パートタイム・有期雇用労働法が2021年4月1日に改正施行され、雇用形態における待遇差をなくすことを定めています。
しかし、「違反をした際に罰則はあるのか」「どのような対策をおこなえば良いのか」などと悩む方も多いでしょう。
本記事ではパートタイム・有期雇用労働法違反による罰則や種類についてわかりやすく解説します。また、企業が取り組むべき対策についても合わせて紹介するので、ぜひ最後まで読んで参考にしてください。
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本資料では、どのような状態が「不平等」とみなされうるのかや、企業が対応すべきことを4つの手順に分けて解説しております。
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目次
1. パートタイム・有期雇用労働法における罰則とは?
パートタイム・有期雇用労働法(短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律)における罰則の対象は下記の2つです。
- 雇い入れ時に労働条件を明示しない(第6条第1項)
- 助言や指導などに対して報告拒否、または虚偽の報告をする(第18条第1項)
なお、2021年4月に雇用形態における待遇差をなくすために全面施行された「同一労働同一賃金ガイドライン」には罰則がありません。ただ、違反した状態が続くと助言・指導・勧告の実施や労働者からの訴訟のリスクがあるため、注意する必要があります。
パートタイム・有期雇用労働法における罰則の対象と内容について詳しく解説します。
参照:短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律 | e-Gov法令検索
1-1. 雇い入れ時に労働条件を明示しない(第6条第1項)
雇い入れ時に労働条件を明示しないと10万円以下の過料の対象となります。
労働基準法では下記の労働条件の明示が義務付けられています。違反の場合は30万円以下の罰金の対象です。
- 契約期間
- 仕事をする場所と仕事の内容
- 始業・終業の時刻や所定時間外労働の有無、休憩・休日・休暇
- 賃金
- 退職に関する事項
パートタイム・有期雇用労働法の第6条第1項で事業主は雇い入れ時に労働条件の明示が義務付けられています。
労働条件は下記のとおりです。
- 昇給の有無
- 退職手当の有無
- 賞与の有無
労働条件は雇い入れ時だけではなく、契約更新時も明示する必要があります。
違反し、行政指導を受けても改善がない場合、第30条によりパートタイム・有期労働者1人につき10万円以下の過料対象となります。
2024年4月からは労働条件明示ルールの変更がありました。これにより新たに追加された事項があるため、注意しましょう。もし明示できていなかった場合、行政指導の対象となるかもしれません。当サイトでは、このような明示ルールの変更点や雇用契約に関するよくある質問をまとめた資料を用意しております。雇用契約の基本を再確認したい方にもおすすめですので、興味のある方はこちらからダウンロードしてご確認ください。
参照:短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律|e-GOV法令検索
1-2. 助言や指導などに対して報告拒否、または虚偽の報告をする(第18条第1項)
労働者の雇用管理の改善のための助言や指導などに対して報告をしない、または虚偽の報告をした場合は20万円以下の過料の対象です。
パートタイム・有期雇用労働法の第18条第1項では下記の内容が定められています。
厚生労働大臣は、短時間・有期雇用労働者の雇用管理の改善等を図るため必要があると認めるときは、短時間・有期雇用労働者を雇用する事業主に対して、報告を求め、又は助言、指導若しくは勧告をすることができる。
第30条により、上記の規定による報告をしない、または虚偽の報告をした場合は20万円以下の過料の対象です。
2. パートタイム・有期雇用労働法における罰則の種類
パートタイム・有期雇用労働法の罰則の種類は過料のみです。過料は聞きなれない言葉なので、意味がわからない方も多いのではないでしょうか。
ここでは過料についてとほかの罰則との違いを解説します。
2-1. 過料
パートタイム・有期雇用労働法の過料は秩序罰で義務違反に対して科される罰則です。
