所得税預り金の仕訳方法や納付期限をわかりやすく解説 |HR NOTE

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所得税預り金の仕訳方法や納付期限をわかりやすく解説

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所得税預り金とは、役員や従業員の給与から差し引いた源泉所得税を計上する勘定科目です。場合によってはマイナス計上になるため、正しい仕訳方法を押さえておきましょう。この記事では所得税預り金の概要や仕訳方法、納付期限についてわかりやすく解説します。

役員や従業員の給与から源泉徴収した所得税および復興特別所得税は「預り金」の勘定科目に計上されます。所得税預り金の仕訳にはポイントがあるので、正しい方法を理解しておきましょう。また、納付期限を過ぎるとペナルティがあるため、期日を知り、守ることが大切です。

今回は、所得税預り金の概要や仕訳方法、納付期限について詳しく解説します。

1. 所得税預り金とは?

所得税預り金とは、源泉徴収した所得税および復興特別所得税を処理する勘定科目のことです。事業主は、役員や従業員が支払うべき所得税等を給与から天引きして一時的に預かり、税務署に納付します。あくまで納税額を一時的に預かる形になるため「預り金」の勘定科目が使われます。

なお、所得税および復興特別所得税の税額が確定するのは、年末調整のときです。それまでの間は毎月概算額を給与から天引きするので、年末調整時に差額を調整する場合があります。

1-1. 所得税預り金は流動負債

所得税預り金は、役員や従業員から一時的に現金を預かり、いずれは支払わなければならないものです。未払金や買掛金と似た性質を持っているため、負債に分類されます。なお、所得税預り金は負債の中でも「流動負債」として扱われます。流動負債とは、1年以内に支払いが必要な負債のことです。所得税預り金に関しては毎月、もしくは年2回税務署への支払いを行います。1年以内に支払いが完了することがほとんどのため、流動負債に分類されています。

1-2. 会社が従業員等の負担額を一時的に立て替えるときは「立替金」

預り金とよく似た勘定科目のひとつに「立替金」があります。立替金は、役員や従業員、もしくは取引先などが支払うべきものを会社が立て替えたときに使う勘定科目です。所得税預り金は負担すべき本人のお金が動きますが、立替払いは本人に代わり、会社のお金が動くという違いがあります。

1-3. 将来売上に計上される金額を受け取った場合は「前受金」

前受金も、預り金と間違われやすい勘定科目です。どちらも本人から現金を受け取る点は同じですが、前受金は将来的に売上に計上されるものに使います。商品・サービスを受け取る前の手付金や内金、着手金などが該当します。

2. 所得税預り金の仕訳方法

所得税預り金の仕訳方法をご紹介します。

2-1. 給与から所得税および復興特別所得税を徴収する場合

給与から所得税および復興特別所得税を徴収する場合は、税額を預り金勘定にし、差額を現金預金で処理します。給与額が30万円、所得税等の合計額が5万円だった場合の処理は以下のとおりです。

借方(科目) 借方(金額) 貸方(科目) 貸方(金額)
給与 300,000 預り金
現金預金
50,000
250,000

2-2. 給与から徴収した所得税や復興特別所得税を税務署に支払った場合

預り金を納税した場合の仕訳は以下のとおりです。

借方(科目) 借方(金額) 貸方(科目) 貸方(金額)
預り金 50,000 現金預金 50,000

通常、所得税の納付は給与を支払った翌月の10日までに行います。毎月の納付の都度、上記の仕訳を行ってください。ただし、納期特例の承認を受けている場合は、年2回のみ支払いを行います。

2-3. 年末調整の結果、所得税等を余分に徴収していた場合

毎月の給与から源泉徴収する税額は概算のため、年末調整時には差額の精算を行います。徴収額が足りない場合はその分を給与等から差し引く形で処理すれば良いですが、多く徴収していた場合は、差額を返金しなければなりません。余分に徴収していた税額が2万円だと仮定した場合、考えられる仕訳は以下のとおりです。

借方(科目) 借方(金額) 貸方(科目) 貸方(金額)
給与
預り金(多く徴収した税額)
300,000
20,000
預り金
現金預金
50,000
270,000

しかし、徴収所得税等の納付が済んでいた場合、帳簿上の所得税預り金はゼロです。上記の仕訳をしたときに所得税預り金がマイナスになる場合は「立替金」の勘定科目を利用します。

