就業管理システムとは、従業員の勤務状況を効率よく管理するためのシステムです。就業管理システムを導入すれば、正確に労働時間を把握し、コンプライアンスを強化することができます。本記事では、就業管理と勤怠管理の違いを解説したうえで、就業管理システムの種類や機能、メリット・デメリット、選び方のポイントについて紹介します。
数多くある勤怠管理システムの中から、自社に見合うシステムを探す際、何を基準にして選べばいいのか、悩まれる方も多いのではないでしょうか。
そのような方のために今回、社労士監修のもと、「勤怠管理システムの比較表」をご用意いたしました。資料には以下のことがまとめられています。
・勤怠管理システムの5つの選定ポイント ・社労士のお客様のシステム導入失敗談 ・法対応の観点において、システム選定で注意すべきこと
お客様の声をもとに作成した、比較表も付属しています。これから勤怠管理システムの導入を検討されている方はぜひご活用ください。
目次
1. 就業管理システムとは
就業管理システムとは、従業員の勤務状況を効率よく一元的に管理するためのシステムです。ここでは、就業管理と勤怠管理の違いを説明したうえで、就業管理システムの必要性について詳しく紹介します。
1-1. 就業管理と勤怠管理の違い
就業管理と勤怠管理は、ほぼ同義の用語として扱われます。しかし、ニュアンスなどに若干の違いがあります。就業管理とは、従業員が適切に働けているか管理することです。なお、就業とは「業務に従事すること」「仕事に取り掛かること」を意味します。
一方、勤怠管理とは、従業員の勤務状況を管理することです。なお、勤怠とは「出勤と欠勤」を意味します。つまり、就業管理のなかに、勤怠管理は含まれるともいえるでしょう。
1-2. 就業管理システムの必要性
最近では働き方改革の影響も受け、テレワークやフレックスタイム制など、多様な働き方が推進されています。また、従業員の権利保護や労働環境の改善のため、労働基準法・労働安全衛生法といった働き方に関連する法改正も繰り返しおこなわれています。
このような時代において、従業員の働き方をアナログな方法で管理するのは、人事労務担当者の業務負担の増加にもつながり困難です。正確で効率よく従業員の勤務状況を管理するためにも、就業管理システムが必要とされています。
2. 就業管理システムの種類
就業管理システムは製品ごとにさまざまな特徴を持っていますが、主にオンプレミス型とクラウド型の2つに大別されます。自社の要件や状況を考慮し、それぞれの形式の特徴を理解したうえで導入するシステムを選ぶことが大切です。オンプレミス型とクラウド型それぞれの特徴は下記の通りです。
オンプレミス型 |
クラウド型 |
|
初期投資 |
高い |
低い |
運用コスト |
低い (自社でメンテナンスする必要がある) |
高い (ベンダーがメンテナンスする) |
データの管理 |
自社で管理する |
ベンダーが管理する |
カスタマイズ性 |
高い(自社の要件に応じてカスタマイズ可能) |
低い〜中程度(ベンダーが提供する範囲内) |
セキュリティ |
自社のセキュリティポリシーに準拠 |
ベンダーのセキュリティ対策に依存 |
アクセスの利便性 |
自社ネットワーク内からのアクセス限定 |
どこからでもアクセス可能 |
2-1. オンプレミス型
オンプレミス型とは、社内のネットワーク・サーバーを利用して、システムを設計・構築し、自社で運用する方法のことです。自社でシステムを構築・運用するため、セキュリティやカスタマイズ性が高いです。しかし、初期投資やメンテナンス費用が必要になります。
2-2. クラウド型
クラウド型とは、外部ベンダーが提供しているシステムを、インターネット環境を使って利用する方法のことです。既に構築されているシステムを利用するため、初期投資を抑えつつ、スピーディーにサービスを導入することができます。
ただし、機能はベンダーに依存するので、自社オリジナルの機能を搭載することは難しい可能性があります。また、データ保管場所の管理も他社に委ねられるため、セキュリティ面での配慮が必要です。
3. 就業管理システムの機能一覧
就業管理システムには、さまざまな機能が搭載されています。ここでは、就業管理システムの主要な機能について詳しく紹介します。
