電子帳簿保存法は、企業が帳簿などの重要書類を電子データで保存するためのルールを定めた法律です。2021年の法改正によりすでに電子取引データ保存が義務付けられていますが、一方で企業には義務化への対応準備のため2023年12月いっぱいまで猶予期間が与えられました。
本記事では電子取引データ保存がいつから義務化されるのか、そして義務化に対応するためのポイントについて解説しています。電子帳簿保存法の改正に対応するため、早い段階で準備を進めておきましょう。
1998年に制定された電子帳簿保存法ですが、2020年10月や2021年の改正によって企業が電子帳簿保存法に対応するハードルが下がりました。 しかし、電子帳簿保存法に対応すれば業務が効率化されると言っても、要件や法律など、電子帳簿保存法そのものの内容や対応する手順など正しく理解しておかなければいけません。 「どうにか電子帳簿保存法を簡単に理解したいけど、自分で調べてもいまいちポイントがわからない・・・」とお悩みの方は「5分で読み解く!電子帳簿保存法まとめbook」をぜひご覧ください。
資料では
・電子帳簿保存法の内容に関するわかりやすい解説
・2020年10月の改正内容と2022年の施行内容のポイント
・今後電子帳簿保存法に対応していくための準備や要件
など、電子帳簿保存法に関する内容を総まとめで解説しています。 「電子帳簿保存法への対応を少しずつ考えたいが、何から始めたらいいかわからない」という経理担当者様は「ぜひご覧ください。
目次
1. 電子帳簿保存法とは?
電子帳簿保存法とは、企業や事業者が帳簿類を電子データとして保存するためのルールを定めた法律です。帳簿類のデータ保存は業務効率改善やコストカットに有効である一方、電子データには改ざんも容易という欠点があります。そのため、企業は電子帳簿保存法の規定に基づいて帳簿類をデータ保存し、帳簿の安全性や信頼性を担保しなければなりません。
特に、近年では企業間の電子取引も活発となり、企業が管理、保存しなければならない電子取引情報も増加しています。
そのため、企業の帳簿保存の負担軽減を目的として2021年に電子帳簿保存法が改正され、現行法は2022年1月に施行されました。
改正された電子帳簿保存法の中で特に大きなポイントとなるのが以下の2点です。
- 電子取引データ保存の義務化
- スキャナ保存の要件緩和
そもそも電子帳簿保存法についてよくわかっていないという方もいらっしゃるのではないでしょうか。そのような方に向けて当サイトでは「5分で読み解く電子帳簿保存法」という資料を無料配布しております。本資料では電子帳簿保存法の基礎知識を図解つきで分かりやすく解説しており、また改正内容も細かく解説しております。そのため電子帳簿保存法に関する基礎知識はもちろん、会社として対応するべきなのか、また対応するとしてどう対応すれば良いのかということも理解することができます。興味のある方はこちらから無料でダウンロードしてご覧ください。
2. 電子帳簿保存法の義務化はいつから?
先述のとおり、電子帳簿保存法に基づく電子取引データ保存は、2022年より義務化されています。しかし、2023年12月末日までは宥恕措置(猶予期間)が整備されてきました。では、2024年1月以降はどうなるのでしょうか。詳しく解説します。
2-1. 2024年1月以降の義務化対応について
2024年1月以降は、電子データの保存が義務化されます。
ただし、猶予措置により電子データ保存の要件を満たしていなくても、電子保存が認められる場合があります。
2023年の法改正により、宥恕措置の廃止と、それに変わる猶予措置の整備が発表されました。
これにより、2024年1月以降は「猶予措置の要件を満たせば、電子データ保存要件を満たさずとも電子保存できる」ことになります。
猶予措置の要件は、宥恕措置でもあった「税務署長の許可」に加えて、税務調査などの際に「ダウンロードの求めに応じること」と「電子取引データを印刷した書面の提示・提出の求めに応じること」の2つです。
3. 電子帳簿保存法における猶予期間
電子取引データ保存は2024年1月1日より完全義務化されます。改正された電子帳簿保存法は2022年1月より施行されており、それにともない電子取引データ保存の義務化も法的にはすでに適用されています。しかし、電子取引データ保存の義務化は企業の負担も大きい法改正であることから、猶予期間を設けて完全義務化が2年延期されました。
猶予期間は間もなく終了し、2024年1月1日より電子取引データの電子保存は完全に義務化されます。以降は、電子取引情報について法令で定められる規定に従って保存、管理しなければなりません。電子取引を行っている企業や事業者は、電子取引データ保存が義務化される前に必要な準備を整えておきましょう。
4. 電子帳簿保存法に基づく3つのデータ保存区分
2024年1月1日より義務化の対象となるのは、電子帳保存法が定める帳簿のデータ保存の定義のうち「電子取引データ保存」です。電子帳簿保存法への理解を深めるためにも、ここでは法令が定めるデータ保存の3つの区分を把握しておきましょう。
4-1. 電子帳簿等保存
電子帳簿保存は、電子的に作成した帳簿や決算書類を電子データのまま保存することを指します。電子帳簿保存法では、初めの記録段階から一貫してPCなどの電子計算機気で作成された帳簿・書類について、一定の要件化であれば電子データのままで保存することが認められています。
たとえば、会計管理ソフトなどを利用して作成された決算書類は、紙媒体へ印刷せずとも電子データのまま保存することが可能です。なお、電子帳簿保存の義務化は規定されていないため、2024年以降も従来どおりに紙媒体へ印刷して保存することも認められています。
4-2. スキャナ保存
スキャナ保存は、紙媒体で作成された請求書や領収書などの国税関連書類を、スキャニングなどの手法により画像データとして保存する方法です。一定の要件を満たしている場合は画像データを原本として扱うことが可能となり、紙媒体の書類保存が不要となります。ただし、決算関係書類のスキャナ保存については認められていません。
