従業員の給与からの控除額の計算や、所得税額の正しい納付には、所得税率を理解しておくことが不可欠です。所得税率を間違えると、修正対応の手間が発生してしまうため注意が必要です。本記事で所得税率の理解を深め、スムーズな業務の遂行にお役立てください。
給与計算業務は税務リスクや労務リスクと隣り合わせであるため、
・税額が合っているか不安
・税率を正しく計上できているか不安
・自社に合った税金計算方法(システム導入?代行依頼?)がわからない
というような悩みをお持ちのご担当者様は多いと思います。
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1. 所得税率の仕組みをわかりやすく解説
所得税の計算を正しくおこなうためにも、まずは所得税率の仕組みを確認しましょう。
ここでは、所得税の概要、所得税法・超過累進課税、令和4年の所得税率について解説します。
1-1. そもそも所得税とは
所得税とは、従業員の1年間の課税所得額に対し一定の割合で課せられる税金のことです。しかし、課税所得額は1年が終わった後に確定するため、まずは概算で所得税を算出して毎月の給与から源泉徴収します。
なお、徴収した所得税に過不足があった場合は、年末調整や確定申告によって正しく計算し直します。
1-2. 所得税法とは
所得税法とは、日本が個人の所得に対する税金について定めた法律のことを指します。租税(国または地方自治体によって強制的に徴収される金銭)の中でも、労働者や企業に密接に関わるものといえるでしょう。
1-3. 超過累進課税とは
超過累進課税とは、納税者に応じて税率を変動させることで、負担に公平性をおくために取り入れられている制度です。
課税対象額(総支給額から非課税である通勤手当や社会保険料などを引いた額)が一定の金額を超えた場合に、超えた金額に対して高い税率をかける仕組みです。
1-4. 令和4年の所得税率は何パーセント?
令和4年の所得税率は、所得に応じて5%、10%、20%、23%、33%、40%、45%の7段階に分けられます。
所得税率の一覧表は、以下の通りです。
日本の所得税率の推移は、以下の通りです。
平成25年度の改正によって、所得税の最高税率が所得金額4,000万円以上の対象者に対して、40%に引き上げられました。
2. 所得税の算出方法
所得税は以下の計算式によって算出します。
2-1. 課税所得を計算する
所得税は給与の総支給額ではなく、課税所得にかかるため注意が必要です。
「課税所得」とは、総支給額から非課税手当や各種所得控除を差し引いたものです。この課税所得に累進課税による所得税率を乗じ、そこから税額控除額を差し引くことで所得税を求めることができます。
2-2. 復興特別所得税額を求める
「復興特別所得税額」とは、2013年(平成25年)1月1日~2037年(令和19年)12月31日まで、通常の所得税に上乗せして徴収される特別税です。復興特別所得税は、東日本大震災の復興のための財源確保を目的に設けられたものです。また超過累進課税制度ではなく、以下の計算式で算出します。
支払金額等×合計税率(%)=源泉徴収すべき所得税および復興特別所得税の額
(注1)合計税率は、所得税率(%)×102.1%です。
(注2)算出した額に1円未満の端数があるときは、その端数を切り捨てます。
2-3. 超過累進課税について
累進課税には「単純累進課税」と「超過累進課税」があります。
単純累進課税では、僅かな所得の差にも関わらず一方に高い税金が課され不公平が生じます。納税の公平さを保つために、日本では超過累進課税が採用されています。そのため、年収が高いほど税率も高くなり、徴収する所得税は多くなるというわけです。
3. 所得税率の調べ方
先述した所得税率は、国税庁のホームページに掲載されており、誰でも簡単に調べることができます。そのため、給与から控除をおこなう際には都度細心の税率を確認するようにしましょう。
課税所得を所得税率表にあてはめて計算する際には、課税所得金額は1,000円未満の端数金額を切り捨てた後の金額となるので、気をつけましょう。
また復興特別所得税は、課税所得額ではなく所得税額に乗ずるため、ご注意ください。
3-1. 所得税の計算例
所得税の計算は2つの方法から算出が可能です。
