パートタイム・有期雇用労働法 第8条とは?条文をわかりやすく解説 |HR NOTE

パートタイム・有期雇用労働法 第8条とは?条文をわかりやすく解説 |HR NOTE

パートタイム・有期雇用労働法 第8条とは?条文をわかりやすく解説

LABORLAWと書かれたモチーフ

パートタイム・有期雇用労働法第8条は、正社員と非正社員の不合理な待遇差を禁止した条文です。

パートタイム労働者や有期雇用労働者を雇っている場合、意図せず不合理な待遇差を設けているかもしれません。不合理な待遇差を設けたままにしていると、損害賠償責任に問われる可能性もあります。

パートタイム・有期雇用労働法8条に違反していないか不安を感じる方もいるでしょう。

本記事では、パートタイム・有期雇用労働法第8条のポイントや、違反しない対策についてわかりやすく解説します。パートタイム・有期雇用労働法第8条の理解を深めたい経理・労務担当の方はぜひ最後までご覧ください。

1. パートタイム・有期雇用労働法第8条の3つのポイント

弁護士に相談する人

パートタイム・有期雇用労働法第8条は、正社員とパートタイム労働者・有期雇用労働者の間に不合理な待遇差を設けることを禁止した条文です。均衡待遇規定とよばれることもあります。

正社員とパートタイム・有期雇用労働者が、以下の3つにおいて同等であることを考慮しなければいけません。

  1. 職務内容
  2. 職務内容・配置の変更の範囲
  3. その他の事情

それぞれのポイントについて詳しく解説していきます。

1-1. 職務内容

職務内容は、業務の内容および責任の程度を指します。職務内容が同じか否かについては、次の項目をもとに判断していきましょう。

比較する項目

比較する内容・具体例

職種

販売職・事務職・営業職など継続しておこなう仕事

中核業務

与えられた職務に伴う業務の中で、職務に不可欠な代表する中核的業務

責任の程度

以下の3つより総合的に判断

・与えられている権限の範囲業務の成果について求められている役割

・トラブル発生時や緊急時に求められる対応の程度

・ノルマなどの成果に対する期待度

1-2. 職務内容・配置変更の範囲

職務内容・配置変更の範囲は、人材活用の仕組みや運用などを指します。職務内容・配置変更の範囲が同じか否かについては、次の項目をもとに判断していきましょう。

比較する項目

比較する内容・具体例

転勤の有無

転勤する可能性があるか

転勤の範囲

エリア限定・全国転勤など

職務内容・配置の変更の有無

別の課や部署に異動する可能性があるかなど

職務内容・配置の変更の範囲

事務職から営業職に変更する可能性があるかなど

1-3. その他の事情

職務内容や人材活用の仕組みだけではなく、その他の事情も考慮した上で待遇差が不合理ではないか判断する必要があります。その他の事情とは、職務の成果・能力・経験・事業主と労働組合との交渉の経緯などです。

定年後に労働者を再雇用する会社は少なくありません。定年後も正社員と同じレベルで働いているにもかかわらず、給与や賞与などの賃金が正社員より低い場合、第8条に違反する恐れがあります。

定年後に再雇用された労働者の待遇は、上記に挙げたその他の事情をもとに総合的に判断しなければいけません。

参照:法律のポイント|正社員との不合理な待遇差の解消 (mhlw.go.jp)|厚生労働省

参照:パートタイム労働法の概要パートタイム労働法の概要 (mhlw.go.jp)|厚生労働省

2. パートタイム・有期雇用労働法第8条と第9条の違い

2つのモチーフの違い

パートタイム・有期雇用労働法第8条では、正社員と非正社員の間で不合理な待遇差を禁止しています。同一労働・同一賃金といわれる考えに基づいたものです。

同一労働・同一賃金に関しては、パートタイム・有期雇用労働法第9条でも示されています。

パートタイム・有期雇用労働法第8条と第9条の違いは以下の通りです。

パートタイム・有期雇用労働法第8条

パートタイム・有期雇用労働法第9条

均衡待遇規定

均等待遇規定

不合理な待遇差の禁止

差別的取扱いの禁止

第8条の均衡待遇規定は、職務内容や配置変更の範囲などを考慮し、正社員と非正社員の間で不合理な待遇差を設けてはいけないものです。条件が異なる場合に限り、違いに対して釣り合いのとれた待遇差であれば認められます。

一方、第9条の均等待遇規定は、職務内容が同じ正社員と非正社員の待遇に差をつけるなどの差別的取扱いをしてはいけないものです。条件が同じであれば、いかなる場合も同じ待遇しか認められません。

