年次有給休暇とは?対象者や付与される日数について解説 |HR NOTE

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年次有給休暇とは?対象者や付与される日数について解説

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有給休暇は、1年ごとに決まった日数が付与されるため「年次有給休暇」ともよばれ、業種や勤務形態などを問わず、要件を満たす全ての労働者に付与されます。ここでは、有給を取得するための要件や日数、5日取得義務化などについて解説します。

企業は一定の要件を満たす従業員に対し、休日とは別に年次有給休暇を付与しなければならないと労働基準法によって定められています。

そして、従業員には年次有給休暇を取得する権利があります。ここでは、年次有給休暇の概要や対象者、日数など、年次有給休暇の基本的な内容について詳しく解説します。

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1.労働基準法で定められた年次有給休暇とは

そもそも、年次有給休暇とはいわゆる「有給休暇」(有給・有休・年休)のことで、一定の決まった日数が1年ごとに付与されることから「年次」という言葉がついています。

年次有給休暇は、労働基準法第39条によって、業種や業態、正社員やパートタイムなどの雇用形態に関わらず、労働者が一定の要件を満たす場合には必ず付与される権利と定められています。

そして、年次有給休暇は労働者が心身の疲労を回復し、ゆとりのある生活が送れることを保障するために付与されるものであり、労働者は「有給」でこの休暇を取得することができます。

1-1.有給休暇を取得させなかった場合の罰則

まれに企業側が「うちには有給の制度はない」といったことを主張して有給休暇を与えないケースがあります。しかし、従業員が一定の要件を満たしている場合、企業は年次有給休暇を必ず付与しなければなりません。

また、労働者が請求した時季に有給休暇を取得させなかった場合、企業は労働基準法に基づき、有給休暇を取得させなかった従業員1人につき30万円以下の罰金または6ヵ月以下の懲役を科される可能性があります。

1-2.有給休暇の申請と時季変更権

有給休暇を取得するには事前申請をしなければなりません。企業は従業員が有給休暇を申請した日が繁忙期にかぶっていて会社の仕事が大幅に滞るなどの特別な理由がある場合に限って有給休暇取得日を変更させることができます。それが、時季変更権です。

労働者から有給休暇の申請があった場合、企業側は事業が滞らないかを検討し、必要なら時季変更権を行使することができます。労働者が突然有給休暇を取得したり、事後申請したりすると、企業側は時季変更権が行使できないため、有給休暇の事前申告が原則となっています。

ただし、基本的には有給休暇は従業員が取りたいときに取得できるものなので、企業は従業員とよく話し合ったうえで決定するのが望ましいでしょう。

2.有給休暇の対象者と付与の要件

有給休暇を付与する場合、業種や業態、雇用形態などは問われず、有期雇用契約の労働者や管理監督者も同様です。しかし、労働者であれば誰でも有給休暇を取得できるというわけではなく、以下の2つの要件を満たしている必要があります。

  • 雇い入れ日から継続して6ヵ月間勤務していること
  • 6ヵ月間の全労働日のうち8割以上出勤していること

なお、ここでいう「全労働日」には、就業規則等によって定められている所定休日などは含まれません。

2-1.休業中の従業員の有給休暇

産前産後休業中や育児休業中、介護休業中、あるいは業務遂行上のケガや病気などによって休業している(労災による)従業員についても有給休暇は付与されます。

このような休業は実際には出勤していないものの、法定休暇なので有給休暇の判定上は出勤とみなされます。そのため、仮に育児休業により実際には1年間全く出勤していなかった従業員であっても、全労働日に出勤していたものとして有給休暇は付与されます。

ちなみに、業務遂行上ではないケガや病気によって休業している従業員については、会社の規定に従って労働日とするか否かの判断をすることとなります。

3.有給休暇の付与日数は週の所定労働時間と勤続年数によって決まる

有給休暇は前述の要件を満たしていれば全ての従業員に付与され、付与される有給休暇の日数は週の所定労働時間と継続勤務年数によって決まります。正社員のようなフルタイム労働者かパート・アルバイト労働者等の短時間労働者かで付与される日数が異なります。

3-1.正社員の有給休暇付与日数

正社員のように、週の所定労働時間が30時間以上又は、週の所定労働日数が5日以上、あるいは年間の所定労働日数が217日以上のいわゆるフルタイム勤務の従業員の場合は、雇い入れ日から6ヵ月が経過した時点で10日の有給休暇を付与することとなっています。

さらに、そこから1年後の1年6ヵ月、さらに1年後の2年6ヵ月というように、勤続年数が1年増えるごとに有給休暇の付与日数は以下のように増え、勤続年数6年半以降は毎年20日ずつ付与されます。

