新型コロナウイルスの感染拡大が続くなか、リモートワークを取り入れている企業も多くあるかと思います。
しかし、リモートワークは従業員にとって光熱費や環境整備のための費用が掛かるため、負担が大きくなっている場合もあるかもしれません。
本記事では、最近普及し始めている在宅勤務手当について詳しく解説します。
新型コロナウイルスの蔓延によって急激に普及したテレワークですが、「急に始めたので、ルールがしっかりと整備できていなかった。もう一度見直してしっかりとルール化したい」などのお悩みも発生しているのではないでしょうか。
そのようなお悩みをお持ちの人事担当者様に向け、テレワークで発生しやすい課題とその解決策や整備すべき社内ルールをまとめた資料を無料で配布しております。
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目次
1.在宅勤務手当(テレワーク手当)とは
在宅勤務手当(テレワーク手当)とは、在宅で勤務している従業員に対して支給される手当のことを指します。
在宅で仕事をする場合でも出社時と同様、集中して仕事に取り組めるように、作業用のデスクや椅子、必要な場合は通信回線を従業員自らが費用を負担して導入することがあります。
また、光熱費の増加や作業環境を維持するためにかかる費用などもあります。
在宅勤務によって余計にかかることになった費用を会社が負担するためにある制度が在宅勤務手当です。
1-1.在宅勤務手当が普及している背景
在宅勤務手当は、新型コロナウイルスの感染が拡大し、リモートワーク(在宅勤務)という働き方を導入する企業が増えいった中で普及し始めました。
リモートワークは、働き方の多様化の側面で推進される一方、従業員の仕事に対するモチベーションの低下や、在宅時間が増えることによる生活費の負担が膨らむことが懸念されています。
このような懸念に対して、在宅勤務手当を支給する企業が増えていったのです。
1-2.支給額の相場は?
では実際に、在宅勤務手当の相場はどのくらいなのでしょうか?
株式会社PLAN-Bが運営するカジナビの調査によると1,000円~5,000円未満の支給が44%と最も多く、2番目には19%で5,000~10,000円未満、全体の平均額は3,683円という結果となっています。
支給額の相場としては3,000円から5,000円と捉えておくと良いでしょう。
参考URL:https://kaji-navi.plan-b.co.jp/remote-allowance/
1-3.在宅勤務手当は課税対象?
在宅勤務手当は課税の対象となるのでしょうか?
結論から言うと、在宅勤務手当が課税対象となるかは支給の方法によって異なります。
国税庁の資料によると、
「在宅勤務に通常必要な費用について、その費用の実費担当額を精算する方法により、企業が従業員に対して支給する一定の金額については、従業員に対する給与として課税する必要はありません。」
とあります。その一方で、
「企業が従業員に在宅勤務手当(従業員が在宅勤務に通常必要な費用として使用しなかった場合でも、その金銭を企業に変換する必要がないもの(たとえば、企業が従業員に対して毎月5,000円を渡切りで支給するもの))を支給した場合は、従業員に対する給与として課税する必要があります。」
と記載されています。
つまり、用途を決めずに毎月○○円というように給付をおこなうと課税対象になり、在宅での業務に必要なものを購入する都度、給付をおこなうという形をとると非課税になります。
参考URL:https://www.nta.go.jp/publication/pamph/pdf/0020012-080.pdf
2.在宅勤務手当(テレワーク手当)を導入するメリット
在宅勤務手当の支給は、これまで掛かっていなかった費用を会社側が負担するとあって、導入に前向きになることができない場合もあるのではないでしょうか。
しかし、在宅勤務手当を導入することは、従業員のみならず企業にとってもメリットが存在します。
具体的には以下の通りです。
2-1.企業として働き方改革を推進できる
在宅勤務手当を導入し、従業員が自宅でも会社同様の作業環境で仕事をできるようになることで、長期的な在宅勤務が可能になります。
自宅と会社、どちらで仕事をするかという選択ができるようになれば、結果として企業の働き方改革を促進することができるでしょう。
社員に対してより良い働き方を提供することができれば、社員の定着率の向上など、企業に対して良い影響をもたらすことになります。結果的に企業としてのイメージアップにもつながる可能性が高いです。
2-2.交通費の支給が減ることで企業の経費が削減できる
従業員の自宅での作業環境が整備され、オフィスに通勤する必要がなくなると、これまでにかかっていた交通費を削減することができます。
仮に1人あたり月に2万円ほどの交通費を支給していた場合、年間で24万円ほどのコストカットが可能です。
毎月の交通費の支給額が大きな企業であればあるほど、削減できる額は大きくなります。
また従業員からしても、移動時間が単純に減る上に手当が厚くなることになるので、会社に対するエンゲージメントが向上することが考えられます。
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2-3. 従業員の業務効率やモチベーションアップにつながる
在宅勤務手当の導入が従業員の業務効率やモチベーションを向上させる可能性があります。この手当により、従業員は自宅で快適かつ効率的な作業環境を整えることができます。
これには以下のような利点があります。
- 作業環境の改善:適切な家具や機器の購入により、作業環境が最適化され、効率が向上します。
- 光熱費の補填:在宅勤務に伴う光熱費の増加を補うことで、従業員の経済的負担を軽減し、ストレスを減らすことができます。
- モチベーションの向上:従業員が会社からのサポートを感じることで、モチベーションが高まり、職務への取り組みが強化される可能性があります。
3. 在宅勤務手当を導入することのデメリット
在宅勤務手当を導入するメリットがある一方、反対にデメリットもあります。
- 給与計算の見直しが必要
