年末調整とは、従業員の正しい所得税を確定させて納付するための手続きのことです。年末調整では、従業員にさまざまな申請書を記載してもらいますが、間違いが生じてしまうことは珍しくありません。当記事では、年末調整の訂正・修正は後からできるかどうかや、訂正・修正が必要なケース、それを防止するための対応策について解説します。
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目次
年末調整は訂正できる?
年末調整が完了した後に、間違いやミスに気づいたときでも、期限内であれば社内で訂正はできます。ただし、年末調整の訂正をおこなうタイミングによって、訂正方法が異なるため注意が必要です。
年末調整書類を訂正する場合には、間違いがあった箇所に二重線を引き、訂正印を押して近くに正しい記載をおこないます。このときに、修正液や修正ペンは、改ざん防止の観点から、使用しないようにしましょう。
年末調整の訂正が必要になる場合
ここでは、年末調整の訂正が必要になる場合について詳しく紹介します。
本人や配偶者の年収が変わった場合
年末調整の書類には、見込みの金額を記載して提出してもらいます。しかし、12月の給与や賞与などの支給により、本人や配偶者の年収が見込額と比べて大きく変わった場合には、年末調整の訂正が必要になることもあります。
たとえば、配偶者の年収によって、配偶者(特別)控除を受けられるかどうかや、控除額が変わります。配偶者(特別)控除額は、従業員本人と配偶者の所得金額によって、変動する仕組みになっています。そのため、確定した年収が見込額とは異なってしまい、配偶者控除の適用内容が変わる場合には、年末調整の訂正をおこなわなければなりません。
扶養家族の人数が変わった場合
年末調整の書類を提出した後の年内に、結婚や出産をしたり、再婚して相手に子どもがいたりする場合には、扶養家族の人数が変わります。また、控除対象扶養親族の判定は、その年の12月31日とされています。
そのため、扶養家族の人数が変わる場合には、扶養控除や配偶者(特別)控除について、変更する必要があります。また、収入が850万円を超える従業員の場合、所得金額調整控除を受けられる可能性もあるため、年末調整の訂正が必要になることもあります。
このように、年末調整の書類を提出した後の年内に、扶養家族の人数が変わると、受けられる控除が変化する可能性もあるため、注意が必要です。
年末調整後に保険に加入した場合
年末調整の書類を提出した後の年内に、生命保険や地震保険などに、新しく加入をおこなうと、保険料控除を受けられるため、年末調整を訂正する必要があります。
年末調整の書類提出をおこなったときは間違いのない内容であったけれど、提出後から12月31日までに、保険に加入すると、申告した控除の内容を訂正しなければなりません。
年末調整を訂正できるのはいつまで?
年末調整の期限は翌年の1月31日です。この期限内で、給与所得の源泉徴収票を従業員に交付する前であれば、勤務先で年末調整を訂正することができます。
翌年の1月31日という期限は、法定調書を税務署に提出しなければならない期限と同様です。また、源泉徴収した所得税の納付は翌年の1月10日までとされているため、1月31日よりも前に源泉徴収票を交付することもあります。
この場合には、勤務先で年末調整のやり直しはできません。そのため、年末調整の書類の間違いやミスに後から気づいたときは、従業員に確認し、期限内にすみやかに訂正することが大切です。
年末調整の訂正(再調整)に必要な書類
年末調整の訂正(再調整)をおこなう場合、一部分であれば、従業員から提出してもらった書類そのものを修正することが考えられます。
ただし、提出書類の間違いやミスが多い場合には、最初からやり直しをおこなわなければならないこともあります。その場合には、下記のような書類が必要です。
- 給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計票
- 源泉徴収票(給与所得の源泉徴収票や退職所得の源泉徴収票)
- 支払調書
