みなし労働時間制とは?裁量労働制との違いや導入している会社の特徴を紹介 |HR NOTE

みなし労働時間制とは?裁量労働制との違いや導入している会社の特徴を紹介 |HR NOTE

みなし労働時間制とは?裁量労働制との違いや導入している会社の特徴を紹介

  • 労務
  • 勤怠管理

みなし労働時間制は、従業員が実際に働いた時間にかかわらず、あらかじめ取り決めた労働時間を働いたとみなすことができる制度です。みなし労働時間制には裁量労働制と事業場外みなし労働時間制があります。それぞれの制度の違いや、みなし労働時間制に適した会社を解説します。

事業所の外で仕事をする必要がある職種や、専門的な知識やスキルがある特定の職種で仕事の進め方を従業員に委ねたほうがよい場合、「みなし労働時間制」を導入することができます。

1. みなし労働時間制とは?

みなし労働時間制は、従業員の実労働時間にかかわらず、あらかじめ労使協定で取り決めた時間を働いたとみなすことができる労働時間制度です。

みなし労働時間制には、事業場外みなし労働時間制、専門業務型裁量労働制、企画業務型裁量労働制の3種類があります。厚生労働省によると、それぞれの導入率は次の通りです。

種類 導入率
事業所外みなし労働時間制 11.4%
専門業務型裁量労働制 2.0%
企画業務型裁量労働制 0.4%

[注1]令和3年就労条件総合調査|厚生労働省

1-1. 事業場外みなし労働時間制

事業場外みなし労働時間制とは、事業場の外で業務を遂行し、実労働時間を把握することが難しい従業員に適用できる制度です。[注2]

労働基準法第38条の2による事業場外労働のみなし労働時間制とは、労働者が業務の全部又は一部を事業場外で従事し、使用者の指揮監督が及ばないために、当該業務に係る労働時間の算定が困難な場合に、使用者のその労働時間に係る算定義務を免除し、その事業場外労働については「特定の時間」を労働したとみなすことのできる制度です。

引用:「事業場外労働に関するみなし労働時間制」の適正な運用のために|東京労働局

例えば、外回りの営業がメインの従業員や、出張や客先での仕事が多い従業員の場合、実労働時間を正確に計算するのが難しくなります。

その場合、労働基準法第38条の2の定めにより、事業場外みなし労働時間制を適用することができます。労働基準法上の実労働時間の算定義務が免除されるため、業務効率化につながります。ただし、以下の条件にあてはまる場合、事業場外みなし労働時間制を適用することができません。

例えば、テレワークやリモートワークなど、事業場の外で働く従業員とコミュニケーションツールで連絡をとりあう場合、事業場外みなし労働時間制の対象外となります。

何人かのグループで事業場外労働に従事する場合で、そのメンバーの中に労働時間の管理をする者がいる場合
無線やポケットベル等によって随時使用者の指示を受けながら事業場外で労働している場合
事業場において、訪問先、帰社時刻等当日の業務の具体的指示を受けた後、事業場外で指示どおりに業務に従事し、その後、事業場に戻る場合

引用:「事業場外労働に関するみなし労働時間制」の適正な運用のために|東京労働局

1-2. 専門業務型裁量労働制

専門業務型裁量労働制は、厚生労働省令で定められた19の専門業務を対象としたみなし労働時間制です。弁護士や主として研究に従事する大学教員、ソフトウェア開発者など、一部の職種では企業が仕事の進め方を指示するのではなく、従業員自身の裁量に委ねたほうがよい場合があります。

その場合、労働基準法第38条の3により、専門業務型裁量労働制を適用することができます。[注2]

対象となる職種は以下の東京労働局のサイトからご確認ください。

対象業務以外は専門業務型裁量労働制を適用することができず、適用していた場合は違法となるため、注意しましょう。

[注2]専門業務型裁量労働制の適正な導入のために|東京労働局

1-3. 企画業務型裁量労働制

企画業務型裁量労働制とは、事業運営にかかわる業務や、企画・調査分析にかかわる業務など、厚生労働省令で定められた企画業務に適用される制度です。厚生労働省によると、企画業務型裁量労働制は以下の4つの条件をすべて満たす場合に利用することができます。[注3]

  1. 事業の運営に関する事項(対象事業所の属する企業・対象事業所に係る事業の運営に影響を及ぼす事項)についての業務であること
  2. 企画、立案、調査及び分析の業務(企画、立案、調査及び分析という相互に関連し合う作業を組み合わせて行うことを内容とする業務であって、部署が所掌する業務ではなく、個々の労働者が担当する業務)であること
  3. 当該業務の性質上これを適切に遂行するにはその遂行の方法を大幅に労働者の裁量員にゆだねる必要がある業務であること
  4. 当該業務の遂行の手段及び時間配分の決定等に関し使用者が具体的な指示をしないこととする業務であること

[注3]「企画業務型裁量労働制」の適正な導入のために|東京労働局

2. みなし労働時間制と裁量労働時間制との違い

みなし労働時間制は、事業場外みなし労働時間制(労働基準法第38条の2)、専門業務型裁量労働制(第38条の3)、企画業務型裁量労働制(第38条の4)の3つの労働時間制度を合わせた言葉です。そのため、裁量労働時間制はみなし労働時間制の一部に含まれます。

ただし、みなし労働時間制という言葉が、文脈上「事業場外みなし労働時間制」を指す場合もあり、裁量労働制とは別の制度としていわれている場合もあります。

3. みなし労働時間制は法律上問題ない?

