パートタイム・有期雇用労働法改正におけるポイントは、不合理な待遇差の禁止や労働者の待遇に関する説明義務の強化などです。
なかには「改正により変更されたことを詳しく知りたい」、「対応は何をすれば良いのか?」など悩む方も多いでしょう。
本記事では、パートタイム・有期雇用労働法改正におけるポイントやメリット、企業側の対応をわかりやすく解説します。最後まで読むと改正後のポイントや、改正にともない企業が取るべき対応などを把握できるでしょう。
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同一労働同一賃金とは、「正社員と非正規社員を平等に扱う概念」のように認識されていても、具体的にどのような対策が必要かわからない方も多いのではないでしょうか?
本資料では、どのような状態が「不平等」とみなされうるのかや、企業が対応すべきことを4つの手順に分けて解説しております。
自社でどのような対応が必要か確認したい方は、こちらから資料をダウンロードしてご覧ください。
目次
1. パートタイム・有期雇用労働法とは
2020年に施行された「パートタイム・有期雇用労働法」は、正社員と非正規社員との待遇差を禁止する法律です。正社員やパートタイム労働者などの雇用形態にかかわらず、納得して働ける環境を作るために制定されました。
待遇差の禁止とは、例えば「正社員とパートタイム労働者が同一の業務内容であれば、賃金も同じように支給しなければいけない」と定めたものです。
「パートタイム・有期雇用労働法」の先駆けは、1993年に施行された「パートタイム労働法」です。「パートタイム労働法」が施行されてから数回の改正を経て、「パートタイム・有期雇用労働法」が施行されました。
2020年4月から大企業が対象になり、2021年4月から中小企業も対象になっています。
「パートタイム・有期雇用労働法」の対象は、以下のとおりです。
パートタイム労働者 |
同じ事業主に雇用される通常の労働者と比べ、1週間の所定労働時間が短い労働者 |
有期雇用労働者 |
事業主と3年など期間を定めて労働契約している労働者 |
2. パートタイム・有期雇用労働法の改正による3つのポイント
「パートタイム・有期雇用労働法」の改正によるポイントは、以下の3つです。
- 不合理な待遇差の禁止(同一労働同一賃金)
- 労働者の待遇に関する説明義務の強化
- 裁判外紛争解決手続(行政ADR)の整備
2-1. 不合理な待遇差の禁止(同一労働同一賃金)
法改正により、基本給や賞与などにおける不合理な待遇差が禁止されました。
「同一労働同一賃金」とは、雇用形態にかかわらず、同じ業務内容であれば同じように賃金を支給する考え方です。正社員と非正規社員との不合理な待遇を禁止するため、以前から取り組まれてきました。
具体的に待遇の差が禁止されるものは、以下のとおりです。
- 基本給
- 賞与
- 通勤手当
- 皆勤手当
- 福利厚生
- 教育訓練
また、不合理な待遇差をなくすための判断基準に、「均衡待遇」と「均等待遇」が設けられました。
均衡待遇 |
職務内容、職務内容・配置の変更範囲、その他の事情を考慮し不合理な待遇差を禁止する |
均等待遇 |
職務内容、職務内容・配置の変更範囲が同一の場合は、差別的な取り扱いを禁止する |
例えば、「均衡待遇」は同一の業務内容であれば同一の待遇をすることです。「均等待遇」は、業務内容が異なる場合は、違いに応じて合理的な格差が生じることを指します。
2-2. 労働者の待遇に関する説明義務の強化
事業主はパートタイム労働者と有期雇用労働者に、雇用管理の改善内容を説明する必要があります。
また、パートタイム労働者や有期雇用労働者は、待遇差の内容や理由の説明を事業主に求められるようになりました。説明が求められた場合には、事業主は待遇差に関して説明する必要があります。
事業主は説明を求めた従業員に対し、解雇などの不利益な対応をしてはいけません。
2-3. 裁判外紛争解決手続(行政ADR)の整備
行政ADRとは、労働者と事業主の紛争を裁判以外の方法で解決するための手続きです。労働者と事業主でトラブルが生じた際には、都道府県労働局が解決の援助をおこなってくれます。
援助の仕組みは以下のとおりです。
- 都道府県労働局長による紛争解決の援助
- 均衡待遇調停会議による調停
これまでもパートタイム労働者や派遣労働者に対しては、行政による助言、指導などの規定がありました。法改正後には、有期雇用者にも適用されるように整備がおこなわれます。
3. パートタイム・有期雇用労働法の3つのメリット
企業における「パートタイム・有期雇用労働法」のメリットは、以下の3つです。
- 非正規雇用者のモチベーション向上
- 社内全体の生産性向上
- 人材の確保
3-1. 非正規雇用者のモチベーション向上
パートタイム・有期雇用労働法により、非正規雇用者の業務に対するモチベーションの向上が期待できます。