なお、2022年1月より施行された改正電子帳簿保存法により、帳簿類のスキャナ保存の要件は大幅に緩和されました。以前は帳簿の電子化は受け取ってから「概ね3営業日以内」だったものが、現行法では「2カ月と概ね7営業日」に変更されています。なお、2024年1月以降もスキャナ保存への対応は企業の任意です。
4-3. 電子取引データ保存
電子取引データ保存は、電子的手法で行われた取引の情報を電子データのまま保存することを指します。2024年1月以降に法令で義務化されるのはこの電子取引データ保存です。
電子取引データ保存が義務化されると、電子的に作成された取引情報は電子データのまま保存する必要があります。たとえば、表計算ソフトで作成された請求書を電子メールで受け取った場合、その請求書はPDFなどの電子データの形式で保存が必要です。
2024年1月を過ぎたら、電子データとして受け取った請求書を紙媒体に印刷した書類は、税務上の保存書類として認められません。そのため、企業にはこの法改正に対応するためのルール作りや、システム面でのインフラ整備が求められます。
5. 電子帳簿保存法の義務化へ向けた対応方法
電子帳簿保存法における電子取引データ保存の義務化に対応するためには事前の準備が必要です。社内オペレーションの変更や人員教育も必要となるため、早い段階で準備を整えておきましょう。ここでは電子取引データ保存の義務化に備えて企業がやるべきことについて解説します。
5-1. 自社で行われる電子取引を確認する
データ保存の義務化に備え、まずは自社で行われている電子取引を全て確認しましょう。確認が必要となるのは電子的に作成された領収書や請求書のほか、ウェブやスマホアプリ上で表示される取引明細などです。具体的には以下のような例が挙げられます。
- 電子メールに添付して交付・受領した請求書や領収書
- 電子取引システムなどを通じて作成された請求書や領収書
- インターネット通販サイトなどからダウンロードした領収書
- クレジットカードの利用明細
- インターネットバンキングの取引明細
電子取引の種類は多岐に渡りますが、原則として紙媒体を介さずに行われた全ての取引が電子取引に該当します。企業の財務に関わる電子取引を全て確認し、電子データ保存が必要な取引の把握に努めましょう。
5-2. 電子取引データの保存方法を決める
次に電子取引データをどのように保存、管理するのかを決めます。電子帳簿保存法が定める電子取引データの保存要件は大きく「真実性の確保」と「可視性の確保」の2つです。企業は、自社の状況に適した形で、真実性と可視性を確保しつつ取引データを保存する方法を決めなければなりません。
なお、真実性の確保とは、タイムスタンプなどの仕組みを用いて電子取引データの非改ざん性を担保することです。保存する電子取引データの真実性を確保のためには、以下4つの要件のうちいずれかを満たす必要があります。[注1]
可視性の確保に重要な要件
以下4つのうちいずれかを満たすこと
- タイムスタンプが付与されたデータを受け取る
- 保存するデータにタイムスタンプを付与する
- データの授受と保存には訂正削除履歴が残るシステム、もしくは訂正削除ができないシステムを使用する
- 不当な訂正削除の防止に関する事務処理規程を制定し、遵守する
また、可視性の確保とは、保存した電子データは必要に応じてすぐに参照できる状態にすることです。電子帳簿保存法の規定により、下記性の確保には以下2つの要件をどちらも満たす必要があります。[注1]
可視性の確保に重要な要件
以下2つの両方を満たすこと
- 取引情報参照のための電子機器(モニター等)とその操作説明書が備え付けてある
- 情報の検索ができる
[注1]国税庁「教えて!!令和3年度改正 電子帳簿保存法」P11
5-3. 必要なシステムやITツールを導入する
電子取引データの保存方法を決めた後は、その保存方法を可能にするためのシステムやITツールを導入しましょう。具体的にはタイムスタンプを付与するためのシステムや、保存した取引データを参照するための端末などの準備です。
なお、電子取引データの電子保存を実施するにあたっては、従業員の業務内容にも大きな影響を与えることが予想されます。義務化後の業務オペレーションを策定し、早い段階で従業員へ周知、教育することが重要です。
6. 電子帳簿保存法の義務化に備えて準備を進めよう
準備期間として猶予期間が与えられていた電子取引データ保存は、2024年1月より完全に義務化されます。それ以降は電子取引情報から印刷された紙の書面などは税務上の保管書類として認められません。電子帳簿保存法の改正に対する準備がお済みでない企業は、延長期間が完全に終了してしまう前に電子取引データ保存の義務化に備えて早期に環境を整えましょう。
1998年に制定された電子帳簿保存法ですが、2020年10月や2021年の改正によって企業が電子帳簿保存法に対応するハードルが下がりました。 しかし、電子帳簿保存法に対応すれば業務が効率化されると言っても、要件や法律など、電子帳簿保存法そのものの内容や対応する手順など正しく理解しておかなければいけません。 「どうにか電子帳簿保存法を簡単に理解したいけど、自分で調べてもいまいちポイントがわからない・・・」とお悩みの方は「5分で読み解く!電子帳簿保存法まとめbook」をぜひご覧ください。
資料では
・電子帳簿保存法の内容に関するわかりやすい解説
・2020年10月の改正内容と2022年の施行内容のポイント
・今後電子帳簿保存法に対応していくための準備や要件
など、電子帳簿保存法に関する内容を総まとめで解説しています。 「電子帳簿保存法への対応を少しずつ考えたいが、何から始めたらいいかわからない」という経理担当者様は「5分で読み解く!電子帳簿保存法まとめbook」をぜひご覧ください。