近年、テレワークの導入を検討する企業が増加傾向にあります。滞りなくテレワークの導入をおこなうためには、テレワークにおけるさまざまな課題を解決する必要があります。テレワークの課題を解決する手段として注目されているのが、ワークフローシステムの活用です。今回は、テレワークにおけるワークフローシステムの活用方法を中心に、そのメリットや注意点について解説していきます。
目次
1.テレワーク導入のためのワークフローとは?
ワークフローシステムの導入は、テレワークの課題解決への対策としても有効です。ワークフローとは、業務に関連する一連の流れや手続きのことを指します。社内において複数の社員でおこなう業務では、ワークフローとして、事前に必要となる承認や申請といった手続きを決めておくことが、業務の円滑な遂行にとって重要です。
業務における一連のプロセスを電子化したワークフローシステムを活用することで、テレワーク下の業務の効率化に一役買います。
ワークフローシステムは、テレワーク実施中の企業において、次のような課題を抱えている場合に最適なシステムです。
- 業務上の待ち時間など無駄な時間を削減したい
- 承認の進捗状況を手軽に把握したい
- 出張先など遠隔地からも承認作業をおこないたい
- 社内書類のコンプライアンス強化を目指したい
- 書類の検索を容易にしたい
社内におけるさまざまな無駄を省き、スムーズなテレワークを推進するためにも、ワークフローシステムの積極的な活用を検討してみましょう。
2.ワークフローシステムの主な機能とは
ワークフローシステムの主な機能にはどのようなものがあるのでしょうか。ここでは4つの機能を取り上げて紹介します。
1. 申請書の作成および承認機能 | パソコンやスマートフォンといった端末を利用し、外出先などの遠隔地から申請書の作成や承認ができます。 |
2. 申請書の検索機能 | 以前使用したことのある申請書を検索し、再利用することができます。 |
3. 承認フローの設定機能 | 申請種別により、承認フローの設定が可能となります。 |
4. メールやチャットへの通知機能 | 申請がされた場合や、申請が承認された場合など、状況に応じ、メールやチャットなどで通知ができます。 |
3.ワークフローシステムを利用しないことで発生する問題
このようにさまざまな機能をもつワークフローシステムですが、従来のようにワークフローシステムを利用しない場合、次のような4つの問題が発生する可能性が高くなります。
- 上司から承認をもらうために出社する必要がある
- 担当者が不在の場合、承認が滞る
- 承認の状況がわからない、内部統制が取れない
- 申請書を作成する際に時間を要する
以下、ワークフローシステムを利用しないことで発生する4つの問題について詳しく解説します。
3-1.上司から承認をもらうために出社する必要がある
ワークフローシステムを利用せず、従来からの紙の申請書を使っている場合、上司から承認をもらうために出社する必要があります。テレワークを実施する場合には、わざわざ承認を受けるためだけに出社しなければならないため、業務の円滑な遂行を妨げることにもつながります。
3-2.担当者が不在の場合、承認が滞る
決裁の担当者が社内にいない場合などは、担当者が戻ってくるまで承認作業が滞る可能性が高くなります。また、最終的な決裁を本社まで仰がなければならない場合などは、書類を郵送しなければならないなど、時間もさらにかかってしまいます。
3-3.承認の状況がわからない、内部統制が取れない
申請の内容によっては、複数の承認者がいる場合もあります。正確な承認状況を知るには、それぞれの承認者に確認をとらなければなりません。また、いつ誰が誰に申請したのか、どこで承認が滞っているのかが不明瞭な状況だと、内部統制を取るのも難しくなります。内部統制を強化するためにも、ワークフローシステムを利用した各種申請と承認状況の記録が必要です。
3-4.申請書を作成する際に時間を要する
申請書を作成する際に、手書きのものを作成する場合は、ワークフローシステムを利用する場合と比較し、どうしても時間を要してしまいます。過去の申請書を流用したい場合でも、再度作り直さなければならないため、決して効率的であるとはいえません。
4.テレワーク導入のためのワークフローシステム活用メリット
先述したような問題が発生することを防ぐためにも、テレワークを実施する際の社内へのワークフローシステム活用には、大きなメリットがあると考えられます。
具体的なワークフローシステムを活用するメリットには、次の6つが挙げられます。
- 意志決定のスピードアップが図れる
