従業員が退職する際に作成しなくてはいけない書類のひとつが「離職証明書」です。
離職証明書は離職票の発行に必要となる書類で、離職票の発行をもって退職した従業員が失業給付の受給手続きを行えるようになります。
従業員がスムーズに手続きを行うためにも、離職証明書を正しく記載しなくてはいけません。今回は、離職証明書の書き方を項目別にそれぞれ詳しく解説します。
社会保険料の支払いは従業員の給与から控除するため、従業員が入退社した際の社会保険の手続きはミスなく対応しなければなりませんが、対象者や申請期限、必要書類など大変複雑で漏れやミスが発生しやすい業務です。
当サイトでは社会保険の手続きをミスや遅滞なく完了させたい方に向け、「社会保険の手続きガイド」を無料配布しております。
ガイドブックでは社会保険の対象者から資格取得・喪失時の手続き方法までを網羅的にわかりやすくまとめているため、「社会保険の手続きに関していつでも確認できるガイドブックが欲しい」という方は、こちらから資料をダウンロードしてご覧ください。
1. 離職証明書の書き方を項目別に紹介
離職証明書は3枚の複写式フォームになっています。1枚目が「事業主控」、2枚目が「安定所提出用」、3枚目が「離職票-2」です。この内、3枚目の用紙を従業員に渡します。離職証明書には記載項目が全部で16項目あり、このうち事業者側で記載する必要があるのは14項目です。残り2項目は退職する従業員に記載してもらいます。次に、項目ごとの書き方を詳しくご説明します。
1-1. ①被保険者番号
退職する従業員の雇用保険被保険者番号を記載します。被保険者番号とは「雇用保険被保険者資格取得等確認通知書」に記載されている11桁の番号の事です。ただし、1981年7月6日以前に雇用保険に加入した場合、 16 桁の被保険者番号が付与されていることがあります。その場合は、下段の10桁の番号と末尾に0を加えた11桁の番号を記載します。
1-2. ②事業所番号
自社の雇用保険事業所番号を記載します。事業所番号は「雇用保険適用事業所設置届事業主控」、従業員の「雇用保険被保険者資格取得届」や「雇用保険被保険者資格喪失届」などで確認ができます。
1-3. ③従業員氏名
退職する従業員の氏名とフリガナを記載します。
1-4. ④離職年月日
「雇用保険被保険者資格喪失届」に記載した退職年月日と同じ日付を記載します。
1-5. ⑤事業所・事業主
事業所の名称・所在地・電話番号、代表者の住所・氏名を記載します。
1-6. ⑥離職者の住所又は居所
退職する従業員の住所、電話番号を記載します。失業給付の手続きは、居住地を管轄するハローワークでしか行えないため、退職時点で従業員から住所変更の申し出などあった際は、変更後の住所で記載します。
1-7. ⑦離職理由
離職理由は全部で19通りありますので、該当する欄にチェックを入れます。離職理由「その他(5)」にチェックした場合は、下欄に具体的な離職理由の記載も必要となります。離職理由によって失業手当の給付日数が変わってきますので、間違いのないよう記載しましょう。
1-8. ⑧被保険者期間算定対象期間
雇用保険に加入していた期間を退職日から1か月ごと遡って、上から順に12か月分を記載します。
1-9. ⑨⑧の期間における賃金支払い基礎日数
⑧に記載した期間のうち、賃金を支払った日数を記載します。月給制の正社員は1か月の暦日数、時給や日給制で働く従業員は実働日数で記載しましょう。退職する従業員が失業給付を受け取るには、退職日以前に基礎日数11日以上の月が最低12か月必要です。
1-10. ⑩賃金支払い対象期間
会社の賃金締め日に基づいて、賃金支払い対象期間を退職日から遡って記載します。たとえば、毎月15日締めである場合は、3月16日~離職日、2月15日~3月15日…のような記載になります。
1-11. ⑪⑩の期間における賃金支払い基礎日数
⑩の期間における、賃金が支払われた日数の記載が必要です。日数の考え方は⑨で解説した通りとなります。基礎日数11日以上の期間が6ヶ月未満である場合は、雇用保険の失業給付を受けとることができません。
1-12. ⑫賃金額
各月ごとに実際に支払われた賃金額を記載します。月給制の場合はA欄に、月給制以外(日給制・時間制)の場合はB欄に金額を記載していきます。
