年末調整は、その年に納めるべき所得税(復興特別所得税を含む)を確定させるための重要な手続きです。12月に働いた分がその年の年末調整に含まれるかどうかは、勤務先によって異なります。当記事では、年末調整で12月に働いた分の給与の扱いについて解説します。また、12月に中途入社する方や、退職する方がいる場合の年末調整のやり方についてもわかりやすく紹介します。年末調整の対象になる給与の知識を深めたい方は、ぜひこの記事を参考にしてみてください。
当記事では、配偶者控除・配偶者特別控除の対象者や手続き方法、共働き・育休中・専業主婦の場合における注意点などについて解説します。
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目次
1. 年末調整とは
年末調整とは、従業員の毎月(毎日)の給料や賞与などの支払のときに源泉徴収をおこなった税額の合計と、その年の納めなければならない税額(年税額)を比較して、その過不足金額を精算する手続きのことです。過不足金額が生じた場合には、従業員に還付もしくは追加徴収をおこなうことで精算します。
過不足金額が生じる理由には、源泉徴収税額表はその年を通して給与に変動がないものとして作成されていることが挙げられます。また、その年の途中で控除対象親族の数が変わった場合、変更後の給与の支払からは修正されますが、変更前の源泉徴収税額は修正されないことも原因の一つです。さらに、保険料控除などは年末調整のときに控除されるため、過不足金額が発生する理由になります。
年末調整により、勤務先が従業員の代わりに所得税を納めるため、大半の従業員は確定申告が不要になります。
2. 年末調整の対象となるのはいつからいつまでの収入?
年末調整の対象になる給与は、その年の1月1日から12月31日までに受け取ることが確定した給与です。そのため、実際に支払われたかどうかに関係なく、未払の給与でもその年に受け取ることが確定している給与であれば、年末調整の対象になります。
また、その年の途中で退職した場合には、年末調整の対象者に該当すれば、その年の退職したときまでに受け取ることが確定した給与が年末調整の対象になります。
なお、その年の最後の給与を受け取るときまでに「扶養控除等(異動)申告書」を提出していなければ、年末調整の対象にならないため、注意が必要です。そして、中途入社した従業員で、前職で受け取った給与がある場合には、その給与を含めて在籍している勤務先で年末調整を受けるため、前職の源泉徴収票を提出する必要があります。
3. 年末調整に12月に働いた分を含むかどうかの判断ポイント
その年の年末調整に12月に働いた分を含むかどうかは、収入の確定する日(収入すべき時期)がポイントになります。
年末調整は、その年に勤務先から支払の確定した給与が対象になります。従業員からみれば、収入の確定した給与の総額について年末調整が実施されます。
そして、収入の確定する日とは、契約もしくは慣習により支給日が定められている給与はその支給日、支給日が定められていない給与はその支給があった日を指します。
たとえば、毎月の勤務分の給与を翌月末に支給すると決められている場合には、翌月末が収入の確定日になります。この場合には、12月分の給与は翌年の1月末に支給され、翌年の1月末が収入の確定する日になるため、その年の年末調整の対象にはなりません。
4. 12月に中途入社した社員の年末調整はどうする?【人事担当者向け】
ここでは、12月に中途入社した従業員の年末調整のやり方について詳しく紹介します。
4-1. 12月に働いた給与が翌年1月に支給される場合
この場合のように給与の支給日が定められているときは、その支給日が収入の確定する日になります。
そのため、12月に中途入社した従業員の場合、その勤務先ではその年の年末調整の対象になる給与が発生しないことになります。翌月の1月に支給される12月に働いた分の給与は、翌月の1月に支給された給与として、翌年の年末調整の対象になります。
なお、原則として12月に支給日のある給与の支払を受けて退職をして、12月に別の勤務先に中途入社した場合には、前職の退職時に年末調整を受けることができます。
4-2. 12月に働いた給与が12月に支給される場合
12月に中途入社した方で、12月に働いた給与が12月に支給される場合には、その年の年末調整の対象になる給与がその勤務先で発生したことになります。
