小口現金とは、日々発生する経費をすぐに精算するための仕組みのひとつです。小口現金があれば、経費が発生した際にすぐに精算できたり、不測の事態にも現金支払いが可能です。しかし、会社内で現金を保管するため、横領が発生するリスクも存在します。
この記事では企業の社長や経理担当者に向けて、小口現金の横領の原因や横領を防止する方法について紹介します。ぜひ参考にしてください。
「出金や両替で毎回銀行に行くのがとにかくめんどくさい」
など、小口現金の管理でお悩みではありませんか? とはいえ「小口現金を廃止したいけど、どうすればいいのか、そもそもどのような準備が必要なのか・・・?」など、小口現金の具体的な廃止方法や手順がわからないと疑問を抱えている方も少なくないでしょう。 そのような方にむけて小口現金を無くすための手順を解説したガイドブックを用意いたしました。経費精算をラクにしたいという方は、ぜひダウンロードしてご覧ください。
1.小口現金の横領の手口とは
ここでは小口現金の横領の手口について、小口現金とはそもそも何のためにあるのかという点を踏まえて解説します。
1-1.小口現金とは
小口現金とは、日々発生する経費を精算するために手元で管理される小額の現金を指します。日常で急に発生する交通費や慶弔費、備品購入の経費などに使われます。
小口現金を手元に置く場合には担当者を作り、毎営業日の業務終了後に残高を確認する必要があります。残高の確認だけでなく、小口現金出納帳に支払い内容や支払い額などを書かなければなりません。
そのため、精算作業や残高確認作業などのリソースを割くこととなり、経費精算システムなどを導入している企業も多くあります。
1-2.横領の主な手口
小口現金に関わらず、横領の手口は複数あると言われます。担当者が決まっており、売上金を現金で管理している場合には、少しずつ着服される場合があります。はじめは数千円単位だとしても、回数が重なれば数万円単位に膨らむため、じきに発覚するでしょう。
また会社の口座から個人口座に振り込み、現金を引き出すという方法もあります。書類を作れて、印鑑を使える立場にいるので、周りの人に気付かれずに関係書類を作り、悪用をして現金を引き出されてしまいます。
2.小口現金の横領が起こる原因
小口現金は一見簡単に発覚しそうな犯罪行為です。しかし、それでも横領が発生するのは何故なのでしょうか。
2-1.小口現金を1人で扱う環境にある
中小企業になると、小口現金を管理する担当者は一人である場合が多いでしょう。会社の他の部署が知らないところで、一人で管理し出金をしているため、発覚しにくいというのが最大の原因と言われています。
また、大きな金額であれば罪悪感はより大きくなりますが、小額の場合「少しならいい」と気持ちが揺らぎ、「少額であれば後から返せば大丈夫だ」という心理が働くのも原因のようです。
2-2.社内にチェック体制がない
社内にチェック体制がないことも原因の一つでしょう。仮に管理する人が一人だとしても、チェック体制があれば横領は起こりにくいと言えます。定期的にチェックする環境があれば、すぐに発覚することをあえて行う必要はなく、横領をしてしまう気持ちやきっかけも減ります。横領が大きく膨らんだ時にしか気づけない環境にしている経営者の責任もあるでしょう。
2-3.経営者が経理は悪いことをしないと思っている
経理を担当する人は経営者や役員が信頼をおける人へ任せるケースが多いでしょう。そのために、前提として経理担当が悪いことはしない、という思い込みが働くようです。
経理担当はいわば会社の経費や税金、お金に関するプロと言えるので、どうすれば発覚しないかに関しては他の誰よりも優れています。信頼をしすぎてチェックが甘くなったり、お金の実情を確認しない環境が横領を引き起こしてしまいます。
3.小口現金の横領を防止する方法
小口現金の原因が分かれば横領を防止するための方法も見つかります。具体的にどのような対策があるのでしょうか。
3-1.出金を1人でできない体制にする
出金をする際には、1人でできる環境ではなく、必ず別の誰かが確認をするようにしましょう。経営者や経理部長、担当者同士などでダブルチェックするだけでも大きく違います。誰にも見られない環境ではなく、すぐ近くで見つかる可能性があると思えば、心理的にブレーキをかけられるでしょう。
3-2.小口現金管理者と記帳担当者を分ける
小口現金管理者は通常、記帳担当でもありますが、担当者が同じ場合、帳簿を書き換えられるために、横領の可能性があります。そのため、担当者を分けて配置して、不正作成を防止する方法があります。
仮に横領が発生してしまった場合でも、別の担当者が営業日毎に帳簿の数字と現金が一致しているか確認するので、大きく膨らむ前に気づくことができます。
3-3.定期的に通帳を確認する