パートやアルバイトのような月給制以外の場合で、通勤手当など月ごとに支給額が決められているものについては、B欄に合算せずにA欄へ分けて記載する必要があります。
1-13. ⑬備考
欠勤や休業手当などの支払いがあった際に、補足事項を記載します。
1-14. ⑭賃金に関する特記事項
毎月支払われる賃金以外で、3か月以内の期間毎に支払っている特別な賃金がある場合は、支給日や名称、金額を記載します。
1-15. ⑮署名捺印
退職する従業員に離職証明書の内容確認してもらい、記載内容に相違がない場合に従業員本人が署名捺印をします。やむを得ない事情で、従業員本人の署名捺印が難しい場合は、その旨を記載して代表者印を押印します。
1-16. ⑯離職者本人の判断
⑦の解雇理由に異議がないかどうかを丸で囲み、⑮と同様に退職する従業員が署名捺印します。ハローワークに離職証明証を提出する前に、署名捺印を済ませておきましょう。
記入しない欄がある場合には、該当枠に斜線を引きましょう。
離職証明書には、会社だけでなく従業員にも記載してもらはなくてはいけない項目がありますので、それぞれ記載漏れがないよう前もって準備をしておく必要があります。
2. 離職証明書を書くときの注意点
ここでは、離職証明書を作成する際に押さえておいた方が良い注意点について解説します。
2-1. 休業手当を支給した場合は備考欄に記載する
昨今はコロナの影響もあり、会社が従業員へ休業手当を支給しているケースも少なくないでしょう。
賃金支払対象期間内に休業手当を支給していた場合は、基礎日数と賃金額に含めた上で、備考欄にも休業手当の支給日数と支払った金額を追記する必要があります。これは、ハローワークで失業給付金を正しく計算する上で必要となりますので、記載漏れが無いよう注意が必要です。
2-2. 退職者が時短勤務だった場合は実際の支給額を記載する
育児や介護などで時短勤務をしていた従業員が退職する場合は、時短勤務開始前の賃金ではなく、実際に支払った賃金を記載します。
これは、実際の賃金支払い実態に基づいて、ハローワークで失業給付の金額を決定するためです。
ただし、倒産や解雇など会社都合で退職する場合は、特例によって時短勤務開始前の賃金日額で算定されます。特例に該当する場合には「雇用保険被保険者短縮措置等適用時賃金証明書」追加で必要となりますので、忘れずに提出しましょう。
3. 離職証明書を提出するまでの流れ
離職証明書には提出期日がありますので、事前にスケジュールを組んで作成するのが望ましいでしょう。最後に、離職証明書を提出するまでの流れについて解説します。
3-1. ①離職証明書を作成する
従業員の退職日を確認して、前述の解説をもとに離職証明書を作成します。
離職証明書は、従業員の退職日の翌々日から起算して10日以内に提出が必要です。提出が遅れてしまうと、従業員が失業給付を受け取れないなど労使トラブルにつながる恐れがありますので、本人が離職票の発行を望んでいない場合を除き、必ず提出期日に間に合うよう作成しましょう。
3-2. ②離職証明書の提出
離職証明書を作成したら、所轄のハローワークに提出します。
離職証明書とは別に、賃金の支払い状況を確認できる書類(賃金台帳やタイムカード)の提出も必要です。
また、離職理由によって、この他にも提出が必要となる書類がありますので、提出前までに事前に確認しておきましょう。
3-3. ③退職した従業員へ離職票を発行する
離職証明書の提出後にハローワークから「離職票-1」と「離職票-2」が送られてきますので、退職した従業員へ2種類とも郵送などの方法で送付します。
離職票がないと、従業員は失業給付の手続きができませんので、ハローワークから届いたら速やかに送付するようにしましょう。
4. 離職証明書の書き方を把握して正しく記載しましょう
離職証明書の記載項目には、会社側だけでなく退職する従業員に署名・捺印してもらう項目もあるため、スケジュールに余裕をもたせて作成することが大切です。
提出期日は退職日の翌々日の10日以内と決められていますので、期日に間に合うよう作成していきましょう。
離職証明書の記載内容によって、退職した従業員が受け取れる失業給付の内容が変わってきますので、各項目に誤りなく記載することが重要となります。
離職証明書を作成する前に、各項目ごとに書き方についてマスターしておきましょう。