サラリーマンとして会社勤めをしながら副業している場合、毎年の年末調整だけではなく、確定申告が必要になる場合があります。年間の副業所得20万円以下の場合と、20万円を超える場合では確定申告の有無か異なります。この記事では、副業している場合の年末調整の有無や、確定申告・住民税申告の必要性、ダブルワークをおこなう際の注意点をわかりやすく解説します。
01. 副業している場合の年末調整はどうする?
年末調整をおこなう際に気になるのが、副業している従業員の取り扱いです。年末調整はその年に受け取る給与を対象としているため、副業収入は年末調整の対象にならない場合があります。年末調整の定義や対象者、副業収入と年末調整の関係について解説します。
1-1. そもそも年末調整とは
年末調整とは、「給与の支払を受ける人の一人ひとりについて、毎月(毎日)の給料や賞与などの支払の際に源泉徴収をした税額と、その年の給与の総額について納めなければならない税額(年税額)とを比べて、その過不足額を精算する手続き」を指す言葉です。(※1)
ひと月の給与支給額が一定を超える場合、給与支払いの際に源泉徴収をおこないます。源泉徴収税額とその年の納めるべき税額が一致していれば、年末調整をおこなう必要はありません。しかし、給与の昇給や、控除対象扶養親族の人数の変動などにより、これらが必ずしも一致するとは限りません。そのため、1年間の給与総額に基づいて源泉徴収税額を計算し、差額を追加徴収または還付する必要があります。
1-2. 年末調整の対象となる人
国税庁によると、年末調整の対象者は下記の通りです。(※1)
(1)1年を通じて勤務している人
(2)年の中途で就職し、年末まで勤務している人
(3)年の中途で退職した人のうち、次の人
①死亡により退職した人
②著しい心身の障害のため退職した人で、その退職の時期からみて、本年中に再就職ができないと見込まれる人
③12月中に支給期が到来する給与の支払を受けた後に退職した人
④いわゆるパートタイマーとして働いている人などが退職した場合で、本年中に支払を受ける給与の総額が103万円以下である人
(4)年の中途で、海外の支店へ転勤したことなどの理由により、非居住者となった人
年末調整の主な対象者は正社員やパートタイマーにかかわらず、その年のいずれかの期間に会社に所属し、給与を受け取った人です。そのため、副業をしていても、給与の支払を受けている人は基本的に年末調整の対象になります。
1-3. 「副業」の種類によって年末調整の対象かどうかは異なる
年末調整は会社から支払われる給与所得のみを対象としています。そのため、給与所得以外の収入、たとえば副業や個人事業などで収入を得ても、年末調整の対象とはなりません。
ただし、副業のなかでも、兼業やダブルワークとして働き、複数の会社から給与の支払いを受けているケースは注意が必要です。年末調整は1カ所の会社でしかおこなうことができません。複数の会社から給与を得ている場合には、一般的に給与の支払い額は大きい会社で年末調整をおこないます。
02. 副業はいくらから確定申告が必要?
