない場合

年の途中で退職して、再就職する見込みがない場合には、年末調整をおこなわなければなりません。そのため、一般の従業員とは、異なる時期に年末調整を実施することもあります。

たとえば、死亡により退職した方は、再就職の可能性はないため、年末調整の対象になります。また、著しい心身の障害のために退職した方のうち、再就職の見込みがない方も年末調整の対象者です。ほかにも、その年に受け取る給与総額が103万円以下で、退職した後にほかの勤務先から給与の支払いを受ける可能性がない方も対象になります。

このように、年の途中で退職した場合は、再就職して給与を受け取る可能性があるかどうかによって、年末調整を実施するかどうかが決まります。なお、退職者には、源泉徴収票を1カ月以内に交付する義務があります。

5-2. 年の途中で海外転勤などをする場合

年の途中で海外支店に転勤などをするとき、非居住者に該当する場合は、年末調整の対象者になります。なお、非居住者とは、国内に住所がなく、1年以上居所がない方を指します。

たとえば、海外支店などに1年以上の予定で転勤する場合は、非居住者に該当するため、年末調整が必要です。この場合、年末調整を受けるには、従業員は扶養控除等(異動)申告書を提出しなければなりません。なお、年末調整の期限は、海外に出国する日までとされています。

5-3. 12月に入社した社員の場合

12月に入社した従業員の場合、給与が12月に発生しているかどうかで年末調整をすべきかが決まります。12月に入社し、12月中に給与の支払があるのであれば年末調整をおこないますが、12月中に給与の支払がない場合は年末調整をおこなう必要はありません。

たとえば、給与の対象となる期間が毎月1日~31日で、給与支払い日が毎月25日の会社に12月1日から入社したのであれば年末調整の必要はありません。

一方、給与の対象となる期間が毎月15日~翌月14日までで給与支払い日が毎月25日会社に12月1日に入社した場合、日割給与の14日分が12月25日に支払われるため、年末調整が必要です。仮に12月15日に入社したのであれば、12月に支払われる給与は発生しないため、年末調整の必要はなく、直前まで前職で働いていたのであれば前職の会社が年末調整をおこないます。

5-4. 12月に退職した社員の場合

12月に退職した従業員の場合も、12月に入社した従業員と同様、給与をいつ受け取るかがポイントとなります。

年末調整は原則として一年を通じて勤務している方が対象となるため、12月31日時点に会社に在籍していない方は、年末調整の対象外です。この場合は、前職の退職時に前職の会社から発行された源泉徴収を用いて支払保険料などの精算を確定申告でおこないます。精算する必要がない場合は、退職時に発行された源泉徴収票で年調計算がされていれば年末調整は完了となります。

しかし、12月に支給予定の給与を受け取った後に退職をした場合には、退職者であっても、年末調整の対象者に該当します。

これは、たとえ退職後に転職したとしても、転職先からその年に給与が支払われるということは考えにくいためです。ただし、年末調整は、ほかの従業員と同じタイミングでおこなうことが多いかもしれません。

6. 年末調整の期限に遅れてしまった場合の対処

従業員の人数が多い場合や、従業員からの書類提出が遅くなってしまった場合、年末調整業務が期限内に終わらないこともあるかもしれません。

ここでは、年末調整の期限に遅れてしまった場合の対処方法について詳しく紹介します。

6-1. 従業員が確定申告をおこなう必要がある

自社で設けている期限に遅れたとしても、勤務先が税務署に提出する法定調書の期限である1月31日までに間に合えば、法的な問題はありません。ただし、法定調書の提出期限を過ぎてしまった場合には、従業員が自分で確定申告をおこなってもらう必要があります。

また、年末調整の訂正の期限も同様であり、提出した内容に不備があることが発覚し、1月31日までに訂正できなかった場合には、従業員自身に確定申告で正しい内容を税務署に提出し直してもらう必要があります。

会社側の都合で年末調整書類の提出期限に間に合わない場合、前もって税務署に連絡しておくことで数日であれば提出期限を延長してもらえる可能性もあるため、従業員に確定申告を依頼する前に税務署に確認してみましょう。

6-2. 確定申告が必要となった場合、いつまでに手続きが必要?

