企業などの組織では、自身の裁量、権限で決められないことは、上層部に提案して承認を得る必要があります。このときに作成する書類を稟議書といいますが、関係者が複数にわたる場合、稟議書を回覧しなければなりません。
本記事では、稟議書を回覧する目的や、効率化の方法について解説します。
目次
稟議書の回覧とは?
稟議書の回覧とは、起案、立案した内容に対する承認を得るために、すべての承認者に稟議書を回すことです。 会議を開いて承認を得る場合、その場で挙手するなどして採決を取ることができますが、起案、立案のたびに会議を開くわけにはいきません。
そこで起案、立案する内容をまとめた稟議書を作成し、関係者に回して閲覧してもらい、承認を得る「稟議」がおこなわれます。
稟議書を回覧すれば、関係者が一堂に会さなくても、必要な人物すべてから承認を受けることが可能です。なお、一通り回覧が終わった後、稟議書は作成者(立案者)のもとに戻され、それをもとに今度は決裁のための決裁書を作成することになります。
稟議書を回覧する目的
稟議書を回覧する目的は、関係者全員から承認を得ることです。社内回覧のルールは企業によって異なります。一般的には、あらかじめ作成された回覧リストに基づき、A氏からB氏へ、B氏からC氏へ、といったように、書類が関係者の間を渡り歩くようなかたちになります。
こうすると、わざわざ作成者が稟議書を片手に関係各所を回る手間がなくなり、本来の業務に集中することが可能です。 また、複数の関係者で稟議書を回覧すれば、内容に誤りはないか、リスクにみあうリターンを期待できるか、取引先や購入物に問題はないか、などを精査することができます。
このように、稟議書の回覧は決裁をスムーズにするためのプロセスともいえます。
稟議書を回覧する際の問題点
稟議書の回覧は意思決定のプロセスに必要不可欠な手続きですが、いくつかの課題や問題点があります。
回覧に時間がかかる
稟議書の回覧で最も問題になるのが、回覧を開始してから終了までに時間がかかってしまうことです。
前述のように、社内回覧は一般的に回覧リストの順に回されるため、誰か一人が外回りや出張などで不在の場合、回覧がストップしてしまうことがあります。 関係者が多ければ回覧が途中で止まってしまう可能性は高くなり、開始から終了まで何日もかかることもあるでしょう。
稟議が通らないと決裁に至らず、必要な設備や備品の導入が遅れたり、契約、取引のチャンスを逃したりする可能性があります。
紛失のリスクがある
紙の稟議書を回覧する際、まれに起こるのが書類の紛失です。承認や決裁の権限を持っている上層部は、稟議書だけでなく、上申書や議事録など、複数の回覧文書を扱っています。
そのため、稟議書が一枚なくなってもなかなか紛失の事実に気づかず、長い間、起案や立案の意思決定プロセスが停滞してしまう可能性があります。
また、稟議書の中には、契約や取引、採用など、外部に漏れたら困る内容や言い方が記載されているものも少なくありません。紛失した稟議書が第三者の目に触れた場合、セキュリティ上の問題が発生するリスクもあります。
進捗を確認しにくい
紙の稟議書は、一度作成者の手元を離れると、再び戻ってくるまで、いつ、誰が保管しているのか把握することができません。
たとえば、5人に稟議書を回している場合、いちいち5人のもとを訪れて、稟議書を回したかどうか確認する必要があります。 そもそも、稟議書を回覧するのは作成者の手間を省くことも理由の一つなので、進捗確認に手間がかかるのは本末転倒といえるかもしれません。
稟議書の保管に手間がかかる
稟議書は、新規契約や取引、購入、購買、採用などが発生するたびに作成されるものです。 企業の規模によっては、一日に何枚もの稟議書が作成、提出されることもあり、そのたびにファイリングしたり、棚に収納したりしなければなりません。
前述の通り、稟議書の中には社外秘の重要な情報が記載されているものもあるため、厳重に保管する必要がありますが、数が増えるほど手間や必要とするスペースも膨大になり、業務の負担となります。
稟議書の回覧を効率化する方法
稟議書を回す際の課題や問題点を踏まえ、よりスムーズに回覧するための方法を3つ紹介します。
1.回覧文書の速やかな閲覧を徹底する
稟議書を回覧する際は、ほかの業務よりも優先して書類を閲覧し、次の人に回すというルールを徹底させることが大切です。 本人が不在中に回ってきた場合はやむを得ませんが、そうでない場合は、忙しい場合でも回覧を後回しにしないよう社内に通達しましょう。
2.不在の場合は飛ばして次に回す
稟議書は回覧漏れを防ぐために、基本はリスト順に回すのが鉄則です。しかし、出張などで本人が不在の場合は、飛ばして次の人に回したり、代理承認者が対応したりできるようにするほうが効率的です。 その場合、承認者のスキップや代理承認などのルールを定め、問題なく稟議が進むようにしましょう。
3.稟議書の回覧を電子化する
紙の稟議書を回すと、遅延や紛失などのリスクが発生しやすいため、一連のプロセスを電子化するという方法もあります。 たとえば、稟議書をPDFファイルとして添付し、メールで回覧するなどです。
稟議書を電子化することで、紙を手渡しする手間を省くことができます。紙のように紛失するリスクが少ないところも利点です。
また、メールの送受信ならオフィス内だけでなく、外回り先や出張先でもおこなうことができます。オフィスにいない場合でも、インターネット環境があればいつでもどこでも稟議書を閲覧、承認できるため、意思決定のプロセスを停滞させずに済みます。
ワークフローシステムの導入
稟議書の回覧をより効率化したい場合は、ワークフローシステムの導入がおすすめです。 ワークフローシステムとは、紙の文書を電子化し、オンライン上で回覧、承認できるようにするシステムのことです。
稟議作成や申請・承認のルートの設定などの機能が搭載されており、一つのシステム上で稟議を完結させることが可能です。 プロセスの進捗状況もリアルタイムに把握できるため、稟議書の作成者も回覧、承認が問題なくおこなわれているかどうか確認しやすくなります。
稟議書の回覧を効率化したいのなら電子化を検討しよう
稟議書を複数の承認者に閲覧してもらうためには、社内で書類を回覧させる必要があります。 ただし、紙の稟議書の場合、回覧に時間がかかったり、書類を紛失したりするリスクがあります。
稟議の回覧を効率化するには、ワークフローシステムなどを活用し、いつでもどこでも手軽に閲覧、承認できる体制を整えることを検討しましょう。