例えば、以下のような待遇差がなくなることで労働環境が改善され、従業員の意欲が増進させられるでしょう。
- 昇給の機会が与えられる
- 能力が公平に評価される
能力と評価が見合っていなければ、モチベーションが下がりやすいです。しかし雇用形態にかかわらず能力が認められることで、非正規社員の仕事に対する意欲が向上します。
労働環境が改善されモチベーションが上がると、業務の質や効率が上がるため仕事を円滑に進められる可能性が高いです。高い集中力でスピーディーに業務を進められ、パフォーマンス力の向上も期待できるでしょう。
新しいことに挑戦する意欲や協調性が生まれ、職場の雰囲気が良くなり、離職の防止にもつながります。
3-2. 社内全体の生産性向上
パートタイム・有期雇用労働法により、社内全体の生産性向上につながります。
生産性向上につながる理由は、以下のとおりです。
- 適切な教育でスキルや知識を習得できるため
- 能力の持つ人を活躍させられるため
パートタイム労働者や有期雇用労働者にも適切な教育を受けさせられるため、業務上必要なスキルや知識が習得可能です。
また、待遇差がなくなれば、正社員などの雇用形態に関係なく、能力を持つ人が活躍できるようになります。業務内容が同一であっても、雇用形態によって能力のある人が活躍できない環境の場合は、企業自体も発展できません。
「パートタイム・有期雇用労働法」が施行されたことにより、能力のある人材が活躍できると、企業の成長にもつながるでしょう。
3-3. 人材の確保
雇用形態による待遇差が禁止されれば、以下が可能です。
- スムーズに優秀な人材を確保する
- 優秀な人材の離職を防止する
正社員と非正規社員の待遇差がなくなると、企業もパートタイム労働者の雇用機会を増やしやすく、迅速な人材の確保が可能です。社内環境が改善されると、採用の際にも優秀な人材が集まりやすくなるでしょう。
また、従業員の評価に公平性が保たれていることにより、優秀な人材の離職を防げます。
4. パートタイム・有期雇用労働法において企業が実施すべき対応
「パートタイム・有期雇用労働法」における企業の実施すべき対応は、以下のとおりです。
- 労働者の雇用形態や待遇の確認
- 待遇差の解消
- 就業規則の変更
- 待遇に関する説明や対応の検討
4-1. 労働者の雇用形態や待遇の確認
まず現状における労働者の雇用形態や待遇をチェックします。
以下を基準に、「パートタイム・有期雇用労働法」が適用される労働者の有無を確認してください。
- 通常の労働者と比べ、1週間の所定労働時間が短い労働者がいるか
- 期間を定めて労働契約しているか
簡単にリストを作成し対象者をまとめるといいでしょう。また、正社員と非正規社員を比較して待遇差があるか否かも確認しておきます。
4-2. 待遇差の解消
以下のように正社員と非正規社員の間に待遇差がある場合は、改善しなければいけません。
- 同じ仕事内容にもかかわらず、正社員と非正規社員で賃金が異なる
- 会社の業績などに対する労働者の貢献に応じて賞与を支給する場合、正社員と同一の貢献をしている非正規社員に同一の支給をしない
- 正社員と同一の役職名で同一の内容の役職に就いている非正規社員に、正社員と同一の役職手当を支給しない
待遇差を解消する上では、非正規社員の賃金を引き上げなければいけない場合もあります。賃金を上げる場合は人件費が増加するため、費用の面でも検討が必要です。
また、均等待遇か均衡待遇かも確認する必要があります。均衡待遇に該当する労働者がいる場合は、不合理な待遇差を解消しましょう。
4-3. 就業規則の変更
待遇差を解消する過程で、就業規則を変更しなければいけない場合もあります。
以下に注意して就業規則を作成しましょう。
- 「同一労働同一賃金」の考え方を踏まえているか
- 無期転換ルールを記載しているか
就業規則は、「同一労働同一賃金」の考え方に基づき作成しているか否かを、確認する必要があります。
また、無期転換ルールにも注意してください。無期転換ルールは、有期労働契約が更新され通算5年を超えた場合に、従業員の希望があれば無期雇用契約に転換できるルールです。
無期雇用契約に転換後は、有期労働契約で定められていた労働条件が引き継がれるため、注意する必要があります。
4-4. 待遇に関する説明や対応の検討
事業主は、パートタイム労働者や有期雇用労働者に、待遇差の内容や理由の説明を求められた場合には説明する義務があります。求められた際に説明できるように、前もって準備しておかなければいけません。
対応方法を担当者で検討した上で共有しておくと、実際に求めがあった場合にもスムーズに説明できるでしょう。
参照:不合理な待遇差解消のための点検・検討マニュアル|厚生労働省
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