経理担当者だけが通帳を確認するのではなく、経営者や別の担当者、管理者が定期的に通帳を確認するような仕組みを作りましょう。不自然な残高になればすぐに気づくことができるため、大きな被害にはなりません。
また、日々確認をされている環境下では、横領を含め犯罪は起きづらくなるでしょう。見られているという自覚があれば、正しい行いをするように心理が働くため、通帳のチェックをしている姿を従業員にわかるように見せましょう。
4.横領防止に有効なのは小口現金の廃止
横領防止に有効な対策をしてリスクを減らせたとしても、ゼロにはできません。また、新しい管理ポシションを作ってしまうと、人材リソースを余計に割くことにもなりかねません。そのため、小口現金自体を廃止してしまうのが横領の可能性をなくす1番の有効な方法です。以下で小口現金をなくすメリットを解説します。
4-1.経理担当者の負担が減る
残高確認と帳簿記入作業は毎日あり、経理担当者の業務はそれだけでも多くあります。毎営業日に現金が合っているかの確認をして、精算をして、領収書の確認をするなど、膨大な時間が割かれています。小口現金をなくせばそれらの時間を別の業務に回すことができるのは大きなメリットと言えます。
4-2.申請者や上司の手間も省ける
小口現金での経費精算をする場合、申請は書類を作り提出します。また、上長への確認をして承認してもらい、その後提出をするといった一連の流れがあるために、本人以外のリソースも割いてしまいます。小口現金を廃止すれば関係者の負担は減り、営業部は営業のことをメインに考えられるため、余計なストレスや心労をなくすことができます。
4-3.現金を紛失するリスク回避につながる
現金をそのまま置いておけば、正しく精算をしていても、現金紛失リスクは免れません。小口現金自体をなくすことで、紛失リスクをなくすことができます。社内に小口現金を保管する必要がなくなれば経理担当の心労も減らすことができ、別の業務へ集中する時間を増やし、作業効率の向上も見込めるでしょう。
5.小口現金を廃止するための方法
小口現金を廃止する場合には、代わりの方法としてどのようなものがあるのでしょうか。主な方法を下記していきます。
5-1.経費精算を月に1回にする
経費が発生するたびに精算するのではなく、精算の頻度を月に1回にする方法があります。この場合には、給与と一緒に振り込むケースが多いでしょう。
小口現金の場合は、営業で電車やタクシーを使った場合に、領収書を経理担当者へ渡して都度精算をします。この一連の作業は大きく変わりませんが、精算の頻度を都度精算ではなく、月に1回にまとめるという方法です。また、会社によっては、経費申請も月に1回でまとめて行う場合もあります。
5-2.法人カードを作成する
法人カードを作成して、できる限りクレジットカード決済をしてもらうような仕組みにする方法もあります。現金のやり取りをなくせるため、消失や盗難、横領リスクをなくすことができます。全員が法人カードを使うのではなく、出張営業が多い担当のみが法人カードを使うといった基準を設け配布する方法もあります。
5-3.取引業者への支払いは口座振替を利用する
取引業者への支払いは口座振替を利用して、現金でのやり取りをできる限り減らす方法もあります。口座振替へ切り替える際には、時間がかかったり、切り替え完了までの間現金でのやり取りになったりしますが、切り替え自体には大きく手間がかかりません。毎度来てもらう、対応をするといった人的リソースの節約にもつながります。
5-4.経費精算システムを導入する
経費精算システムは小口現金を廃止するのに大きく役立ってくれるでしょう。今まで経理が手動で行っていた業務をシステムで一元管理でき、現金も使わずデータでの管理が可能です。交通系ICカードやクレジットカードとの連携機能などもあり、現場での経費が発生した際に申請をする必要もないために、営業マンも経理担当者も負担を軽減できます。システムごとに機能が異なり、何が欲しいのかを吟味した上で選ぶ必要があるため注意しましょう。
ここまでで小口現金をなくす手段として法人カードや経費精算システムなどを選択肢として紹介してきましたが、導入するとはいってもどんな準備が必要なのか、またどんな手順で法人カードや経費精算システムを選べばいいのかわからないご担当者の方もいらっしゃるでしょう。そのような方に向けて、小口現金の廃止方法から導入の手順まで網羅的に解説した「目的別!小口現金廃止を実現するためのガイドブック」を無料で配布しております。気になる方はこちらからダウンロードしてご覧ください。
6.まとめ
小口現金の横領は、発覚しにくい環境が生み出している事故かもしれません。すぐに資金管理方法を変えることは難しくても、大きな事故につながる前に改善しておくのが良いでしょう。
また、経費精算システムを導入して小口現金を廃止すれば、経理担当者や営業部、上長の業務負担まで減らせます。感覚的に操作できるシステムもあるため、検討してみてください。