年末調整をおこなう際は、配偶者や扶養親族の有無にかかわらず、事業主に「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を提出します。
扶養控除等(異動)申告書に記入する項目のなかでも、間違いが多いのが「世帯主の氏名」「あなたとの続柄」の2つです。
この記事では、年末調整の「世帯主」や「続柄」の正しい定義や、いつの時点のを記入するか記入を間違えた場合の対処方法などを解説します。
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目次
1. 年末調整の「世帯主」の定義とは?
年末調整の際に提出する書類が、「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」です。所得税法の定めによって、配偶者や扶養親族がいない人でも扶養控除等(異動)申告書を提出する必要があります。
扶養控除等(異動)申告書の記入項目の一つが「世帯主の氏名」です。そもそも「世帯」や「世帯主」とは、どのようなものを指すのでしょうか。ここでは、年末調整における「世帯主」の定義について詳しく解説します。
1-1. 「世帯」は生計をともにする集団のこと
「世帯」とは、生計をともにする集団を指す言葉です。ただし、家族のような複数名の集まりだけでなく、独立して生計を営む単身者も一つの世帯として扱われます。
厚生労働省の「国民生活基礎調査の概況」の用語集によると、世帯は下記の通り定義されています。
「世帯」とは、住居及び生計を共にする者の集まり又は独立して住居を維持し、若しくは独立して生計を営む単身者をいう。
生計をともにする(もしくは、生計を一にする)とは、「日常の生活の資を共にする」状態を意味します。そのため、諸事情によって家族と別居している場合も、生活費などを送金していたり、長期休暇を利用して帰省したりしている場合、生計をともにする世帯として扱われます。
会社員、公務員などが勤務の都合により家族と別居している又は親族が修学、療養などのために別居している場合でも、①生活費、学資金又は療養費などを常に送金しているときや、②日常の起居を共にしていない親族が、勤務、修学等の余暇には他の親族のもとで起居を共にしているときは、「生計を一にする」ものとして取り扱われます。
引用:生計を一にする|国税庁
1-2. 「世帯主」は世帯の中心となる人のこと
「世帯主」とは、世帯の中心となる人を指す言葉です。厚生労働省の用語集では、世帯主を下記の通り定義しています。
「世帯主」とは、年齢や所得にかかわらず、世帯の中心となって物事をとりはかる者として世帯側から報告された者をいう。
原則として、世帯主が誰かは家族などで話し合い、自己申告で決めることになっています。そのため、必ずしも年長者や所得が多い人を世帯主として申告する必要はありません。
ただし、年末調整の扶養控除等(異動)申告書の「世帯主の氏名」には、住民票に記載した世帯主の氏名を記載することが一般的です。年末調整における「世帯主」が誰か迷った場合は、住民票に登録した世帯主の氏名を記載しましょう。
2. 年末調整の「続柄」の定義とは?
年末調整の際に間違いやすいもう一つの項目が「あなたとの続柄」です。年末調整における「続柄」とは、納税者本人の視点からみた世帯主との関係性を指す言葉です。
確定申告の書類に記載する続柄とは意味が異なるため、正しい定義を確認しておきましょう。ここでは、年末調整の続柄の定義や、確定申告の続柄との違いを解説します。
2-1. 年末調整の「続柄」は自分からみた世帯主との関係性のこと
年末調整の扶養控除等(異動)申告書には、「世帯主の氏名」の下部に「あなたとの続柄」を記載する項目があります。あなたとの続柄とは、文字通り自分からみた世帯主との関係性のことです。たとえば、世帯主が自分自身である場合は「本人」、自分の父である場合は「父」と記載します。世帯主との関係性に基づく続柄の書き方は下記の通りです。
関係性 | 続柄 |
世帯主が本人の場合 | 本人 |
世帯主が自分の親である場合 | 父 母 |
世帯主が自分の配偶者である場合 | 妻 夫 |
世帯主が自分の子供である場合 | 子 |
世帯主と同棲や事実婚の状態である場合 | 同居人 婚約者 妻(未届) 夫(未届) |
先述したように、独立して生計を立てている場合や、同居しているものの生計をともにしていない場合(世帯分離など)も、一つの世帯として扱われます。その場合、「あなたとの続柄」には「本人」と記載しましょう。
2-2. 確定申告の「続柄」は世帯主からみた関係性のこと
年末調整における続柄と混同されやすいのが、確定申告書に記載する「世帯主との続柄」です。年末調整の扶養控除等(異動)申告書には「自分からみた世帯主との関係性」を記載しますが、確定申告書には「世帯主からみた自分との関係性」を記載します。つまり、年末調整と確定申告では逆の視点からみた関係性を記載しなければなりません。
たとえば、世帯主が自分の夫である場合、扶養控除等(異動)申告書の続柄には「夫」と記載します。一方、確定申告書には世帯主(夫)からみた続柄を記載するため、「妻」と記載する必要があります。
3. 年末調整の世帯主にはいつの時点の情報を書く?
年の途中に世帯が変わった場合など、年末調整の世帯主にはいつの時点の情報を記載すればよいか迷われる人もいるかもしれません。「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」は、その年の12月31日時点の情報に基づき記載します。そのため、年末調整の世帯主の情報も、その年の12月31日時点に基づいて記入します。
4. 年末調整の世帯主を間違えるとどうなる?
年末調整の扶養控除等(異動)申告書には、住民票に登録した世帯主と同一人物の氏名を記載することが一般的です。もし年末調整の世帯主を間違えた場合、どのような影響があるのでしょうか。
世帯主の記載を間違えてしまったとしても、基本的に年末調整の内容には影響せず、年末調整の手続きとして問題があるというわけではありません。ただし、年末調整に関わる事務手続きが混乱する可能性があるため、記入ミスがないように扶養控除等(異動)申告書を作成することが大切です。
なお扶養控除等(異動)申告書に記入ミスが見つかった場合は、二重線と訂正印(認印など)といった勤務先から指定されている方法で修正しましょう。
5. 世帯主かどうかを確認する方法
扶養控除等(異動)申告書に記載する続柄は、住民票の写しを請求することで確認できます。
ただし、世帯主との続柄を確認するには、続柄入りの住民票を請求する必要があります。交付申請書の必要内容の欄を確認し、世帯主や続柄の項目にチェックしましょう。住民票の写しの請求には、運転免許証やマイナンバーカードなどの本人確認書類のほか、各自治体が取り決めた手数料が必要です。
なお、住民票には「世帯主からみた続柄」が記載されているため、扶養控除等(異動)申告書に記載する際は「自分からみた世帯主との続柄」に修正する必要があります。
6. 世帯主を変更する方法
住民票の世帯主を変更するには、各自治体の窓口に世帯主変更届(住民異動届)を提出する必要があります。世帯主の変更手続きには、本人確認書類の持参が必要です。
7. 年末調整のトラブル防止のために「世帯主」や「続柄」の定義を確認しよう
年末調整の「世帯主」とは、世帯の中心となる人を指す言葉です。世帯主が誰かは、住民票の写しを請求することで確認できます。扶養控除等(異動)申告書の「あなたとの続柄」の項目には、自分からみた世帯主との関係を記入しましょう。
「世帯主」や「続柄」の記入に間違いがあっても、法的なペナルティがあるわけではありません。ただし、年末調整の手続きが遅れる可能性があるため、世帯主や続柄は正しく記入することが大切です。