ここからは、所得税の計算例を2つ紹介します。
【所得税の計算方法①】
所得税率の一覧の「課税所得金額」と「税率」の欄を用いて所得税を計算する場合は以下のように求めます。
課税所得が195万円を超えているため、2つの税率で計算します。
そのため、所得税額を求める計算式は以下の通りとなります。 (195万円×5%+<300万円‒195万円>×10%)=20,2500円 |
【所得税の計算方法②】
1つ目の計算方法は手間がかかりミスが起こりやすくなります。そのため、所得税率の一覧の「控除額」を利用してもっとシンプルに算出する方法を紹介します。
課税所得が195万円を超えていても、課税対象額の対象範囲から1つの税率を選択して控除額を含めて計算します。
そのため、所得税額を求める計算式は以下の通りとなります。 3,000,000円×10%-97,500円=20,2500円 |
計算方法①②のいずれを選択しても所得税額は一致します。ただし、ミスなくスピーディに計算するためにはできるだけシンプルな②の方法を利用するのがおすすめです。
エクセルで計算をおこなう場合においても、従業員によって計算式が異なっており徴収金額が間違ってしまうケースがあるため注意が必要です。そのため、徴収金額が合っているか不安になる方もいらっしゃるでしょう。
そのような方に向けて、当サイトではミスによって業務工数が増えないよう正しい計算方法を解説した資料を無料で配布しています。所得税と住民税の計算方法をおさらいし、ミスなく給与計算業務をおこないたい方は、こちらから資料をダウンロードしてご活用ください。
4. 所得税率に関する注意点
ここからは、所得税率に関する注意点を紹介します。
誤った金額を納付することのないよう、以下の3つの観点に留意しておくことをおすすめします。
4-1. 所得税率の改訂がある
「令和4年の所得税率は何パーセント?」にてお伝えしたように、かつて所得税率の最高値は70%(課税所得8,000万円超えの部分)でした。しかし、サラリーマン世帯の税負担を軽減するため税率が引き下げられたとされています。
2015年におこなわれた税制改正によりそれまで6段階だった税率に「課税所得4,000万円以上は税率45%」という枠が新たに追加され7段階となっています。
もともと2,000万円を超える給与所得者に対して企業が源泉徴収をおこなう必要はないので、この改訂は人事担当者にほとんど影響がありません。
ただし、今度も税率の改訂がおこなわれる可能性があることを覚えておきましょう。
4-2. 所得税率の選択間違い
超過累進課税を用いた所得税率の計算はミスが起こりやすいので注意が必要です。
先程紹介した「所得税率の一覧表」を用いた場合でも、税率の段を1つ間違えれば所得税額は大きく変わります。
例えば、課税所得が1,949,000円であれば税率は5%ですが、1,950,000円を超えると10%と、僅か1,000円の差でも税率は2倍になります。
もし、所得税の計算ミスがあった場合は確定申告による修正が必要になるケースもあるので、常に間違いのないよう確認を徹底することが大切です。
4-3. 最新の所得税率に対応し、正しく所得税を計算する
所得税の改定は所得税率に限らず、所得控除の内容や適用額においても同様で生じることがあります。
最近では、令和2年に基礎控除額が38万円から48万円に引き上げられた事例があります。
このように、所得税率などは頻繫に見直しがおこなわれ、必要に応じてルールが改訂されます。給与計算の担当者は常に最新の情報をチェックし、迅速に対応することが求められます。
5. 人為的なミスを防ぐためにシステム導入を
所得税率には超過累進課税が採用されており、従業員の課税所得に応じて正しい税率を調べる必要があります。7段階ある税率を1段間違えるだけで税額に差が出るため、慎重な作業が求められます。
また、所得税率をはじめ、所得税の計算方法は改定されることがあります。つまり、最新の情報に従って正しく対応しなくてはなりません。全従業員の所得税をミスなく算出するのは人事担当者にとって大きな負担となるでしょう。人為的なミスを削減し、効率良く業務を進めるためにおすすめなのが給与管理システムです。ぜひこの機会に導入を検討してみてはいかがでしょうか。