参照:法律のポイント|正社員との不合理な待遇差の解消 (mhlw.go.jp)|厚生労働省

3. パートタイム・有期雇用労働法第8条の不合理な待遇差4つの例

EXAMPLESが拡大された虫眼鏡

パートタイム・有期雇用労働法第8条において、どのような待遇差が不合理とみなされるのか、同一労働・同一賃金のガイドラインに基づいて解説します。具体的には、以下の4点で待遇差がないよう記されています。

  1. 基本給
  2. 賞与
  3. 各種手当
  4. 福利厚生・教育訓練

基本給や賞与などの賃金だけではなく、福利厚生や教育訓練についても記載されているので注意が必要です。では、それぞれについて見ていきましょう。

3-1. 基本給

基本給は、以下の3つにおいて同一であれば同一の支給が求められます。

  • 労働者の能力または経験
  • 労働者の業績または成果
  • 労働者の勤続年数

正社員と同じ仕事をしているにもかかわらず、非正社員という理由だけで基本給に格差がある場合は不合理な待遇差となります。

しかし、賃金を決定する基準やルールに違いがある場合は例外です。

役割期待が異なるなど、主観的な理由では合理性があるルールとはみなされません。職務内容・配置の変更範囲・その他の事情などを考慮した、合理性のあるルールであることが前提となります。

3-2. 賞与

賞与は、会社の業績へ貢献したことに応じて支給されます。同一の貢献であれば同一の賞与を支払わなければいけません。

会社の業績への貢献度が同じであるにもかかわらず、正社員のみ賞与を支給し、非正社員には賞与を支給しない場合は不合理な待遇差になります。

3-3. 各種手当

役職の内容に対して支給される手当は、同一の内容の役職であれば同一の支給をおこなわなければいけません。

各種手当には以下のようなものが挙げられます。

特殊作業手当

同一の危険度・作業環境の場合

特殊勤務手当

同一の勤務形態の場合(交代勤務制など)

深夜・休日労働手当の割増率

深夜・休日労働をおこなった場合

食事手当

労働時間の途中に、食事をするための休憩時間を設ける場合

地域手当

特定の地域に働く労働者に補償として支給する場合

同じ役職で働く正社員と非正社員には、必ず同等の手当を支給するようにしましょう。一部減額などでも違反となります。

3-4. 福利厚生・教育訓練

福利厚生や教育訓練も、不合理な待遇差の対象となります。

厚生労働省の同一労働同一賃金ガイドラインに示されている福利厚生・教育訓練をいくつかご紹介しましょう。

  • 食堂・更衣室・休憩室など福利厚生施設の利用
  • 転勤者用社宅(ただし、転勤の有無などの条件が同一の場合)
  • 有給休暇など勤続期間に応じて認められるもの
  • 病気休職
  • 慶弔休暇
  • 健康診断に伴う勤務免除
  • 職務に必要な技能・知識を習得するための教育訓練

正社員が利用できる福利厚生・教育訓練は、非正社員に対しても平等に利用を認めなければいけません。

例えば、狭いという理由だけで食堂や更衣室を正社員のみ利用可能にすることは、不合理な待遇差に該当します。

参照:同一労働同一賃金ガイドライン|厚生労働省

4. パートタイム・有期雇用労働法第8条に違反しないための3つの対策

電球を持つ手

パートタイム・有期雇用労働法8条に違反しないための対策は以下の3つです。

  1. パートタイム労働者・有期雇用労働者を雇用しているか確認する
  2. 労働者の待遇を確認する
  3. 異なる待遇の理由を確認する

それぞれ解説していきましょう。

4-1. パートタイム労働者・有期雇用労働者を雇用しているか確認する

まず、会社内でパートタイム労働者・有期雇用労働者を雇用しているか否か、雇用形態を確認する必要があります。

パートタイム労働者と有期雇用労働者の定義は以下の通りです。

パートタイム労働者

一週間の所定労働時間が、同じ事業主に雇用される通常の労働者に比べて短い労働者のこと

有期雇用労働者

事業主と期間の定めのある労働契約を締結している労働者のこと

会社内に該当する労働者がいない場合は、ほかにチェックする必要はありません。

4-2. 労働者の待遇を確認する

会社内でパートタイム労働者・有期雇用労働者を雇っている場合、労働者の待遇を洗い出してみましょう。賃金や賞与だけではなく、各種手当や福利厚生・教育訓練についても確認が必要です。

4-3. 異なる待遇の理由を確認する

正社員と非正社員の待遇差が異なる場合、その理由をしっかり説明できるか確認してみましょう。

労働者の職務内容・責任の範囲・配置変更の有無などを考慮したうえで、合理的な理由があれば問題ありません。万が一、不合理な待遇差を発見した場合は直ちに改善が必要となります。

待遇差改善に向けて賃金や人事制度の見直しが必要となった場合、社会保険労務士など専門家の力を借りることも検討してみましょう。

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