離職証明書は従業員が退職する際に作成するものですが、退職証明書とどのような違いがあるのでしょうか。
本記事では、退職証明書との違いとあわせて、離職証明書を用意しなければならない場面や作成時の注意点について詳しく解説します。
離職証明書は必要になる場合とそうでない場合があるため、人事担当者は理解しておきましょう。
社会保険料の支払いは従業員の給与から控除するため、従業員が入退社した際の社会保険の手続きはミスなく対応しなければなりませんが、対象者や申請期限、必要書類など大変複雑で漏れやミスが発生しやすい業務です。
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1. 離職証明書とは?
離職証明書とは、離職したことを証明する書類であり、正式名称は「雇用保険被保険者離職証明書」と呼びます。
離職証明書は、ハローワークで離職票を交付する手続きの際に必要となるものです。離職票は、退職者が失業保険の給付を受けるときに使うため、離職証明書の発行と提出は速やかに行わなければなりません。
期限も決められており、退職日の翌々日から10日以内に所轄のハローワークへ提出する必要があります。
用紙は、「事業主控」「ハローワーク提出用」「離職票-2(退職者に渡す用紙)」で構成されており、3枚1組の複写式です。
専用用紙であるためインターネットからダウンロードができません。そのため、ハローワークに直接取りに行きましょう。
2. 離職証明書が必要な場面
従業員の退職が決まった際、多くのケースで会社は離職証明書を発行するでしょう。しかし、離職証明書は必ず作成する必要がある場合とそうでない場合があります。
2-1. 本人が交付を希望している場合
離職証明書の発行は義務ではありませんが、本人から交付を依頼された場合、発行義務が発生します。
退職後しばらく経ってから交付依頼の連絡が入ることも考えられるでしょう。そのような場合でも、会社は応じなければなりません。
後々手続きを行う手間や、トラブルが起きる可能性を考え、退職前に人事担当者から退職者に「離職票は必要かどうか」を確認しておいた方が良いでしょう。
なお、発行対象は正社員だけではありません。雇用保険に加入していた場合は、パートやアルバイトも対象になります。
雇用保険の加入条件は、31日以上雇用される見込みがあり、週20時間以上労働している場合です。「正社員ではないから」という理由で、離職証明書を交付しないことは違法になるので注意しましょう。
2-2. 退職者の年齢が59歳以上の場合
従業員が59歳以上の場合は、本人の希望にかかわらず、離職証明書を提出する必要があります。なぜ59歳以上なのか、その理由は「高年齢雇用継続給付」と呼ばれる制度があるからです。
2022年現在、60歳時点の賃金が75%未満に低下した60歳以上65歳未満の人は、給付金を受けることができます。そのためには、60歳時点での賃金が証明できる書類を提出しなければなりません。
証明する書類として必要となるのが、離職証明書の3枚目である「離職票-2」なのです。
2-3. 離職証明書を作成しなくても良いケース
59歳未満の従業員が離職票を希望しない場合は、作成しなくても問題ありません。離職票は、多くのケースで失業給付を受ける際に必要なものです。
そのため、退職時に転職先が決まっている人は、失業給付を受け取ることがありませんので、離職票は不要になります。
また、従業員が死亡した場合も離職証明書の提出は必要ありません。ただし、離職証明書提出と同時に行う「雇用保険被保険者資格喪失届」は必要になるため、注意してください。
3. 離職証明書と退職証明書の違い
離職証明書と退職証明書、意味から考えて同じものと思う人もいるかもしれません。しかし、実際2つには大きな違いがあります。
両者の違いとして挙げられるのが、「公文書」か「私文書」かという点です。離職証明書はハローワークに提出し、離職票を交付してもらうための公文書である一方、退職証明書は、会社が作成して退職者に渡す私文書になります。
退職証明書は失業保険の手続きの際に必要となる離職票の代わりにもなるものです。また、転職先から退職証明書の提出を求められることもあるため、退職後に交付を依頼されるケースもあるでしょう。
決まった様式がないため、会社独自のフォーマットで作成して問題ありません。しかし、労働基準法第22条において記載しなければならない項目が定められています。
以下は、退職証明書に記載すべき5つの事項です。
- 使用期間
- 業務の種類
- 事業における地位
- 賃金
- 退職の事由
なお、退職証明書も、本人が希望する場合は作成しなければなりませんが、請求できる期間は退職後2年です。2年を過ぎている場合、発行義務はなくなります。
4. 離職証明書を書くときの注意点
離職証明書作成時に注意すべきことを4つ紹介します。
4-1. 記入内容は正確に
離職証明書に記入する内容は、賃金支払状況や被保険者期間など、失業手当の受給にかかわる重要な情報です。
離職の理由によっては、給付の受給時期や給付日数が変わる可能性もあるため、正確な情報を記入しなければなりません。
また、被保険者番号や事業所番号なども間違えることのないよう注意しましょう。
4-2. 時短勤務の期間がある場合
育児や介護などの理由で時短勤務をしていた従業員の場合、賃金額の記入に注意が必要です。
時短勤務の賃金は、通常勤務時の賃金をもとに支払われていますが、離職証明書に記載する賃金は、実際に支払われていた額を記載しなければなりません。
失業給付金は、離職証明書の賃金支払状況欄から算定されるため、正しく記入することが大切です。
ただし、離職理由が解雇や倒産など会社都合の場合は、通常勤務時の賃金をもとに失業給付金が算定される特例が適用されます。
この特例に該当する場合は、短縮措置等適用時賃金証明書の提出が必要です。
4-3. 休業手当の支払い期間がある場合
在職時、休業手当を支払ったことがある従業員が退職する場合は、休業手当が支払われたことを記入しなければなりません。
基本的な書き方は同じですが、休業手当については日数と支払額を備考欄に記入します。1か月全て休業した場合は、備考欄に「全休業」と記載するだけで問題ありません。
休業手当は、事業主側の都合で休業した際に支払われる手当であり、休職手当とは異なります。
休職をして傷病手当(休職手当)を受給していた場合、その期間会社からの給与支払いはありませんので、備考欄には賃金の支払いがない理由と期間を記入しましょう。
4-4. 退職者が短期雇用特例被保険者の場合
短期雇用特例被保険者とは、季節的に雇用される人で、かつ以下に該当しない従業員を指します。
- 4か月以内の期間を定めて雇用されている
- 1週間の労働時間が30時間に満たない
短期雇用特例被保険者が退職すると、特例一時金が支給されます。離職票の「被保険者期間算定対象期間」は、通常「一般被保険者」のA欄に記入しますが、短期雇用特例被保険者の場合はB欄に記入してください。
5. 離職証明書は必要な場合が多いため事前に準備しておこう
離職証明書とは離職票を交付する際に必要となるものです。本人が希望する場合や、年齢が59歳以上の退職者には発行義務があるものなので、会社は期限内に提出しなければなりません。
離職証明書はハローワークへ提出する公文書であり、退職証明書は会社が独自に作成して本人に渡す書類という違いがあります。
離職票は失業給付で使う重要な書類なので、離職証明書が必要になるケースは多いでしょう。従業員の退職が分かったら、事前に離職証明書を準備し、滞りなく手続きを行うことが大切です。