この場合には、年末まで勤務していれば、その勤務先で年末調整を受けることが可能です。ただし、会社によっては、自社で定めている年末調整の書類の提出期限を過ぎている可能性があります。
そのため、その年にほかの勤務先で受け取った給与がある場合には、前職の源泉徴収票を含め、年末調整に必要な書類をできる限り素早く勤務先に提出する必要があります。
5. 12月に退職した社員の年末調整はどうする?【人事担当者向け】
ここでは、12月に退職した従業員の年末調整のやり方について詳しく紹介します。
5-1. 基本的には年末調整は不要
年末調整は、原則として「扶養控除等(異動)申告書」を提出しているすべての従業員について、年末調整をおこなう必要があります。
ただし、年末調整の対象者に該当しない従業員については、年末調整を実施する必要がありません。たとえば、年収が2,000万円を超える従業員や、災害減免法の規定によりその年の給与に対する所得税の源泉徴収について徴収猶予や還付を受けた従業員などが挙げられます。
また、12月に退職した従業員についても、年末調整の対象者の条件である年末まで勤務していないため、年末調整の対象外となり、基本的には年末調整は不要です。
5-2. 特定の条件に該当する場合は例外として年末調整が必要
12月に退職した従業員でも、下記のような特定の条件を一つでも満たす場合には、年末調整の対象者に該当し、退職した勤務先が年末調整をおこなう必要があります。
- 死亡により退職した場合
- 著しい心身の障害のために退職した人で、その退職時期からみて、その年に再就職ができず給与が支払われる見込みがない場合
- 12月に支給日の到来する給与の支払を受けて退職した場合
- パートとして働いている人などが退職し、その年に支払を受ける給与総額が103万円以下である場合(退職後にその年にほかの勤務先から給与の支払を受けると見込まれる場合は除く)
- 海外の支店へ転勤したことなどの理由によって非居住者となった場合
なお、年末調整のタイミングは、基本的に退職したときです。しかし、「海外の支店へ転勤したことなどの理由によって非居住者となった場合」の該当者は、非居住者となったときに年末調整を受けます。
5-3. 12月分の給与が当月中に支給される場合
12月に退職した従業員の年末調整は基本的に不要ですが、先述したように、特定の条件を満たす場合には、年末調整をおこなう必要があります。
12月分の給与が当月中に支給されて退職する場合は、「12月に支給日の到来する給与の支払を受けて退職した場合」に該当するため、年末調整の対象者になります。
年末まで勤務しているわけではありませんが、退職後に転職をおこなったとしても、その年にほかの勤務先から給与が支払われることは考えにくいことが理由として挙げられます。
なお、この場合は、退職者が再就職をおこなったかどうかに関係なく、ほかの従業員と同様に年末調整をおこないます。
6. 年末調整できない場合には確定申告が必要になる場合も
年末調整の対象者に該当しない場合や、年末調整の手続きをし忘れた場合などには、確定申告が必要になることもあります。また、医療費控除や寄付金控除、雑損控除、住宅ローン控除(1年目)などを受ける場合には、年末調整で対応できないため、確定申告をする必要があります。
確定申告の提出期限は、原則として毎年2月16日から3月15日までです。確定申告をおこなうには、確定申告書や収支内訳書、各種控除証明書、源泉徴収票などが必要になります。
確定申告の提出方法には、直接所轄の税務署に提出するだけではなく、郵送で提出する方法や、e-Taxで電子申告する方法もあります。
提出期限を過ぎてしまうと、無申告加算税や延滞税などのペナルティが課される恐れもあるため、できる限り早いうちに手続きをおこない、提出を済ませるのがおすすめです。
7. 対象範囲を理解して正しく年末調整をおこなおう!
年末調整の対象になる給与は、その年の1月1日から12月31日までに支払が確定した給与です。そのため、12月に働いた分の給与は、収入の確定する日によって、その年の年末調整に含まれるかどうかは異なります。
12月に中途入社した従業員は、基本的に年末調整の対象になり、前職の源泉徴収票がある場合には、年末調整を受ける会社に提出する必要があります。
一方、12月に退職した従業員の年末調整は、基本的に不要ですが、12月分の給与が当月中に支給される場合など、特定の条件を満たす場合には、年末調整が必要になります。