3-1. 打刻
打刻機能とは、従業員の出勤・退勤時間を自動で打刻できる機能を指します。就業管理システムであれば、PC・スマホ・ICカード・生体認証など、多様な打刻方法を採用することが可能です。
3-2. 集計
集計機能とは、週や月ごとに、労働時間や休日数などを自動で集計できる機能のことです。就業管理システムを利用すれば、時間外労働数や休日労働数、深夜労働数、有給消化日数など、労務管理や給与計算に必要となる数値を簡単に集計して計算することができます。
3-3. 申請・承認(ワークフロー)
申請・承認(ワークフロー)機能とは、自社のニーズにあわせてワークフローを設計し、システム上で申請や承認の作業ができる機能を指します。残業や有給などを申請制にすることで、内部統制を強化することも可能です。
3-4. 通知・アラート
通知・アラート機能とは、打刻漏れがあった場合や、超過勤務の恐れがある場合などに、当該従業員に対して自動で警告を出せる機能のことです。これにより、法令順守を促すことができます。
3-5. 分析
分析機能とは、就業データを分析してグラフなどで可視化できる機能を指します。データ分析により、残業が多い部署や、有給消化率が高い部署などを洗い出し、今後の施策に役立てることが可能です。
4. 就業管理システムのメリット
就業管理システムを導入することで、さまざまなメリットが得られます。ここでは、就業管理システムのメリットについて詳しく紹介します。
4-1. 労働時間を正確に管理できる
紙のタイムカードなどで就業管理をしている場合、作業場とタイムレコーダーの間に距離があるなどで、正確に労働時間を把握できない可能性があります。就業管理システムを利用することで、出勤・退勤時間や休憩時間、残業時間などをデータ化し、リアルタイムで把握することが可能です。たとえば、PCログを打刻データとして採用すれば、サービス残業を防止することもできます。
4-2. 業務効率化を実現できる
紙やExcelの勤怠表で管理している場合、人の手で集計作業をしなければならず、時間や手間がかかります。就業管理システムを導入すれば、集計業務を自動化できるので、業務を効率化することが可能です。また、残業や有給などの申請・承認業務も、システム上でおこなえるため、自宅や移動中に作業することもできます。
4-3. コストを削減できる
人の手から就業管理システムに切り替えることで、業務効率化が期待できます。これにより、事務負担が削減され、過剰な残業代を削減することが可能です。また、就業データを分析して、人員配置を最適化することで、人件費を抑えることにもつながります。
4-4. 法令遵守につながる
紙のタイムカードなどを用いて就業管理している場合、リアルタイムでの集計が難しいため、月末にならないと、労働時間が規定を超えているかわからないこともあります。
就業管理システムを使用すれば、リアルタイムで残業時間や休日出勤数などを把握することが可能です。そのため、法定労働時間(1日8時間、週40時間)や36協定の上限時間をオーバーしそうな従業員には、前もって通知することができます。
4-5. 証跡を残せる
紙の勤怠表の場合、紛失・盗難のリスクがあります。一方、就業管理システムの場合、データとして証跡を残すことが可能です。システムによっては、不正アクセスや改ざんなども検知できます。また、バックアップ体制をきちんと整備すれば、災害などにより、システム障害があっても、データを保護することが可能です。
5. 就業管理システムのデメリット
就業管理システムには、メリットだけでなく、デメリットもあります。ここでは、就業管理システムのデメリットについて詳しく紹介します。
5-1. 初期投資と維持費用が必要になる
就業管理システムの導入には、初期投資と維持費用が必要です。オンプレミス型のシステムでは、システム設置のためのハードウェアやソフトウェアの初期費用が発生します。
一方、クラウド型のシステムは初期投資が少ないものの、基本料金や定期的な利用料が必要です。そのため、長期的なコストを考慮して、自社のニーズにあったシステムを選ぶことが大切です。
5-2. 導入と運用の難易度が高い