勤続年数 6ヵ月 1年6ヵ月 2年6ヵ月 3年6ヵ月 4年6ヵ月 5年6ヵ月 6年6ヵ月以上
付与日数 10日 11日 12日 14日 16日 18日 20日

 

なお、パートタイム勤務であっても、週の所定労働時間が30時間以上の従業員については上記のフルタイム勤務と同じ条件で有給休暇が付与されます。

3-2.パート・アルバイトの場合の有給休暇付与日数

週の所定労働時間が30時間未満かつ、週の所定労働日数が4日以下、あるいは週の所定労働時間が30時間未満かつ、年間の所定労働日数が216日以下の短時間勤務の従業員の場合は、以下のとおり所定労働日数や所定労働時間に応じて有給休暇が付与されます。なお、このような仕組みを「比例付与」とよびます。

週所定労働時間 年間所定労働時間 勤続年数と付与日数
6ヵ月 1年6ヵ月 2年6ヵ月 3年6ヵ月 4年6ヵ月 5年6ヵ月 6年6ヵ月以上
4日 169日~216日 7日 8日 9日 10日 12日 13日 15日
3日 121日~168日 5日 6日 6日 8日 9日 10日 11日
2日 73日~120日 3日 4日 4日 5日 6日 6日 7日
1日 48日~72日 1日 2日 2日 2日 3日 3日 3日

 

3-3.半日や時間単位での付与

原則として有給休暇は1日単位で付与することとなっていますが、対象者や日数についての扱いなどを就業規則に明記することにより半日単位で付与することが可能です。

また、時間単位の有給休暇を利用できるようにするには就業規則への規定のほかに、労使協定の締結をする必要があります。ただし、従業員と合意したとしても、時間単位で有給休暇を取得できる時間は年間で5日分以内となっています。

半日単位で取得する有給休暇の日数に制限はありません。

4.2019年4月から有給休暇の5日取得が義務化

長時間労働を防ぐことなどを目的とした働き方改革の一環として、2019年4月、労働基準法の改正により、企業には従業員に対して確実に有給休暇を取得させることが義務付けられました。

2019年3月までは、有給休暇の取得は従業員の意思に委ねられていました。しかし、それは「従業員が好きな時に自由に有給休暇がとれる」というよりも、従業員の自由意志とするが故に「有給休暇がとりにくい」といった事態を生み出していました。

このような状況を改善するために法改正がなされました。

有給休暇取得義務化の具体的な内容としては、年10日以上有給休暇が付与される従業員に対して、基準日から1年間で5日の有給休暇を取得させるというものです。

なお、従業員に有給休暇を取得させる方法としては、従業員に申請してもらう方法のほか、従業員に希望を聞き取った上で時季を指定する方法や、従業員全員が有給休暇を同時に取得する「計画年休」を設けるといった方法があります。

4-1.年次有給休暇管理簿を作成・保管しなくてはならない

有給休暇の取得義務化にともなって、有給休暇が10日以上付与される従業員には有給休暇管理簿の作成と最低3年間の保管が義務付けられています。有給休暇の取得義務化によって企業は従業員が年に5日有給休暇を取得できているかを確認し、必要に応じて外部に証明しなければならなくなりました。

4-2.有給休暇の取得率向上のために企業が対応すべきこと

有給休暇の義務化によって企業はいままでより一層有給休暇の取得率向上に努めなければならなくなりました。義務化にともない、1年に有給休暇を5日取得できていない従業員に企業は有給休暇の取得時季を決める時季指定をおこなわなければならなくなりました。

本来、有給休暇は従業員が取得したい日を選びますが、年の取得日数が5日未満の従業員を対象に、相談した上で企業が指定しなければなりません。

企業は時季指定をおこなって、確実に有給休暇を取得させましょう。

4-3.有給休暇は前借りさせられる?前借りした分は義務化の5日に含まれる?

有給休暇の前借りに関しては法律に規定がないため、従業員が有給休暇を前借りしたいと申し出た場合、会社側は拒否することができます。実際に前借りをさせる場合、前借りをさせた後の対応を誤ると法律違反になる可能性もあるため、できるだけ前借りには応じないほうが良いでしょう。もし、やむを得ない事情で休む必要がある場合は、以下の3つの対応をすることができます。

  • 法定外の有給休暇である特別休暇などを前借りさせる
  • 慶弔休暇などの特別休暇を利用させる
  • 有給休暇を前倒し付与する

特別休暇は取得義務のある5日に含むことはできません。ただし、特別休暇が法定の有給休暇と完全に同じ扱いである場合に限っては5日に含むことができます。

有給休暇は前借りさせたとしても、基準日には法定の付与日数を与えないといけないため、特別休暇を利用しない限り、結果的に追加で付与することとなります。

前借りをさせた際に次の付与日数から差し引くなどすると違法となるため、注意しましょう。

5.有給休暇を取得した際の金額計算方法

有給休暇は賃金が発生する有給休暇なので、有給休暇を取得した際には賃金の計算をしなければなりません。有給休暇の金額計算方法には3通りあります。企業は計算方法を1つ選んで、就業規則に記載しなければなりません。