過料は下記の3つに分類されます。
秩序罰 |
法律秩序を守るために科される |
執行罰 |
期限内に義務をおこなわない場合に科される |
懲戒罰 |
公務員など一定の職業のものが法令に違反した際に科される |
いずれの過料も犯罪ではないので、前科はつきません。
また、過料は弁明する機会を与えられ、弁明の内容によっては過料を支払わなくてよいこともあります。
2-2. 過料と科料・罰金・反則金の違い
過料とほかの罰則である、科料・罰金・反則金の違いを表にまとめました。
科料 |
重大な義務違反に対して科せられる 1,000円以上1万円未満 |
罰金 |
重大な義務違反に対して科せられる 1万円以上 |
反則金 |
交通違反をした場合に科せられる |
科料と罰金は重大な義務違反に対して科される罰則で、どちらも犯罪のため前科が付きます。科料と罰金の違いは金額のみです。
前科が付くと就業規定によっては懲戒解雇の理由になったり、刑事裁判で不利になったりとさまざまな不利益を受ける可能性があります。
また、過料と科料は読み方が一緒のため、過料を「あやまちりょう」、科料を「とがりょう」とそれぞれ読み分けることが可能です。
反則金は罰金ではなく、前科はつきません。しかし、反則金を納付せずに出頭要請を無視し続けると罰金が科され、前科が付きます。
3. パートタイム・有期雇用労働法の罰則に違反しないための対策
本章ではパートタイム・有期雇用労働法で定められている罰則に違反しないために、以下の3つの対策を紹介します。
- 雇い入れ時に労働条件を明示する
- 行政指導に対して報告をする
- そのほかにできること
それぞれ詳しく解説します。
3-1. 【対策1】雇い入れ時に労働条件を明示する
雇い入れ時に明示すべき労働条件は法令で定められています。
労働基準法とパートタイム・有期雇用労働法に定められている労働条件を表にまとめました。
労働基準法 |
・契約期間 ・仕事をする場所と仕事の内容 ・始業・終業の時刻や所定時間外労働の有無、休憩・休日・休暇 ・賃金 ・退職に関する事項 |
パートタイム・有期雇用労働法 |
・昇給の有無 ・退職手当の有無 ・賞与の有無 |
明示すべき労働条件をしっかりと確認し、漏れずに明記しましょう。
もし、この条件が明記されておらず違反した場合、行政指導があります。行政指導を受けた際はすぐに改善に努めましょう。
参照:短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律|e-GOV法令検索
3-2. 【対策2】行政指導に対して報告をする
行政指導に対して改善し、しっかりと対応できていれば罰則に処されることはありません。
行政指導は罰則ではなく、指導です。指導を受けても改善が認められなかった場合、罰則の処置がなされます。
虚偽の報告や報告の拒否をせずに、指導に従って改善できれば、過料まで科される心配はないでしょう。
参照:短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管Hey理の改善等に関する法律|e-GOV法令検索
3-3. 【対策3】そのほかにできること
罰則がないパートタイム・有期雇用労働法に定められた規則に違反しても罰則はありません。しかし、違反した状態が続くと行政指導や労働者からの訴訟のリスクがあります。
助言や指導に対しての報告拒否や虚偽報告は過料、勧告に従わない場合は事業主が公表される恐れがあるため、改善に努めましょう。事業主が公表されれば、企業イメージが低下することも考えられます。
また、同一労働同一賃金のガイドラインに違反すると、労働者から訴訟されるリスクがあります。訴訟に至らずとも従業員の不満が溜まったり、人材流出のリスクも発生したりするでしょう。
そのため、雇用形態における待遇差がある場合は、下記の手順で対策をおこなうようにしてください。
- 雇用形態を確認する
- 待遇の状況を確認する
- 待遇差の理由を確認する
- 待遇差の理由が不合理でないと説明できるように整理する
- 違反が疑われる場合は改善を検討する
- 改善計画を立てて取り組む
パートタイム・有期雇用労働法に定められた規定を理解し、違反のないように会社の整備をおこなうことが重要です。
参照:パートタイム・有期雇用労働法対応のための取組手順書|厚生労働省
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