借方(科目) 借方(金額) 貸方(科目) 貸方(金額)
給与
立替金
300,000
20,000
預り金
現金預金
50,000
270,000

徴収した所得税等が納付済みの場合、本来は税務署が役員もしくは従業員への差額返金を行う必要があります。しかし、実際にはいったん企業が税務署に代わって立替払いするため、内容としては「預り金」ではなく「立替金」の勘定科目で処理するのが望ましいです。

税務署に代わって立て替えた税額は、税務署に申請すれば還付してもらえます。しかし書類をそろえるのに手間がかかったり、還付までに時間を要したりするため、のちほど納める源泉所得税との相殺を選ぶこともできます。

3. 所得税預り金の納付期限

所得税預り金は、役員や従業員の給与から源泉徴収し、一時的に預かっているものです。所得税および復興特別所得税の納付期限にあわせて支払う必要があります。納付期限は、一般納付か納期特例かで異なります。

3-1. 所得税預り金の納付期限は一般納付か納期特例かで異なる

それぞれの納付期限は以下のとおりです。[注1]

  納付期限  
一般納付 毎月10日 給与を支払った翌月の10日までに源泉徴収した税額を支払う。
納期特例 7月10日と1月20日 1月〜6月に徴収した税額を7月10日、7月〜12月に徴収した所得税を1月20日までに支払う。納期特例の申請をして、承認された場合のみ年2回の支払いで良い。

一般納付の納付期限は、毎月10日です。たとえば1月に給与等の支払いが発生し源泉徴収したものは、2月10日に納める必要があります。

納期特例とは、毎月の給与の支払い人数が10人未満の源泉徴収義務者に限り、源泉所得税の支払いを年2回にまとめられる制度です。[注1]
納期特例に関する申請書を提出し、承認されれば7月と1月のみの支払いで済みます。

[注1]No.2505 源泉所得税及び復興特別所得税の納付期限と納期の特例|国税庁

3-2. 所得税預り金の納付期限を過ぎると延滞税や不納付加算税が発生する

所得税預り金の納付期限を過ぎると、延滞税や不納付加算税をあわせて支払う必要があります。延滞税は、納付期限の翌日から支払完了までに要した日数で金額が決まります。所得税額が少なかったり、早く支払ったりした場合は、延滞税がかからない場合もあるでしょう。

延滞税の計算時に乗じる利率は、支払時期によって異なります。納付期限の翌日から2カ月以内の納付の場合は、年7.3%と「延滞税特例基準+1%」のいずれか低いほうを乗じて求められます。[注2]

2カ月以内に納付した場合の延滞税特例基準割合は以下のとおりです。[注3]

  • 令和3年1月1日から12月31日……2.5%
  • 令和4年1月1日から12月31日……2.4%
  • 令和5年1月1日から12月31日……2.4%

納付期限の翌日から2カ月を超えた場合は、年14.6%と「延滞税特例基準割合+7.3%」のいずれか低いほうを乗じます。2カ月を超えて納付した場合の延滞税特例基準割合は、以下のとおりです。[注3]

  • 令和3年1月1日から12月31日……8.8%
  • 令和4年1月1日から12月31日……8.7%
  • 令和5年1月1日から12月31日……8.7%

納付が遅れるほど延滞税率も上がるため、追加で支払う額が高くなります。できるだけ早く支払うのが望ましいです。

不納付加算税は、期限を過ぎると課税されるものです。納付税額の10%の課税が通常ですが、税務署から未納の連絡が来る前に支払った場合は納税額の5%が課税されます。[注4]

なお、事情があって納付が遅れる場合は、前もって税務署に連絡しましょう。災害の発生などやむを得ない場合は、不納付加算税を徴収されないことがあります。事前に連絡して納付期限を相談すれば、柔軟に対応してくれる可能性もあります。

4. 所得税預り金を取り扱う際は正確な仕訳が大切

所得税預り金は役員や従業員から徴収し、一時的に預かっている所得税を計上する際に使用します。給与からの差し引きや税務署へ納付した際の仕訳は難しくありませんが、多く所得税を徴収していた場合の仕訳には注意が必要です。すでに税務署に納付しているかそうでないかで仕訳が異なるので、本記事の内容を参考にしながら仕訳してみてください。

なお、納付期限は一般納付か納期特例の承認を受けているかで異なります。いずれにせよ期日を過ぎると延滞税や不納付加算税が課税されるので、納付期限を守るよう心がけましょう。

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