副業収入を得ていても、給与にあたらない場合は年末調整の対象とはなりません。しかし、一定額を超える副業所得を得た場合には確定申告が必要です。また、確定申告のほかにも、所得金額にかかわらず各自治体へ住民税の申告をおこなう必要があります。ここでは、確定申告の対象となる副業収入や確定申告・住民税申告の必要性について詳しく解説します。
2-1. 確定申告の対象となる副業収入
確定申告の対象となるのは、一定の条件を満たす「給与所得がある人」「公的年金等に係る雑所得のみの人」「退職所得がある人」などです。(※2)
雑所得や事業所得などで副業収入を得ている人も例外ではありません。具体的には、下記のような副業収入を得ている人が確定申告の対象です。
①インターネットのオークションサイトやフリーマーケットアプリなどを利用した個人取引による所得
②ビットコインをはじめとする暗号資産の売却等による所得
③民泊による所得
もし副業収入の確定申告をおこなわなかった場合、無申告加算税などの加算税や、納付が遅れた期間に応じた延滞税の支払いが科される可能性があります。確定申告の対象となる副業収入をきちんと確認し、必ず手続きをおこないましょう。
(※2)確定申告が必要な方|国税庁
2-2. 副業所得が年間20万円を超える場合は確定申告が必要
日本では確定申告のように、申告納税制度を採用しているため、なんらかの収入を得た場合は本人が自ら申告する必要があります。副業収入の申告義務が発生するのは、事業所得や雑所得などの1年間の所得が20万円を超える場合です。たとえば、副業収入が20万円を超えたとしても、必要経費などにより所得が20万円以下になる場合には、確定申告が不要になります。
また、兼業やダブルワークをしている人で、年末調整をしていない給与所得と、それ以外の副業所得の合計が20万円を超える場合も確定申告の義務が発生します。確定申告の期間は、原則として毎年2月16日から3月15日です。会社で働きながら副業をしている場合は、副業だけでなく本業の源泉徴収票も大切に保管しておきましょう。
2-3. 副業所得が20万円以下でも確定申告をしたほうがよいケース
副業所得が20万円以下になる場合、基本的に確定申告をしなくても問題はありません。しかし、兼業やダブルワークなどで給与所得を得ている場合、確定申告をすれば払いすぎた税金の還付を受けられる可能性があります。また、副業収入において源泉徴収を受けている人は、所得税を払いすぎていることもあるので、確定申告をすることで還付が受けられるかもしれません。
ほかにも、医療費控除や寄附金控除、雑損控除、初年度の住宅ローン控除などの年末調整で受けられない控除を適用したい場合には、確定申告をおこないましょう。
2-4. 副業所得が20万円以下でも住民税の申告は必要
副業所得が年間20万円を超える場合、確定申告が必要であると解説しました。しかし、副業所得が年間20万円以下の場合も住民税の申告は必要です。
住民税は、年末調整や確定申告で申告した情報をもとに決定されます。ただし、副業所得が20万円を超えないために確定申告をしない場合には、住民税の計算に副業所得が含まれないことになります。正しく納税するために、確定申告が不要な場合でも住民税の申告をおこなうことを忘れないようにしましょう。
03. 副業でダブルワークする際の注意点
近年では働き方改革の影響もあり、副業でダブルワークをおこなう人が増えています。ここでは、副業でダブルワークをする際の注意点について詳しく紹介します。
3-1. 勤務先にダブルワークについて相談する
副業としてのダブルワークは従業員の意思で自由におこなえるため、基本的に処罰を受けることはありません。ただし、本業に影響を与えないよう、会社によってはダブルワークのルールを社内規定として設定していることもあります。
厚生労働省の「副業・兼業の促進に関するガイドライン」では、下記のような場合に副業を制限した事例があることを公表しています。
① 労務提供上の支障がある場合
② 業務上の秘密が漏洩する場合
③ 競業により自社の利益が害される場合
④ 自社の名誉や信用を損なう行為や信頼関係を破壊する行為がある場合
本業の会社や副業先とトラブルを生じないためにも、ダブルワークをおこなう場合は事前に勤務先に相談しておくことをおすすめします。
3-2. 年末調整を2カ所以上でしたら修正が必要
「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」は一つの勤務先にしか提出できないため、年末調整は複数の会社で受けられません。しかし、間違って2カ所以上の会社で年末調整を受けてしまった人もいるかもしれません。
複数の会社で年末調整を受けると、控除が重複して適用されてしまう可能性があります。そのため、副業先の会社の年末調整を取り消し、本業の会社のみで年末調整を受けることにする必要があります。
まずは副業先に複数の会社で年末調整を受けてしまったことを説明し、取り消しの依頼をおこないましょう。その後、確定申告が必要な場合には、それぞれの会社から受け取った源泉徴収票を基に確定申告書を作成して提出します
04. 副業している場合は年末調整だけで確定申告も必要!
副業としてや兼業やダブルワークをしている場合、基本的には確定申告が必要になります。ただし1年間の副業所得が20万円以下の場合、確定申告不要です。
しかし、副業所得が20万円以下で確定申告が不要な場合でも、各自治体へ住民税の申告はしなければなりません。本業の会社と副業先のトラブルを避けるため、副業をおこなう場合には年末調整や確定申告のやり方をきちんと確認しておきましょう。