確定申告の期間は、原則として毎年2月16日から3月15日までです。ただし、災害など不測の事態が発生した場合には稀に期限が延長されることもあります。確定申告をおこなう場合は、最新の情報収集を怠らないことが大切です。国税庁のホームページなどから事前に確認をしておきましょう。

確定申告の期限に遅れると、無申告加算税や延滞税などの罰則が課されるという恐れがあります。

また、確定申告では、確定申告書の作成に手間がかかるだけではなく、源泉徴収票や各種控除の証明書など、必要な提出書類も多いです。そのため、確定申告の期間になれば、すぐにそれらの書類が提出できるように準備しておくことも重要です。

7. 年末調整の還付金はいつ返ってくる?

その年の源泉徴収による所得税額の合計が、年末調整で計算された納めるべき所得税の総額よりも大きい場合には、納めすぎた税額が還付金として戻ってきます。

年末調整は、12月の給与や賞与などの額を確定させたうえで実施されます。還付金は、給与に上乗せして支給されることが多く、その時期はその年の12月か翌年の1月であることが一般的です。

ただし、還付金は給与と同時に支給されなければならないという決まりはないため、勤務先によって支給方法は異なります。なお、基本的に年末調整を終わらせた時期が早ければ、還付される時期も早くなります。

7-1. 還付金はどんな人がもらえる?

還付金が付与されるのは、「月々の給料から差し引かれた所得税の金額よりも、実際に支払わなければならない所得税額が低かった場合」です。つまり、何らかの控除の対象となる人は還付金がもらえる可能性が高いといえます。

ここでは、還付金がもらえる人の一例を紹介します。

扶養家族が増えた人

その年に扶養家族が増えたにもかかわらず、会社に申告をしていなかった場合は「扶養控除」が考慮される可能性があります。ただし、16歳未満の子どもについては所得税の控除の対象とはなりません。そのため、子どもが生まれた場合であっても扶養家族がすぐに増えることにはなりません。

扶養家族が増える具体的なケースは、結婚して配偶者を扶養に入れた場合や、親に仕送りが必要になった場合などが挙げられます。

配偶者と離婚や死別した人

配偶者と離婚したり、死別をし、さらに所得金額が500万円以下といった条件を満たしてる場合、寡婦(寡夫)控除が適用されます。ただし、すでに会社に寡婦(寡夫)になったという届け出をしている場合は、毎月の所得税計算の際にすでに考慮され、所得税が減額されている可能性があります。この場合、還付金が戻ってこないこともあります。

医療保険や生命保険に加入している人

医療保険や生命保険、学資保険、地震保険などに加入している場合、一定の要件を満たせば支払った保険料に対して控除の適用があります。具体的には「生命保険料控除」や「地震保険料控除」などが挙げられます。

住宅ローンの借り入れをしている人

自分が居住するための家を支払期間10年以上の住宅ローンを組んで購入したり、支払期間5年以上の住宅ローンを組んで自宅のリフォームや増築をした人は、一定の要件を満たすことで「住宅借入金等特別控除」を受けることができます。

ただし、住宅借入金等特別控除については、初年度は年末調整ではなく確定申告をおこなう必要があります。初年度に確定申告をおこなえば、2年目からは年末調整で控除の申請をおこなうことができるようになります。住宅借入金特別控除は、所得税額から直接控除が受けられる「税額控除」であるため、ほかの控除よりも還付金が高額になる可能性があるでしょう。

iDeCo(個人型確定拠出年金)に加入している人

iDeCo(個人型確定拠出年金)に加入している人は、小規模企業共済等掛金控除の対象です。社会保険料と同様にiDeCoの掛金も全額が控除の対象となります。

本人や家族が障がい者の人

本人や扶養している配偶者や家族に何らかの障がいがある場合は「障害者控除」の対象になります。ただし、寡婦(寡夫)控除と同様、すでに会社に届け出をしている場合は、毎月の所得税計算の際にすでに考慮され、所得税が減額されている可能性もあるので申請をおこなう必要があるか確認しましょう。

8. 提出期限に間に合うようにスムーズに年末調整をおこなおう!

年末調整の対象期間は、その年の1月1日から12月31日であり、年末調整の法定調書の提出期限は翌年の1月31日です。そのため、年末調整の再調整などを考慮して、できる限り早めに従業員の書類提出の期限を設定するのがおすすめといえます。

また、年の途中で退職した方や、海外転勤などをおこなう方は、場合によっては年末調整の対象者に該当し、通常とは異なる時期に年末調整を実施しなければならないこともあります。年末調整の提出期限や必要書類を正しく理解して、余裕をもったスケジュールで年末調整をおこなうことが大切です。

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