- 場所を選ばず申請や承認が可能となる
- 承認状況が確認できる、内部統制を取りやすくなる
- 申請書作成の効率化が見込める
- データが電子化されているため検索が容易となる
- 紙媒体と比較しコストが抑えられる
以下で、これら6つのメリットについて説明します。
4-1.意志決定のスピードアップが図れる
ワークフローシステムは、書類の承認依頼があった場合のワンクリック承認や、申請者に対し修正を促すといったことができます。従来の方式と比較し、業務のスピードが格段に上がるため、意思決定のスピードアップが期待できます。
4-2.場所を選ばず申請や承認が可能となる
ワークフローシステムでは書類を電子化しているため、印刷や郵送の手間が必要ありません。オフィスから離れた場所でテレワークをしていても、申請や承認をスムーズに実施することが可能です。そのため、書類の申請や承認をおこなうために、わざわざ出社する必要がなくなります。
4-3.承認状況が確認できる、内部統制を取りやすくなる
ワークフローシステムを利用することで、自身が依頼した承認の進捗状況がわかります。どの段階にあるのかを確認しやすくなるため、スケジュールの管理に役立ちます。ワークフローシステムで業務の効率性や正当性をチェックして、内部統制に役立てることも可能です。たとえば、承認状況の記録をもとに業務上のルールを設ける、不要な残業を防止するといったことが挙げられます。
4-4.申請書作成の効率化が見込める
従来の紙ベースでの申請書作成と比較し、ワークフローシステムを活用するとフォーム入力での書類作成が可能となります。入力ミスや漏れなどを防げること、また、過去の帳票を流用できることから、申請書作成においての効率化が見込めます。
4-5.データが電子化されているため検索が容易となる
ワークフローシステムでは、すべての書類を電子化して保存するため、検索機能を活用して素早く見つけ出すことができます。検索の範囲を指定したり、保存した条件を利用してワンクリックで目的の書類を探し出したりすることもできるため、従来と比べ書類の検索が簡単になります。
4-6.紙媒体と比較しコストが抑えられる
申請書類が電子化されていることから、紙媒体と比較し、印刷や書類の保管にかかるコストを抑えられます。また、申請書を作成したり書類を検索したりする作業が格段に楽になることから、このような作業にかかる工数の削減にもつながります。
5.テレワーク導入のためのワークフローシステム活用方法
ここからは、テレワークを自社に導入のためのワークフローシステム活用方法3つについて紹介します。
- 内部統制およびコンプライアンスの強化に利用する
- 紙媒体を利用しない承認申請の実施に活用する
- 自社内によりテレワークを推進するために活用する
以下、具体的にこれら3つの活用方法について紹介します。
5-1.内部統制およびコンプライアンスの強化に利用する
テレワーク導入の際にワークフローシステムを運用することにより、業務の流れを厳格化することが可能となります。
また、あらかじめ決められたルールの中で業務を実施できるようになることから、不要な残業を防ぎ、業務の効率化にもつなげることができます。また、ワークフローシステムを利用する際には、承認に関するデータも残るため、改竄などの処理防止効果も期待できます。そのほか、テレワーク実施時に心配されるセキュリティリスクの回避にもつながります。
5-2.紙媒体を利用しない承認申請の実施に活用する
テレワーク中であっても、ワークフローシステムを導入していれば、紙媒体を利用せずに各種申請をおこなうことができます。また、決裁者もモバイル端末を使って即座に対応することが可能です。さらに、承認された書類の保管や検索についても、紙とは異なりオンライン上で対応できるため、管理にかかる手間が省けます。
ワークフローシステムを利用することで、テレワークでの申請や承認の作業効率が向上するだけでなく、書類管理についても効率化することが予想されます。
5-3.自社内によりテレワークを推進するために活用する
ワークフローシステムの多くが、パソコンだけでなくモバイル端末にも対応しています。ハンコでの承認対応のために、わざわざ出社をする必要もないため、自社内でテレワークを推進しようとする場合にも役立ちます。
6.ワークフローシステムの導入方法
ワークフローシステムを自社内に導入する際には、次のような方法で実施していくのが一般的となります。
- ワークフローシステムの導入目的を明確化する
- ワークフローシステムを自社内に導入する際の担当者を決定する