年末調整ができない場合、従業員による確定申告による修正が必要
年末調整の期限(翌年の1月31日)を過ぎた場合や、既に従業員に対して源泉徴収票を交付している場合には、勤務先での年末調整の訂正はできません。
そのため、従業員が自分で確定申告をおこなうことで、内容を修正する必要があります。確定申告の期間は、原則として毎年の2月16日から3月15日であるため、年末調整の期限が過ぎても再調整できます。
過年度の年末調整のやり直し通知が来た場合の対処
過年度の年末調整に関して、間違いやミスがあると、税務署からやり直しの通知が来ます。過年度の年末調整のやり直しは、大きく分けて支払った税額が多い場合と少ない場合の2通りに区分できます。
支払った税額が多い場合には、従業員自身が所轄の税務署で還付請求をおこなう必要があります。一方、支払った税額が少ない場合には、勤務先が税務署に不足している税額を納めるために、従業員に追加徴収の請求をおこなわなければなりません。
このように、年末調整に誤りがあると、後から修正業務をおこなわなければならないため、業務負担が増えるという恐れがあります。そのため、適切に年末調整を実施することが大切です。
年末調整の訂正方法
年末調整の書類を訂正する場合は、まず間違った箇所に二重線を引き、その付近に正確な内容を記入してもらいます。また、二重線に重なるような形で訂正印を押します。年末調整の書類ではシャチハタ印は避けた方が良いでしょう。
年末調整の書類に訂正が必要になった場合は、従業員にあらかじめシャチハタ印を使用しない旨を伝えておきましょう。また、修正液や修正テープの使用もおこなわないようにつたえましょう。
修正箇所があまりにも多く、訂正した内容の確認がしづらい状態になりそうな場合は、新しい用紙に書き直してもらう方法でも問題はありません。
年末調整の訂正を防止するには?
ここでは、年末調整の訂正を防止するための対策方法について詳しく紹介します。
従業員に早めに書類を提出してもらう
年末調整の訂正を防止するためには、余裕のもったスケジュールを用意して、従業員に早めに年末調整の書類を提出してもらうことが大切です。
とくに、年末は人事労務担当者の業務は忙しくなることが多いため、できる限り早めに年末調整の書類を準備して、従業員に配布しましょう。
従業員から早めに書類を提出してもらえば、年末調整の手続きを余裕をもって進められるため、間違いやミスを防ぐことができます。
このように、従業員に書類を早めに提出してもらうことは、年末調整の訂正の防止につながります。そのため、早いうちに年末調整の手続きについて、従業員に周知をおこなうことが大切です。
書類のチェックを複数人でおこなう
従業員から提出してもらった年末調整の書類や、人事労務担当者が作成した書類は、誤りが生じないように、複数人でチェックをおこなうのがおすすめです。
1人でチェックをおこなう場合、個人の先入観などで書類の間違いやミスを見逃してしまう恐れがあります。複数人でチェックすることで、書類の誤りの見落としを防ぎ、年末調整の訂正業務を軽減することが可能です。
配偶者や扶養家族の人数をチェックする
配偶者や扶養家族の人数が変わると、年末調整で受けられる控除や控除額を訂正しなければならない可能性があります。
そのため、あらかじめ従業員に年末調整の控除に関する注意点をきちんと周知して、配偶者や扶養家族の人数が変わる可能性がある場合には、事前に把握できるようにしておくことが大切です。
そうすれば、年末調整の訂正する可能性のある箇所が明確になり、期限内に正しく年末調整をおこなうことができます。
年末調整の訂正は期限前後で対応が変化するため注意しよう
年末調整の期限内(翌年の1月31日)で、給与所得の源泉徴収票を従業員に交付する前であれば、会社側で年末調整を訂正することができます。一方、期限を過ぎた場合や、源泉徴収を交付した場合は、従業員が自分で確定申告をおこない、再調整する必要があります。
年末調整の訂正業務を減らすためにも、訂正しなければならないケースを把握して、それに応じた対応策を準備しておくことが大切です。