みなし労働時間制は法律で認められた制度です。そのため、みなし労働時間制自体を導入することに問題はありませんが、運用方法を誤ると違法となる可能性があります。

  • 裁量労働制の対象とならない業務の従業員に裁量労働制を適用している
  • みなし労働時間が法定労働時間を超過しているにもかかわらず残業代が未払いである
  • 36協定を結ばずにみなし労働時間が法定労働時間を超過している
  • 実態は残業時間が極端に多く発生しているが、裁量労働制を導入を理由に残業代を支給していない

このような運用をしている場合、みなし労働時間制のルールに違反した運用となるため、違法となります。

3-1. みなし労働時間制の導入方法

みなし労働時間制の導入をする場合、設定するみなし労働時間によって導入するために必要な手順が異なります。

みなし労働時間が所定労働時間と同じ場合、所定労働時間を労働時間とみなすことを就業規則に記載することで、みなし労働時間制を導入することができます。

一方で、所定労働時間を超える労働時間をみなし労働時間とする場合、残業代も含んだうえで労使協定を結び、協定で定める労働時間が法定労働時間を超える場合には、就業規則に記載したうえで労働基準監督署長に届け出る必要があります。

また、みなし労働時間が1日8時間、週40時間を超える場合、法定労働時間を超えるため、36協定を結んでおく必要があります。

なお、裁量労働制の場合、専門型では労使協定を締結した後、労働基準監督署長へ届出が必要であり、企画型では労使委員会の5分の4以上の賛成をもって労使委員会の決議をした後、労働基準監督署長へ決議の届出が必要なほか、対象となる従業員の同意も必要となります。

どのケースも、みなし労働時間制を導入した場合は、従業員に周知をするまでおこないましょう。

3-2. みなし労働時間制を導入する場合、企業が注意すべきこと

みなし労働時間制を導入する場合、企業が注意すべきことは、前述のルールに反した運用のほかにもあります。

みなし労働時間制を導入する場合、極端に短い時間働くことも極端に長い時間働くことも可能になります。極端に労働時間が短い場合、タスク量の調整をするのが良いでしょう。極端に長い時間働いている場合、健康状態が悪化することなども予測できるため、タスク量を減らすなどして調整するのが良いでしょう。

また、みなし労働時間制が適用される従業員であっても、勤怠管理は必須です。2019年に改正された労働安全衛生法で労働時間の把握が義務付けられたため、注意しましょう。

このように、正しく運用しなければ、みなし労働時間制のメリットが活かされない場合もあるため、注意点を把握したうえで運用しましょう。

4. みなし労働時間制を導入している会社の特徴

前述の通り、みなし労働時間制は導入できる職種や業務が限られています。例えば、事業場外みなし労働時間制の場合、外回りや出張が多い職種など、労働時間の算定が難しい一部の職種のみ導入することが可能です。

また、専門業務型裁量労働制や企画業務型裁量労働制の場合は、厚生労働省令によって業務が指定されています。みなし労働時間制を導入している会社の特徴は次の4点です。

  • 全国各地に取引先企業があり、営業社員が出張や外回りをおこなう必要がある会社
  • 厚生労働省令によって指定された職種の従業員が働く会社
  • 仕事の進め方を従業員の裁量に委ね、創造性やイノベーションを発揮させたい会社
  • 出社日や出社時間の裁量を拡大することで、働き方改革を推進したい会社

5. みなし労働時間制の内容や種類を知り、自社にあった制度を導入しよう

みなし労働時間制とは、従業員の実労働時間にかかわらず、労使協定で取り決めた時間を働いたとみなすことができる労働時間制度です。

みなし労働時間制には、事業場外みなし労働時間制、専門業務型裁量労働制、企画業務型裁量労働制の3種類があります。

それぞれ適用可能な職種や業務が違うため、厚生労働省令や厚生労働省のガイドラインを確認しましょう。みなし労働時間制の内容や種類を知り、自社に合った制度を導入することが大切です。

【監修者】涌井好文(社会保険労務士)

涌井社会保険労務士事務所代表。就職氷河期に大学を卒業し、非正規を経験したことで、労働者を取り巻く雇用環境に興味を持ち、社会保険労務士の資格を取得。 その後、平成26年に社会保険労務士として開業登録し、現在は従来の社会保険労務士の業務だけでなく、インターネット上でも活発に活動を行っている。

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