- 申請や承認フローの洗い出しと決定をおこなう
- 自社の現状にあったワークフローシステムを選定する
- ワークフローシステムに設定をおこなう
- システムのテスト導入をおこなう
- ワークフローシステムの本格運用をおこなう
自社の状況に合わせたワークフローシステムを導入するには、まずシステムの導入目的を明確化する必要があります。何を目的としてワークフローシステムを利用するのか、はっきりとさせるところからはじめましょう。
また、ワークフローシステムを選定する際には、業務効率化につながるシステムを選ぶことが重要となります。なお、テレワークでの導入によりワークフローシステムを利用する際には、次に紹介する注意点に留意するとよいでしょう。
7.テレワーク導入でワークフローシステムを利用する際の注意点
ここでは、テレワーク導入でワークフローシステムを利用する際の注意点を5つ紹介します。
自社内でテレワーク導入をする際にワークフローシステムを活用する場合には、次に挙げる点を参考にシステムの選定をおこなってみてください。
- 操作方法がわかりやすく使いやすいシステムか
- 既存システムとの連携が可能か
- 自社のニーズにあったシステムか
- セキュリティ対策が施されているか
- どれくらいの期間での導入を目指しているか
以下、具体的にこれら5つの注意点について紹介します。
7-1.操作方法がわかりやすく使いやすいシステムか
操作方法がわかりにくいシステムを導入すると、社員がシステムの操作を覚えるだけで大変な時間を要してしまいます。
操作になかなか慣れることができない社員にとっては、使いづらいシステムとなってしまい、せっかく導入したにもかかわらず社内に定着しないままとなってしまう可能性も高くなります。そのようなことを避けるためにも、導入するワークフローシステムは、操作方法がシンプルで直感的にわかりやすいものを検討するのがおすすめです。
7-2.既存システムとの連携が可能か
すでに社内で利用されている既存システムとの連携が可能であるかどうかも重要な観点となります。
システム同士の連携ができない場合は、既存システムに再度同じ情報を入力しなければならなくなり、結果的に無駄な作業が発生してしまいます。また、再入力する際にミスが起きる可能性もありますので、注意が必要です。
7-3.自社のニーズにあったシステムか
ワークフローシステムを利用する際には、そのシステムが自社のニーズにあっているかどうかについても確認しておかなければなりません。導入を検討するシステムが自社の業務内容に合わせた内容にカスタマイズできるかについてもあらかじめチェックしておくとよいでしょう。
このほか、複数の機能の中から、本当に必要となる機能だけをピックアップして選択することが大切です。また、自社のニーズに対して柔軟に対応ができる機能があるかなども検証しておきましょう。
7-4.セキュリティ対策が施されているか
テレワークでワークフローシステムを活用する際は、システム自体のセキュリティ対策にも注意しなければなりません。特に申請書類を提出する際は、社外秘の情報を記載することもあります。情報漏洩を防ぐためにも、導入するワークフローシステムのセキュリティ対策がしっかりしていることを確認しておきましょう。
また、モバイル端末を使って社外からデータにアクセスをするような、外部からの社内情報利用が考えられる場合には、セキュリティ機能が必要となります。データにアクセスした際のログ機能は、社内の情報漏洩や改ざんを防ぐためにも重要なチェックポイントです。可能であれば、このようなログ機能が備え付けられたシステムを選ぶとよいでしょう。
7-5.どれくらいの期間での導入を目指しているか
ワークフローシステムには、オンプレミス型とクラウド型があります。クラウド型はオンプレミス型に比べて、比較的短期間での導入が可能です。テレワークに活用するために、早い段階でのワークフローシステム導入を目指している場合は、クラウド型のシステム利用がおすすめです。
8.テレワークの推進にワークフローシステムの活用は有効
今回は、テレワークにおけるさまざまな課題解決にも利用できるワークフローシステムの活用法や注意点を中心に紹介しました。ワークフローシステムは、業務を実施する際に発生する無駄の削減やモバイル端末を使った進捗状況の手軽な把握、また遠隔地からの承認作業など、オフィスとは離れた場所で作業することの多いテレワークにおいても有効なシステムとなります。
今後多くの企業で導入が見込まれるテレワークを推進するうえでも、ワークフローシステムの積極的な活用を検討してみることをおすすめします。