また、従業員ごとや月ごとに計算方法を変更することなどはできません。計算方法を決めたら、就業規則に記載し、変更する際には就業規則も変更する必要があります。

5-1.通常の賃金を用いて計算

通常の賃金を用いて計算する方法は、有給休暇を取得した日の賃金を出勤した場合と同じにするということです。この計算方法は、有給休暇を取得した日を出勤したとみなせば良いだけなので、3つの計算方法のうち、計算が最も簡単です。

5-2.平均賃金を用いて計算

平均賃金を用いて計算する場合は直近3か月の平均賃金を算出して、その値を用いて以下のように計算します。

  • 直近3か月の賃金総額÷3か月の暦日数
  • 直近3か月の賃金総額÷3か月の労働日数×0.6

上の2つの方法を用いて算出した値の高いほうを賃金として支給します。

5-3.標準報酬月額を用いて計算

社会保険料の算出などに使われている標準報酬月額を用いて計算する場合は以下のように計算します。

  • 標準報酬月額÷30

標準報酬月額はすでに算出されている値なので、改めて計算する必要がありません。ただ、標準報酬月額を算出する場合に参考にした給料の金額と給料が支給される時点の金額に乖離がある場合があるため、場合によっては有給休暇を取得した場合に給料が減ることもあります。

そのため、標準報酬月額を有給休暇の金額計算に用いる場合は、あらかじめ労使協定を結んで、就業規則に記載しなければなりません。

6.有給休暇は繰越できる?繰越上限や消滅時効

有給休暇を付与されて1年間で使い切れなかった場合、翌年に繰り越すことができます。有給休暇には2年の消滅時効があるため、2年以内なら繰越ができます。

また、有給休暇の繰越に上限はありません。そのため、就業規則において有給休暇は繰越できない、繰越できる日数に上限があるなどと定めていた場合、それは無効となるため、注意しましょう。

付与されて2年を経過してしまった場合、有給休暇は消滅してしまうので、企業は従業員の有給休暇を消滅させないように、定期的に取得状況を確認して取得を促しましょう。

7.有給休暇の買取は法律違反になる可能性が高い

有給休暇の買取をできるケースは限られており、法律違反になる可能性があるため注意が必要です。そもそも、有給休暇の買取とは、有給休暇を相当の賃金と交換することです。どんな有給休暇でも買取ができるわけではなく、買取ができる有給休暇は以下の3つに限られています。

  • 時効をむかえて消滅した有給休暇
  • 企業が法定の有給休暇に上乗せして支給した有給休暇
  • 退職時に残った有給休暇

この3つ以外の有給休暇を買い取ることは違法です。

たとえば、企業側が「有給休暇を買い取るから、働いてほしい」というなどといったことはできません。本来、有給休暇は従業員の働きすぎを防ぐために付与しなければならないものなので、買い取って働かせるのは元々の意義に反することになります。

7-1.有給休暇で残業を相殺することは原則違法

有給休暇で残業を相殺することは基本的にできません。なぜなら、法律で定められた労働時間を超えて働いた分については、25%を上乗せした割増賃金で支払わなくてはなりませんが、所定賃金と同等の扱いとなる有給休暇で残業時間を相殺するのは、従業員が不利益を被ることになるからです。

ただし、半日や時間単位での有給休暇を取得した場合は、有給休暇を取得した日に残業をしたとしても、有給休暇の時間分を除く労働時間が8時間を超えなければ、割増賃金は発生しません。

8.有給休暇取得は従業員の権利!徹底した有給休暇の管理を

有給休暇は業種や職種を問わず、要件を満たす人全てに付与されるものです。付与日数は勤務年数や勤務日数、労働時間によってそれぞれ決められているため、年間5日の有給休暇の取得を含め、従業員ごとにきちんと管理をしましょう。

また、有給休暇の取得を従業員に完全に任せるのではなく、労働基準法を遵守するため、そして働き方改革の推進のためにも、企業側からの積極的な働きかけが求められます。

【監修者】涌井好文(社会保険労務士)

涌井社会保険労務士事務所代表。就職氷河期に大学を卒業し、非正規を経験したことで、労働者を取り巻く雇用環境に興味を持ち、社会保険労務士の資格を取得。 その後、平成26年に社会保険労務士として開業登録し、現在は従来の社会保険労務士の業務だけでなく、インターネット上でも活発に活動を行っている。

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