従業員が退職するとき、会社はさまざまな書類を用意しなければなりません。その中のひとつに「離職票」と「離職証明書」がありますが、どのような違いがあるのでしょうか。
退職に関する手続きは滞りなく行われることが大切です。本記事では、離職票と離職明書の違いについて分かりやすく解説するとともに、離職票発行の流れや離職証明書の書き方についても紹介しています。
社会保険料の支払いは従業員の給与から控除するため、従業員が入退社した際の社会保険の手続きはミスなく対応しなければなりませんが、対象者や申請期限、必要書類など大変複雑で漏れやミスが発生しやすい業務です。
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1. 離職票と離職証明書の違い
離職票と離職証明書の違いを知るために、まずはこの2つがどのようなものなのか確認しましょう。
1-1. 離職票とは会社から退職者に渡す書類
離職票とは、離職したことを証明するための書類です。正式名称は、雇用保険被保険者離職票といい、会社から退職者に渡さなければなりません。
離職票がないと、退職者は失業保険の手続きができなくなるため、速やかに渡す必要があります。従業員の退職日の翌々日から10日以内に離職票発行の手続きを行いましょう。
離職票の発行を行うのはハローワークです。会社はハローワークに「離職証明書」と「雇用保険被保険者資格喪失届」を提出しなければなりません。
3月など退職者が多い時期は、ハローワークが繁忙期であるため、通常より離職票発行に時間がかかる可能性があります。発行手続きはなるべく早く行いましょう。
1-2. 離職証明書とは会社からハローワークへ提出する書類
離職証明書とは、離職票を発行するために会社側が用意する書類です。従業員が退職する場合は離職証明書を準備し、必要事項を記入して退職者本人に署名捺印をもらわなければなりません。
そのため、従業員の退職が分かった段階で早めに準備しておくと良いでしょう。捺印署名まで全て完了したら、ハローワークへ提出します。
離職証明書は、退職者が失業給付を受給するために必要になるものなので、転職先が決まっている場合や、本人が離職票の交付を希望しないときは、離職証明書は必要ありません。
ただし、退職者が59歳以上の場合は、本人の希望にかかわらず離職証明書の提出が必要なため、注意しましょう。
1-3. 離職票と離職証明書は用途が違う
離職票と離職証明書はどちらも「離職を証明するための書類」という点は同じです。
しかし、離職票は退職者が失業保険の手続きの際に必要となるもの、離職証明書は離職票を発行するために会社が準備する書類という違いがあります。
離職票の発行手続きを忘れたり、送付が遅くなったりすると、失業給付に関わるため退職者との間でトラブルが起きる可能性があるかもしれません。
どちらも重要な書類であることを理解し、スムーズに手続きを行うことが大切です。
2. 離職票を発行するときの流れ
離職票発行のために会社が行うことを解説します。
- 離職票が必要かどうか、退職する従業員に確認する(※59歳以上の場合は本人が希望しなくても交付が必要)
- 離職票が必要な場合、離職証明書を用意し、退職する従業員に署名捺印をもらう
- ハローワークに雇用保険被保険者資格喪失届と離職証明書を提出する
- ハローワークから離職票が発行される
以上が、離職票発行までの主な流れです。離職票が会社に届いたら、退職者に郵送しましょう。
離職証明書には本人の署名捺印が必要ですが、すでに退職してしまっている場合などは、その理由を明記し事業主印での提出も認められています。
また、離職証明書と一緒に提出が必要な「雇用保険被保険者資格喪失届」は、従業員が雇用保険の被保険者でなくなったことを届け出るための書類です。
雇用保険被保険者資格喪失届も従業員の退職日の翌々日から10日以内にハローワークに提出する必要があります。
3. 離職証明書の書き方
離職証明書の作成は離職票発行のために必須であることを説明しましたが、実際どのように書けば良いのでしょうか。
ここでは、離職証明書に書く内容を具体的に紹介します。
3-1. 左ページには主に賃金支払いに関する内容を記載
離職証明書は左と右のページに分かれています。以下は、左ページに記載する主な項目です。
- 雇用保険被保険者番号
- 雇用保険事業所番号
- 従業員氏名
- 退職日
- 事業所名、所在地、電話番号、代表者氏名
- 退職者の住所、電話番号
- 被保険者期間算定対象期間(雇用保険に加入していた期間を12か月分記入)
- 賃金支払基礎日数(賃金が発生した日数を記入)
- 賃金支払対象期間(退職日からさかのぼって6か月分記入)
- 賃金額
被保険者番号や事業所番号の記入が必要になるため、記入するときに分からないことがないよう、事前に把握しておきましょう。
また、賃金の支払いに関する項目の記入が多いので、従業員の賃金支払状況についても整理しておく必要があります。
3-2. 右ページには離職理由を記載
離職証明書の右ページには、離職理由がいくつか記載されています。退職者の離職理由に該当するものを選択し、具体的な理由も記入しましょう。
左と右それぞれに、退職者本人の捺印署名欄があります。会社側が記入した後は、退職者に確認してもらい署名してもらいましょう。
3-3. 離職証明書はどこで入手する?
離職証明書の用紙は、インターネット上でダウンロードすることができません。3枚1組になっている複写式の専用用紙があるため、ハローワークで直接入手する方法が一般的です。
所轄のハローワークに問い合わせると、郵送してくれる可能性もあります。
基本的には専用用紙での提出が必須ですが、事前にハローワークで「印刷物による届出の承認申請」を行っている場合は、他の用紙でも提出可能です。
4. 離職証明書の作成における注意点
離職証明書は、離職票を発行するための書類なので、退職者にとって特に重要な書類です。会社は正しく手続きを行い、トラブルを未然に防ぎましょう。
4-1. 離職証明書の提出が遅れると法律違反になる
離職証明書は、従業員の退職日の翌々日から10日以内に提出しなければならないことが雇用保険法で決められています。手続きが遅れると法律違反になるため、離職票は早めに準備して提出するようにしましょう。
違反した場合は、6か月以下の懲役または30万円以下の罰金が科せられる可能性があります。
また、本人から離職票交付の依頼があるのにもかかわらず、会社が拒否をすることはできません。
4-2. 離職理由が自己都合の場合、退職願の添付が必要
離職理由は、大きく分けると「会社都合」と「自己都合」に分けられます。2019年以降、自己都合の場合は本人の退職意思が確認できるものとして、退職願などの書類の添付が必要になりました。
なお、解雇の場合は、解雇通知書が必要です。このように、離職理由によって添付書類が異なる点に注意しましょう。
他にも、賃金支払いの期間や支給額を確認するために、給与明細書や賃金台帳、労働者名簿やタイムカードの添付も必要になります。
離職票を発行してもらうためには、離職証明書以外にも必要な書類がいくつかあることを覚えておきましょう。
5. 離職票と離職証明書の違いを理解して手続きを行おう
離職票は、退職者が失業保険の手続きのためにハローワークに提出する書類です。一方、離職証明書は、離職票発行のために会社側が準備しなければならない書類なので、両者は役割りが異なります。
退職後、失業保険の給付を受ける人もいるため、そのときに必要な離職票は、なるべく早く退職者の手元に届けなければなりません。
離職票が届かないことによるトラブルは多いため、会社は離職票を発行する流れや離職証明書の書き方を理解し、スムーズに手続きを行いましょう。