就業管理システムを導入する際、労働基準法だけでなく、自社の就業規則や勤務形態も考慮して初期設定をおこなう必要があります。また、従来の紙やExcelでの就業管理に慣れている場合、就業管理システムに抵抗感を抱く従業員もいるかもしれません。
そのため、就業管理システムを導入する前に、きちんと計画を立てることが大切です。また、自社で上手く導入・運用する自信がない場合は、サポートが充実しているシステムを選びましょう。そして、導入後の初期段階ではシステムの挙動を確認するため、新旧の勤怠管理法を並行して実施することも推奨されます。
5-3. セキュリティ対策が必要
クラウド型の就業管理システムは、パソコンなどの端末とインターネット環境があれば、場所を問わず作業できるメリットがあります。しかし、外出中に作業をすると、情報を盗み取られる恐れもあります。
就業管理システムでは、個人情報や組織情報などの機密性の高いデータを扱います。もしも重要なデータが外部に流出したとなれば、従業員や外部ステークホルダーからの信頼を失うことにもつながります。このような事態を招かないためにも、セキュリティ対策を徹底し、従業員にセキュリティ教育も実施しましょう。
6. 就業管理システムの選び方のポイント
ここでは、就業管理システムの選び方のポイントについて詳しく紹介します。
6-1. 希望の業務に対応しているか
就業管理システムによって、搭載されている機能は異なります。たとえば、就業管理だけでよい場合と、経費精算や給与計算も実現したい場合では、必要な機能が変わってきます。事前に就業管理システムで成し遂げたいことを明確化し、過不足ない機能が搭載されたツールを選定しましょう。
6-2. 既存のシステムと連携可能か
就業管理システムで得られた勤怠データを既存の給与計算ソフトや人事管理システムなどに連携できれば、より業務を効率化することができます。ただし、就業管理システムによって、連携できるツールは限られています。そのため、自社が採用している既存のシステムと、これから導入する就業管理システムが連携できるかチェックしましょう。
6-3. 従業員が使いやすい設計か
就業管理システムは、人事労務担当者だけでなく、現場の従業員も打刻や申請・承認などで利用します。操作が難しい場合、かえって業務負担の増加を招く恐れがあります。そのため、直感的に操作できる就業管理システムを選ぶのがおすすめです。また、導入前に無料トライアルを活用するなどして、使用感を確かめることも大切です。
6-4. 法令遵守機能はあるか
労働基準法に違反すると、懲役や罰金などの罰則が課せられる恐れがあります。そのため、法令遵守をサポートする機能が搭載されているかどうかも重要な選定ポイントの一つです。たとえば、法改正に自動でアップデートできるシステムや、年次有給休暇の管理もできるシステムの導入がおすすめです。
6-5. サポート体制は充実しているか
就業管理システムを導入・運用する際、トラブルはつきものです。その際、サポートが充実しているシステムを選んでいれば、素早く問題を解決することができます。
また、サポートといっても、電話サポートやチャットサポートなど、さまざまな種類があります。どのようなサポートが自社に必要なのか、あらかじめ明確にしておくことが大切です。
6-6. 費用対効果は十分か
システムの費用対効果を評価することも大切です。クラウド型やオンプレミス型など、システムのタイプによって費用体系は異なります。従業員数の増減可能性や将来的な機能追加の必要性などを考慮し、長期的な視点からコストを評価することが重要です。
6-7. セキュリティ対策は万全か
クラウド型の就業管理システムを選ぶ場合、システムを提供するベンダーがどのようなセキュリティ対策をおこなっているか確認することが大切です。もしもセキュリティに不安があるならば、オンプレミス型の就業管理システムを選び、セキュリティ機能を強化することも検討しましょう。
7. 就業管理システムで勤務状況を一元管理!
就業管理システムは人事業務の効率化だけでなく、従業員の働きやすさを向上させるツールでもあります。システムの導入により、従業員は自身の勤怠状況や有給休暇の利用状況を容易に確認でき、自己管理がしやすくなります。この機会にぜひ就業管理システムの導入を検討しましょう。