- 企業運営に関する費用の増加
詳しく解説していきます。
3-1.給与計算の見直しが必要
課税の対象かどうかは、支給方法によって異なります。そのため、在宅勤務手当を導入する際には、給与計算方法を見直し、適切な税務処理を行う必要があります。給与計算システムを導入している企業に関してはシステム上での設定変更もあわせて行う必要があります。
3-2.企業運営に関する費用の増加
在宅勤務手当を支給するために企業の費用が増加する可能性があります。これは、従業員に追加の報酬を支払う必要があるためです。そのため、予算に余裕がない企業にとっては負担となることがあります。
4.在宅勤務手当の支給方法や注意点
先で在宅勤務手当を導入することによるメリットを解説しましたが、取り組み方によってはかえって生産性を落とすということにもなりかねません。
そういったことを防ぐためにも、企業は在宅勤務手当を導入する前に支給方法や精算の方法、在宅勤務手当として購入できる物品の要件などについて、明確なルールを作成し、従業員に説明しておく必要があります。
そのためにも、以下のことに気を付けて、手当を支給するようにしましょう。
4-1.在宅勤務手当の支給方法・精算方法を明確にする
在宅勤務手当は、現金支給や現物支給の形で行うことが可能です。企業の方針や従業員のニーズに応じて、最適な方法を選択します。
現金支給: 従業員に定期的に特定の金額を支給する方法です。給与と一緒に支給するか、別途支給するかを決定します。
現物支給: 必要な機材やソフトウェア、家具などを直接提供する方法です。企業が必要と考える在宅勤務に適したアイテムを選択し、従業員に提供します。
4-2.在宅勤務手当に関するはっきりとしたルールを作成する
通常、在宅勤務手当は備品や通信費、光熱費などに対して支給されるため、既存の就業規則を変更する必要があります。
具体的には、以下の内容について、規則に追加すると良いでしょう。
- テレワークの定義
- テレワークの対象者と手続き
- テレワークの際の労働時間の管理について
- テレワーク時の通信費・電気代などの負担について
こういったことをしっかりとおこなっておくことで、よりスムーズに在宅勤務へ移行しやすくなります。
5.在宅勤務手当を導入している企業事例をご紹介
在宅勤務手当の導入に取り組む前に、すでに取り組んでいる企業の事例を参考にするとよりスムーズに導入を進めることができるでしょう。
ここでは他の企業がどのようにして在宅勤務手当の導入をおこなっているのか、事例とともに紹介します。
5-1.富士通株式会社
在宅勤務をおこなっている従業員に対して、作業環境を整備するための在宅勤務手当として毎月5,000円の支給。
富士通株式会社では、2020年の7月、従業員の新たな働き方として「Work Life Shift」を発表しました。これによると、2022年度末までにオフィスの規模を50%ほどまで縮小し、基本的に全ての従業員が在宅勤務へ移行することが予定されています。
参考URL:https://pr.fujitsu.com/jp/news/2020/07/6.html#footnote3
5-2.note株式会社
2020年5月以降、雇用形態にかかわらず、500円×出勤日数分を半年ごとに支給(上限は6万円)、ディスプレイやマイクなど、自宅での作業環境の整備に充てることを想定。2020年6月まで、オフィスの椅子を自宅へ配送。
note株式会社では、2020年の3月から在宅勤務をおこなっている全従業員に対して、働く環境整備のサポートという形で在宅勤務手当の支給をおこなっています。
参考URL:https://note.jp/n/n8be76c501925
5-3.さくらインターネット株式会社
自宅でのリモートワーク環境を整えるための支援として、臨時特別手当10,000円と臨時通信手当3,500円を支給。それに加え、今後、働く場所にとらわれず活躍できる環境を加速させるために、リモートワークを働き方の前提として、毎月通信手当3,000円を支給。
インターネットインフラサービスを提供するさくらインターネット株式会社では、上記の支給の他にも、緊急出勤手当として1日あたり5,000円の支給や、リモートワークを当社の働き方の前提とするうえで、Web会議ツール「Zoom」の有料アカウントを配布するなど、在宅勤務に対して積極的な施策をとっています。
参考URL:https://www.sakura.ad.jp/information/pressreleases/2020/04/15/1968203378/
5-4.日立製作所
全従業員に対して、在宅勤務に必要な費用や出社時に必要なマスクや消毒液などの費用への補助として、1人当たり月3,000円を支給。他にも、従業員が在宅勤務のために購入した、情報機器(モニターやWifiルーターなど)や、作業机・椅子などの物品購入費用を補助。
株式会社日立製作所は、在宅勤務手当としての支給に加えて、感染リスクが高いと考えられる環境下で業務を遂行する従業員に対して1日あたり500~1,000円を支給するなど、手厚い支援策をとっています。そのほかにも、中長期的に在宅勤務などを継続するための施策も数多くとっています。
参考URL:https://www.hitachi.co.jp/New/cnews/month/2020/05/0526.html
5-5.株式会社カオナビ
「在宅勤務支援金」として、机や椅子、モニター、PC周辺機器、インターネット環境など、それぞれが必要な用途で就労環境を整備できるように1人当たり5万円を一括支給。
株式会社カオナビは、上記の支給と同時に「スイッチワーク」を導入し、仕事の合間に育児の時間を確保するなど、細切れに働くことを認め、1人ひとりが最も成果を出せるよう柔軟に時間を使うことを推奨しています。
参考URL:https://corp.kaonavi.jp/news/pr_20200423/
6.まとめ
いかがでしたでしょうか。
一口に在宅勤務手当といっても「毎月一定額を支給する」という形をとっている企業や、「一括で支給する」といった企業など、さまざまあります。
本記事で挙げた注意点に気を付け、効率的な手当支給をおこないましょう。